間違いながらそれでも俺は戦車に乗るのだろう。 作:@ぽちタマ@
そのあと愛里寿版があることをしり聞いてあまりの可愛さに悶絶。
そしてボコの歌を無意識に口ずさんでいる自分に驚愕。
あの歌中毒性ありませんか?自分だけなんでしょうか?
「当てさえすれば勝つんです! あきらめたら負けなんです!!」
そうだな、たしかに簡単にあきらめるのは間違っているのだろう。それには俺も同意はするし反論もしないが、もうこの現状はどうにもならないんだ西住。
そうして試合は決着が着き、勝者が決まる。
「―――勝者! 比企谷 八幡 !……ってことで、またまたうちの兄の勝ちですね、みほさん」
「つ、強すぎるよ……八幡くん……」
ちょっと西住、涙目にならんでくれ。それだと俺がいじめてるように見えるから。
「比企谷殿、今何連勝なんですか!?」
「もう2桁超えたあたりから数えるのやめたぞ俺は」
「八幡さん、次はわたくしです! 今度こそ勝って見せます!」
俺たちは今何をしているかというと、戦車のシミュレーションのボード盤をやっている。
いや、それはいい、それはいいんだが……。
「おいお前ら、やるのはかまわんが、いい加減に帰らないとそろそろ時間的にもやばいだろ」
俺の言う通り、時計の針は22時を回ろうとしている。
だが、西住、秋山、五十鈴の三人はきょとんとした顔でこちらを見てくる。
え? 俺なんかおかしいこと言ったか? それとも今時の女子高生はこんな時間まで遊ぶのが普通なのか? いや、この面子はどうみてもそういうことをするように見えないし……。などと俺が思考の渦に囚われかけていたら。
「え? 比企谷殿は小町殿から聞いてないんですか?」
「は? なにを?」
聞いてないですよ小町さん? あなた今度はなにを企んでいるんですかね?
俺は件の主謀者である小町を睨みつける。八幡の睨みつける攻撃、しかし小町は妹なので防御力は下がらない。普通だったら絶対に効果があるんだがな。やはり妹の小町には効かんか。
「私たち、今日はここに泊まるんだよ?」
そう西住が俺に言う。
ちょっと待とうか? は? 泊まる? 俺は突然のことで思考がうまく働かない。
「そういえばお兄ちゃんにはいってなかったね。今日みほさんたちもうちに泊まっていくのでよろしく~」
あれだな。よくわからんが俺がやることだけはわかった。
「小町……」
「なにかな、お兄ちゃん?」
「却下」
「え?」
なんで驚いてんだよ小町。あとその空気読んでよ、みたいな視線はなにかな? 小町よ、ひとつ教えやろう。空気は読むものではなく吸うものだ。だから俺に空気を読むことを期待するのが端から間違っている。
「小町はみほさんたちとパジャマパーティーがしたいのでお兄ちゃんの意見は却下です!」
こいつ、端から俺の意見など無視する気満々じゃねぇか。だがな小町、粋がっていられるのも今のうちだ。
「いくら小町がいいといっても親父たちがいいとはいわんだろ」
いくらあの小町を溺愛している親父たちでも、この状況はさすがに認めないだろう。
「フフフ……甘いよお兄ちゃん。MAXコーヒーより甘々だね!」
いや、どんだけ甘いんだよ。糖尿病まっしぐらなんてレベルじゃないぞ。
というかなんだこの小町の自信は……嫌な予感がする。
「もうお父さんたちには事前に許可をもらってるから、今の小町に死角はないよお兄ちゃん!」
ダメだった。もうこの家には俺の味方なんていないんじゃなかろうか? というか親父よ、俺の存在を忘れてるんじゃなかろうな? いくら小町の頼みだからってひょいひょいと頷くのはやめろ。この状況は絶対におかしいから。
いや、別に俺が西住たちになにかをする気はないんだが、そういう問題じゃないだろ。
だがこの現状を覆せる気がしないし、どうしたもんか。いやあったな、簡単な答えが。
「そうか、わかった」
「どうしたのお兄ちゃん? 今日はやけに素直だね。なんか悪いものでも食べた?」
おいそれはどういうことですかね、小町さん? なんで普通に俺をディスってんだこの妹は。
「俺はいつも自分には正直だから……。ということで俺は今から出かけるわ。朝になったら帰ってくる」
「それも却下です!」
「いやいや、無理だから」
「無理もへちまもないよお兄ちゃん。お兄ちゃんがいなくなったら愛里寿ちゃんはどうするの?」
「いや、それは……」
不意に服の袖を引っ張られる。
「八幡、いなくなっちゃうの?」
そこには今にも捨てられそうな子犬の目をした愛里寿がいた。
もう無理じゃね? というかなんでこんな状況になったんだっけか?
