1.レシェイア:177㎝(?) ・作中の描写からして、それ以上の可能性あり
2.ダクネス:170㎝程 ・カズマより若干背が高い
3.カズマ:165㎝ ・作中で説明あり。昇順、降順で無ければ、基本彼を基準とする。
3.アクア:165㎝前後 ・カズマと同じぐらい
3.クリス:〃
6.ゆんゆん:160㎝代 ・カズマより低い?
7.めぐみん:150㎝代 ・『すばよう(仮)』一章時点ではぶっちぎりの “ロリ”
では、ちょっと短めな本編をどうぞ。
めぐみん 「おい、我が説明だけ可笑しな単語が混じっているじゃあないか」
本編をどうぞ。
めぐみん 「無視するな、爆裂魔法撃ちますよ」
アクアは悩んでいた。
どうしようもなく、悩んでいた。
「ゴラアッ!! 後3時間で閉店だってのに、まためっちゃ売れ残ってんじゃねぇか新入り!」
「だ、だだだだって散々お勧めしてもお客さんが買わないんだもの! ねえ可笑しいと思わない!? この美貌を見て食指が働かないなんておかしいわ! ねぇ聞いて! 私は悪くないの! 買わないお客さんが悪いの!」
―――バイト先で、コロッケが売れない事に。
「チラ見して逃げてっただけの客にいちゃもんつけて、その度に抜け出して道にトリモチまく嫌がらせしてりゃ誰だって寄り付かねぇだろうが!!」
「しかもこの前は客寄せで宴会芸披露して、その芸に使ったコロッケを全部カラフルな花火に変えやがったしな」
「その所為で必死扱いて各所に頭下げて、走り回ってそれで何とか黒字と赤字の境目って……」
まあその直接の原因は、上記のやり取りや今までの来歴の通りアクアに有る。
どうも生来のチンピラ気質に反省の無さで、日に日に状況は悪化の一途をたどっている模様だ。
それでも店長がクビにしない理由は二つあり―――アクアは“みてくれは” 良いので以前より人が立ち寄る回数が多くなったのも事実で、そしてもう一つは単純に人手が足りないのである。
更に付け加えるなら、アクアは別にこの店で働いて長い訳でもなく、何処かの店を転々としこの店に辿り着いている。
そして、たった二日でこの扱いと成り果てたのだ。
最初こそ大歓迎されたものの、それで調子に乗ったのか初日から困ったちゃん成分を存分に発揮し、昨日コロッケを買わないと貴方に罰当てるだの言いだし初めた時から、信頼はとっくに地に落ちていた。
……初日から見限られない分だけ、まだマシなのだろうか?
「あーもう! だってしょうがないじゃない!! 私は女神なのよ? こんな地味な雑用なんてやった事無いし知る訳ないじゃない、普通は下々の者たちに任せるんだから! 第一この水の女神たるアクア様がこんな所で油まみれになっていると知ったら、敬虔な可愛いアクシズ教徒達がどこまで落胆してしまうのか分から―――」
「落胆ならもうとっくにしてんだよ! アンタに! もうかなり! これ以上ない位! な!! しかもあんなタチ悪い連中の元締めとはいえ神を名乗るなんざ阿呆にも程があるだろうが! 脳内お花畑嘘吐き娘!」
「なっ……嘘じゃないわよ!! この艶やかな水色の髪、宝石の様な眼、澄んだ声、麗しい容姿、そして何よりも滲み出る神威!! 私が神じゃないなら何だって言うの!? ねぇ謝って! お花畑とか嘘吐きとか、タチ悪いとか言った事をほら、謝って!!」
そして取っ組み合いの結果が勃発。
元冒険者らしい店長も類稀なる術技と剛腕で知られ、そしてアクアもスペック任せとはいえそのステータスがチートレベル。
中々に良い勝負が繰り広げられ……されど誰も喜んでくれない、喜ばない。
店員達はもう慣れたとばかりに、己々の持ち場に戻ると作業へ取り掛り始めた。
いくら人員が足りないとは言っても、こんな理不尽を受け続けてもまだクビにしないあたり、店長はもしかするとカズマに近い気質を持っているのかもしれない。
……あちらは、半転生半転移時の特典として連れてきてしまった為、半ば傍へ置かざるを得ない状況に陥ってるだけであると、そう言えなくもないのだが。
「ねぇ~、コロッケ5個ちょーらい!」
「おい、ほら客だぞ!」
「あ……ハイいらっしゃいませ! コロッケ5個ですね、しかし、アクシズ級の入信所もお付けすれば後1個を無料でプラス―――」
「ニャハハハ、何時も
