間違いながらそれでも俺は戦車に乗るのだろう。   作:@ぽちタマ@

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決着、そして西住流のちに島田流

 サンダースの戦車が先程西住が無線で言っていた目標地点へとそろそろついたくらいだろうか?まぁ、もちろんそこにはフラッグ車の38⒯がいるわけがなく、バレー部の八九式、一年のM3、そしてカエサルたちのⅢ突が待ち構えている。

 そして相手は今頃慌てふためいているだろうな。なんせフラッグ車を撃破しに行って逆にやられているんだからな。ミイラ取りがミイラになったわけだ。

 そして俺の携帯にメールがくる。

 

「相手のシャーマンを一両撃破! ……か、よし、いい感じだ」

 

 そう、そしてこれが無線を使わないで連絡を取っている答え。無線を傍受されているなら、それ以外の通信機器を使えばいいというシンプルな考えだ。ちなみに戦車道の試合中に携帯を使っていいかというと、これがなかなかにグレーゾーンまっしぐらでもあったりする。

 仲間内でのやりとりは別にルールには触れないのだが、それ以外、つまりは観客席にいる人など外部の人間と連絡を取るのはアウト。即失格である。

 間違えて掛けてしまい、勝っていた試合で負けたという話があるくらいだ。もしそんなことになろうものなら目も当てられない。だから俺は口を酸っぱくして武部に言った。絶対に掛け間違えるなよと。あんだけ言ったのだ、さすがの武部でも大丈夫なはずだ。

 そしてあいつはメールを打つのが早いからな。西住が無線で偽の指示を出してから10秒経たずにメールで作戦内容が送られてくる。

 それにしてもホントにメール打つの早すぎるだろ。まるで息を吸うかの如く。なんであんなに指を動かせるの?俺だったら絶対指を攣らせる自信がある。なんせメールなんて碌に打ったことがない。

 いや、中学生の頃に一時期メールを返すのに必死になっていたっけか、あれは今でも思い出すとドロドロの濁ったコーヒーより苦い思い出だから忘れた方がいい、むしろ忘れたいまである。

 あの時の俺はまさしく馬鹿だったのだろう、相手のどうでもいいようなメールに一喜一憂したりして、一生懸命返信の内容を考えて、あの時の自分の薄っぺらさには反吐が出る。

 ただ相手はお情けで俺に連絡先を教えただけ、なのに俺はたまらなくそのことがうれしくて毎日毎日、携帯を開いてはメールが来ていないか確認していた。

 そして勘違いが頂点にまで達したとき俺の人生最大の愚行が……っといかんな、いつのまにか思考がおかしな方向にいってしまった。今は試合に集中しないと。

 さて、話はそれたがこれで作戦の第一段階が完了。次の段階へと進めるとするか。

 

『全車128高地へ来てください。ファイヤフライがいる限りこちらに勝ち目がありません。危険ではありますが、128高地を陣取って上からファイヤフライを一気に叩きます!』

 

 西住からの無線が入る。これもまた偽の情報ではあるが相手はたぶんだが疑いはしないだろう。それはなぜか? まず第一にこの無線傍受がサンダース全体の行動ではなく、一個人、つまりは独断専行だからだ。

 無線傍受はサンダースの隊長が掲げている、フェアプレーの精神から大きく逸脱しているからな。

 だからこそ、この無線傍受に付け入るスキがある。もしこれがサンダース全体としての作戦ならば、一回失敗したとしてそこから相手に気づかれている可能性を見つけるものが出てくるだろう。

 ならもし個人の独断専行で無線傍受をやっているならどうなるか? 答えは簡単だ。失敗を取り戻そうとするだろう。

 俺はあらかじめ、相手が目標地点に来た場合は全部の車両を撃破するなと伝えている。

 さすがに目標地点に行った車両が全部撃破となると相手にこちらが気づいているのがバレてしまう、なのであえてそうした。

 だから相手はこう思うだろう、まだ一両やられただけ、今のはまぐれに違いない、次はそうはいかない、相手を撃破すればすべて丸く収まる。いずれにしても絶対自分が間違っているとは思わない。なぜなら相手には無線傍受という絶対の自信があるからだ。たぶん今回だけではないのだろう、さすがにすべての試合で無線傍受をやってるとは思わんがそれでもだな。

