FGOで学園恋愛ゲーム   作:トマトルテ

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十三話:海水浴

 ジメジメとした空気、吹き付ける熱風。

 そしてジリジリと肌を焦がす太陽。

 何年この国に住んでも慣れることのない夏。

 そうした気候であるからこそ、この国の人々は思うのだ。

 

 ―――そうだ、海に行こうと。

 

「ふははは! それ、我自らボールを下賜してやっているのだ。しくじるなよ、狂犬」

「グホッ!? パスで顔面狙うやつがいるかッ!」

「問題ありません、光の御子殿。私の親指かむかむで全て予知しておりました」

「なら、注意しろよ!?」

 

 ボール遊びに興じる三人の男達。

 ギルガメッシュがクー・フーリンにパス(アタック)を出し、それを顔面で受け止める兄貴。

 打ち上がったボールはフィンが無難に打ち返しゲームを進めていく。

 

「余は日差しはあまり好きではないのだが……偶には悪くなかろう」

 

 アロハシャツを着、ビーチパラソルの下で優雅に椅子に座り読書に耽るヴラド三世。

 絶世の美少年でも美少女でもないがその高貴さ故に近くを通る者の視線をくぎ付けにしていく。

 

「清涼な風! 暑さを癒す海水! しかし、私は敢えてその心地よさに―――反逆する!!」

 

 せっかくの海だというのに涼もうとはせずに顔以外すべて砂風呂に埋まり続けるスパルタクス。

 その異様な光景のせいで彼の周りには鳥すら近づかない地帯が出来上がっている。

 

「夏の海に照り付ける太陽。いやー、雅でござるなぁ。ここでは一句読むのも無粋であろう」

 

 麦わら帽子を被り、麦茶を片手に砂浜に立つ小次郎。

 素朴ながらもどこか美しさを漂わせる姿に何人かの女性客が振り向いたりしているが小次郎的にはいじりがいのある相手ではないので特に興味を持たない。

 

「カルナァアアッ! ここで全ての宿業に決着をつける!!」

「フッ……俺に挑むべきでないと分からないか? だが、それでこそアルジュナか」

「貴様ぁッ!!」

 

 浅瀬で水の掛け合い(殺し合い)を行うカルナとアルジュナ。

 このような場所で喧嘩をするのは場違いだと、分りづらく言いながらも相手をするカルナ。

 それを『お前では俺に勝てない』と煽っているのだと勘違いしヒートアップするアルジュナ。

 どっちもどっちな種違いの兄弟である。

 

「ああ、海で遊ぶのはいいが―――別に、焼きそばを作ってしまっても構わんのだろう?」

 

 黒のブーメランパンツで、ニヒルな笑みを浮かべながら焼きそばを作るエミヤ。

 両手に握られた愛用のコテ“干将莫耶”が今日も光に当たり輝きを放つ。

 各々が夏の海を満喫する様子を眺めながらぐだ男はぽつりと呟く。

 

『なにこれカオス』

 

 天草、エドモン、ジークフリート、アストルフォ、ジャンヌ、マリーと共に訪れた海。

 そこに同じように海水浴を楽しみにして来た客がいることは当然のことだ。

 近場の海なので知り合いがいることも折り合い済みだ。

 だが、これほどの濃いメンツが揃っているとは思っていなかった。

 

『エドモン、どうしようか?』

 

 一先ず、気持ちを入れ替えるつもりで何をするか海パン姿のエドモンに話しかける。

 現在、女性陣とアストルフォは着替えている最中なので男性陣は手持無沙汰なのである。

 しかし、話しかけられたエドモンはただ海を見つめるばかりである。

 

「……俺を呼んでいる」

『え?』

「海と波が…俺を呼んでいる!」

 

 いつになく気合の入った声で叫ぶエドモン。

 彼の手にはいつの間にかサーフボードが握られていた。

 

「いざ、恩讐の彼方へッ!!」

『エドモンが壊れたッ!?』

 

 ぐだ男の制止も聞かずに海へと駆け出していくエドモン。

 その姿は復讐に駆られた鬼ではなく、ただの船乗りの姿であった。

 

