素晴らしき世界にて“防”は酔う   作:阿久間嬉嬉

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阿呆(カオス)な小ネタ
(※ネタ満載・キャラ崩壊注意!)



アクア「破魔魔法が完璧に利かないのなんて嫌だから見てばっかりで、洪水を起こして街の壁壊して……でも反省なんて全然していないんDA!
    大丈夫! 水の女神だよ。許されるもん♫ ニョーッホッホッホ!」
レシェイア「そう……ところでアタシの(コレ)を見てくれ、どうおもう?」
アクア「どうって―――ッ―――凄く、一撃必殺です…!

レシェイア「と言う訳で『ゆ゛る゛さ゛ん゛!゛!゛』

アクア「ちょ、ま、粉バナナこんな馬鹿なっ、逃げ―――」
ゆんゆん「駄目です逃がしません。是非、空中でバラバラに!」
アクア「HA☆NA☆SE!」
ゆんゆん「そして、退避ッッッッッッッッッッ!!」

アクア「―――ってぐはあっ!? ウボァーーーーーー!?」

 ゴロゴロ、ゴロリ

アクア「うがは、ひ、酷い目に―――」
クリス「いたいたアクアさぁん……なぁ、スケベしようや……?
アクア「待って!? 待って待ってちょっと待って!? クリスあんたそんなキャラじゃな」
クリス「私のドリル(意味深)は天を突くドリル(意味深)だっ!
    これが『フタエノキワミ!』

アクア「アッーーーーー!!!

ダクネス「駄、駄女神が死んだ!?」
めぐみん「この人でなし!!」



……と言う訳(どういう訳)で本編をどうぞ。

※皆さんは幾つ分かったでしょうか?



チンピラ騒ぎとパーティ交換

 睨み付ける様な眼で振り返り、カズマは静かに口を開く。

 

「……もう一度言ってみろ」

 

 カズマの怒りにあてられたか、雰囲気を察したのか……あるいは会話が気になるだけか。

 先程までの喧騒が嘘のように静まり返るギルドの中で、1つ声音が通り抜けて行く。

 

「ああ何度だって言ってやるよ! 上級職が三人も揃ってるパーティのクセして、荷物持ちの仕事如きを受けるってか? もうちょっと難易度高いのに手をつけろってんだよ! どうせお前が足引っ張って邪魔してんだろぉ?」

 

 男の飲み仲間らしき者達と共に、余り良い感情の窺えない嗤い声を上げる、金髪のチンピラ男。

 明らかに酔っ払っており半分勢い任せにカズマへからんでいるらしい。

 そのあんまりな言い分に、カズマの内心へ怒りがこみ上げ……しかしこの喧嘩を買っても良い事はないと、グッと我慢する。

 

(それに、間違った事ばっかじゃない。最弱職は事実だからな)

 

 あと少し良い立ち回りができれば、今よりも多額の報奨金を得られていた可能性は、無きにしも非ず。

 だからこそカズマは挑発には乗らなかった。

 言っている事自体は正しく、言い返す事など何も無いから。

 

 ……しかし男はその複雑な沈黙を委縮したと取ったか、しつこくバカにしてくる。

 

「オイオイ? 何か言い返せよ最弱職さんよぉ? ……まあ無理だよなぁ、何せ最弱なんだからな! その癖に美女に美少女と良い女三人に囲まれてハーレム気取りたぁ―――毎日良い思いしてんだろ-なぁー! あーあー羨ましくて仕方ねぇーなぁー!」

 

 ギルドが爆笑の渦に巻き込まれる中で、カズマは静かに拳を握っていた。

 こんな風に責めた所で何かが変わる訳でもない。

 要は、傍目からはラッキーな状況に居るカズマが羨ましく、ネチネチ嫌味を言っているに過ぎないのだ。

 

 それに嗤う人物ばかりではなく、中にはカズマ達が日頃どれだけ苦労しているかと、注意している冒険者も少しだが見受けられる。

 その意見自体は笑い飛ばされてしまうが……されどそういう人達が居るというだけで、カズマは少し心が軽くなった。

 

「カズマ、あんな奴など放っておけ。一利も無いのだ、捨て置くのが最も良い」

「そうですよ、ダクネスの言う通りです。私達は気にしませんから」

「みっともなく妬いてんのよ、あの酔っ払い。聞くだけ無駄なんだから、ほっときなさいな」

 

 ダクネスが言い切り、めぐみんが賛同し、アクアが止めに入る。

 彼女等の言う通り、ムキになって相手するだけ時間の無駄なのだから、すぐさま意識から外すべきだろう。

 

「カズマ……らいじょ~ぶ?」

 

