間違いながらそれでも俺は戦車に乗るのだろう。   作:@ぽちタマ@

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彼は紅茶と共にあんこう踊りを見る

「ああんあん―――」

 

 あんこう音頭のあの独特な音楽が流れている。

 いや何度聞いてもこのあんこう踊りの歌は慣れないな。最初俺が大洗に来た時に聞いて以来、いろんな意味で忘れられない歌として堂々のナンバー1を誇っている。むしろ越えられでもしたらそれはそれで俺の中で一大事なのだが。

 そしてこの歌が流れているということは、つまり西住たちがあんこう踊りを踊っているということになる。

 そんでもって俺はなにをしているのかというと。

 なぜかダージリンさん、オレンジペコと一緒に紅茶を飲みながら西住たちのあんこう踊りを一緒にみているのだ。

 やだこれカオスすぎない? いろいろとメーターが振り切れている気がするんだが……、

 

 ……どうしてこうなった。

 

 そう、たしかあれは練習試合が終わったとこまで遡る。

 俺たちはというか、西住たちと俺は撃破された戦車がレッカー車によって運ばれているのを放心状態で見ていた。いや違うか、秋山のやつが一人大破した戦車をみて誇らしげにしていたな。戦車が戦って大破した姿をみてあそこまで嬉しそうにするやつもそうそういないんじゃないか?

 というか俺がこの試合でやったことがあまりにもしょぼすぎないだろうか?マチルダ三両を不意打ちで撃破、一人こそこそ岩陰に隠れて待機、これはある意味においてホントのこそこそ作戦じゃなかろうか?え?違う?

 そして最後は味方を盾にしている。

 いやー自分でやっといてなんだけど、これは酷いな。

 なにが酷いって基本的に真正面から戦ってないからな俺。たしかに撃破した数は多いんだろうが全部が不意打ちなうえに人のおこぼれを拾った感がハンパないな。

 でもいいわけをさせてくれ。

 ぶっちゃけ、俺の戦車はそこまでしないと戦えないん。こればっかりはしょうがない。俺だって出来るなら真正面からドンパチしてみたいし、血のたぎる熱い戦いとかしてみたい。

 でもいかんせん俺の戦車こいつなのだ。小さい頃に戦車に乗ることを夢見てた俺が見たらなんていうんだろうか?戦車で試合ができるんだから贅沢いってんじゃねーとか言われそうだ。

 やだ、小さい頃のおれ現実的すぎ。

 そんなどうでもいいことを考えていたら、どうやらダージリンさんたちが来たようで西住たちと話をしている。

 

「あなたが隊長さんですわね?」

 

「あ、はい」

 

「あなた、お名前は?」

 

「あ……、西住 みほです」

 

「もしかして西住流の? 随分、まほさんと違うのね」

 

 それで話が終わったのか、ダージリンさんはしゃべらなくなったのだが……、なんで帰らないんだろうか? そして俺の方を意味ありげに見つめてきているのはなんなんですかね、すごく嫌な予感がするんだが。

 

「いやー負けちゃったね、どんまい」

 

「約束通りやってもらおうか、あんこう踊り」

 

 そういやそんなのがあったな。西住以外はあんこう踊りがどんなのか知っているせいか表情が曇ってるよ。

 

「あれ? なんで聖グロの人がいるの?」

 

「こちらにはおかまいなく」

 

「そう? ならいいけど」

 

 いやよくないでしょ、そこは理由を聞いてくださいよ。

 俺は気になってしょうがないんだが、聞いてしまったらなにかが確定しそうな気がして、怖くて聞けてない。

 

「まあさすがに西住ちゃんたちだけあんこう踊りってのもかわいそうだから、ここは連帯責任だね」

 

「まさか!?」

 

「うん!」

 

 どうでもいいが、その時の会長さんの笑顔はとても輝いていた。

 

「あ、比企谷ちゃんはさすがに踊るとやばそうだから自由行動してていいよ」

 

 なんだろうな、あんこう踊りを踊らなくて済んだのに嬉しくないのはなぜだろう? 自分でもわかってるよ? 俺があんこう踊りをしたらやばいって。でも他人に言われると納得いかないのはなんでなんだろうな?