『どうしよう……』

「好きにさせてあげるのがいいかと。船乗り魂がうずいたのでしょう。もっとも、今の彼は波乗りですが」

『波乗りエドモン』

 

 普段のキャラが崩壊したエドモンを呆然とした表情で見送りながらパーカー姿の天草と話す。

 天草の方は特に気にした風でもないのでぐだ男もエドモンから視線を逸らす。

 

『そうだ。シート引いてパラソルでも立てておこうか』

「そうだな。こういった仕事は男が済ませておくものだろう」

 

 背中が隠せないので必然的にパーカーの類が切れないジークフリートが提案してくる。

 それに乗じ、気を取り直して手に持っていたパラソルとシートを設置しに行くぐだ男。

 

「ここらへんで良いのではないでしょうか」

「ああ、あまり遠くにしては女性陣とはぐれてしまう」

『了解。それじゃあ―――ここに旗を立てる』

 

 最後まで戦い(遊び)抜くことを誓って“誠”の旗を突き立てるようにパラソルを地面に刺す。

 もっとも、ただの冗談であるが。

 

「あれ? こんなところで奇遇ですね。何となく呼ばれたような気がして沖田さん登場です」

『近藤さんと土方さんは?』

「可愛い沖田さんよりも男狙いですか!? で、でも確かに最後まで戦うなら土方さんの方が…」

 

 二年生の時の大会で当時の先輩達と最後まで戦い抜くことができなかったことを思い出しへこむ沖田。

 その様子にぐだ男は慌てて沖田を褒め始める。

 

『うれしいわー。こんなところでつよくてかわいいおきたさんとあえてうれしいわー。みずぎすがたがかわいすぎてつらいわー』

 

 ここまで棒読みできるかというレベルで褒めるぐだ男。

 桜色のチューブトップのブラに同じ色のパンツ。

 桜がイメージであるビキニタイプのこの水着は確かに沖田に似合っている。

 しかし、ぐだ男の棒読みではダメだろうとその場にいる誰もが思っていたが。

 

「そうですよね。沖田さんは大人気ですからね。浜辺の視線を独り占めにして大変なんですよー」

 

 沖田は満更でもないような顔で鼻を高くする。

 意外とちょろいところもある沖田である。

 

「おっと、そう言えば最近人気が落ちてきたノッブを待たせているんでした。まあ、沖田さんは大人気なんですが。それでは皆さんここで」

 

 一緒に来ていた織田信長、略してノッブのことを思い出し、ご機嫌のまま歩き去っていく沖田。

 かなりぶしつけなことを言っているがそれも彼女とノッブの関係が良好である証拠である。

 

『ふう、何とかなった』

「ええ、何事もなくて何よりです」

「あれでよかったのだろうか……いや、本人が良ければそれでいいのか」

 

 沖田を見送りながら改めてシートを引き始める三人。

 後は豪華な椅子でもあればセレブな気分を味わえるのだが生憎そこまでの準備はない。

 なにはともあれ、これで準備万端となったところでタイミングよく女性陣が現れる。

 

「みなさん、お待たせしました」

『ヴィヴ・ラ・フランス』

 

 マリーに声に反応しつつぐだ男は振り返り水着を見る。

 彼女の水着はタンキニ。赤いタンクトップ状のビキニを優雅に着こなしている。

 胸元のリボンと頭に乗ったカニがアクセントとして味を出す。

 形容するなら避暑地に来たお嬢様という表現がピッタリだろう。

 

『凄く似合ってるよ。水着もカニも……カニ?』

「あら、カニさん、ごきげんよう」

 

 何故か頭に乗っていたカニに律儀に挨拶をし砂浜に下してあげるマリー。

 カニの方もマリーを傷つける気が起きないのか全く抵抗せずにそのまま砂浜に消えていった。

 これも彼女の人徳がなせる業であろう。

 

「じゃじゃーん! どお、どお? 似合ってる?」

『アストルフォ、その水着は……』

 

 最近、オトコノコだと判明したアストルフォの水着にぐだ男は言葉を失う。

 下は白色のホットパンツ。

 上半身は胸元を淡い緑色のキャミソールで隠し、その上から紫のパーカーをはおっている。

 

