遊☆戯☆王THE HANGS   作:CODE:K

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MISSION6-レズの過去1

 これは、確か私がまだ中学に通ってた頃だったと思う。

 レズだったけど、まだいまほど性欲に生きてなくて、視野が狭くて、少しだけ厨二病な思想を患った、そんな幼く青臭い思春期の最中。

 

 そう。いま私がみてる夢は、そんな頃に起きた実体験である。

 

 

 ◆◆◆

 

 

「あ、そうだ梓。夕食頃にまたお邪魔するから」

 学校の帰りだった。

 9月中旬。空は夕日で真っ赤に染まり、どことなく物悲しさを感じさせる。私はいつものように梓とふたりで下校していた。

「またなの? お母さん、その度に不機嫌になるのにー」

 前を歩いてた梓が振り返る。あまり歓迎しない顔をしてるのだろうけど、太陽の光が逆光してよく見えない。

「仕方ないでしょ、あのクソババ。娘の食費ひとつロクに残さないんだもん」

「それは沙樹ちゃんが仕送りを遊びで使っちゃうからー」

「クソババ呼びは咎めないんだ」

「あ、それは……」

 口ごもる梓。私は意地悪に微笑んだ。とはいっても、表情筋がうまく動かず本当に顔に表れてたかは分からないけど。

「まあ。それに、梓の家で食べたほうが無料だし美味しいし」

「それお母さんに言ったら二度と入れてくれないよ?」

「だろうね」

 小母さん、私のこと嫌いだから。

「ま、だから梓にしか言わない予定」

 幼い頃から、家には私ひとりなのが殆どだった。

 親はシングルマザーのくせに冒険家だから家には殆どいない。それでも、私が物心つくまでは内職に切り替えてたんだけど、いつの日からか「数日娘を預かってくれ」って梓の家を託児所扱いにして、その味覚えてからは完全に復帰。

 それも、梓家族が外出中に私を玄関前に座らせ、小母さんが保健所に相談したら母はすでに外国、なんていうとんでもない手口で。そんな姿を目の当たりにしてるんだから、さすがの梓も私の母は大嫌いだ。さっき私の「クソババ」を否定できなかったのが何よりの証拠。

 まあ、私も私で梓の家に寄生する生き方を覚えちゃったんだけどね。それも梓と仲良くなったのを馬を射るように利用しちゃった形で。だから、梓の小母さんは母も私も纏めて快く思ってない。

 だけど、私は別に小母さんに嫌われようとも構わなかった。だって、私は梓さえ味方なら十分だったから。この世界に必要なのは梓だけ。他はもやしより価値のない道具だし、どう思われようとどうなろうと知った事じゃない。

 その上、人をどれだけ信じられるかというと、実は梓でさえ信じてなかった。腹の底では私を邪険してても不思議じゃないってね。だから私は、現実から目を逸らし仮初の絆に浸るのだ。私には梓しかないから。

 この世界この人生に希望も未練もない。だけど、まだ生きてるんだから。だからせめて虚像の世界で“私のことが大好きな”梓との日々を楽しませてよ。

 当時の私は本気でそう思っていた。むしろ、そんな自分に少し酔ってる感さえあったと思う。

「そんなわけで梓、また後で」

 その日は生活費の支払いをしないといけなかったのだ。私はもう少しで梓の家って所で立ち止まる。

「うん、でもあまりお母さん怒らせないでね」

 逆光が剥がれた梓の顔は、やっぱり歓迎とは無縁の困った顔だった。それでも梓は手を振ってばいばいしてくれる。

「まあ善処はするわ」

 私は、梓の後ろ姿を数秒ほど眺めてから来た道を少しだけ引き返し、バスに乗って銀行へ向かう。

 事件はその途中に起きた。

「フフフ……やれ、《重爆撃禽 ボム・フェネクス》」

 私は、爆破テロに巻き込まれた。

 車は突如爆破し、一瞬にして世界が炎とパニックに見舞われる中、私はとっさにバリアを張って身を護る。私は、この頃にはすでにフィール・カードを所有し、フィールを扱えたのだ。当時はそれが何なのかを知らず、特別な力という厨二な認識だったけど。

 目の前で他の乗客が次々と倒れていく。爆発に巻き込まれたり、炎に包まれたり、煙を吸ってコロっと逝ったり。私はそれを冷ややかな目で立ち尽くし、次第に「この場に残ったら唯一の生存者として厄介事に巻き込まれる」と思い至り、急いでドアから脱出し、傍が雑木林だったので身を隠すために逃げ込んだ。