 

「なら、今から彼を借りていってもよろしくって?」

 

「比企谷ちゃんを? それまたどして?」

 

「彼には試合前に助けてもらったので、きちんとそのお礼をしたいと思いまして」

 

「いや、それは……」

 

 もう済んだことじゃないですかと言おうとしたら。

 

「この試合を全力ではなく本気で戦ってくれと彼にお願いされたけど、それではやはりこちらの気が済まないので」

 

「え? 比企谷、そんなことお願いしてたの!?」

 

「どういうことだ比企谷! ちゃんと説明してもらおうか!」

 

 怖い怖い怖い、河嶋さん落ち着いてください。

 それから俺は試合前にあったことをあらいざらいしゃべらされた。そして俺の行動が意外だったのか不思議そうな顔をしてるよ。

 

「……なんか比企谷がそういうことやるなんて意外」

 

「え? そうかな?」

 

「だって、そういうめんどくさそうなことやらないじゃん比企谷は」

 

 武部のいうことはなにも間違っていない。普段の俺なら絶対スルーしてた。だが今回はそうもいかなかったんだよ、なんせ絡まれてるのが対戦相手ときたわけだ。

 

「俺だって出来るならスルーしたかったんだよ、めんどくさいし」

 

「でも、あなたは助けてくれたでしょ?」

 

「助けたって言っても別に善意からじゃないんで、気にしないでもらえると助かるんですが」

 

「じゃあ比企谷はなんで助けたのよ、わざわざ」

 

「いや、それはあれだ……。あれがああしてこうしたわけで」

 

「どういうわけよ!」

 

 そんな怒らんでもいいだろ。カルシウム足りてるか?

 カルシウムといってもよく言われてる牛乳は吸収率は悪いから小魚の骨を砕いたやつをご飯にかけて食べて摂るといいらしいぞ。

 あれ?なんの話してたんだっけ?そうそう俺が助けた理由か。

 

「試合が出来なくなったら困るからな」

 

「え……それだけ?」

 

「それだけってことはないだろ。今回の試合は結構重要だったんだぞ、俺たちにとって」

 

「でも私たち負けちゃったじゃん」

 

「そりゃあ勝てることに越したことはないが、今回の勝敗はほとんど関係ないんだよ。そうでしょ、会長さん?」

 

「ありゃ、気づいてたんだ、比企谷ちゃん」

 

 そりゃそうでしょ。いくらなんでも待機中だからといってあそこまで緊張感がないのはおかしいと思ったんだよ。なんせ目的が勝つことじゃなくて試合そのものだったんだからな。

 そうなると負けたときのあんこう踊りは実は会長さんがやりたかっただけじゃないよな?いやそんなまさか、あれを自分からやりたがるわけないしな。

 

「俺たちがほとんど素人の集まりですからね。それに実戦でしかわからないこととかありますし、一年生チームあたりはそこらへんわかったんじゃないんですかね」

 

「そういえば戦車から逃げ出しちゃったんだよね、あの子たち」

 

 これで戦車が楽しいだけじゃないってわかったはずだろ、そのあとをどうするかはあいつら次第だな。

 

「じゃあ比企谷ちゃんが聖グロに本気で戦ってって頼んだのも……」

 

「どうせやるなら本気の相手の方がいいと思いましてね」

 

「あら、わたくしたちのことは遊びだったのね、八幡さん」

 

 それって試合のことを言ってるんですよね? ダージリンさん。そしてなんでわざわざ名前呼びなんて意味ありげにしてくるんすか。ちゃんと主語を付けてもらわないと、こっちには早とちりするやつがいるんですから勘弁してくださいよ。

 

「なっ!比企谷、ちょっとどういうことなの!」

 

 ほらさっそく食いついてきたよ、武部のやつ。

 

「いやなんにもないから。ダージリンさんもなにか言ってくださいよ」

 

「あらそうだったかしら? たしか……、わたくしたちのボディーガード兼マネージャーになってくださるんじゃなくって?」

 

 ちょっ…何言ってんすかダージリンさん。しかもビミョーに間違ってるようで間違っていないのでなおさら質が悪い。

 俺が言ったのはたしかだと思うが、それはあのチャラ男ズを追い払うための方便だったのはダージリンさんもわかってるだろうに。なんでわざわざ煽るようなことするんだこの人は?大人びているように見えて実は子供っぽい気がするんだが……。

 

「え……。八幡くん、大洗からいなくなるの?」

 

 そして西住が勘違いしてるよ。

 

「いやいやないから……。そもそも聖グロは女子校だし男の俺が入れるわけないだろ?」

 

「なに比企谷、入れたら聖グロに行くわけ?」

 

 おいおい武部、なんでそんなに突っかかってくるの?