 喜と苦と嘲りが混じるそんな中……レシェイアは胸の下で腕を組み、何とも言えない複雑な表情で、耐え続けるカズマの顔を覗き込んでいる。

 カップ酒をテーブルに置いたまま一口も飲んではいない。

 チンピラへの怒りはあるものの、どうやらそれよりカズマ自身が気になる様子。

 

 しかしそれが皮切りとなったか、その酔っ払いが今度はレシェイアを指さす。

 

「しかも酒臭ぇし同じ最弱職だけど、もう一人女をはべらせちゃってよぉ? ああ、ノリと酒と強者にたかる弱い者同士で意気投合したってか? 女運が良くてうらやましいねぇ最弱職? ああホント幸せ者だなぁ?」

 

 レシェイアも言い分には眉根を少しひそめたが、同時にチンピラが気付くか気付かないかのギリギリな高さでカズマを手で制して、『こんな事で怒ることない』と横眼で訴えかけてもいた。

 

(そうだ。耐えろ、コイツは典型的な三下見たいな奴だ、相手にする必要はないんだ……!)

 

 無意味に激昂してどうすると、そう考え必死で怒りをこらえるカズマ。

 しかし―――。

 

「ホント羨ましくて仕方ねぇなぁ! 良い女を三人も引き連れてハーレムで、上級職に負んぶに抱っこで楽しやがってよぉ……かぁー! うーらーやーまーしーなぁー! ほんと羨ましくて仕方ねぇーなー! おい苦労知らずの最弱職よぉ、俺と代わってくれよ?」

 

 彼の最後の一言だけは、我慢出来なかった。『ある一言』を聞き逃す訳にはいかなかった。

 とうとうカズマは立ち上がり、思い切り息を吸い、そして……解き放つ。

 

 

 

「そんなもん、大喜びで代わってやるよぉおぉぉおお!!」

 

 ……余りにも予想外なその絶叫に、ギルドの中が再び静まり返った。

 目の前のチンピラは勿論の事、後方のテーブルの者達も、先まで嗤っていた見知らぬ冒険者達も、カズマ達を庇っていた冒険者達も―――アクアやめぐみんやダクネスすら例外なく、皆漏れなく口を閉ざす。

 

「…………」

 

 正確に言うならある女性だけ何やらそっぽをむいていた。

 空気も読まずに一人、 (一_一) と化したやるせない顔でカップ酒を一口すする。

 

(うん……まあそうだろうね)

 

 言わずもがな、レシェイアだ。何とも言えない表情でカズマパーティを見ていたのは、こうなる事態を半ば予想していたからか。

 

 なぜ止めなかったのかは簡単。

 先までの嫌味はカズマに対しての物だし、中半まで自分は入っていない部外者に近く、いきり立つなと制した側でもある。

 

 また酔っ払い相手なら自分も同じ立ち位置な為に、余計にややこしくなるのは必定(ひつじょう)で……だからこそ黙っていたのだろう。

 ―――その結果が現状の『コレ』なのだが。

 

「……ちょっと待ってくれ。えっと……な、なあ、お前さっき何て言ったんだ?」

 

 激昂する事は予測出来ても、流石に煩い誰が代わってやるか! ではなく『喜んで代わってやろうじゃないか!』と言われるのは予想の外だった模様。

 だからかマヌケな顔でジョッキを片手に、若干ながら及び腰となって聞いてきたチンピラ。対するカズマは、湧き出した怒りそのままに再び言葉を叩き付けた。

 

「ああ何度だって言ってやるよ! 代わってやるって言ったんだ! 喜んでな!

「か、カズマさん……?」

 

 漸くアクアが我に返って声を掛けるが、カズマは全く話を聞かず、怒鳴り続ける。

 

「舐めた事ぬかすなよ!! 確かに俺は最弱職さ、それは認める、認めざるを得ない! ……けどなその後だ、その後お前なんつった!?」

「そ、その後……えっと、アレか? いい女三人連れて囲んで、ハーレム気取りかって言う……」

「いい女!? 三人!? ハーレムだってか!?」

 

 思い切りテーブルへ叩き付けられた拳の奏でる音は余りに大きく、ギルド内のほぼ全員がビクリと肩を震わせる。

 

「オイ教えろよチンピラ野郎、俺には現在進行形で酒に酔ってる一人しか見当たらないぞ!? 三人じゃねぇだろ、一人だけじゃねぇかよ! なぁ何処にいい女が三人も居るんだ!?