 冷静だった。冷静だった上で、救助するという発想は脳裏を過ぎりもせず、倒れた乗客が邪魔で動きづらいとさえ思った程だった。

「利口な子だ」

 声がした。後ろを振り返ると、3人の男が立っていた。顔ぶれはそれぞれ、オールバック髪のオッサン、ワカメ髪の高校生、そして金髪ヤンキーといった所。

 その内のオールバックのオッサンがいった。

「事故の中を冷静に、そしてここまで自分の身の安全の為だけに動ける者など中々いやしない」

「ん……」

 なんか猿が3匹吠えてる。そんな程度にしか感じなかった私は、再び背を向け奥へと足を進めようとする。そこを。

「おっと、何逃げようとしてんだよ」

 金髪ヤンキーが詰め寄り、後頭部に拳銃を突き付けてきた。

「別に逃げてません。ただ、あなたたちに視界に入れるほどの興味さえないだけです」

 私は正直に、しかしわざと丁寧語でいった。もちろん、撃つならどうぞ。私にはそれを防ぐ力があるから。そんな認識だった。

「そうかよ」

 ヤンキーは引き金を引いた。私は事前に張っていたバリアで防ぐ。これで、銃弾は衝撃ひとつ私に届かない。―ーはずだった。

 確かに弾丸は私を貫通しなかった。けど、その発火で後頭部は「熱っ」となり、硝煙の匂いが鼻をくすぐる。

「っ」

 ハッとなり、私はすぐ飛び退いた。

「どうして? 私の能力なら煙ひとつ届かないはずなのに」

 すると、ヤンキーは笑い、

「バーカ。フィールがテメエだけの力だと思ってんのかよ」

「ふぃ、フィール?」

「おいおい、まさか知らねぇとは言わせねえぞ。そんな無知が許されるのは小学生までだろ?」

「よしましょうよ赤司さん」

 そう言ったのはワカメ頭だ。

「あぁん?」

 赤司というらしいヤンキーはこめかみをヒクヒクとさせ、

「どういう意味だ矢場神。事と次第によっちゃ手前ぇから殺るぜ」

「まあまあ抑えて、せめて無知の不幸に憐れんであげましょうってだけですよ」

「ああ、そりゃあいいや」

 ケラケラ笑うふたり。私はついイラッとなり、傍の石コロを拾っては男がフィールといった力を込めて投擲。しかし。

「ナメんなよ」

 ヤンキーは片手で簡単に払い退けた。普通の人間なら一発で病院送りできる威力なのに。

「嘘……」

 唖然とする私に、ヤンキーはまたもや笑い。

「おいおい、さっきの攻撃ケッコー込めてたぜフィール。そんな無駄遣いしちまっていいのかァ?」

「何がいいたいのよ?」

「ハァ? んなモン言わなくても分かるだろ常識だろ。馬鹿にしてんのか? それとも池沼か?」

「そこまでだ」

 ここで、オールバックのオッサンが口を開いた。

 その一言でふたりが後ろに下がると、オッサンは「これだから名小屋民は」と事実無根かつ失礼なことを呟きながら、

「初にお目にかかる。我々はフィール・ハンターズという組織の者だ。早速だが、お前の持ってるフィール・カード。お前がフィールという能力に目覚めるきっかけとなったカードを貰い受ける」

「……」

 私は少し考えた後、

「素直に渡さないと危なそうね。分かったわ」

 と、カードを1枚抜き取って地面に投げ捨てた。

「なんだ、やけに聞き分けがいいな」

 ワカメはカードを拾う。直後、

「だが残念だったな。俺はテメェらを生かさない主義でな、死ねぇ!」

 ヤンキーは《ダーク・ダイブ・ボンバー》を召喚し、私に向かって急降下爆撃を行った。

「ヒャハハハハ!」

 高笑いするヤンキー。そこを、私はすかさずエクストラデッキから本当のフィール・カードを召喚し、

「《--------》、ダイクロイックミラー!」

 ドラゴンのモンスターが現れて私の盾になると、その翼が発光し、《ダーク・ダイブ・ボンバー》の爆撃を全て送り返す。

 ただ、私はそのモンスターが何だったのかを思い出すことができない。何度同じ夢を見ても、カードに記された名前も、自分の叫んだ言葉も思い出せないのだ。

「なにっ!」

 驚愕するヤンキー。そこへワカメが、

「赤司さん、これ《ゴキボール》! フィール・カードなんかじゃない!」

 その間に、私は事故現場へUターン。駆け出した。

 恐らくテロを行ったのはあの3人だろう。となれば、フィール・カードの為に乗客もろともバス一台爆破するようなやつが私を生かして帰すとは思えなかった。

 加えて、やつらは私を狙ってテロに出たわけではない気がする。直接狙うなら、もっと足のつかない手段に出るべきだからだ。推測だけど、私みたいな生存者を炙り出すためにバスを攻撃したのだろう。しかも、手慣れた手口から過去にも同じことをしてる可能性がある。

 そんな過激な集団なのだから、私が逃げる先にもやつらは平気で攻撃するはず。なら、その攻撃に野次馬や警察を巻き込ませてもっと大事件にしてやろう。ゴキブリ(民間人)ハイエナ(警察)が追加で犠牲になるだけで、世間や政府が無視できない事態に発展する。これでフィール・ハンターズとかいう猿山も終わりね。

 なんて、私は浅知恵にして人でなしなことを考えてた。

 でも。

「永続罠《デモンズ・チェーン》!」

 突如、空間を突き抜けて現れた鎖によって、私は拘束される。

「悪知恵を働かせおって」

 やったのはオールバックのオッサンだった。

「お前にはこの私とデュエルしてもらう」

 デュエルディスクを私に向け、オッサンはいう。直後、私のディスクが強制的にデュエルモードに切り替わり、かわりに《デモンズ・チェーン》の拘束が解けれた。

「するわけないでしょ」

 私は再び駆け出す。けど、見えない壁に阻まれて遠くにいけない。

「知らなかったのか?」

 オッサンはいった。

「フィール・ハンターズからは逃げられない」

「待っ……」

 それ、どういうこと?

