素晴らしき世界にて“防”は酔う   作:阿久間嬉嬉

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ぼっちなあの子が、チラッとだけ登場します。
そして、何やら怪しげな“影”も……?

では本編をどうぞ。


雪原の主、到来

 粉雪降りしきる林道沿い。

 雪の純白と樹木の濃緑に染まった平原を、一つの影が疾駆する。

 

「……っ!」

 

 馬に勝るとも劣らない速度を誇り進むその影。

 周りの景色を追い越し、また追い越し、さらに追い越して只管(ひたすら)に突っ走っていく。

 

 “初心者殺し” 等モンスターの姿などは当然ながら見えるものの、しかしその影に追い付く事など出来ない。

 また邪魔をしようとしても、去り際に蹴り飛ばされ、また軽い打撃音と共に吹き飛ばされて行くばかりだ。

 ……かと思えば傍らを突っ切り、知らぬ存ぜぬと疾走する。

 

「――――――」

 

 何処へと向かうのか。何をすべく向かうのか。

 目付きこそ険しく見えるが、走りゆく“影”の持つ表情からでは感情が読み取り辛く、それが向かう先にあるモノへの『怒り』なのか『焦り』なのかが判別できない。

 

 グッと唇をかみしめ、何も無い虚空の果てを睨めつけながらも、何かを願うような表情のまま一際崩さない。

 すると―――運が悪いのか、“影”の前へと新たな影……一匹のモンスターが現れる。

 

 

「グルルルルゥ……!」

 

 熊型モンスターの一種、『一撃熊』だ。

 “一撃”の字を冠するだけありその腕力は筆舌に尽くしがたく、強者ひしめく雪原でなお堂々闊歩できるほどに強い。

 印象深さから、冬のモンスターの代名詞としても知られていた。

 

 疾駆する影の行く手を阻むかのように現れた一撃熊は、好戦的な空気を醸し出すように爪を打ち鳴らし、『餌』とみたその影を前に涎を垂らして仁王立ちしている。

 

 舐められ切っている事を差し引いても、尚威圧感のある大熊を前にして―――されど、影は走行を止めようとはしない。

 

「―――――」

 

 それどころか苛立ったかのように足取りを険しくし、左腕を後方へ振りかぶった。

 まさか……この『一撃熊』と、素手でやり合おうとでも言うのだろうか。

 

 脅えの色すら見せない “影” に一撃熊もプライドを刺激されたらしく、ナイフと同等以上に鋭そうな爪をギラつかせ、剛腕を振りかぶり薙ぎ払う準備をしている。

 あと残り8m……6m……3……2……1m弱まで近付いた、その瞬間。

 

「!」

「ガ……ァ?」

 

 突如として影はまたもや加速し、一撃熊の脇をすり抜けて、着地と同時にダッシュ。

 一撃熊と闘う事無くやり過ごしてしまった。

 その表情は『してやったり』とばかりにニヤけており、つまり一撃熊はまんまと嵌められたのだ。

 

「ガアアアアァアアァ!!」

 

 当然、そんな事とはつゆ知らない一撃熊。

 自分に脅えたのだと血気を増して襲いかかろうとする……のだが、走り出してから数秒と経たずにトップスピードを打ち出し、追いすがれない。

 更に影は脇道へそれて曲がり、斜めに走り、自分を見失わせる作戦にも出た。

 

 そして……あっという間に一撃熊を、後方へと置き去りにして行ってしまった。

 

 ここまで片時も止まらず走り抜け、しかし速度を維持するとは、何者なのか。

 答える者など誰もおらず、静かなこの林道の中で……先へ存在するとある雪原の方面へと、影は駆け抜けて行った。

 

 

 

「……?」

 

 ……一体どうした事か。

 影は何の脈絡も無くほんの少しだけ立ち止まり、瞳を細めて素早く顔を右方へと向ける。

 予兆も見られなかった、この行動の意味は一体何か?