 

「そういうことならわたくしが理事長に直談判すればどうにでもなりますわよ?」

 

 いかん、なんか俺が聖グロに行く流れになってるぞ。

 

「いえ、結構です……。俺は大洗が気に入ってるんで」

 

 まじ勘弁してくれ、俺が女子校になんて行った日には違う意味でキャーキャー言われて、登校初日にして引きこもる自信があるよ?

 ぼっちに無理をさせてはいけない、女子校なんてもってのほかだ。

 

「そう……それなら仕方ないわね……」

 

 なんでそんなに残念そうにするの?一瞬ちょっとだけなら、とか思っちゃったよ。いやいや冷静になれ俺、ちょっともクソもないからアウトだから。はっ!まさかこれもダージリンさんの策略なのか?

 

「比企谷……」

 

「な、なんでしょうか武部さん」

 

 いかん、思わず敬語になってしまった。

 

「ちょっと行ってもいいかなぁ、とか思ってないでしょうね」

 

 なんでこいつ俺の思考をそんなに読めるの?いやいや俺ってそんなに顔に出てやすいのか?小学生の頃にとなりの席の女の子に突然、比企谷くんってなに考えてるかわからなくて怖いからあまりしゃべりかけないでね、と言われた程なんだが、おかしいな。

 

「大丈夫だ、小町がいる限り俺は大洗にいる」

 

「それって小町ちゃんがいなかったら大洗にいないってことじゃん……」

 

 ん? 言われてみるとそうだな。

 

「まあ、大丈夫だろ、気にするな。小町も大洗から動く気もないらしいし」

 

「それで話が随分それてしまったのだけど、彼を借りてよろしくて?」

 

 そういや最初そんなことで始まったんだなこの話。てか話をそらした張本人が何言ってんですかダージリンさん。

 

「いや……」

 

 そして俺が断ろうとしたら。

 

「どうぞどうぞ、好きにしてもらっちゃっていいですよ」

 

 会長さん、なんであなたが答えてるんですか、というかダージリンさんも普通に会長さんに許可とろうとしてるし。せめて俺の意見ぐらい聞いてくださいよ。ボッチにだって人権はあるんですよ?わかってます?

 

「とりあえず西住ちゃんたちは今からあんこう踊りだからね」

 

 西住たちは今からあんこう踊り。

 

「じゃあ八幡さんはわたくしたちについてきてくださるかしら」

 

 そして俺はダージリンさんたちに連行されると。

 これもうなに言ってもダメそうだな。はあ、仕方ないあきらめよう。

 

 そして冒頭に戻るわけだ。

 

「みほさんたちはあんな格好で踊って恥ずかしくなのかしら?」

 

「や、恥ずかしいに決まってるじゃないですか。あれを着て踊るのが恥ずかしくないやつは痴女かよっぽどのあんこう好きしかいませんて」

 

 だってあれだぜ。あんこう踊りはぴっちぴちのピンクのスーツを身にまとい、へんてこなあんこうを模した帽子を被って踊らないといけないのだ。しかもそのあんこうの帽子なんだが動きにあわせて目が動くようになっていて、ずっと見ているとなんか不安になってくるという謎さを秘めている。

 

「というか、そろそろ俺を呼んだわけを教えてくれませんか?」

 

「あなたに聞きたいことがいくつかと、それとお礼をと思って」

 

「俺に聞きたいことですか? 言っときますけど銀行の暗証番号は教えませんよ?」

 

「あ、あなたはいったいわたくしをなんだと思っているのかしら」

 

「強いて言うなら詐欺師ですかね?」

 

「さ、詐欺師……」

 

「ぷっ!」

 

 どうやら俺の冗談はオレンジペコのツボにヒットしたらしく、しばらくの間笑い続けていた。

 

「す、すいません……。あまりにもおかしなことをおっしゃるのでつい」

 

「まあ冗談はさておいて、聞きたいことってなんですか?」

 

「詐欺師とは話さないほうがいいのではなくって?」

 

 なんだろう、すごく根に持ってるよダージリンさん。

 この人のイメージがどんどん変わっていくんだが、最初は本物のお嬢様かと思っていたんだが今はそうでもない気がする。気がするだけであってお嬢様に変わりはないんだが。

 