「フィールを用いたデュエルの敗者はフィールもフィール・カードも失う。お前が取る方法はふたつにひとつだ。この私にデュエルで勝ち、後に続くふたりにも勝って生き延びるか、ここで負けて死ぬかだ」

 何で逃げられないのかは分からなかった。でも、分かった所で本当に私が取れる方法はそのふたつだけなのは理解できた。

「拒否権はないみたいね」

「ああ、ない」

 オッサンは断言した。

「だったら、やるしかないでしょ」

 私はデュエルディスクを構え、いった。

 大丈夫。デュエルは学内でも強いほうだ。相手のレベル次第だけど、可能性はゼロじゃない。

 当時の私は、本気でそう思ってた。

 

 

沙樹

LP4000

手札5

 

オールバックのオッサン

LP4000

手札5

 

 

「私の先攻だ」

 と、オッサンはいうと、

「まずはこれだ。魔法カード《渇きの主》! このカードはデッキから通常召喚可能なブラッドモンスターかレベル6以上の闇属性モンスターを1枚手札に加える。私は《魔王ディアボロス》をサーチ。デメリットとして私はそのレベル×200のダメージを受けるがな。そして手札から《ヴィシャス・キマイラ》を捨て効果発動。デッキの《ヴィシャス・キマイラ》を2枚サーチ」

 

オールバックのオッサン LP4000→2600

 

 なんて一気に手札を整える。《渇きの主》は「ブラッド」ってテーマで最大限に活きるカードみたいだけど、どうやら相手は汎用サポートカードとして使ってる様子。《ヴィシャス・キマイラ》はタブレット画面で確認する限り、《サンダー・ドラゴン》と同様の効果を持ってるらしかった。

 そして、

「《ヴィシャス・キマイラ》は闇属性モンスターをアドバンス召喚する際、手札からリリース素材にできる。私は手札の《ヴィシャス・キマイラ》2体をリリースし、現れろ《魔王ディアボロス》!」

 フィールド上に1体の禍々しい悪魔竜が出現し、

「《渇きの主》は、このカードの効果で手札に加えたモンスターを発動ターンに通常召喚した場合、召喚したモンスターの装備魔法となる。カードを1枚セットしてターンエンドだ」

 召喚された最上級モンスターに装備カードが付与され、さらに伏せカード1枚。一見突破可能な布陣にみえ、私は「なんだ」と舐めてかかりながら、

「私のターン、ドロー」

 と、カードを1枚引――

「ドロー前に《魔王ディアボロス》の効果だ。デッキの一番上を確認させて貰う。……ふん、いいだろう。ドローするがいい」

 そう言われ、改めてドローしたカードは《幻獣機ブラックファルコン》だった。

「じゃあ、私は手札からフィールド魔法《フル・フラット》を発動して、800ライフ払って効果を使用。これで私は通常召喚を実質2回行える。召喚、《幻獣機テザーウルフ》そして《幻獣機ブラックファルコン》!」

 辺りの光景が半透明ながら飛行甲板の上に切り替わると、奥から発進するようにして2機の幻獣機が姿を現す。

 

沙樹 LP4000→3200

 

「さらに、《幻獣機テザーウルフ》の効果でトークン生成。これで私のモンスターは両方レベル7に。私はテザーウルフとブラックファルコンでオーバーレイ! 2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築」

 本物の夕日とフィールド魔法の晴天が重なった空に銀河が発生し、2機は霊魂へと変わって取り込まれる。

「エクシーズ召喚。《幻獣機ドラゴサック》!」

 こうして出現したのは、背中に《幻獣機ウォーブラン》を背負った新たな幻獣機。

「ドラゴサックのモンスター効果。このカードのオーバーレイ・ユニットを1つ取り除いて幻獣機トークンを2体特殊召喚。更にそのうち1体をリリースし、もう1つの効果で《魔王ディアボロス》を破壊。あれだけ手間かけて貰ったのに悪かったね」

 トークンの内1機がドラゴサックに搭載されると、ミサイルのように発射され、ディアボロスへと突撃する。

「それはどうかな?」

 オッサンはニヒルな笑みを浮かべていった。

「え?」

「罠カード《イージスの盾》を発動。このカードは私のモンスターの戦闘か効果による破壊を無効するカードだ」

 ディアボロスの前に罠カードのビジョンが出現し、そのイラストから更に1個の大盾が出現する。ミサイル扱いのトークンは、盾に直撃するも、盾は風穴どころか焼け跡ひとつ残さない。

 しかも、盾は役目を終えるとカードのイラストに戻っていく。この流れ、もしかして《くず鉄のかかし》と同じタイプ?