 

「…………」

 

 ―――実は瞳の向く先、目算で数百m先にある森林の中に、もう一つだけ“影”を見つけたのだ。

 

 距離は大分離れているが、今立ち止まった影とは逆方向に、さながら擦れ違う様にして進んで行った為すこし気になった模様だ。

 進む先は方角、方向、距離からして一撃熊が居た辺りが尤も近い。

 が、そこが目的地なのかそれとも偶然なのかは分からない。

 

 もう一つの影に、失踪していた影はなにかしらの違和感を覚えたのか数秒間だけ立ち止まって。

 

「カズマ……ッ!」

 

 すぐに(かぶり)を横へ振り、雪原目掛けて全力で走り始めた。

 

 ―――タイミングを図ったのように、遠目に見える影の周囲に()()()()が迸った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時は遡り―――レシェイアが酒場に現れる少し前

 

 

 

 場所はアクセルの街より離れた、とある雪原。

 降り積もった雪の影響は当然のこと、雪精がわんさといる所為で、ソレ以上に光を反射し真白と見える平原のなかにカズマ達は佇み、綿毛の如くフヨフヨ漂う雪精達を眺めていた。

 

 

(まあ、雪精の事は良いとしても……コイツはどうにかならんのか)

 

 …………されどその格好が少々おかしい。

 別に防寒着を着ていないとか、ハロウィン並の仮装をしているという訳ではなく―――そして厳密に言えば、アクアの姿だけが妙におかしかった。

 

「さあっい~っぱい取るわよ! 覚悟しなさいな、雪精たち!」

 

 何せ、虫一匹足りとも居ないだろうこの極寒の時期の、草も見えない雪原の上で、やる気満々に『虫取り網』を構えているのだから。

 

(普通に考えりゃ可笑しくて仕方ないだろうが……)

 

 コレにはカズマも予想が付かず、何故かと問い掛けたのは言うまでも無い。

 ……その際にアクアがバカにしたような顔をして挑発気味に嗤い、イラッとしたカズマに思い切り頬を引っ張られギリリと抓られたのもまた同様だ。

 

 しかしカズマが疑問に思うのは当然であり、逆にアクアが馬鹿にしたような顔をするのは、当たり前に対するお門違いとしか言いようがない。

 

 ……無論、コレにはちゃんと理由がある。

 それはアクアの腰に付いている、フラスコのような形の透明な空き瓶。

 何でもコレに雪精を詰めバッグに入れて持ち歩き、簡易的な冷蔵庫を自作しようという魂胆らしいのだ。

 確かに日頃お馬鹿な発想しかしないアクアにしては、とても優秀な考えと言えるだろう。

 

 

 冬の精霊だから春には消えるんじゃねぇの? という疑問はさて置いて。

 

 

 

 ―――さて改めて始まった雪精討伐だが、しかしカズマ達パーティにとって、これが中々に厄介だった。

 

「あ、クソッ! 逃げんなこの野郎!」

 

 遠目に眺めていたり、ただ近寄っただけではフワフワゆったり浮いている雪精も、攻撃しようとすれば本領発揮とばかりに素早い動きで逃げて行ってしまう。

 

 しかも本体が軽い所為で、下手に攻撃すると舞う紙吹雪の如く、風圧で奇妙な軌道を描いてしまうのだ。

 お陰で中々討伐できず、かなりに時間を掛けてもカズマは僅か三匹しか倒せて居ない。

 

「ていっ! ……あ、やった! やりました!」

 

 めぐみんも同様であり、小柄な為かそれともステータスが故か、カズマよりも倒している数が少ない。

 ……といってはいるのだが、一匹しとめたばかりなので、彼ともちょっとばかし比べられるかどうかは微妙なのだが。

 

「……こう言う時、自分の力が恨めしい……………」

 

 ダクネスは言わずもがな、なので割合する。

 

 

 そして意外にも一番戦果を上げているのが、網を持ってきていたアクアだ。

 

「やっ! やったわ見て見てカズマ! 六匹目をゲットよ!」

 