 このパーカーが曲者である。アストルフォの肩のラインを隠し性別の壁を曖昧にしているのだ。

 男性らしさを出しているようで、少女らしい可愛らしさを表現する。

 そんな男性とも女性とも見れる中性的な姿が危険な色気を放ちぐだ男に襲い掛かる。

 

『う、うん。似合ってる』

「えへへ、やったー! ほらほら、ジャンヌも早く褒めてもらいなよ」

「ま、待ってください。まだ心の準備が―――キャッ!」

 

 最後に恥ずかしそうに大きめのピンクのパーカーで体を隠すジャンヌ。

 しかし、アストルフォは相手の事情など知ったことではないとばかりにパーカーを剥ぎ取りジャンヌの水着を露わにする。

 

『凄く……可愛い? 綺麗? いや、セクシー?』

「む、無理して褒めなくてもいいです」

『嘘じゃないよ。ただ、全部当てはまって何て言えばいいか……とにかく似合ってるよ』

 

 自分の乏しい語彙力を恨みながら恥ずかしそうにモジモジとするジャンヌを見つめる。

 シンプルな紺色のビキニ。タイプはホルターネック、つまり首の後ろで紐を結ぶタイプだ。

 下も同じ色のシンプルなものであり、紐で止められている。

 

 しかし、彼女の抜群のプロポーションを引き立てるという意味合いでは最高のものだ。

 健康的なくびれに柔らかそうな太腿からヒップにかけての煽情的なラインが見る者を虜にする。

 そして何よりホルターネックのバストを強調する特性がいかんなく発揮され、彼女の豊かな胸がとてつもない破壊力を生み出している。

 

 さらにみずみずしい肢体は魅惑的な色気を兼ね備えつつ美しさも醸し出す。

 加えて、恥じらう彼女の姿が可愛さも生み出し一つの凶悪な兵器となっているのだ。

 

「そ、そんなに見つめないでください。……マジマジ見られると恥ずかしいです」

『ご、ごめん。つい見惚れてた』

「もう……さらに恥ずかしくなるじゃないですか」

 

 互いに赤くなり目を背ける。

 そんな桃色の空気が出来上がる様を周りの友人達はニヤニヤと見つめる。

 

「と、とにかく全員揃ったので遊びましょう」

『そ、そうだね』

 

 友人達の生暖かい視線に恥ずかしくなり話題をそらすジャンヌとぐだ男。

 しかし、友人達は二人の様子に息がぴったりだなと思うだけで反省などしない。

 もっとも、ただ1人ジークフリートだけは優しさから別の場所を見ていたのだが。

 

「しかし、まずは何をしましょうか」

「私、バレーボールを持ってきたの。だからビーチバレーなんてどう?」

「定番ですまないが、俺はスイカ割りようのスイカを持ってきておいた」

「ボクは海で泳いだり砂浜で遊んだりしたいなぁ」

 

 天草の問いかけに三人が各々の意見を上げる。

 マリーはビーチバレー。ジークフリートはスイカ割り。

 アストルフォは水泳や砂遊び。

 

「私はみなさんがやりたいもので結構です」

『俺も、天草は?』

「私も皆様が楽しめるのであれば何であっても大丈夫です」

 

 残りの三人は特に意見はないらしく多数決という形にもならない。

 どうしたものかと全員が頭を悩ませる。

 そして、自然とぐだ男の方に視線が向く。

 

「ここは、ぐだ男君に決めてもらうのが一番でしょう。神の啓示もそう言っています」

「おや、ジャンヌも同じ意見ですか。珍しいですね。私もぐだ男君に選んでもらうのがいいかと」

『俺でいいの?』

 

 聖人コンビに推薦され、他の者もぐだ男が決めるのならそれでいいと頷く。

 全員からの信頼に断ることなどできるはずもなくぐだ男は息を吸い込んで口を開く。

 

 

「それなら、まずは―――」

 

 




意味深な終わり方ですがぶっちゃけ全部やります。順番が変わるだけの話ですし。
後、二部構成なので今回は短くてすまない。
それと序盤の野郎どもはCMを男に変えてイメージしてください。


エミヤ「こーうはい!」(UBWラストの微笑みで)

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