「《イージスの盾》は発動後、フィールド上にセットされ直される。攻撃権とトークンを消費したのに悪かったと返しておこう」

 オッサンは見下すようにいった。

 ドラゴサックは、この破壊効果を使ったターンに攻撃できない制約を持ってるのだ。元々ドラゴサックの攻撃力ではディアボロスを戦闘破壊できないけど。

「ターン終了」

 私は、こう言うしかなかった。

 とはいえ、私の場にはまだトークンが2体存在する。ドラゴサックはトークンが存在する限り、戦闘・効果では破壊されないのだから、

「このターンはまだ耐えれるはず、か?」

 オッサンは、私の考えをズバリと言い当てる。

「っ」

「その程度のタクティクスでこの私に勝てると思うな。私のターンだ。ドロー」

 オッサンはカードを1枚引くと、

「《魔王ディアボロス》を選択して、魔法カード《オールレンジ》を発動。このターン私はディアボロスでしか攻撃できなくなる代わりに、ディアボロスで全てのモンスターに攻撃できる」

「全体攻撃?」

「さらに、装備魔法化した《渇きの主》には、装備モンスターに貫通効果を付与する」

 それってつまり、攻撃力2800での全体貫通攻撃?

 私のフィールドには守備力0のトークンが2体。伏せカードはなし。

 負けた。

「《魔王ディアボロス》で1体目のトークンを攻撃!」

 ディアボロスは一瞬の内にトークンの至近距離に詰め寄ると、その腕でトークンを薙ぎ払う。しかも、衝撃は余波となって私に襲い掛かった。

 

沙樹 LP3200→400

 

「が、はっ」

 私は突き飛ばされて宙を舞い、見えない壁に叩きつけられた。

「更にもう1体で攻撃だ」

 更にディアボロスはもう1体のトークンを腕で突き刺し、そのまま私に向かってくる。

「終わりだ。死ねぇ!」

 私は、壁に叩きつけられた苦しみで抵抗さえできず、ディアボロスの腕はトークンごと私の胸を貫いた。

 

沙樹 LP400→0

 

 ライフポイントが0になり、デュエルが終了する。

「ぁ……ぁ……」

 ソリッドビジョンと一緒に背中の壁も消滅すると、私は人間にあってはいけない風穴をつくり、血を吐きながら地面に倒れた。

「この程度か」

 オッサンは私を見下しながらいった。

 意識が朦朧とする中、私のエクストラデッキから《--------》が光になって飛び出し、オッサンの下へと渡っていく。

 同時に、自分の中のフィールというらしい何かが無くなるのがわかった。

「これでお前のカードは我々フィール・ハンターズの物だ」

 そんなオッサンの言葉を最期に、私は死んだ。

 

 そう、死んだはずだった。

 

 どれだけ時間が経ったのか。数秒のようにも何時間のようにも感じる間の後、私は暗闇の中から声を聞いた。

『キサマハ選バレタ』

 私は、ぞっとした。

 何か選ばれてはいけないものに目をつけられたのだと、私の直感が警告を鳴らす。このまま死ぬのを選択できるなら、素直に死んだほうがいいって。

『サア、立チアガレ。貴様ハ冥界ノ使者。邪神ノ眷属トシテ生キ続ケルノダ』

「別にいいわ」

 意識は混濁してたけど、それでもはっきり言った。

 そもそも私はこの世に希望も見出してないし、生きる意味も未練だって無いんだから。生きてる間は仕方なく生きあがくけど、死んだのなら静かに休ませて欲しいのよ。何より、私の直感が選ばれたら駄目って言ってるのに、よく分からないのに手を伸ばしたくなんかないって話。

 なんて私は訴えたんだけど。

『ダカラ選バレタ』

『サア、立チアガレ』

『マズハ、目ノ前ノ奴ラダ』

『我ラガ冥界ノ贄ニシロ』

「~~~~~~っっっ!」

 怒涛の勢いで囁かれ、私は強烈な頭痛を覚える。しかも、ただの頭痛じゃない。

 脳が揺さぶられる。視界が、思考が、五感がぐるぐる回転する。体だけじゃなく心にまで風穴が開いて、腐敗した風に吹きざらしになる。

『サア、主ヲ楽シマセロ。望マヌ現世デ逝キ続ケル絶望ニ踊レ』

 

 私の意識はぐるんと反転し、そこから先の記憶はぷっつんと途絶えた。

 

 

 気づくと、私はカプセルの中で寝ていた。

「……ここは」

 目を覚まし、私がつぶやくと。

「無事、起動成功ですな」

 カプセルの外から声がした。老けた男の声だった。

「待ってくださいませ、すぐ開けますわ」

 更に今度は女性の声がして、間も無くしてカプセルが開く。

 私は半身起こした。ここで私は胸の風穴が綺麗ぴったりなくなってるのに気づいた。

 そこはラボだった。近未来的な装置やコードで部屋中が覆われ、まるでSF世界に迷いこんだかのような錯覚を覚える。その片隅に私が入ったカプセルは設置されてて、傍に白髪の老人と、(見た目)若い女性のふたりが立っていた。