 虫取り網と言う武器ならぬ武器と、殺す気が端からないアクアの邪気無き気配の所為で、雪精は大して散らされる事も無くアッサリ捕まっている。

 調子よく七匹目までゲットし、嬉しそうに飛び跳ねるアクアを見て、自分も網か何かを持ってきたらよかったとカズマはそう思っていた。

 

 ……同時に、成果が振わなければ『捕まえた奴を討伐してやろう』と黒い事も考えていたのは、もう言うまでも無かろう。

 

 

 と……そんな漆黒の意思を見せていた、その時だった。

 

「あれ?」

 

 不意に森林の間をさまよう、外套を着た少女の姿が目に入った。

 

 杖を構えている事からして、如何やら彼女も冒険者である様子。

 上位職なのは間違いない。

 そしてここからでも分かる赤い目を見るに、もしかすると紅魔族なのかもしれない。

 

「なあめぐみん! あの子、知ってるか!?」

「あの子? あの子って……あの人ですか」

 

 めぐみんも、そして向こうの少女も気が付いたようで、確かめるべくと互いに距離を詰めてくる。

 

 そして互いの顔がちゃんと認識できるようになった……その瞬間だった。

 

「!? め、めぐみっ……ごめんなさい!」

「「あ」」

 

 何故か、顔を隠してピューッと逃げ去ってしまった。

 面識のない顔に逃げられたことで、場が数瞬フリーズする。

 

 数十秒後に漸く、カズマから沈黙を破った。

 

「……お前、あの子に何かしたんじゃないのか?」

「いえ。でも見知った仲ではあります。意外と面倒くさい性格をしているので……それよりも、雪精討伐です。余り厄介なモンスターに出張られても困りますよ」

「……そうだな」

 

 カズマは何処か釈然としない物を感じつつも、今は身の安全が第一だと、後で聞くことにして作業に戻った。

 

 

 

 

 ソコから更に、少しばかり時は立ち。

 

「こんにゃろ! ……よ、よっしゃ!」

「ダクネス! そっち行きましたそっち!」

「よし、私が役に立ってる!」

(……やっぱり気にしてるのね、当たらない事)

 

 初級魔法を活用して、一瞬脅えさせて拍を作り討伐するカズマ。

 

 ダクネスが追いたて、めぐみんが狩る共同での討伐を開始していた二人。

 

 呑気に追いながら、流石に逃げられるようになったものの、十匹目をゲットしたアクア。

 

 

「あーくそ! また逃げやがった!」

「ちょ、ちょこまかと、地味に嫌な奴等、ですね……!」

 

 そうして雪精霊狩りを続けて居たカズマ達。

 ……ではあったが、中々数が増えず結果が伴わないことに焦り始めていた。

 

 しつこい様だが、この冬の時期は強力なモンスター達がのさばる時期なので、白狼の群れや一撃熊にあえばひとたまりも無い。

 そこへご存じ残念ステータス三人組が、カズマの安全策を自意識過剰と自己満足の為にコレでもかと無視してくるので、難易度は軒並み一気に跳ね上がる。

 

 彼一人なら逃げ果せるのも容易いかもしれないが、仲間を初っ端から見捨てて逃亡する選択肢など、流石にカズマの中には存在していなかった。

 ……これ以前のクエストで何度も浮かびかけてはいたが。

 

「はぁ、はぁ……カズマ! 雪精が密集している辺りに、爆裂魔法を撃ち込んでも良いですか!?」

「む……」

 

 めぐみんの発言にカズマは暫し思考する。

 危険なモンスターがよってくる可能性と、雪精を纏めて討伐できる旨味を考慮に入れ―――敵感知スキルを併用すれば何とかなると、肯定の結論を降した。

 

「よし! やってやれ!」

「了解しましたっ! ……〝黒より暗く、闇より深き漆黒に―――」

 

 いつぞやの詠唱を唱え始めためぐみんの周りに、膨大な魔力が渦を巻き始める。

 

 雪精たちはその質量に脅えて遠方に逃げ去り固まったが、ソレは悪手と言うモノ。寧ろラッキーだとばかりに、カズマの顔もニヤけている。

 嬉々として唱えられた呪文はやがて完成を見……そして……!