「「「あ、あれっ!?」」」

 

 アクア、めぐみん、ダクネスが己を指差しながら呆気に取られた。

 

「……ニ、ニャハハ~……」

 

 レシェイアが頬を掻きつつ少し視線を逸らした。

 

「教えやがれコノ野郎! 何処に居るんだよ良い女!? お前の目に映ってるなら是非とも紹介してくれよ!! こんな俺が羨ましいとか戯言吐ける位にいい女三人は一体何処なんだよ!?」

「あの、その……お、お前の後ろに……」

「俺の後ろには一人しかいないっつってんだろうが!!」

「あ、あの~……」

 

 パーティを代表してアクアが手を上げるものの、カズマは尚も無視をしてチンピラの胸倉を掴み上げ続ける。

 

「しかもその後! その後もなんつった!! 上級職に負んぶに抱っこで楽しやがって!? 挙句に苦労知らず!? しかもレシェイアが強者にたかってるだぁ!?」

「……いや、レシェイアの件は事実だろ? だっていっつも酔っ払ってるし、酒絡みの私情でちっちゃなクエスト受けてばっかで……」

 

 チンピラの言い分を受けたカズマの顔に更なる青筋が刻み込まれた。

 

「この街に来たばっかの俺に酒奢ってくれて! その後もお金無いからって度々メシ奢って! 勘違いの決闘なのに事後処理は俺の得になるように提案してくれて! 魔王幹部戦の時に被った俺等の借金の一部を自分の報酬で天引して! 寒い時には高い薪を恵んでくれて! 俺が怪我したときは一々文句言うウチのプリーストに対して本気で怒って! その晩は金も無いし怪我してたからってまたご飯代肩代わりしてくれて!

 挙句、逃げて当然の危険な各上相手に何の見返りも求めず好意から助けに来てくれる!!

 教えろよクソチンピラ!! これのどこが強者にたかる行いなんだ!? あぁっ!?」

 

 彼の口から飛び出した余りの行いに、チンピラは開いた口がふさがらない。

 カズマもカズマで、如何もレシェイアが隠したがっているらしい事を尊重し、彼女の実力に対する怪しい部分は伏せたものの、それでも驚きを生むには充分だ。

 

 あんぐり口を開けていたチンピラは……やがて、思い切りカズマへ、そしてレシェイアへ向けても頭を下げた。

 

「すまん! その事に関してはマジですまん! まさかそんなに良い人だとは思わなかった!! こればっかりは俺が悪いわ!! レシェイア超良い人だな!?」

「だろ!? いい人だろ!? 変な意味無しで文字通りの“いい女”だろ!?」

「……そ、そうやって連呼されると、流石に……ハ、ハハハ……」

「「「…………」」」

 

 最早会話の中にも出なくなり、絶句する三人。

 恐らく酒とは別の理由で、より赤くなる酔っ払い。

 

 レシェイアは一人でクエストをこなしており、身体能力が高いだろうことは、ギルド内でも既に把握され済み。

 なので、カズマの思惑通り『カズマ達を連れて強敵から逃げた』と思っているのか、皆驚愕こそするがその後は納得したように頷いている。

 

「で、でもな? レシェイアの件はマジで済まなかったけど、お前のパーティの件は別だ。傍から見るとよ、お前は結構恵まれているんだよ。上級職が三人も居るんだぜ?」

「まあ、それだけ見りゃあそうだろうけどよ……」 

 

 冷静になったお陰か、チンピラの言いたい事をカズマもそれとなく理解していた。

 

 上級職なのは言わずもがなで、外見はとても整っているし、何より魔王幹部討伐の名声もある為、傍目から見ればとっても優秀なパーティなのだ。

 そしてそんな中……1人場違いな最弱職が混じり、加えて高確率で一緒に酔いどれが居る。

 彼等を見れば先のチンピラの意見こそ、ある意味当然かもしれない。

 

「それに代わってくれるって言ったな? さっき言ったよな? なら一日だけでいい、マジで代わってくれないか? ……なぁ! お前らも良いだろ!?」

 

 チンピラの後方にいたパーティの仲間らしき者達は、己々の反応を見せながらに立ち上がった。

 

「まぁ、別に良いけどな……今日は雑魚のゴブリン狩りだし」

「私も文句無いけどさ、ダスト、アンタ居心地いいからってもう戻らないとか言い出すの止めてよ?」

「俺も別にかまわん。駆け出し一人増えようが、ゴブリン相手なら困る事も無い。代わりにだ……土産話、期待してるぞ?」

 

 どうやら別に反対意見は無い様子。

 落ち着いた事で、ここで漸くカズマパーティも会話が成立し始める。

 

「あのさ、私達の意見は通らないの?」

「通らない」

 

 ……だが即断での否定を見るに、ほぼ変わっていなかった。

 

「俺の名前はカズマ! 今日一日だけだが、どうかよろしく!」

「「「は、はぁ……?」」」

 