「まあまあダージリン様、こちらが呼んだにも関わらず放置したとあっては我が聖グロリアーナの品性が疑われてしまいます。あと八幡さんもちゃんと謝ってくださいね?」

 

 しっかりしてるなオレンジペコ、もう長いからペコでいいか。小町もこれくらいしっかりしていてくれたら兄として不安もなにもないんだが、兄の俺が言うのもなんだがいかんせん小町はアホの子である。人との関りと戦車道はそつなくこなすのだが、どうも勉強が苦手らしい。

 とりあえずダージリンさんに謝るか。

 

「すいませんでした、ダージリンさん」

 

「いえ、こちらも少々ムキになりすぎましたわ」

 

「ダージリン様はいつもはこんな感じではないんですよ?」

 

 そうペコが俺の耳元でささやいてきたのだが、ちょっと顔が近すぎません?あれか最初の時の意趣返しか?

 やるのはいいんだが顔が赤くなるならやめとけばいいのにペコのやつ。

 

「それであなたに聞きたいことなんですけど」

 

「なんですか?」

 

「比企谷 小町さんとあなたは兄妹だったりするのかしら?」

 

 小町のやつまじで有名だな。

 

「ええ、そうですけど」

 

「やっぱり。では小町さんの戦い方の基本になっているのは島田流で間違いないのね?」

 

「そうなりますね」

 

「あなた、小町さんと戦車道をやったことはあるのかしら?」

 

「それはないですね。あるとしたら子供の頃にボード盤のシミュレーションゲームをやってたぐらいで」

 

「なるほどそういうことね」

 

 どういうことなんだろうか? 俺にはさっぱりだな。

 ダージリンさんは一人納得しているが、なんのこっちゃ。

 

「ところで八幡さん、我が聖グロリアーナに本気で来る気はないかしら?」

 

「なんでそんなに俺をそっちに入れようとするんですか?」

 

「そうね。わたくしがあなたを気に入ったからでしょうね」

 

 なんともうれしいことを言ってくれるもんだ、まあそれがホントだったらな。

 

「ホントの目的は小町を聖グロに入れることなんでしょ? ダージリンさん」

 

「あら、どうしてそう思うのかしら?」

 

「どうしてもなにも、俺を聖グロに入れるメリットがそれぐらいしかないんですよね」

 

 さっき俺は小町がいるから大洗にいると言ったが、それが逆なのである。

 小町のやつが俺を追って大洗にまで来ているのだ。

 だってもともと千葉の方の学校に行く予定だったのにわざわざこっちを選んだ理由を聞いたら「お兄ちゃんがいるからだよ、あ…今の小町的にポイント高い♪」だそうだ。

 まあ真意はわからんがそういうわけで小町が大洗にいる。それといろいろな高校から是非うちに来てくれと言われてるんだがすべて「兄がいないのでお断りします」といっていたりする。

 いや小町さんよ、俺を理由で断るのやめようか。その度に親父が親の敵でも見るような目で俺をみてくるんだぞ?最初は俺もうれしかったのだが理由を知ってからはそうじゃなくなったのだ。

 毎回断る理由を考えるのがめんどくさい、だそうだ。

 そこはせめて兄の前では理由を言わないでほしかったよ小町。

 たぶんそのことをダージリンさんは知っていて、俺を入れたら小町もついてくると考えたのだろう。

 

「ふふっ、あなたと話していると退屈しませんわね」

 

「……それはどうも」

 

「さあ紅茶が冷めてしまいますわ。もちろん冷めてもおいしいですが、どうせ飲むのなら温かいうちにどうぞ召し上がれ」

 

 俺はダージリンさんに勧められた紅茶を飲む。

 

「うまいっすね、これ」

 

 こんなうまい紅茶を飲んだのは初めてだな、たしか紅茶は茶葉によって淹れ方がいろいろ変わるんだっけか?