 その内の老人がいった。

「ここは田村崎財閥が所有する研究施設になります。そして申し遅れましたな、私は森口という者です」

「娘の鈴音ですわ」

 続けて若い女性が一礼する。

「田村崎財閥?」

 って何だっけ? 名前からして凄い場所なのだろう位は分かるけど。

 それより。

「どういうこと? なんで私こんな所に。それに、その財閥が私に何の用なのよ」

 すると森口という老人は腕を組み、

「ふむ。少し記憶が混乱してるようですな」

「してないから。そんな混乱するほど繊細な神経は投げ捨ててるから質問に答えて」

「ふむ」

 森口は言いづらそうに、

「落ち着いて聞いてくだされ。鳥乃 沙樹さん、あなたは一度死にました」

「っ」

 私が、死んだ?

 記憶が曖昧だったせいか、私は素直に驚愕する。

「お父様、いきなりそこからはショックが強すぎますわ」

 鈴音という女性がいう。しかし森口は続けて、

「私共は、そんなあなたの遺体を回収し体の一部を機械化させることで蘇生させた次第で御座います」

「蘇生……?」

 一瞬、言ってることがわからなかった。

「待って、そんな事いわれても誰が信じれるわけ……」

「嘘だと思うなら手首を捻って間接を外し、思いっきり引っ張ってみてくだされ」

「お父様!!」

 森口を怒鳴りつける鈴音。

「沙樹さん、いまはやらないほうがよろしいですわ」

 と、鈴音は言うけど。しかし、

「……」

 私は、少し無言で森口に問いかけたのち、言われた通り私は手首を捻ってみる。するとカチッと人が出していけない音を発しながら間接が外れ、しかも手首の先の感覚が完全に消える。そのまま思いっきり引っ張ると腕と掌が分離して、鉄の人口骨、人の筋肉、コードが混ざったグロテスクな断面が顔をだした。

「っ!? う、おぇっ」

 ショッキングな光景を前に、私は口元を押さえ、催した嘔吐きに耐える。

 鈴音は慌てて駆け寄り、私の背中をさすった。けど、私はその手を乱暴に払い、

「な、なんでこんな事をしたのよ」

 喉まで逆流した胃液に苦しみながら、私は森口を睨んだ。

「頼んでもいないのに。こんな体にする位なら素直に死なせてよ」

「それはごもっとも。ですが、それができない理由がありまして」

「理由?」

「ええ」

 森口はいった。

「あなたは邪神を名乗る者の眷族に選ばれた。違いますかな?」

 言われて思い出した。

 そうだった。私はオールバックのオッサンが召喚したモンスターに貫かれ、確かに死んだのだ。

 死んだはずなんだけど、なんか妙な声を聞いて、それから。

「あのままですと、あなたは動く死者(リビングデッド)となり、邪神の好きに体を掌握され、時に意識や記憶を書き換えられ、はたまた完全に邪神の言いなりの人形として、あのフィール・ハンターズにしたみたいに生贄を狩り続ける存在となっていたことでしょう」

「あの猿共どうなったの?」

 私が訊ねると、はっきりと森口は、

「仕切っていたオールバックの男は逃げましたが、残りふたりはあなたに殺され取り込まれました」

 え?

「殺した?」

 私が?

「それに、取り込まれたってどういうこと?」

 すると森口はいった。

「邪神の眷属は、他者を取り込む際に被害者が所有していたカードもすべて我が物にすると聞きます。私たちがあなたを発見したとき、そこで見えたのは、おふたりの体がまるでアドバンス召喚のリリース素材みたく光の粒子状に分解され、あなたの体に取り込まれる姿でした。恐らくあなたはデュエルする寸前で記憶が途切れたのでしょう。ですが、恐らくいまのあなたでも、記憶にはなくとも体が何か覚えているのではないでしょうか?」

 そう言われると。

 私は胸の前で手をかざし、フィールとかいう力を使う要領でカードを創造する。すると、出てきてしまった。あのヤンキーが使ってた《ダーク・ダイブ・ボンバー》。さらにワカメのカードという認識の下に、一度も使うのを見てないはずの《重爆撃禽 ボム・フェネクス》や《起爆獣ヴァルカノン》まで。

 森口はいった。

「このまま放置してれば、あなたはこれからもこのような事態を引き起こすことになる。これが、私共があなたを回収した理由ですな。いま、あなたの体には邪神に身や自我を支配されないよう処置が幾つも施されております」

 つまり、私はただ機械として蘇生されただけじゃないということ。それに私を回収した経緯を聞く限りだと。

「それって」

 私はいった。

「逆にそっちが私を掌握してるんじゃないの?」

 すると、森口は首をかしげ、

「といいますと?」

「聞いてる限りだと、いまの私って明らかに人類の脅威じゃない。何か目的がない限り、二度と動く死者(リビングデッド)にならないよう徹底的に殺処分するか、もしくは実験体としてここみたいな所で一生飼いならされるか、の二択だと思うのよね。違う?」