 

「喰らうがいいっ! 我が最強魔法―――『エクスプロージョン』!!!」

 

 閃光を伴い、日に一度ばかりの強烈な爆炎が辺りを震撼させていく。

 

 それは雪に埋もれていた地面をむき出しにし、傍にあった雪をも溶かしつくし、白と黒の綺麗な二層を作り出す。

 

「九匹です! 九匹の討伐に成功しました!」

「よくやったぜ、めぐみん!」

 

 これで先の分も合わせ、百万数十エリス、黒い考えを実行してアクアの分を取り上げれば実に二百数十万エリスにも及ぶ額を手に入れられる事となる。

 

(……ホントに美味しい依頼だぜ。何で誰も受けないんだ?)

 

 このクエストの難易度が高い()()()()を知らないカズマは、そんな安易且つフラグ的な事を考え始めた。

 

 

 

 

 ―――正しくこれがフラグとなったが如く。

 

「来たか!」

 

 ソレが突然、彼らの目前へ堂々と顕現した。

 

 寒気団の擬人化の名を付けられた、つっこみどころ満載な、真の理由足る雪原の主。

 冬を統べし精霊の猛者が。

 

「……なんだありゃ」

 

 エンジン付きのスキー板でも履いているのか。

 雪原の上を高速で滑走してくるその猛者に、カズマは眼を丸くしている。

 

 先まで勝ち誇っていためぐみんは死体が如く静かに地に伏せ、アクアは表情を険しくし、ダクネスは嬉々として大剣を構え始めている。

 

 そして雪原の主がはっきりと認識できるようになった時……カズマは恐怖とは別の意味で、二の句が継げなくなった。

 

「カズマもニュースで聞いた事があるでしょう? この世界ではそれは単なる単語じゃないの、本当にこの時期になると出るのよ……!」

 

 寒色なる鎧兜。

 純白たる陣羽織。

 鞘をも鋭い太刀。

 アクアの次の言葉を待つカズマの、一抹の希望は―――

 

「雪精達の主! 雪原の王者! 冬季の猛者! 『冬将軍』の到来よ!!」

「あああああ人も食もモンスターも! この世界は皆大馬鹿すぎだっ!」

 

 ――――無残にも打ち砕かれた。

 

 

「ッ!!」

 

 同時に声ならぬ声を発し、冬将軍が抜き身の刀を振りかざしてくる。

 進路上にダクネスが割り込んで、待ってましたとばかりに剣を掲げた……のだが。

 

「あっ!? わ、わわ私の剣が!?」

 

 なんとアッサリ折られてしまった。

 ベルディアの猛攻ですら耐えきった彼女の防御を抜いて来るとなれば、戦闘続行など最早命知らずか絶望的と言う他あるまい。

 

 そうやってダクネスが何とか逃げ回っているのを見ながら、アクアは精霊について説明しだす。

 

「冬将軍は、国から賞金を掛けらた特別指定モンスター、厳密には冬の精霊ね。……そもそも精霊っていうのは元から決まった実態を持っていないの。出会った人達の抱くイメージと、自らが司るモノを合わせて、初めてこの世界に具現化できるってわけ」

 

 炎ならば荒々しさと強さを具現し、凶暴な蜥蜴や羽翼無きドラゴンに。

 水ならばその清らかなイメージから、乙女の姿やそのまんなま大魚に。

 

 ……水のイメージの際に、アクアが清らかで知的で美しいなどと戯言をほざいて称していたが、カズマはツッコミも入れられず真剣に聞き入る。

 

「でも冬は言わずもがな、モンスターが強いから人々は殆ど出歩かないの。だから精霊なんていなかったんだけど……」

「日本から来たチート持ち連中は別ってわけか」

「そういう事」

「つまりコイツは日本から来たどっかのクソバカが、この世界の法則も考えず『冬と言えば冬将軍だよね!』なんて考えたから生まれやがったのかよ! なんつーハタ迷惑だ!!」