====
武部と冷泉がヘリに乗ったあと、俺たちはあのまま解散となった。
小町が最後になんか西住たちと話していたが、その時の俺はたいして気にも留めてなかった。
この時に気づけていればなんとかなったかもしれんが土台無理な話なので置いておこう。
「というか愛里寿、なんで今日はいきなり来たんだ?」
俺は親戚でもあり、島田流の後継者、島田 愛里寿に尋ねる。
「最近八幡が戦車道始めたって、小町から聞いてたから」
そういやそんなこと言ってたな小町のやつ。
「それで気になって来たのか?」
「うん」
「そうか、でも千代さんがよく許可したな、泊まること」
千代さんとは、愛里寿の母親でもあり大学戦車道連盟の理事長でもある島田 千代さんのことだ。あの人は娘大好きだったと思うんだが。
「頑張った」
ボコを片手に愛里寿は小さくガッツポーズをしている。
この愛里寿の頑張ったとは、たぶん戦車道のことだろう。そしてそれは同時にたくさんの戦車が葬られたことを意味する。他人事ながら同情を禁じ得ない。
愛里寿が相手をしているのは中学生ではなく大学生、つまりは大人を相手に愛里寿は戦車道をやっている。
そんな愛里寿は飛び級で大学に入っているから同年代の友達がなかなかできないらしい。そりゃそうだ、まわりは大人しかいないからな、加えて愛里寿自身が内気で人見知りが激しいのも友達ができない原因だろう。
だから愛里寿にとって、年が近くて話せるのが俺と小町ぐらいなんだが、愛里寿は小町となかなかしゃべりたがらない。決してしゃべらないというわけではなく、話しかけられれば話すという感じである。
じゃあ、なんでそんな愛里寿が俺には話しかけてくるかというと、簡単な話何故か気に入られているのだ。
何故かと言葉を濁したが、原因はわかっている。
それは俺がボコを気に入ることになると同時に一つの黒歴史が生まれたあの日に遡る。
中学生だった俺はある日、女子から連絡先を交換してもらい舞い上がっていた。勘違いをした俺はそのまま告白。そして当然のごとく俺はフラれ、それだけで終われば青春の一ページとして残ったかもしれない。
そう、終われば……次の日、俺は現実の残酷さを知ることになった。
学校に来てみればなぜか俺が告白したことがクラスの全員が知っており、みな口々に俺のことを話していた。
それだけならまだ良かったかもしれない。話しているやつらの中に俺が告白した子がいたのだ。
その時からか人のことを信じられなくなったのは。だから常に人の行動の裏を読もうとしていた。皮肉にもそのことが今の俺の戦車道に深く関わっている。
まだ小町が中学に上がっていなかったのでこの学園艦におらず、俺は寮生活を送っていたこともあり、だいぶ塞ぎこんでいた。
そんな時に島田邸に集まることになり、俺は正直行きたくもなかったのだが、あまりにも俺の様子がおかしかったからか、学園艦に迎えに来た小町に無理やり連行されたのを覚えてる。
そして俺は運命の出会いをするのだった。いやもちろん、女子ではなくボコなんだが。
子供は子供同士で集まった方がいいだろうということで、俺と小町と愛里寿は集まったのだが、会話が全くない。俺はそもそもしゃべる気分じゃないし、小町は愛里寿との距離感を測りかねているし、愛里寿にいたっては内気と人見知りで話そうとすらしないしな。
「ねぇ、愛里寿ちゃん、いつも持ってるそのクマさんはなんて名前なの?」
この時小町が出したパスはナイス判断だったのだろう。
「え、えっと、この子はボコって言うの!」
今までとは違い、ボコのことになると途端に愛里寿は饒舌になった。ボコのどこがカッコいいとか、ボコがボコたる由縁だとか、とにかくボコのことをこれでもかというぐらいに説明したのだが、小町にはよくわからなかったらしい。
