私の名前は
そして、レズである。
「こんなのって、こんなのってないよ梓」
海岸の堤防に梓とふたりで座り、水平線を眺めながら私はいった。
まだ昼間なのに黄昏てる私とは逆に、梓はにこにこと嬉しそうに、
「そうだね。これで安心して私も休めるよー」
土曜日。
私と梓は、予定通り無料招待券を利用して
場所は県内の海沿いにあるミハマという所。これが夏なら水着姿の若い女性が海辺できゃっきゃうふふと賑わってそうなものだが、残念ながら今はシーズンオフ。都会にはない閑静な雰囲気が辺りを支配する。
そう。
いまは、シーズンオフなのである(私的に大事なことなので2回)。
「まさか宿泊客が私たちだけなんて、こんな話ないわ」
電車に乗って目的地に到着した私たちは、まず最初に確認を兼ねて今日泊まる旅館に足を運び、観光に邪魔な荷物を預かって貰った。
その際、旅館の女将さん(残念ながらお婆ちゃん)がいったのだ。
「今日はおふたりの貸し切りだからゆっくりしていってね」
って。
確認した所、招待券が貸し切りチケットだったとかそういう訳ではなく、シーズンオフ時には宿泊客が0~1組のときは比較的あるそうで、ちょうど今日がその「他に宿泊客がいない日」だったらしい。なお、外観やエントランスを見る限り、旅館はドが付くほどの純和風だった。
「なんで貸し切りって話なのよ。せっかく温泉に来たのに、温泉といったら他の宿泊客との裸の付き合いでしょ。長旅で疲れて温泉に癒しを求める女性の裸を拝み放題。おひとり様だったら部屋にお邪魔してつまみ食いだって出来るって話よ!」
「でも沙樹ちゃん。温泉だったらこの前みんなと一緒に入ったじゃない」
と、梓はいうけど、
「深夜帯まで温泉入らせて貰えず、メールちゃんの裸しか見れなかったんだけど。子供の裸なんか見てなにが楽しいのよ」
「その割にはメールちゃんと一番打ち解けてたよね、沙樹ちゃん」
「あれね。ナーガちゃん同様あの子とも仕事繋がりよ」
「え?」
って、梓。そういえば伝えてなかったっけ。
「メールちゃんは神簇やアンちゃんの上司みたいなものよ。あれでも、神簇家に対して本家様と同等くらいの権力持ってるって話」
「嘘!?」
「神簇家の庭でアインスと決闘したの覚えてる? あの時の問題を裏で解決に動いてくれた影のMVPもメールちゃんよ」
「そんな凄い子だったんだ」
唖然となる梓。
「まあ、あの子のことはいいわ。いまは関係ないって話だし」
改めて私は水平線を眺める。辺りには私と梓しかおらず、とても静かだった。穏やかな潮風と波の音が心地よく、たまに車や自転車が通り過ぎる音も含め、あまりの穏やかさに時間がゆっくりと流れてるかのよう。
だけど、私はいう。
「楽しみにしてたのに。他の女性客の裸、浴衣姿、ベッドイン」
「私は沙樹ちゃんと旅行する一番の問題が解決してほっとしてるよー」
梓はだらしなく顔を緩ませる。正直、梓のそんな天使の笑顔を拝めたことが不幸中の幸いだろうか。内容はともかく。
私は。
本当に、たった2日で完全復帰できるのだろうか。
私はハングドより、この旅行で
実際、パインとマイケルがすでに犠牲になっている。ふたりの実力は私より上だった。そんなふたりでさえ命を落とす問題に、精神状態が不安定な私が最前線に出れば、いずれ死ぬのは時間の問題だろう。しかも、私を失った場合ハングドのみならず地元の組織は全員フィール・ハンターズに対する対抗手段を失う危険性まであるのだ。
(そんなプレッシャーを与えられながら「治せ」なんて無理があるでしょ)
だからなのだろう。今朝、妙子のヘルプに手を伸ばさず、りんの人生を破壊した昔の夢を見たのは。
それだけ、私はいま不安で情緒が狂っているのだ。
しかし、梓に仕事の相談をするわけにもいかず、顔に出さないよう気を付けながら、ひとり悩んでいた所、