 相手がこちらの情報に疑っていない証拠に、先程の無線で西住が指定した地点へとサンダースの戦車が向かっている。

 これでもう疑いようはないな。そして俺はこの作戦の肝である最後のピースをはめる。

 

『こちらボコチーム、相手のフラッグ車の位置を突き止めた。応援を頼めるか? もし無理そうなら単騎撃破に向かう』

 

『こちらあんこうチーム、もう全体が目標地点へと移動しているので応援は無理ですが、最初の作戦通り単独で撃破をお願いします。相手はこちらの動きには気づいていないので大丈夫なはずです。一気にけりを付けましょう!』

 

 ここで今までほとんど姿を見せていない俺の情報と相手のフラッグ車を発見したと報告する。

 これ自体の真偽はさほど重要でない、むしろ目的は相手にこの情報を聞かせること。

 そしてその結果が……

 

「一両だけ不自然に別行動をしだしたな……」

 

 俺は双眼鏡で確認しながらそうつぶやく。

 先程も言ったが、ことの真偽は関係ないのだ。なぜなら相手はどちらにせよフラッグ車を守るために応援を呼ばないといけない、普通に考えて仲間同士の通信でこちらがあえて嘘をつく意味がないからな、それこそ無線を傍受されていると分かっていない限り。

 だから相手は情報を頼りに行動するしかないわけだ。それが自分たちの首を絞めるとも知らずに。

 さてこれで第二段階が完了、相手のフラッグ車まで案内してもらうとしましょうか。

 

 

 ====

 

 

「フフフ……アーッハハハハ!! 捨て身の作戦に出たわね!! でも丘に上がったらいい標的になるだけよ?」

 

 相手も相当追い詰められているみたいね。こんな苦し紛れの作戦に出るなんて。これでさっきやられた分もまとめて仕返しができるわ!

 私は隊長に無線を繋げる。

 

『128高地へ向かってください』

 

『どういうこと?』

 

『敵のほとんどの車両が集まる模様です』

 

『ちょっとアリサ、それ本当? どうしてそこまでわかっちゃうわけ?』

 

『私の情報は確実です……! それと一両こちらに応援をもらえますか? どうやら姿を見せてない一両ががこちらの位置に気づいたようで』

 

『オッケー!! ……全車、Go ahead!! じゃなかった、一両はアリサの応援に向かって!』

 

 大丈夫、すべては上手くいく、何事もなく順調に。私たちはあんな無名校に躓くわけにはいかないのよ。

 

 

 ーーー

 

 ーー

 

 ー

 

 

『なにもないよ~!!』

 

『そんなはずありません!!』

 

 どういうこと? さっきといい今といい……。

 

「まさかハメられた? ……じゃあ、大洗の車両はどこに?」

 

 そして戦車の駆動する音が聞こえてくる、やっと応援が来たようね。

 そう、それこそが死神の忍び寄る音とは私は知る由もなかった。隊長のあの通信が入るまで。

 

『アリサ!! あなたの応援に向かった戦車が撃破されたわ!!』

 

『へ? それはどういう……』

 

 その答えはすぐにわかることになる。なぜなら……

 

「よう、ちっとばかし早いが、そろそろこの試合も終わりにしようぜ」

 

 先程から聞こえていた戦車の駆動音は仲間のものではなくこいつだったわけね。

 でもなんでこいつがここに? いやそれはさっき言っていた無線でわかっていたじゃない、問題はそこなんかじゃない。どうやってこの戦車でシャーマンを倒したの? どうやったって……。

 違う! おかしいわ! だって、だって……なんで他の大洗の車両までここにいるの!?

 

「抵抗するのはかまわないがこの数に勝てると思うならかかって来いよ、強豪の意地もあるだろうしな。まぁ俺は戦車を降りることを勧めるけどな」

 

 そんな……私たちがこんな弱小校に……。

 

 

 

 複数の砲撃の音が鳴り。

 そして無情にも審判員のアナウンスが流れるのであった。

 

『大洗学園の勝利!!』

 

 

 ーーー

 

 ーー

 

 ー

 

『一同、礼!』

 

『『『ありがとうございました!!』』』

 

 最後は各戦車の代表が並んで挨拶をして終わった。

 とりあえずは勝ったのはいいんだが、すごい睨まれてるよ。え? 誰にかって? サンダースの選手はもちろんだが、ひときわこちらを見てきているのは相手の隊長さんである。

 いやー俺なんかしたっけか? いや、しましたね。むしろ主謀者だったわ。

 これはささっと逃げるに限るな、めんどくさいことにしかならん気がする。よし、そうと決まれば帰ろう!