「レシェイア!? ……うっ、分かったわよ……」
何度も同じやり取りを繰り返しているらしく、常連さんとなっていたレシェイアには、その売れない理由の一つであろう押しつけは行わず、ガックリ肩を落としつつも途中で止めにした。
お釣りを貰い、片手にエールらしき酒の入ったジョッキを持って、もう片方の手には器用に5個のコロッケを抱え、湯気を挙げるそれらを美味しそうに頬張りながら遠ざかっていく。
サクッと軽い音が
決して豪快にではなく、飽くまで丁寧に……譲れない拘りでもあるのだろうか。
兎も角、酒と普通は交わらないその要素が見事に重なり合い、周囲の目をそれとなく惹いていた。
きゅるる~……と腹を鳴らしたアクアでさえも。
「ったく、あの姉ちゃんに感謝しろよ? お前さんが来てからここ毎日ちゃんと5、6個買ってくれてんだから……オイ、新入り。何してやがる」
「……ムグッ……ング…………ううん、何もしてないわよ?」
「下手糞な嘘つくんじゃねぇ!! 今コロッケ食ったろうがお前えぇっ!!」
「た、食べてないわよ!! 言いがかりも甚だしいわ! 幾らレシェイアが食べっぷりが良くて、美味しそうに見えたからって、例え三個だって抓む訳ないじゃない!! ……ゲフッ」
「自分でばらしてるだろうが、口に食べカスついてんだよ、げっぷの時点で信憑性ねぇよ、今回もアルバイト代は七割引きだからな!!」
それから半泣きで店長に取りすがるアクアに、しかし誰も同情はせず、結局七割引きで押し切られてしまった。
普通ならクビなのだし、コレでもまだ良い扱いな方であろう。
……彼は割と嘘でももしかしてでもなく、“カズマな” 気質を持っているのかもしれない。
「……あ、そう言えば……今更だけど……」
―――レシェイアと出会ったからだろうか。
余計な事をしなかった為か少しは売れ、それでも金銭の方へ意識が行って素直に調子に乗れないアクアの脳裏に……ふとよぎった物があった。
先日の『解呪』の事である。
「やっぱり如何考えても、アレって呪いが掛って無かったとしか思えないわよね? だって効果が無くて光らなかったし……でもダクネスには利いていたわ。彼女の方がクルセイダーなんだから耐性は上の筈…………ん?」
幾らアホの子でも、常識をコレでもかと無視されれば流石に違和感を抱くらしい。
少し気になってきたか、デュラハンとの小競り合いを詳細に思い出し始めた。
「レシェイアの職は冒険者なのよねー……ステータスは見た事無いけど、」
「すいません、野菜コロッケ二つ」
「はい230エリスです、ありがとうございまーす。―――弱いモンスターばっかり相手にしてるから大した事無いわ。カズマがキャベツへビンタしたとか何か言ってたけど、どうせヒキニートがキャベツに圧倒されて見間違えただけっと……よし、これは確定ね」
まず一つ解決(アクアの中では)。
次に思い浮かべるのは、自分の解呪魔法が効果を成さなかった件。
よーく頭を捻ってみて思い出せたのは、黒い光が纏わり付くのではなく、何故か弾けた光景だった。
「となると、つまりは…………」
「すんません、肉コロ一個」
「はい105エリスです、ありがとうでーす。―――ダクネスに邪魔されて弾かれたとみるべきよね! 流石に同じ呪いを同時に付与するなんて、意味が無いしキャパオーバーだもの。よしよし、これも確定っ」
更に一つ解決(アクアの中では)。
そして結局のところ(アクアの(ry)、何が問題なのかと言うと―――
「ん! 何も問題ないわね! と言う訳で終了~!」
「えっ!? コロッケ売り切れたんですか?」
「おいこら新入り! まだあるのに何勝手に帰ろうとしてんだ! ノルマはどうした!!」
「え、あ、ちょ、違うます! 違うます! 別に帰ろうとしてたわけじゃ……!」
言葉を素で噛み間違えるぐらいに慌てているアクア。
確かに今の件は全く彼女は悪くないのだが、普段の行いで信じてもらえていない。
結局こってり絞られ怒られた後に誤解だと分かり、ソコで止めとけばいいのに無駄な挑発をして喧嘩が再勃発し…………今日もまたコロッケが売れ残った。
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夕日が空を、茜色に染め上げる、夕刻頃。