「あ、こんな所にいた」
不意に私たちは後ろから声をかけられた。
「え?」
私は後ろを振り返り、声を失った。
それは自転車に乗ったひとりの女性だった。きっと過去一度も染めた事ないだろう黒髪をヘアゴムでふたつ結びにし、ラフでシンプルな服装に身を包んだ真面目で明るい雰囲気の子。歳は誕生日の早い遅いを除けば同じ年。というのも、彼女は私や梓の知人だったのである。
「りんちゃん?」
驚き、梓がいった。私はあえて口を開かなかった為、女性は自転車を降りて、
「お久しぶりですね。あずちゃん、沙樹さん」
って、笑顔で自転車を押して近づいてくる。
そう。
信じられない事に、そこに立っていたのは
私は、彼女をエロい目で見る余裕さえなく、口を閉じ、表情を消し、内心で裏の意図を探ろうと横目を凝らす。
だけど、警戒する私とは裏腹に、りんは以前と変わらぬ様子で、
「こっちに来たのなら連絡くれても良かったのに、おかげで街中走り回っちゃいました」
「りんちゃん、いまこっちに住んでたの?」
梓の言葉にりんは「え?」となって、
「もしかして、私の引っ越し先」
「たぶん誰も知らないよ? 突然引っ越して、先生も行き先だんまりだもん」
「そうだったんだ。だから誰からも連絡が」
りんは納得するように呟いてから、
「なら偶然だったんですね。はい、いまはこちらの学校に通いながらお婆ちゃんの旅館の手伝いをしています」
ここで梓は「あ」と思い至り、
「もしかして、その旅館って」
「はい。おふたりが泊まる所です。あの旅館の女将は私のお婆ちゃんでして」
なるほど。さらにりんが言うには、
「びっくりしました。今日の宿泊客のリストを見たらふたりの名前が記載されてて、その上もうお荷物を預けてるんですから」
だそうだ。
「他のみんなは元気ですか? 特に、ロコちゃん」
名指しで訊ねるということは、一応妙子の死を知ってるらしい。梓は努めて笑顔をつくり、
「うん。ロコちゃんも色々あったけど元気だよ。それと、コンビニでアルバイトも始めたみたい」
「そうですか。良かった」
ほっとした様子で、りんはいった。
「良かったら観光案内しましょうか? 引っ越しする前もよく遊びにきてた所ですから、穴場とかも色々知ってますよ?」
「本当? じゃあお願いし」
梓が言いかけた所で、
「悪いけど」
私は、ここで初めてりんの前で口を開いた。
「今日は梓とのんびりしたい気分だから、断らせて頂戴」
さて。私が喋ったことで彼女はどんな顔をするだろうか。警戒か、軽蔑か、虚無か、恐怖か。
「なら仕方ないですね」
しかし私の予想は全て外れ、完全にナチュラルな反応をりんは見せた。もしかして覚えてないのだろうか。
「だったらせめて。ここからだと宿は右から曲がって……それと、ここから見える白い屋根の建物に」
それからりんは、お節介にも宿に戻る際の最寄りのルート、徒歩で向かえる観光名所から地元の人も利用する売店の場所まで色々教えてくれた後、一足先に自転車で宿に戻っていった。
彼女の姿が見えなくなると、一転して梓は心配した顔で、
「どうしたの沙樹ちゃん。さっきから様子が変だったけど」
と、訊ねてくる。
「沙樹ちゃんって、りんちゃんとそんなに仲悪かったっけ?」
「不良と委員長ならこんなものでしょ」
「今じゃ風紀委員だろうと婦警さんだろうと平気でセクハラする沙樹ちゃんなのに?」
「う」
言い訳できない。どうしよう。
私は、りんとのエピソードについて伝えようかどうか迷いつつ、
「ちょっとショッキングな話していいなら、言うけど」
「そんな風に言ったら余計気になるよー」
「ワンチャン、私を軽蔑することになるって話よ」
「しないよー。そこに花〇院の魂も賭けてもいいよ?」
逆に不安だ。でも、梓がそこまでいうので、私はいうことにした。