「……そうでしょうな」

 森口は、否定しなかった。

「その上あなたは私がフィール・ハンターズを取り込む所まで見たって言ったじゃない。つまり最初から私がああなるのを予知してたって話でしょ?」

 私がそこまで言うと、森口は、

「賢いお子さんだ。それでいて希望という言葉を全く考慮に入れない悲しい考えだ」

 なんて少し悲しそうにつぶやいた。娘の制止をスルーして散々ショック強いこと言いまくったくせして。

「確かに、私たちはあなたが邪神に選ばれるのを想定しておりました。ですが、実験体としてあなたを連れてきたわけではありません」

「じゃあ」

「身も蓋もないことを言いますと、これになりますな」

 森口は親指と人差し指をくっつけ丸をつくる。つまり、金だ。

「実は、事件当時ナスカの地にいるあなたの母親から依頼がありましてな。自分の娘が邪神の眷属になる運命にあると分かったと、だから最悪の事態になる前に我々の力でその運命から救って欲しいと」

「あのクソババから?」

 信じられない話だった。どうしてあの母が私を?

「費用はすでに頂いております。それとあなたの母親から『向こう数年分の仕送りを前借りした』と伝言も」

 クソババだ。そんなこと言う人はクソババしかいない。

「ですが、一足遅かった。あの日私はあなたの家の前でご帰宅を待っていたのですが、そこへあなたが眷属に堕ちたとの報告を受け」

 慌てて向かった結果、見えた光景が生贄として取り込まれるフィール・ハンターズだったのだろう。

「なるほどね」

 確かに、いま母はナスカの地上絵の辺りにいたはずだし、母絡みの内容的に信用するしかない。

「大体、事情は分かった」

 私は静かにいって、現状を受け入れた。

 涙はでなかった。

「普通なら泣き叫んで錯乱して当然ですのに。あなたはとても強い子ですのね」

 鈴音は、私の頭を撫でていった。

 

 

 そんなはずはなかった。

 その日の深夜。私は部屋中の機械を破壊した後、施設を脱走したのだ。

 泣き叫ばなかった?

 錯乱しなかった?

 だから私が強い子?

 おかしすぎて笑いが出る。私に錯乱できる感情とか泣き叫ぶだけの涙があるなら、私は毎日錯乱したし泣いてただろう。そんな感情が消えうせる程、生前からとっくに希望もクソもなくなってただけだ。

 おまけに、その一番の原因がクソババのくせに、そいつの金で助かったときたものだ。もう笑えてくる。

「(ああ、助かったとは限らないんだっけ)」

 一度死んで、機械になって蘇生されたというなら、果たして私は本当に「鳥乃 沙樹」なのだろうか。

 いまの私の心が「沙樹」というヒト科を模した人工知能だって可能性もあるわけだし、実はクローンだって可能性もある。

 実は取り込んだフィール・ハンターズのカードを創造できたことが私が鳥乃 沙樹である証拠だったのだけど、そこに気づかない程度には、ちゃんと平常を失ってたのだ。私は。

 道中、スリで財布を確保し電車に乗り、自宅近くの駅で降りる。目的地は、梓の家だった。

 私は梓を襲おうと思っていた。それも強○、○害両方の意味で。

 それは復讐だった。それは自傷だった。それは嘆きだった。

 鳥乃 沙樹には梓しかいなかった。

 沙樹にとっては梓は幼馴染であり、心の拠り所であり、ただひとり心を開ける存在であり、密かに想いを寄せ、この世の全てを敵にまわしてでも護りたい存在だった。例え相手の笑顔が偽物であっても。

 だからこそ、沙樹の姿をしたナニカである私は、自分の中の沙樹を否定する為に沙樹の全てである梓を踏みにじろうと思ったのだ。

 そういえば。私は外のホームを出てやっと気づく。

 まだ夏だと思ってたのに、外は異様に寒かったのだ。たまらずホットコーヒーを買おうとコンビニに入ると、室内の放送で今日が12月24日、クリスマスイブなんだと知った。

 すでに、沙樹の死後から3ヶ月が経過してたのだ。

 私はホットコーヒーを飲む。缶が冷え切った手を冷やし、熱い液体が喉を通ると、あの日梓との夕食を食べ損ねたと思い出した。

 それだけじゃない。梓との思い出が3ヶ月も空白になったのだと、その間のイベントである中学最後の体育祭や文化祭も梓の傍にいれなかったのだと、ただただ梓のことばかり考ながら、私は初めて涙を流した。

 沙樹は、梓との日々がとにかく幸せで幸せで、楽しかったのだ。

 コンビニを出て、私は再び梓の家向けて歩き出す。

 程なくして雪が振りだした。

「あ」

 珍しい、ホワイトクリスマスだ。私は足を止めて夜空を見上げる。

 黒一色の世界から、ひらりひらりと白い雪が舞い降り、電灯の光がそれを照らす。こうして静かに眺めてると、中々に幻想的な光景にみえた。

 梓も、いまごろ夜空を見てるのだろうか。私の中では結構ロマンチストな印象があったから、窓から見上げ「きれい」なんて呟く幼馴染の姿が容易に想像できる。

 でも、なぜだろう。

 これは、私の想像の梓。なのに、その梓の目が笑ってない。とても哀しそうに、まるでいまにも泣き出しそうな目をしてたのだ。

 どうして、そんな顔をするの?