 

 日本から送られてくる転生者達は、この世界に巣くう魔王を退治し世界を救う事が目的だ。

 

 されどこんなものを具現化させていたりと、どうもこの世界へ率先して迷惑をかけに来ているとしか思えない。

 これからもこんな人間が登場する可能性があると思うと、カズマじゃなくても頭が痛いだろう。

 

「どうすんだよ! ダクネスの防御も破られちまってるのに!」

 

 めぐみんの爆裂魔法はもう使えず、ダクネスの防御は役に立たず、アクアの破魔魔法は効果がなく、カズマは対抗手段そのものが存在しない。

 

「大丈夫! 将軍と言うからには日本、つまり《和》のイメージ! 立場上寛大だから、礼をつくせば良いのよ!」

「……つまり?」

DOGEZAよ! 平身低頭でDOGEZAをすれば、きっと許してくれるわ! さあ、早くカズマもDOGEZAを!」

「普通に土下座って言いやがれ! なんかお前の言い方、ローマ字をそのまんま持ち込んだエセ外国語みたいでモヤモヤするんだよ!!」

 

 そうは言いつつも、現在進行形で雪精を逃がしながら頭を下げて這い付く張るアクアを真似て、カズマもDOGE―――いやいや土下座を実行する。

 

 なるほど……確かに効果があった様で、冬将軍は彼らには目もくれなくなる。

 そのまま将軍の視線が彼等の左へと注がれた。

 

「って、何で立ってんだよダクネス! DO―――じゃない土下座しろって!」

「私とて聖騎士のプライドがある!! モンスター相手だぞ、簡単に頭を下げてなるモノか!!」

「いらんとこでいらん誇りを振りかざすな!」

「あ、あああ止めろ! 無理矢理頭を下げさせ……あふん……♡」

 

 何やら興奮し出したクルセイダーも漸く頭を下げ、事は万事解決に至った……筈だったのだ。

 しかし何故か冬将軍から段々と怒気が漏れ始めている。

 

 その視線の先に居るのは、カズマ。

 彼は気が付いていないが、まだ目線を上げられる余裕のあったアクアが、その怒りの発生元に気付く。

 

「カズマ! 武器! 武器捨てて!!」

「はっ……しまった、そうか……!」

 

 カズマの手には、未だ片手剣が握られたままだったのを。

 腰に刀をさしているのなら兎も角、武器を手にしたままでは確かに失礼にあたる。

 時代が変われど、その認識に違いなど存在しないだろう。

 ……なんと面倒くさい事か。

 

「よし! これで……」

 

 カズマは武器を投げる様にして捨て、これで冬将軍の件は収束を見た。

 

 

 

 ……かに思えた。

 

「え?」

 

 カズマの視界に、腰の刀へ手を添えた冬将軍の姿が映る。

 

「―――!」

 

 慌て過ぎ頭を上げてしまったからか、居合いの構えをとった冬将軍の目線は彼に注がれている。

 

「カズ―――」

 

 アクアの声が、かすかに聞こえる。

 僅かの覗いた白刃を目視したその瞬間、冬将軍の手がブレて―――

 

 

 

 

 

「”!?” ”オオオオオォォォォオオオオアアアアアアァァァァアアアァァア!?!?”」

 

 直後、()()()()()()()()()()()()()()()()、周囲諸共に吹き飛ばしたではないか。

 一番傍に居た冬将軍は、溜まらず仰け反り悲鳴を上げる。

 

「どわあああああぁぁぁあぁっ!?」

「いやあああああぁぁ!?」

「ちょ、行き成りこんな刺激が来るとはどんな幸福日和、じゃなくて厄日……!」

 

 傍にいた三人は漏れなく余波で吹っ飛ばされ、冬将軍は直前で回避したが躱しきれなかったか、雷により左腕と刀を消失させている。

 