「突然だけど、りんが学校に来なくなった日の前日、パトカーが来てたの知ってる?」
「え」
梓は一回きょとんとしてから、
「噂程度には、だけど」
「それから、りんが来なくなった事を不自然に思ったことは?」
「りんちゃんがおクスリしてたって噂なら」
どうやら、最悪にも当時の私の狙い通りに情報は蔓延してたらしい。
「でも、そんなの殆どみんな信じてなかったよ? だって、りんちゃんだもん」
と、擁護する梓に。
「私が原因なのよ」
「え?」
「私がりんに無理矢理ドラッグを打って、さも彼女が自分でクスリに手を出したように仕立て上げたって話」
青い空をみあげ、私はいった。
「りんが引っ越したのは、私のせいなのよ」
私に気を遣ってか、梓は努めて笑顔で観光を楽しんでくれた。
たっぷり歩いて夕方。改めて旅館にチェックインした私たちは、仲居さん(女将さんより少し若いお婆ちゃん)に案内された客室で一息ついていた。対応を見る限り、りんは女将や仲居さんに私の正体を伝えてないようだ。
「んーたっぷり遊んだねー」
梓は広縁の椅子に座りながら、りんに紹介された売店で買ったタピオカミルクティー(XLサイズ)をストローで飲んでいる。
部屋は特に変わりばえのない純和室だ。玄関・和室・広縁が一直線に続いた部屋で、畳の和室には卓袱台と座布団、広縁には簡単な机を挟んで椅子がふたつ。トイレは玄関の隣に設置されてある。
私は急須で二人分のお茶を煎れながら、
「交通は少し不便そうだけど、のどかで過ごしやすそうな場所よね。たぶん夏の海水浴シーズン以外は」
と、返事しつつ私もSサイズの同じタピオカを飲む。ミーハーに聞こえるかもしれないが、実は私もこの飲み物は結構好きだったりするのだ。喉越しの良さとグミのような触感が独特で面白いし、水分を摂れて腹持ちも良い。ブームだった時は、よくこれを持って、周囲のタピオカ女子に紛れながら街で張り込みや追跡をする際の携帯食にしていたものだ。
「はい、梓」
私はお茶を注いだ湯呑を広縁の机において、
「それで温泉だけど。どっちから入る?」
と、訊ねた。
「え?」
よほどリラックスしてたのか、きょとんとした顔で訊ね返す梓に、
「私が先入ってもいいけど。私がいると浴衣に着替えもできないだろうし」
本来なら「梓、先いく?」と訊ねる所だけど、いま梓はタピオカミルクティーを愉しんでる所だから、急かしちゃうかなと思ったのだ。加えて、りんと再会して冷や汗かいたし私自身早く温泉に入りたい。
しかし、梓はまだ頭が動いてないようで、
「え、どうして?」
「どうしてって、学校でもそうだし、私だからって話だし」
うん。学校でも体育の時間だと名誉男子扱いで女子の着替え中締め出されてるのよ、私。
「あ、そっか」
梓はやっと気づいたらしい反応をして、
「もう。どうしてこういう時だけモラルがある事言えるの?」
「普段は性欲優先でモラル投げ捨ててるだけって話よ」
私はいいながら、自分の湯呑に口つけて、
「で、梓の希望は?」
「うーん」
梓は一回考えて、
「じゃあ沙樹ちゃん先入っちゃって。私まだタピオカ残ってるからー」
「わかったわ」
私は湯呑の中身を飲み干してから、タピオカのカップと着替え諸々を持って一旦部屋を出た。
だから、残念ながらひとりになった後呟いた梓の言葉を私は知らない。
「沙樹ちゃんの馬鹿。あんな風に聞かれたら一緒に入りたいなんて言えないよー」
貸し切り状態なだけあって、脱衣所のかごはすべて空席。人の使った形跡は見られなかった。
私は適当なかごに衣類とデュエルディスクを入れ盗難対策に攻撃反応型の罠カードを仕込んでから浴室に。そして、露天風呂に数分ほど浸かってた時だった。
「っ」
露天風呂フロアの外から突如感じた人の気配に、私は一度びくっと反応。
(誰?)