いや、俺も正直わからなかったが、愛里寿は言葉だけじゃボコの魅力を伝えられないと思ったのだろう、DVDデッキを持ってきてボコの映像を流し出した。
「あ、どうせならお菓子と飲み物を貰ってくるね」
小町は俺と愛里寿を残し、部屋を出ていってしまった。
俺はやることもなかったので愛里寿の流すボコの映像を見ていたんだが……。
「大丈夫?」
愛里寿が突然そんなことを言い出した。なんでいきなりそんなことを言い出したのか俺にはわからなかった。
「どうかしたか?」
「だって、泣いてるから」
愛里寿のその言葉に、初めて自分が泣いていることに気づいた。
でも俺は別に悲しいから泣いていたわけではなく、むしろ逆だった。
恥ずかしながら、俺はボコの何度やられても立ち上がる姿に心惹かれていったのだ。さっき愛里寿が説明していた時に言ってたっけな、ボコは絶対に勝つことはなく負け続ける、だってそれがボコだから。
自分がどうあがいたって結果が変わらない、やるだけ無駄、そんなボコに俺は自分を重ねてしまった。
だから思ってしまったのだ。無理だとわかっていても、頑張り続けて、諦めないで辿り着くその先に俺が妥協して手に入れようとした偽物なんかじゃない、“本物”がそこにはあるような気がした。
「……ボコはすごいよな、なんであきらめないんだろうな」
たぶんこの時俺は無意識につぶやいていたのだろう。そんな俺の発言に愛里寿は自信満々に答える。
「だって、それがボコだから!」
そっからの俺はちょっとあまり説明したくない。まぁ簡単にいうとガチ泣きした。なんか今までのことが全部一気に押し寄せてきたのもあってガチ泣きした。
今思う、なぜ俺はあんな恥ずかしいことを……ぐあぁ! 死にたい、死にたいよォ! あまつさえ子供向け番組を見て泣き、さらに一応身内といえど中学生が小学生の前でガチ泣きとか黒歴史まっしぐらなんてもんじゃねーよ! 馬鹿じゃねーの!?バーカ、バァーカ!! ………とりあえずあれだ、このことは絶対に墓までもっていく。
そして俺はボコを泣くほど好きな人物として愛里寿に認識されたらしい、その日からすごくなつかれた。
ということで今に至るわけだな。
「そうだ愛里寿、今日なんか食いたいもんあるか? せっかくだしリクエストしてもいいぞ」
「……えっとね。じゃあハンバーグ!」
ハンバーグか少し手間はかかるが久しぶりだしそれでいくか。
「もちろん目玉焼きもいるんだろ?」
「うん!」
愛里寿はハンバーグが好きである。もっというと目玉焼きハンバーグが大好きである。
戦車道は大人顔負けではあるがこういうところでは年相応になるので、俺的には愛里寿にちゃんと友達ができればなにも心配はいらないんだがな。今のところボコが最高の友達らしく、仲良くしたいとか、友達になりたいとかそういう気持ちはないらしい。
「おい小町、帰るぞ!」
「ん? あぁ、ちょっと待ってお兄ちゃん。もうすぐ話が終わるから」
なにを西住たちと話しているんだろうか? そして話が終わったのか小町はこちらに来る。
「なに話してたんだ、お前」
「いくらお兄ちゃんでもこればっかりは教えられないかな~」
そのどや顔がむかついたので軽く頭にチョップをかましてやった。
「むぅ~、なにするのお兄ちゃん!」
「気にするな。とりあえずあれだ、さっさと帰って飯にしようぜ」
「お兄ちゃん、それで小町が誤魔化せると思わないことだね」
割といつも簡単に誤魔化せている気がするんだが、ツッコまんどいてやろう。
「はいはい、とりあえずスーパーに行くか」
「え?でも家には普通に材料あったと思うけど?」
いつもなら足りるが今日は愛里寿がいるからな。それに……。
「今日はハンバーグを作るからな、それだと家にあるぶんじゃ足りん」
「ほう、なるほどなるほど、これはちょうどいいね!」
なにがちょうどいいんだろうか?わからん。
「とりあえず、スーパーにレッツラゴー!!」