 ダスト、とそう呼ばれていたチンピラの仲間は、三人共に微妙な顔で頷く。

 同じダストもアクア達の方に混じり―――こうして、一日ばかりのパーティメンバー交換が幕を開けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺の名はテイラー、上級職のクルセイダーをやっている。このパーティでは俺がリーダーだから、俺の言う事をちゃんと聞いてくれよ?」

「ああ勿論だ。というか新鮮でいいな、そういうの。普段は俺が指示する立場だし」

「……あ、あの上級職の中で、お前が指示する立場なのか?」

「そうだけど」

「「「…………」」」

「……自己紹介の続きは?」

「あっ……オホン! 私の名前はリーン、ウィザードよ。中級魔法までは使えるし、ゴブリンなら楽勝よ! 安心してね新人君!」

「俺の名前はキースってんだ。職業はアーチャーで、コレでも狙撃の腕には自信ありだ! 頼ってくれていいぜ?」

「おう、宜しく!」

 

 

「で、自己紹介は終わったけど、何のクエストに行くのよダスト?」

「あーっと……ゴブリンにでも行こうかと」

「えー? そんなザコ相手じゃあ不満なんですけど。もっと、私達の有り難さがどのくらいかって示さないといけないし」

「そうですね。もう少し強敵である方が、我が魔法の強さを改めて証明できるのです!」

「い、いやそりゃあ、アークプリーストにアークウィザード、クルセイダーと遠近援護が全部揃ったアンタラからすればどんなクエストでも楽勝だろうけど、俺のレベルもあるしさ。ここは無難に一つ」

「しょーがないわねぇ」

「すんません……と、ところであんた、鎧も武器も無いけど大丈夫なのか?」

「心配無用だ。硬さには自信ありだし、それにどうせ武器を持っていても当たらんからな」

「……当たらん? ……え?」

 

 

「むぅ……」

 

 そんな確りした一組と、ちょっと不安の残る一組を見ながら、レシェイアは酒を飲み飲み考えていた。

 

(どっちに付くべきかなぁ……)

 

 どうも、レシェイアは両パーティのどちらかに付いて行く気らしい。

 恐らく後ろからコッソリとつけるのだろうが、しかし新・カズマパーティか新・ダストパーティのどちらにするかで、迷っている様子だ。

 

 カズマは怪我などご法度で、激しい運動も続き過ぎれば血が足りないネックが表に出て来てしまう。故、まだ少しは支える必要性がある。

 ダストもダストで、流石にカズマを馬鹿にした“報い”を受けるまでは待つものの、しかし張り切り過ぎて滅茶苦茶になるかもしれない三人に不安を抱いている。

 

 ……やがて、レシェイアは答えをだした。

 

「チンピラの方にしよっか!」

 

 カズマの方は幾分か確りしたパーティ構成で、しかも三人共良識あるメンバーなので、異変があれば気が付けるし、ちゃんと労わってくれるだろう。

 

 つまりというか、やはり問題はダストの方なのだ。

 今後の冒険に支障が出ては、酒飲んで絡んで夢見てパーティへ入っただけの彼がいたたまれない。

 痛い目に会う必要性こそあれど、過剰な報復は慎むべきだろう。

 

(さっきの流れで、カズマが少なからず蔑視される可能性、あるしねぇ……)

 

 事と場合に寄ってはカズマの今後に支障が出るかもしれない。

 なによりステータスが高いらしいアクアはともかく、魔法を撃つと動けなくなるめぐみんや、鎧も武器も無いダクネスに不安が募る。

 

 ……無論、彼女等の駄目さの方で。

 

「それじゃあいくぞ。ゴブリンとは言えど、油断せず確りとな」

「おう、勿論だぜ」

「とーぜん! じゃ、行くよ新入り君!」

「うっし……荷物持ち頑張ります!」

「其処までかしこまらなくて良いってば」

 

 

「……よっし、それじゃあ行きますか!」

「見てなさいよ! ゴブリンをメッチャ苦茶狩りまくって、アクア様有りと見せつけてやるんだから! あんなザコぐらい指さき一つでダウンよ!」

「我が魔法なら一撃で、多数のゴブリンを仕留められるでしょう……故に、問題など皆無です!」

「鎧が無くとも立派に務めを果たすさ! ……それに……ハァ……ハァ……♡

「っはぁ、やっぱ頼もしいぜ!」

 

 

「…………」

 

 言いながら出て行った両パーティの足音を聞きながら、それが遠ざかり聞こえなくなった所を見計らって、レシェイアも立つ。

 

(ゴブリン狩りの際の注意点て、確か『数が多い事』だけじゃあ無かったしね……)

 

 ふぃ~、と酒臭い息をひとつ吐いて、レシェイアもまたギルドの扉を開けるのだった。

 


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