一瞬、私を狙った敵を疑ったが、足音はゆっくりとこちらに向かってくるものの、攻撃の意志も無ければ気配を消して接近してる様子もない。だとしたら宿泊客だろうか。梓がわざわざレズの私に裸体を晒すとは思えないし、あの後予約なしでチェックインした人がいたのかもしれない。
30代もいいけど、今日は気分的に高校生以上~20代の若い子だったらいいな、と内心ぐへへと考えてたら、室内から戸が開き、
「あ、沙樹さん」
「湯加減は如何ですか?」
りんは一見屈託ない笑顔でいいながら、私の隣で湯に浸かりだす。私は彼女の裸体が視界に入る前に背を向け、
「別に」
と、素っ気なく返す。いまの私を知る者からすれば、若い女性を前にこんな態度を取れば絶対「明日は嵐だ」とか「地球が滅びる」とか言いそうなものだけど、
「素っ気ないですね、相変わらず」
なんて、昔の私しか知らないりんは、苦笑いでもしたかの声でいった。
「高校生活はどうですか? 沙樹さんって、いつも不機嫌で、人付き合い悪くて、不良さんだから、ちゃんと高校デビューできてるか心配で」
「問題ないわ」
「なら良かったです」
りんは一拍置いて、
「さっき逢った所だとあずちゃんも元気そうでしたけど、実際はどうですか? まだ、たまに虐められそうになったりするのですか? ごめんなさい、私も同じ学校なら目を配れたんですけど」
「大丈夫よ。あれでも毎年逞しくなってるから」
いまじゃ私を毎日1回はハンマーで制裁する位だしね。それを見て未だに虐めようとする猛者はうちの学園にはいない。
「……。それより、よく未だ私に話しかけようって気になれるわね」
私は切り出すことにした。
「私のせいなんでしょ? りんが陽光学園に進学できなかったの」
「分かってるじゃないですか」
何故、それを嬉しそうにいう?
「ですけど。沙樹さんこそ忘れましたか? 私の趣味を」
「お節介焼く事でしょ」
私はいった。
「覚えてるんじゃないですか。だからですよ」
言いながら、りんは湯を泳いで私の正面に向かい合おうとしてきた。わざわざ私が視界に映さないようにしてあげてるというのに。
私はぷいっと反対方向に体をそらす。すると、私が向いてる方角へとさらに移動してきたので、私はすぐ再び反対方向に体を向けた。すると、
「どうして避けるんですか」
なんて言って追いかけてくるので、同じやり取りを数回繰り返した後、
「あーもう分かったわ。でも見られた責任は取らないって話よ」
と、私は折れて彼女を受け入れる。
正面に立った彼女は、少し動き疲れて頬に汗が滲んでいた。胸は若干控えめ。最後に会ったときはガリガリだったのを覚えてるが、いまは華奢ながら不自然な細さは見当たらない。
学生時代こうして彼女をまじまじ見た事はなかったが、こうしてみると本当に人畜無害を絵に描いたような顔をしておりとても可愛らしい。けど、その瞳からは腹の底に深い闇を抱えたような濁りを感じるのは、私が罪悪感のフィルター越しに見てるせいだろうか。
「あの、そんなにまじまじと見られたら恥ずかしいんですけど」
なんて照れるりんに、
「正面に裸の女体があれば普通見るでしょ? レズなら」
「レズ?」
「りんなら知ってるでしょ」
と、いって。私は裸体を目に焼き付けてから、今度は首だけをそらす。
「だから、どうして逸らすんですか」
りんは、それでも視線を外すことを許さないらしい。私は鼻と肩で嘆息してから、改めて向き合う。