 私は、空想の先にいる梓に語りかける。そして、ハッと気づいた。

「ああそっか。沙樹が梓を置いてひとり逝ちゃったからか」

 実際の梓が私のために泣いてくれただろう自信は正直ない。たぶん小母さんは嬉しさに泣いただろうけど。

 だから多分、私が視た梓は願望。

 このくらい梓の中でも沙樹が大きな存在であって欲しいっていう願いなのだ。だから、本当の梓がいまどう思ってるかなんて分かりっこない。

 でも。

「梓……会いたい」

 私は夜空につぶやいた。

 早く梓を安心させてあげたい。梓の笑顔を取り戻して、梓の温もりを確かめて、この夜空を梓と共有したい。

 私は沙樹じゃないかもしれない。でも、梓への想いは沙樹そのものなのだから。

 その時だった。

「沙、樹、ちゃん?」

 不意に声が聞こえた。

「え?」

 私は前を見渡す。

 そこには、梓がいた。

 ダッフルコートとマフラーそして手袋の完全防寒体制で、白い息を吐きながら、信じられないものを見たような目で。

「沙樹ちゃん。沙樹ちゃんだよね?」

 もう一度、梓はいった。その瞼が、その声色が段々涙で滲んでいく。

「梓……」

「どこ、行ってたの? ねえ、どうして勝手にいなくなったの? 私、心配したんだよ。私……私ぃ……」

 それは、同じ顔だった。

 哀しげに空を見上げる空想の中の梓の顔と。ううん、空想よりもっともっと私の為に泣いてくれる梓がそこにいた。

「沙樹ちゃん、沙樹ちゃああああん!」

 梓は小走りで飛びつき、私の胸でわんわん泣きだす。

 彼女の体温が、涙が、とても暖かい。

 なのに、その温もりは鋭い氷の刃のように私の心を突き刺す。

 いや、違う。

 冷たい氷は私の心のほうだ。梓の温もりに触れ、やっと私の心がどれだけ冷え切ってたのか気づいたのだ。

 私は。

「……。…………全て棄てようと思った」

 気づいたら、胸の奥の気持ちを語り始めていた。

「私が沙樹じゃないかもって重圧に耐え切れなくて、いっそ沙樹の生きる理由も生きた形跡も全て壊せば楽になれると思った」

「沙樹、ちゃん?」

「でも」

 私は笑った。泣きながら微笑んだ。今度は表情筋もちゃんと動いてる。

「無理だったよ。梓の顔を一目見たら、とてもそんな事できなかった。私が沙樹かじゃない。そんな事したら私が私として二度と立ち直れそうにないのよ」

 それがどんなに救済だったか。梓の中で私がどんなに大きな存在かを知って、梓に酷いことをせずに済んで。

 3ヶ月梓を哀しませた後悔があって、償えることができるんだって喜びがあって。

 

 何より、私の生きる意味がこんな近くにあったのだ。

 

「ただいま、梓」

 私は梓を抱きしめた。

 梓は、涙でぼろぼろの顔で私を見上げ。

「おかえり、沙樹ちゃん」

 微笑んでくれた。

 

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 私の名前は鳥乃 沙樹(とりの さき)。陽光学園高等部二年の女子高生。

 そして、レズである。

「あず、さ……っ」

 なんて、自分の声で目を覚ました私は、あまりの夢見の悪さで寒気と恐怖に襲われる。あの夢を見た後はいつもこうだ。死の体験と梓の涙が脳裏に焼き付いて離れず、しばらく布団から出られない。

「(あれ?)」

 と、私は自分が寝てる場所の違和感に気づいた。家の寝室でもなければ、事務所の仮眠用ベッドでもない。

 私は、カプセルの中で寝かされていたのだ。辺りを見る限り、ここは田村崎研究施設。それも私を半機人なんかにした場所だ。部屋全体が装置とコードで覆われた、まるでSF世界のラボみたいな光景が広がっている。

「(あ、そういやそうだっけ)」

 ここでやっと、私は黒山羊の実のミストランに負けたのだと思い出した。本当なら私は殺され、再び目を開けることもなかったはず。救援が間に合ったのだろうか。

 程なくして夢の余韻が抜けた頃、不意に私のカプセルが開いた。

「おはようございますわ」

 鈴音さんだった。いつも着ているスーツの上に白衣を1枚羽織り、カプセルの横にパイプ椅子を置いて座っている。夢とは違い、森口……いや、死者を機械化蘇生する技術の第一人者である森口博士の姿は見当たらなかった。