 もしかして聖グロの生徒は全員すべての紅茶の入れ方をマスターしてるとかないよな?さすがにそれはないと思いたい。いや、もしかすると必修科目でありそうだな。

 

「それでは八幡さん、あなたのことを話してくださる?」

 

「え?俺のことですか?言っときますが面白いことなんてありませんよ?」

 

 なんで俺のことを聞きたがるのかはわからないが、ボッチの一生を話しても退屈だと思うんだが。

 

「それを判断するのはわたくしですわ。……それにペコも聞きたいでしょ?彼の話」

 

「たしかに興味はありますわね」

 

 この二人は俺なんかの何がそんなに気になるのだろうか?まあいいか。

 

「ホントに面白いことなんてないですから、あとから文句を言うのは無しですよ?」

 

「ええ、わかってますわ」

 

「そういえばどこから話せばいいんですか?」

 

「そうね、小学生のころのあなたの話も聞いてみたいけど、時間もそんなにありませんし、あなたが大洗学園に入ったところからでお願いしようかしら」

 

 となると一年の頃はなにもしてないから、二年の戦車道が始まったころからか、話すとしたら。

 ダージリンさんとペコにこれまでのことをかいつまんで説明した。

 

「なるほど……、大洗学園にそのような事情が」

 

 ダージリンさんたちは人に言いふらすようには見えなかったので大洗学園の事情も話している。

 

「廃校を回避するために戦車道の全国大会で優勝…でも言葉で言うほど簡単ではないことは承知なんでしょ?」

 

「そうですね……。まあ、だからといって当たった時に手加減してくれなんて言わないんで気にしないでいいですよ」

 

「それだとそちらが不利になるのではなくて?」

 

「どのみちそんなことしてもらって勝っても意味ないですし、そんなんじゃ結局どこかで負けますしね」

 

 そういって紅茶を飲もうとしたのだが、いつのまにか飲み干していたようだ。

 

「紅茶が空のようね、おかわりをおつぎしましょうか?」

 

「いえ、俺にはこいつがあるんで」

 

 俺は自分のカバンからいつも携帯しているMAXコーヒーを取り出す。

 たしかにダージリンさんたちが淹れてくれた紅茶はうまかったのだが、それでもこいつが一番だな。

 

「それはなんですか八幡さん?」

 

 ペコが俺が取り出したものが気になったのか、そう聞いてくる。

 

「ん?これか?これはMAXコーヒーといって俺が一番愛している飲み物といっても過言ではない」

 

「そ、そんなにですか……」

 

 あれ?なぜだかペコさんが若干ひいてらっしゃる。なにかおかしいこと言ったか俺?

 

「気になるなら飲んでみるか?」

 

「いいのですか?それでは……」

 

 そしてペコは俺が取り出したMAXコーヒーを飲む。

 

「なんといったらいいんでしょうか不思議な甘さですね……この……、」

 

「MAXコーヒー」

 

「そのMAXコーヒーですけど、嫌いではないかもしれません」

 

 まじ?こんなとこでMAXコーヒー仲間が見つかるなんて今日はいい日なんじゃなかろうか?この調子でどんどん増えていけばいいんだが。

 

「あ、あの……」

 

「どうした?」

 

「い、いえ……そろそろ手を離してもらっても……」

 

 俺はうれしさのあまり無意識にペコの手を握っていたようだ。

 

「す、すまん、MAXコーヒー仲間が見つかってテンションがおかしくなってた」

 

 俺は慌てて握っていた手を離す。

 き、気まずい。小学校のころに先生をお母さんと呼んだことはないだろうか?今の気まずさはそんな感じだ。

 ハチマン、オウチ、カエル。

 いかん、あまりの気まずさに片言になってるよ。

 

「そろそろみほさんたちのあんこう踊りも終わるようだし、そろそろお開きにしましょうか」

 

 気まずい俺たちにダージリンさんが助け船を出してくれた。

 

「それもそうですね」

 

 今この波に乗らないと俺が気まずさで死んでしまう。

 

「いろいろお話が出来て楽しかったわ、でもペコはあまり男性に慣れてないのでほどほどにお願いね」

 

「だ、ダージリン様!」

 

「ペコもすまんかったな、じゃあ俺はこれで戻ります」

 

 

 ====

 

 

「慌ただしく去っていきましたわね、彼」

 

「そうですね」

 

「ペコ、もう大丈夫なのかしら?」

 

「か、からかわないでくださいダージリン様!」

 

「ふふっ、ごめんなさいね、ついペコが可愛らしくて」

 

「次に彼に会うとしたら戦車道の全国大会になるんでしょうか?」

 

「そういえばそのことを彼に聞くのを忘れていましたわね」

 

 まあ、問題はないでしょう。

 どうせ勝ち進んでいけばいずれは当たるでしょうし。

 






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