 

「ちょっと待ってくれる、ハッチー?」

 

「すいません、あれがああしてああなるんで帰ります」

 

「話を聞かないと今度ハッチーの家に行くからね?」

 

「それだけはまじ勘弁してください、話を聞くんで」

 

 なんてことを言うんだこの人は。この人はやると言ったら絶対にやる、そして小町と遭遇しようもんなら絶対にややこしいことになる未来しか見えん。そうなるぐらいなら話を聞くぐらい安いもんだ。

 

「む~!!」

 

 なんで話を聞くって言ってるのにむくれてんだこの人は、ちょっと理不尽すぎません?

 

「なんで怒ってるんですか……」

 

「そんなに私に来てほしくないの?」

 

「は? いやいや、今はそういう話じゃなかったでしょ?」

 

「隊長、話が進まないんで今はそのことを置いといてください……」

 

 どうやら副隊長の二人もこちらに来たようだ。

 

「単刀直入に聞くわ。ハッチー、どうやってフラッグ車の場所を突き止めたの?」

 

 どういうことだ? 俺はそう思い、某主謀者の方を見ると露骨に顔を背けやがった。

 こいつ、まだ言ってないのかよ。こういうのはずるずると後に伸ばせば伸ばすほどめんどくさいだけだろ。

 

「無線が傍受されていたんでそれを逆手に取りました」

 

 俺はもう包み隠さずそう言った。

 

「……どういうこと? アリサ?」

 

 あれ? なんか空気がおかしくない?

 

「そ、その……なんと言ったらいいか……」

 

「ハッチーの言ってることはホントなのね?」

 

「……は、はい……」

 

「ばっかもーん!!」

 

「す、すいません……!」

 

「戦いはいつもフェアプレイでって言ってるでしょ!」

 

 なんというか開いた口が塞がらない。ちょっと意外だったのかもしれん。この人はてっきり怒らないのかと勝手に思っていたが、どうやらそうでもないらしい。いや、むしろ白黒はっきりつける性格ならこれはこれでおかしくはないのかもな。

 とりあえずこの空気を変える意味でも質問をするか。

 

「あ、そうそう、俺もひとつ聞きたいことが」

 

「ん? どうしたの?」

 

「なんで編成を変えなかったんですか? 偵察がわかった時点でいくらでも変えようがあったでしょ?」

 

 俺がこの試合が始まってからずっと思ってた疑問をぶつける。

 

「だってわざわざ偵察に来てくれたのに悪いじゃない、それに……」

 

 いや、悪いじゃないって、まじでそんな理由なのか?

 

「それに?」

 

「That`s戦車道! これは戦争じゃない。相手が全力で来るならこちらも全力で迎え撃つ! 道を外れたら戦車が泣いちゃうしね」

 

 いや、なんというかホントにすごいなこの人は、冗談ではなく本気で言っているのがわかる。

 正直俺からすればまぶしすぎる。俺にはそんな考えはできない。できないが、こんな考え方をする人もいるんだな。

 ある意味において西住流や島田流とは真逆の極致だと思う。勝つことではなくあくまでも戦車道そのものを楽しむということなんだろ。

 

「それにしてもハッチー、あなたには驚かされてばかりね」

 

「そうですか?」

 

「ええ、まさかこんなに早く決着を着けられるとは思わなかったわ」

 

「まぁそれは、ひとえに無線傍受のおかげですかね、正直普通に戦っていたらどうなっていたかわかりませんよ?」

 

「それでも勝ったのはあなたたちよ」

 

 そういって手を差し出してくる。これ前にも見たことがあるな。

 

「握手したら、仲良くなるとかいいませんよね?」

 

「? どういうことかわからないけど、違うわ!」

 

 良かった、この方程式がわりと普通なのかと最近思いだしたからな。

 

「だってもう、私たち仲がいいじゃない!」

 