魔王軍幹部であるデュラハンが、アクセルの街に抗議のため来訪してから、早数日は過ぎ……されど恐怖など町中には微塵も感じられない。
それもその筈―――アクアがトンデモスペックを発揮しあっさりと呪いを解いた事によって、もう呪いなんかこわくないという情報が流布されているからだ。
……と言う訳で、別段何もなく、穏やかな日々が流れている。
また、冒険者達の行動には、少しばかりの変化が生じ始めた。
パーティー間で協力しながら高難易度クエストを受けたり、今張り出されている依頼の中で数少ないであろう自分達にも出来る依頼を吟味し、自分の実力ギリギリなレベルのモンスターが出る街にへ赴く。
戦力に自身の無い物は、仕方なしにボランティアやバイトをやって、副業をこなして―――最後は冒険者達が酒びたりになっている以外は、街人達の生活も、街に流れる空気も、本当に何もかもが全く変わらぬ日和を過ごしていた。
「……きょ~も色々らぁねぇ~…ウイッ」
当然ながらレシェイアもそのうちの一人。
また貯金がそこそこ溜まっており、その金額はキャベツの報奨金と合わせれば、来月まで過ごす事すら何ら苦も無く容易なほど。
とはいえ平気なのは本人の見解で、だ。
ステータスの異常さを知っているルナは高難易度の中でも比較的受けやすい(あくまで高難易度の中で)モノを進めたり、漸く話を聞く事にこぎつけたカズマを酒宴の約束で無意識に受け流したり、こっそり後を付けて生きていたクリスを猫の如く抓んで転がしたり―――小さいながらも被害を生んでいた。
……三名とも諦めていないのも、言うまでも無い事だろうが。
「ふんふん~♫……ふんふんふん♫」
街外壁の上に座り込み、足をブラブラさせながら、茜色に染まった空を眺めつつスライスしたオリーブをポリポリ齧って、また口に含んだ分のお酒を飲み干した。
遂にオリーブチップを全て食べ終えたレシェイアは、ジンの入った瓶を口に咥え、そのまま傾けて飲み干すといった荒技を行使して見せる。
―――言うまでも無い事だが、現実では危険極まりないので、こんな真似など絶対に止めていただきたい。
途切れる事の無い上機嫌で、山脈へ隠れて行く太陽を見送りながら…………不意に、唐突に、足振りも鼻歌も体を揺らす所作も止まった。
「……」
先まで上空へと向けられていた彼女の視線は、数日前にアクセルの街へ襲来したデュラハンの住まう古城の方角へ落ち、引き寄せられ固まったかのようにその一点から目を離さない。
「アタシは、さ……“異邦人”何らよねぇ」
誰にともなく呟き、バックの中から二つ目となる青瓶の
「……虫がいーって言うか、自分勝手ってゆーか、絶対に帰るって決めてるからっれいうか……れもさぁ……」
静かな独白は、始まった時と同じようにピタリと止まり……吐きだされかけた何かを無理矢理飲み干すが如く、酒瓶の栓を指で押しあけて豪快に飲み干して行く。
「もうちょっと踏み込むべきかなぁ……」
その言葉に含まれる感情は、不安げな色とはまた違い、何かに対して悩む様な、しかし簡単に決断できる事ではないからこその、ある種の複雑さを湛える感情。
幾ら大酒飲みで、不本意な二つ名を受け入れるぐらい呑気な性格だとは言え、悩みはやっぱりあったようだ。
冒険者カードに記されているぶっちぎったステータスの事なのだろうか?
めぐみんの『エクスプロージョン』を何もかも超える、桁違いの一撃に有るのだろうか?
はたまた全く別の、他者からでは知る事も出来ない何かが齎しているのか?
しかしながら酔いから生まれる“不真面目”と、それに釣り合わぬ“真面目”が複雑に混合した表情は、真意を頑なに読み取らせてはくれない。
分かれど精々何かしら悩みがあるぐらい。
そんなもの、万人が抱いているが故、何の決定打にもなりはしない。
「んぅ……やっぱ明日考えよ♫ 一週間近く悩んでたら、頭がくらくらノンノンノン☆」
傍から聞けば、悩み事を放棄した、実に面倒くさがり名台詞であり。
しかしその表情に含まれる葛藤は、呆れだけを呼びこんではくれず。
「
次の瞬間には消えうせ…………やはり、頑ななまでに悟らせてすらくれないのであった。
……何かしらの否定と、肯定が、上手く噛み合わない様なレシェイアの台詞ですが……。
その意図は、後にちゃんと明かされます。