「ずっと後悔してたんです。あのまま、仲直りもしないでお別れしたことに」
と、りんはいった。真っすぐ、私の顔をみて。
「仲直りって」
間違いなく私がした事はそんなレベルじゃないのに。
「りん。一応聞くけど、あなた、あの日のことをちゃんと覚えてる?」
じゃなければ、そんな発想に辿り着くはずは……。
「覚えてますよ? デュエルして、フィール攻撃で意識を飛ばされて、気づいたら沙樹さんにクスリを打たれてて、キマってる所を先生が目撃、高校を入学前に退学に追い込まれました」
あった。
「それに少なくとも、あの街を離れるまでは沙樹さんを恨んでましたよ? 殺意だって覚えました。自殺だって考えましたし、醜い感情でいっぱいでした」
「なら」
「この街、いい所ですよね」
突如、りんは露天風呂から見える街や海に体を向けていった。
「自然が豊かで、のどかで、温かくて。この街のおかげで、私は私を取り戻しました。そしたら、いつもの癖で世話焼きとお世話の目線であの日を思い返して。私、あの日の沙樹さんを何も知らないで拒絶してたって思い出したんです」
直後、夕日の寂しげな光が彼女を照らす。私はそれを見て、
「この聖人君子が」
つい、私はぼやく。
仕方ないじゃない。私の目にはいよいよ彼女がガチでそういう人種に至ったようにみえたんだから。
「あ、いま聖人君子って言いましたね!」
でもって、りんはやっぱり反応し、
「ずっと言ってるじゃないですか、聖人君子扱いは嫌いだって。お節介も世話焼きも全部私がしたいからしてるだけの趣味なんですってば」
前なら、こう言われて更に反論することはなかった。でも、いまは。
「いや、やっぱりんは聖人よ」
私はいうのだ。
「趣味でも独り善がりでも、ここまで突き抜ければ立派に善人よ。何より、自分をここまで陥れて謝りもしない下衆を赦すようなキチガイが聖人じゃないわけないでしょ」
「沙樹さん」
「実際の所、りんの住所を調べて頭を下げに行くのは簡単だったわ」
私は、改めてりんから体の向きをそらし、少しだけ距離も開けながらいった。
「それをしなかったのは、二度とりんの人生に関わらないほうがいいと思ったから。謝って更に責められるならまだいいほう。私の名前や顔をみて恐怖やトラウマが蘇ると思ったら、とてもじゃないけど連絡なんて取れなかった。だから正直、いまは夢にも見ないどころか、見たら失礼な現場に立ち会った気分よ。りんのほうから仲直りしたいとか言い出すなんて」
おかげで、謝罪のタイミングを掴めない内に、ただの謝らない加害者になってしまったって話だ。
すると、
「私にとって、沙樹さんは最後のジョーカーのような存在でした」
りんはいった。
「気づいてましたか? いまでこそ私、あくまで趣味でお節介をしてますけど。昔は本当に分不相応な正義感でやってたんです」
知ってた。いや、むしろ途中からお節介への向き合い方を変えてた事に気づかなかったというべきか。
「でも、真面目ちゃんで人助けをしても解決できない事って結構あって、そういうものに限って沙樹さんが全部解決しちゃってたんですよ。それで、対抗心が芽生えて、ある日踏み込み過ぎちゃったんですよね」
一拍置いて、りんは、
「ある先輩に、無謀にも向かってみたんです。その先輩は、当時お家の権力で教師も他の大人も味方につけて、校内で好き勝手にやってる方でした」
あっ。