 そして強引に握手をされる。

 え? いや、そんなことになった覚えが一切ないんですけど……。この人の脳内はどうなってるんだ? いくらなんでも人類皆家族とか言いださないよな? いやこの人の場合、素で言いそうではあるが……。

 そうしてサンダースは去っていった。まじ嵐のような人だったな。

 

「八幡くん、話は終わったの?」

 

「ん? あぁ……」

 

「比企谷殿!」

 

「ど、どうした、秋山?」

 

「すごい、すごいですよ!」

 

「お、落ち着け!」

 

「だってあのサンダースに勝ったんですよ!?」

 

 若干どころか普通に秋山のやつのテンションがおかしい。

 

「勝ったっていってもな、それこそ相手の無線傍受を逆手にとっただけだぞ?」

 

 勝ったには勝ったが、真っ当な方法で倒してないしな。

 

「そう、それですよ!」

 

「どれだよ……」

 

「比企谷殿はいつから無線傍受に気づいていたんですか?」

 

「怪しいと思ったのは一年のウサギチームの報告の後すぐに相手に見つかった時だな」

 

「え!?」

 

 なんか秋山がすごく意外そうな顔をしているんだが。

 

「ん?」

 

 なんか俺、おかしいことでも言ったか?

 

「比企谷、なんでその時点で気づけるのよ……。おかしくない?」

 

「もはや人間じゃない……」

 

 おいなんだこの幼馴染コンビは、二人してなんで俺をそんなにディスってんだよ。俺が何したってんだ!あと冷泉、人間じゃないはさすがにいいすぎだから、いいすぎだよね?

 

「お前らそんなことを言うがな、西住だって気づいてんだぞ? なぁ、西住?」

 

「………」

 

 あれ? 西住さん? なんで無言で俺から顔を背けるの?

 

「ごめん八幡くん。私が気づいたのは八幡くんが電話をかけてきた直前だったの……」

 

 あれ? まじで俺がおかしいんだろうか? 人の幸福を素直に喜べない性格だが、人間までやめたつもりないんだがな。あれかな? 霊石・アマダムで超感覚を得てしまったのかもしないな。それだと俺の場合、目の腐りようもあって絶対グロンギに間違われるなり変身してもしなくても未確認生命体とかちょっとどころじゃなくなかなかにつらくない? 人類守らずに逆に叛逆したって文句はいわれないだろうこれは。

 俺が言ってることが気になった人はぜひ一話からこの作品を見てほしい(ステマ)。俺の今までのライダーシリーズでの一番のお気に入りだったりする、人を守ったとしても絶対に感謝されるわけじゃないと教えてくれた作品だったな。え?捻くれた捉え方をしすぎ?気になった(ry

 とりあえず現実逃避は終わりだな、試合も終わったことだしさっさと帰ろう。

 

「さ~て、試合も終わったことだし、お祝いに特大パフェでも食べに行く?」

 

「行く」

 

 あの冷泉が即答とか、君たちちょっとパフェ好きすぎない? 俺はもう当分は見たくないな。食べてはないのに財布に大打撃を受けたのだ、当然のことだろ。

 そんなことを思っていたら、なんかにゃーにゃー聞こえてきたんだが……。

 

「麻子、携帯なってるよ?」

 

 は? いや、まじ? なんか意外というかなんというか、クールに見せかけて実はかわいいものが好きだったりするのか冷泉のやつ。

 

「知らない番号だ……、はい…」

 

 いや、知らない番号には出たらダメだろ冷泉よ。

 そして電話が終わったのか、冷泉は携帯を切ったのだが、なんか様子がおかしかった。

 

「どうしたの?」

 

「……な、なんでもない……」

 

「なんでもないわけないでしょ!?」

 

 武部の言う通り、冷泉のやつは動揺している。あいつは普段表情を変えないからか余計に深刻さに拍車をかけている気がするんだが。

 

「おばぁが倒れて、病院に……」

 

「「「え!?」」」

 

「麻子、大丈夫?」

 

「早く病院に行かないと……!」

 

 五十鈴のやつが言うのはもとっともなんだが、今から学園艦に大洗にまで寄港してもらうとなると時間がかかりすぎるな。足があればいいんだが、今そんな都合よく……ん? いや、たしか……。

 

「で、でも、どうやって?」

 

「学園艦に寄港してもらうしか……」

 

「でも、撤収までに時間がかりすぎます!」

 

 そして冷泉のやつはなにを思ったのか、いきなり脱ぎだした。いや、脱ぎだしたと言っても靴と靴下をだよ?