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そしてスーパーで買い物を終え、俺たちは家に帰ってきた。
「とりあえず俺は今から飯作るから、小町と愛里寿は適当に時間潰してくれ」
「了解であります!」
「うん、わかった」
そしてコネコネとハンバーグの種の下ごしらえが終わったころ、家のインターホンが鳴った。
「小町、すまんが出てくれ、俺は今手が離せん。変な勧誘とかだったらいかんから扉を開ける前に確認しろよ?」
「はぁーい。でもたぶんだけど大丈夫だと思うよ?」
なにを根拠にそんなことを言ってるんだろうか? ホントに変な勧誘だけには気を付けた方がいい。あいつら平気で何時間も玄関で居座るからな。まじ迷惑でしかないよなああいうの。
「「「お邪魔しまーす」」」
おかしいな。なんか聞き覚えがある声だった気がするんだが……。
「お兄ちゃん!」
小町のすこぶるいい笑顔、これは絶対何かありますわ。
聞きたくない、聞きたくないが、聞かないと話が進まないからな。
「……なんだ小町、一応聞いてやるぞ」
「なんでそんな嫌そうな顔なの……。ま、いいや、今日はこの家にお客さんが来ました!」
知ってるよ、さっき聞こえたからな。問題はその人物なんだが。
「八幡くん、こんばんは」
「さっきぶりです、八幡さん」
「今日はお招きいただき誠にありがとうございます! 比企谷殿!」
やっぱりお前らか、いや正直さっき聞こえた声でなんとなくわかってた、わかってはいたが……。
「あの、小町さん?」
「なんだい、お兄ちゃん?」
「説明しろ」
「今日はみほさんたちと一緒に晩御飯を食べようと思ってお呼びしました!」
うん、簡潔でわかりやすくてよろしい。だがな……。
「そういうことはもっと前に言え。材料が足りなくなるだろうが」
「だって、お兄ちゃんに言ったら絶対に頷かないと思ったから……。それに材料に関しては大丈夫だよ、小町が余分に買っといたから!」
それでか、スーパーで買い物が終わった時いつも以上に多いと思っていたが納得がいった。
だから小町はあの時、ちょうどいいとか言ってたんだな。
つまりあの時小町が西住たちと話していたのはこのことだったわけだ。
「話はわかった。とりあえず西住たちを客間にでも連れてってくれ。幸いハンバーグの種は多めに作っといたから時間はそんなかからんと思う」
いきなりの追加だったが、まぁなんとかなるだろう。
「八幡くん、私たちになにか手伝えないかな?」
「そうですね、わたくしたちも待っているだけというのもなんですし」
「手伝います!」
「そうか、ならあれだな、大人しくしといてくれ」
西住たちには悪いが正直あの料理の腕だと手伝いにならん。
「飯ができたら皿とか並べるのを手伝ってくれればそれでいいぞ別に」
「そこまで酷いの? みほさんたち」
「とりあえず五十鈴に包丁を握らせると、血の海を見ることになる」
「え……」
「まぁ、料理ができるまで適当にくつろいでてくれ」
小町の案内で西住たちは客間へと向かった。
「ねぇ、八幡……」
「どうした、愛里寿?」
「さっきの人たちは?」
「ん? あぁ、大洗学園で戦車道やってるやつらだよ」
「そうなんだ……」
「ちなみにボコが好きなやつが一人いるから、話して来たらどうだ?」
「ほ、本当!? でも……」
やっぱいきなりは無理か、ボコならいけると思ったんだがな。
「無理そうならやらんでいいぞ、言ってみただけだ」
そういって俺は愛里寿の頭を撫でる。
「ん、今はボコと八幡がいればそれでいい」
さすがにそれだと俺みたいにボッチまっしぐらになるから、せめて気の合う仲間がいればいいんだが。
その点西住はそこら辺をクリアしていると思う。性格は温厚で戦車道やってるし、さらにボコが好きだしな。話せば絶対に仲良くなるとこと間違い無しなんだが、いかんせんきっかけがいるのかもな。