「結果は散々でした。突き付けた正論は何も通じなくて、逆にその場で先生を呼んで、ありもしない悪事をでっちあげて、私に押し付けてきたんです。立ち会った先生は私の事もいい子だってよく褒めてくれて、信頼してる先生だったんですけどね」
先生は先輩の言葉だけに耳を傾け、自分を叱り、激しく非難した。口にはしなかったが、りんの少し寂しげな目は間違いなくそれを物語っていた。
「当時のこと、覚えてますか?」
「まあ、ね」
私はうなずき、
「その先輩がでっちあげた悪事を、私が丁寧に全部実行して、先生の早とちりとして処分させたんだっけ」
なお、その先輩とは神簇のことである。つまり、いま彼女が語った失敗談は小学生の頃の話。
「はい」
りんは嬉しそうな笑顔で、
「だから、確かに沙樹さんには中3の卒業前に人生を壊されましたけど、それ以前に私は一度、あなたに人生を救って貰ってたんですよね」
最近、疎遠になってた元同級生と逢う度に「昔助けられた事がある」と告白されてる気がする。
「だけど、実はその時に心が折れちゃってたんです。私の中の正義感とか、そういうのがポッキリと」
りんは一度苦笑いして、
「なんだか馬鹿らしくなっちゃったんですよね、優等生でいる事に。だから、いっそのこと自分勝手に振舞う事にしたんです。そしたら、結局私ってお節介人助け大好き人間で、それを趣味として楽しんでたら、前よりずっと優等生扱いされちゃって。皮肉ですよね」
ああ。だからりんは聖人扱いとか嫌うのか。すでに彼女にとってそれらはトラウマワードでこそあれ褒め言葉ではないのだ。当時、「いっそ大馬鹿者」呼ばわりしたら逆に喜ばれたのも、事情を知ってしまうと何となく納得できてしまう。
りんは続けていった。
「いつの間にか、私の中で沙樹さんは秩序とかルールとか抜きに本当に正しい人になって、そして憧れに変わってました」
「私が?」
正しい人?
「だから、この先私が本当にどうしようもない事態に出会ったとき、最後の最後に頼れるのは沙樹さんしかいないって思ったんです。先生に裏切られたあの日のように、信じていたもの全てが私を裏切っても、沙樹さんだけは私の声に応えてくれる。そう思ってました」
そして、りんの笑顔が渇いたものに変わり、
「丁度、あの日がそれに近かったのですけど。見事に裏切られました。私のジョーカーに」
ここにきて、蟠りが溶けてないからこその棘がある言い方。しかし、彼女の「ジョーカーに裏切られた」はまるで合わせ鏡のように映った。
だって、
「奇遇ね。私にとっても、りんは最後のジョーカーだったのよ」
「え?」
目を丸くするりんに、
「気づいてるかは分からないけど、私って基本人間不信な所あって。でもりんって、まるで人助け専用の機械じゃない。私にはそう見えたわ」
「人助け専用の機械。言い得て妙ですね」
「だからさ、一周回ってりんだけはどこか信頼できてたのよ。全てが私の敵になっても、りんだけは手を伸ばせば応えてくれるって。それこそ一番大切な梓以上にね。そのジョーカーを切る寸前で本人に裏切られるまで、自分の気持ちに自覚なんてなかったけど」
私も、まるで同じような事をりんに伝える。すると、
「ごめんなさい。たとえあの日が無かったとしても、私では沙樹さんのジョーカーにはなれなかったかもしれません」
りんはいった。
「実は私、これでも趣味の範疇では抱えきれない問題には極力踏み込まないで、見て見ぬフリ、よくしてきたんです」
え? りんが?