「おはよう鈴音さん」

 私は半身起こす。気づくと、もげた片腕片脚が復元されてた。

「なんか私助かっちゃったみたいね、幸運なことに。助けてくれたのは、鈴音さん?」

「いえ」

 鈴音さんは首を振り、

「確かに、こちらにあなたを運んだのは私ですけど。どういうわけか、ターゲットはあなたにとどめを刺さずに立ち去りましたわ」

「え?」

 私は軽く驚き、

「どうして?」

「私にも分かりませんわ」

 言いながら、鈴音さんの瞼が閉じかけ、一回こっくりする。その様子だけで寝ずに私を看てたのが分かった。

「とりあえず、任務は失敗ですわ。復帰次第、始末書を提出下さいませ。私もまだですから、一緒に終わらせましょう」

「はーい」

 そう言って、私は再びカプセルに横になる。

「また、あの日を夢見たようですわね」

 鈴音さんはいった。

「……うん」

 どうやら鈴音さんにはお見通しだったらしい。

 

 ――あの後。

 梓と一緒に数ヶ月ぶりに自宅へと向かうと、そこには玄関前で鈴音さんがひとり待っていた。

 雪除けに傘は差してたけど、施設にいたままの格好で防寒を全くせず。真冬の夜にひとり。

 あの時は何でいるのとか思ったけど、この人は面識も殆どなかった人間の為に、施設の損害やパニックよりも優先して私を追いかけてくれたのだ。誰かの指示だったり、役割分担で来たなら上着の一枚羽織る余裕はあるだろう。

 それだけじゃない。

 あれからすぐ私は調整や検査の為に施設へ連れ戻されたんだけど、そこでも甲斐甲斐しく世話をしてくれたのも鈴音さんだった。

「あの時はほんと迷惑かけたわ」

 当時を思い出しながら、私は呟くと。

「私も経験してますもの気になさらないでくださいませ」

 と、鈴音さんは優しく返してくれる。実は鈴音さんもまた半機人だったのだ。

 彼女は、父親である森口博士の研究中に起きた爆発事故に巻き込まれ、母親と一緒に死亡したらしい。その後、脳に損傷がなく四肢が残ってた鈴音さんだけ回収できた森口博士は、娘を蘇らせる一心で研究を重ねた末に半機人としての蘇生に成功したらしい。

「それでもね、悪夢のついでにちょっと言わせてよ」

 私は、少しずつ襲ってきた微睡みに身を任せながらいった。

「ありがとう。鈴音さんいなかったら、私絶対に立ち直れなかったわ」

 鈴音さんは、まるで義母か姉のように私を大切に扱ってくれた。実際、ある意味姉妹機ではあるんだけど。それでも、母親の愛を知らず、梓以外を信じられなかった私には、鈴音さんの存在がどれだけ身に沁みたか。

 こういう言い方は恥ずかしいけど、私は鈴音さんに懐いてる。

 世界で一番大切なのはもちろん梓だけど、私はこれからも彼女にだけは心酔にも似た感情を抱き続けるのだろう。

 なんて考えてる内に、いよいよ私の意識が遠くなってきた。

 鈴音さんは私の頭を撫でる。

「おやすみなさいませ、沙樹。私の大切な――」

 私の意識は途切れた。最後の言葉は妹だったのか娘だったのか、どっちかだった気がするけど上手く聞き取れなかった。

 

 今度の夢は、子供の姿の私が鈴音ママの膝枕で甘える夢だった。

 

 




●今回のオリカ


ヴィシャス・キマイラ
効果モンスター
星5/闇属性/獣族/攻1600/守1800
①:自分フィールド上にモンスターが存在しない場合、このカードを手札から捨てて発動できる。
デッキから「ヴィシャス・キマイラ」を2体まで手札に加える。
②:闇属性モンスターをアドバンス召喚する場合、手札のこのカードをリリースに使用できる。

渇きの主
通常魔法
このカードはルール上「ブラッド」カードとして扱う。
①:自分のデッキから「ブラッド」モンスターもしくは通常召喚可能なレベル6以上の闇属性モンスター1体を手札に加え、自分はそのモンスターのレベル×200ダメージを受ける。
この効果を発動したターンに同名モンスターの通常召喚にした場合、墓地に存在するこのカードを装備魔法扱いとして、そのモンスターに装備する。
②:装備モンスターは以下の効果を得る。
●このカードが守備表示モンスターを攻撃した場合、その守備力を攻撃力が超えた分だけ戦闘ダメージを与える。
●このカードが戦闘によってモンスターを破壊し墓地へ送った時、破壊したモンスターのレベルもしくはランク×200ライフポイントを回復する。

フル・フラット
フィールド魔法
①:1ターンに1度、800ライフポイント払い、以下の効果から1つを選択して発動する。
●「幻獣機トークン」(機械族・風・星3・攻/守0)1体を特殊召喚する。
●手札から「幻獣機」モンスター1体を通常召喚する。

イージスの盾
通常罠
①:自分フィールド上のモンスター1体が戦闘または効果によって破壊される場合に発動できる。その破壊を無効にする。
発動後このカードは墓地へ送らず、そのままセットする。

オールレンジ
通常魔法
①:自分フィールド上のレベル7以上のモンスター1体を選択して発動できる。
このターン、選択したモンスター以外のモンスターは攻撃できず、選択したモンスターは相手フィールド上の全てのモンスターに1回ずつ攻撃をする事ができる。

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