 しかし、すぐさま冷気と共に復活し、カズマ達へと襲いかかってくる。

 ……絶対に勘違いしているとしか思えない。

 

「お、俺達じゃな……!!」

「そんな事言ってる場合じゃないわ! 何とか逃げないと!」

「しかし敵に背を見せるは聖騎士の誇り―――」

「もう良いっつうの! ―――ってヤバいヤバい、メッチャ速い!!」

 

 逃げる事もかなわない速度を前に、今度こそカズマ達の身体を白刃が捉える。

 

 

 

 

「はい終了ーっ!」

「“!? アアアァアッ!?”」

 

「「「へ?」」」

 

 ―――その前に、横から飛びこんできた、あの酔っ払いの蹴りが炸裂した。




ここから作者の個人的な意見を語るので、苦手な人はスルーを推奨します。







ハッキリ、もうズバッと言っちゃうと、このすば!世界へカズマよりも先に降り立った転生者達って、基本的に無知かつ無思慮な事しかしてない印象が強いです。

紅魔族の里に居た転生者と化典型的例ですからね。
 確かに同情すべき点もあるかもしれませんが、ソレにしたって酷過ぎる。
 日記に書かれていた内容からするに、どうも自分勝手過ぎる印象とか、後先や国の情勢も考慮しない面が根強く引っ掛かってて、半ば自業自得と言うかその所為で色々怒られていたんじゃないかと思います。
 更に、貰った材料と、資金を使って『ゲーム機を作る』とかもう……ね?
 しかも言い訳として『コレは世界を壊す兵器です』とか言い出して、
 挙句の果てにゲーム機の軌道音にビビる女性を心の中であざ笑うとか……。
 火薬撒いてから最大出力の『エクスプロージョン』ぶち込んだろうか!?
 その人達は国を潤し、魔王を倒す兵器を作ってくれるって、希望と期待を込めて渡してくれたって言うのに。
 ……デストロイヤー製作の時も、《報酬の前金、全部飲んじゃった》って、もうふざけてるとしか。
 で、挙句の果てに根性焼きでデストロイヤーで国を滅ぼす……もう開いた口がふさがらない……。
 アイデアが湧かない可能性、元手のない危険さとか、厄介事が嫌いな性分は自覚してるんなら、も少し先の事考えやがれやと。

 第二巻―――この二次で言う第二章に登場する冬将軍だって、
 《何故冬の精霊は、雪精ばかりで種類が少ないのか》
 《精霊の成り立ちとは、現れる条件とは何か》
 ……とかちゃんと転生者が考えていれば、そもそも登場し得なかったでしょうし。
 なのに『相互関係? そんな事より俺TUEEEだお!』とばかりに雪原に突っ込んで行って、後々で余りに大き過ぎる傷跡を残すとか……。
 おい、ちょっと誰か『信念(ケローネ)の遭防』持ってこい。勿論レシェイアと、あとウィズも込みで。

 ソレにしてみれば―――力がないから(と言うよりも特典である女神が役立たず)とはいえ、ちゃんと一拍置いて考えているカズマは、彼等と比べずとも随分マシな人だと思います。
 ……セクハラや性に関しての暴走とか、保身に走り過ぎての失敗とか、めぐみんやらアイリス関連の諸々はさて置いて……ね?


 これは個人的な観点、主観、考えと、そして転生者側の悪の面を強めた意見なので、善性の面を見れば当然変わりますし、皆さんは違う意見を持っていると思います。
 それに第三者視点だから、こうすれば良いって答えが出るだけで、現実だとそうはいかないでしょうし。
 普通に笑える場面でもありますしね。
 それに一から十まで彼等が悪いとも言いません。向こうの世界の人達にだって非は当然あります。
 ……大国ノイズの方々とか、紅魔族の方々とか。
 他には駄女神とか駄女神とか、あとは駄女神もですね。



―――さて、レシェイアが到着した訳ですが、しかし彼女は雷の力なんか持ってません。
なら、あの雷撃は一体何なのか?
……ではまた次回。

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