「っし、これで完成っと。愛里寿、呼んできてくれるか?」
「わかった」
ということで食事シーンは特筆することがなかったのでカット。
そいでもって西住たちは小町と楽しく遊んでいるようだ、笑い声が俺の部屋にまで響いてくる。
愛里寿はいうと俺の部屋でボコを見ながら、頑張れー頑張れー、といつものごとく応援している。平和だな。
だがそんな平和も長くは続かなかった。いや短過ぎね? もうちょっとのんびりさせろよ。
「お兄ちゃん!」
「なんだ、どうした小町。できればめんどくさく無い方がいい。むしろそのまま扉を閉めてもと来た道を戻ってくれると俺的には助かる」
「小町の敵を取ってくれない?」
俺の意見はスルーですかそうですか。
「どういうことだ?」
「とりあえず、客間に来て」
ということで俺は客間に連れてこられたわけだが。
「また懐かしいもんを引っ張り出したな」
そこには戦車のシミュレーションゲームのボード盤が置いてある。昔小町とよくやったっけか、なんでこれがここに?
「いやー、これしかうちに遊べるものがなかったんだよね~」
なんとも悲しい事実だった。そもそも俺は友達なんていないから遊びに来る、ということ自体ないし、小町は小町で意外とさばさばしてるから友達を家に連れてきたことはなかったな。だから必然的にうちにそういうものがないわけだ。
「それでお前は負けたのか」
「うん!」
うん、じゃねーよ。小町さん? あなた散々昔にこれやってたんだから少しは健闘しろよ。この盤面を見る限りぼろ負けじゃねぇか。……いや、まさかこの妹、俺を呼び出すためにわざと負けたのか?
「ちなみに小町の相手は?」
「私です、比企谷殿」
「ふむ、秋山か」
たしかに秋山ならこういうやつをやったことありそうだし普通に強そうだ。
ということで俺の小町敵討ち大作戦が決行された。
このゲームは割とシンプルなゲーム性をしている。移動、攻撃、装填など行動ごとにインターバルが設けられており、それぞれの行動にともないターンが決められているのでそれを過ぎないと次にまた同じ行動ができない。
一ターンにつき一回行動というわけではなく、移動、攻撃、装填などを全て行うことができる。このゲームは戦車ごとにそのインターバルが違うのでそこも考えながらゲームをやらないと大事な場面で攻撃できないとかなってしまう。
「とりあえず、俺の勝ちだな」
俺は最後に残った秋山の戦車を撃破する。
「あ~、私の戦車が……」
「今度はわたくしがいきます。秋山さんの敵とってあげます!」
「五十鈴殿、お願いします!」
ということで次に五十鈴とやったが俺はなんなく勝利。
「こちらにはまだ西住殿がいます!」
やめろ秋山、なんかそれフラグでしかないから。
「よろしくね、八幡くん」
「おう」
そこからは俺の連勝はとまらなかった。このゲームに慣れてなかった西住たちも、何回かやってるうちにだんだんとゲーム性に慣れてきたのかいい動きをするようになり、ときどき俺も危ない場面があったが、それでも負けはしなった。
最初の冒頭に戻るわけだ。
西住たちは今日小町とパジャマパーティーなるものをするらしい。
なら俺が気を付けることはひとつ、ラッキースケベなるものを絶対に起こさないこと。この世界にラブコメの神様がいたとしてそいつはそういう類のものをしかけてくるらしい。
だが俺ほどのボッチとなると簡単にはそんなことは起きない、というか起こしてたまるか、起こしてしまった日には日の目が拝めなくなるだろう。
ラノベの主人公たちは笑いごとですませているが、俺がやってしまったらどうなるか?簡単だな、お縄についてしまう。
だから俺がこのあとすべき行動は部屋に引きこもること、そうすればうっかり着替えをのぞくなどとラブコメのテンプレ的展開にはならないはずだ。