  服はまだ脱いでないから。脱ぎそうな勢いではあるがな。冷泉のやつ、それだけばあちゃんが大事なんだろう。

 

「麻子さん!?」

 

「なにやってるのよ! 麻子!」

 

「泳いでいく……!」

 

「「「え!?」」」

 

「待ってください、冷泉さん!」

 

「麻子! 今ここには比企谷がいるんだから! わかってるの!?」

 

 それでやっと冷泉が止まったのだが、あんだけ暴れといて俺の名前が出た途端止まるのはちょっとな……どんだけ俺は嫌われてんの? 冷泉のやつになにかした覚えもないんだがな。

 

「私たちが乗ってきたヘリを使って」

 

 声がした方を見ると、そこには意外な人物がいた。

 

「あ……」

 

 意外な人物とは黒森峰の隊長、西住 まほと、そしてあの時の副隊長だ。

 

「急いで!」

 

「隊長! こんな子たちにヘリを貸すなんて!」

 

「これも戦車道よ」

 

「お姉ちゃん……」

 

「冷泉のやつならこっちにまかせてもらっても大丈夫ですよ」

 

「どういうことだ?」

 

 西住の姉ちゃん、もういいやめんどくさくなってきた。まほさんは俺にそう言ってきた。

 答えはすぐにわかる。なぜなら……。

 

「ヘリの音?」

 

「俺の妹にさっき頼んだんですよ、困ってるやつがいるからヘリを借りれないか親父に聞いてみてくれって」

 

「なら、私がやったことには意味がなかったな……」

 

 もしかしてこの人、西住が困ってるから理由を適当につけて助けようとしたのか?

 前にも言ったがやり方がまわりくどいしわかりにくい、まるで俺のようだ。いや、さすがにそれは失礼か。

 

「意味なんていらないでしょ。やりたいからやったんでしょ?」

 

 とりあえずこの不器用な人にアドバイスでもしとくか。

 

「ふふっ、それもそうだな。エリカ、私たちは帰るとしよう」

 

 まほさんは俺に笑いながらそう言う。

 なんだ、こんな顔が出来るなら西住の前でもやってやればいいのに。そうしたら一発でいろいろと解決すると思うんだが、やっぱりそれが難しいんだろうか?

 

「ま、待ってください、隊長!」

 

 なんか最後に俺の方を睨んできたんだけど、なんでだ?

 そうしてまほさんたちが帰ったあと、入れ替わるようにうちのヘリが着いたな。

 ヘリから小町が降りてきた。

 

「みなさん、お久しぶりです! えっと……それで誰を大洗の病院にまで連れていけば?」

 

「おい、冷泉!」

 

「すまない……また借りを作らせてしまって……」

 

 まったく、なんでこういうところは律儀なんだか。

 

「俺が勝手にやったことだ、気にすんな」

 

 あまりにも冷泉のやつが辛気臭い顔をしてるもんだから、俺は頭を撫でた。

 

「あ……」

 

「ほら、さっさといけ、着くまでにはその辛気臭い顔をどうにかしろよ」

 

 冷泉のやつはヘリに乗り込む。

 

「私も行く!」

 

 武部のやつは冷泉が心配になったのか一緒に乗るみたいだな、武部と入れ替わるように小町たちがヘリから降りてきた。ん? たち?

 そしてヘリから降りてきたのは妹の小町と……ボコの人形を抱えた少女だった。

 

「八幡、久しぶり」

 

「え? は? なんでこいつがここに? おい、どういうことだ小町、説明しろ」

 

「今日愛里寿ちゃん、うちに泊まっていくからだよ?」

 

 いや、そんな首を傾げながら言われてもかわいいだけだから。そしてなぜに疑問形。

 

「そんな話聞いてないぞ、俺」

 

「うん、だって、今日決まったんだもん」

 

 もんってな、おいおいどういうことだよ、まじでいきなりすぎるだろ。

 

 

 そうして俺の親戚であり島田流の後継者こと島田 愛里寿が突如としてやってきたのだった。

 


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