「私たちが屋上で大喧嘩した日、沙樹さん屋上に来る前に虐めの現場をひとつ解決して来ましたよね? 私はそれを知っていたのに、スルーして屋上であなたを待ちました。それが証拠です」
「あ」
確かに、私の印象にあるりんなら、あんな虐めの現場を見たなら人助けやお節介が趣味とかいって教師を呼んだはず。
「ズルい女なんです、私。あずちゃんが虐められてたときも、私は殆どなにもできませんでしたし、鱒川さんに至っては吉月先生から性暴力を受けてたことも知ってたのに、裏に恐ろしいものを感じて我が身可愛さに見捨てたら、最悪の結果になっちゃいました。これが、沙樹さんが聖人扱いまでしてくれた私の正体です。軽蔑しましたか?」
「……」
私は、首を横に振った。妙子に至っては私だって何もしなかったわけだし、何より私は最終的にりんを追い込んだ当事者だ。軽蔑なんてできないし、そんな資格はない。
「だからこそ、沙樹さんがジョーカーでした」
そう伝えるりんに、私は返す。
「なら伝えるけど。ごめん、私も仮にあの日がなくても、りんのジョーカーにはなれなかったわ」
私はいった。
「実は私、中学の頃まで誰かを助けようとして助けた事って一度もなかったのよ、梓以外」
すると、
「そんな気はしてました。沙樹さんや学園から離れてから、ふと気づいた程度でしたけど」
「だから、大体が梓を助けるついでだったり、梓を虐める奴だから懲らしめたかったり、被害者の泣き顔が梓と被って映ったり、梓が関係ないなら気紛れだったり、憂さ晴らしに虐めっ子をボコるほうが目的だったりね。当時からいまに至るまで、結局私って梓が全てって人間なのよ」
「くす」
りんは突然笑った。
「相性抜群のカップルじゃないですか。当時、私もあずちゃんから言われましたよ? “私は沙樹ちゃんが全てだ”って。もしかして、もう恋人関係ですか?」
ちょ、いきなりそこに話持ってく?
「いや、それは未来永劫ないって話」
「どうしてですか?」
「単純に、私はレズだけど梓はノーマルって話」
でもって、梓が大好きすぎて、レズの道に引き込もうとして傷つけるのが怖い。嫌われでもしたら余裕で死ねる。ここまでは、さすがに恥ずかしいのでりんには伝えないけど、
「何なら、いまジョーカー切ったらキューピッド役、買って出てくれる?」
「お断りします。下手に出てあずちゃんの怒りを買いたくないですから」
本当。昔からの同級生・元同級生から梓ってどう見られてるのだろうか。
気づけば、りんの顔は霧が晴れたように変わって映った。先ほど感じた瞳の濁りも、随分と綺麗になったように思える。
お互い、時間が経ってみれば金髪ヤンキーの問題そのものよりも、裏切られたショックのほうが強かったのだ。加えて、お互い「ジョーカーだったものの本当の顔」を知らないと、本題に触れても新たな誤解を生む。りんはそう判断したのかもしれない。
「実は、喧嘩の火種になった金髪の人なんですけど」
ここで、りんが触れだした。
そんな直後だった。
「きゃああああああああああ」
脱衣所の辺りで悲鳴が聞こえた。梓の声だった。
「いまのは!?」
「あずちゃん!?」
私たちは、すぐ湯からあがり、体を拭くこともなく脱衣所へ。
梓はかごを収納した棚の傍で倒れていた。私は梓の傍に駆け寄り、
「大丈夫、梓!」
と、呼びかける。意識はない。だけど、怪我は見られず、脈を確認した所、命に別状もなさそうだった。
しかし、
「かはっ」
直後、今度はりんが攻撃されたのか声をあげる。後ろを振り返ると、りんが犯人に髪を引っ張られる形で、だらんと垂れさがる様子がみえた。
「さ、沙樹さん。あずちゃんを連れて、逃げて」
りんは、ゆっくり顔をあげ、消え入りそうな声で私にいう。
しかし、私は動けなかった。
犯人の顔を見た結果、ぞっと背筋が凍り、足がすくんでしまったのだ。
私は震えた声でいった。
「ミストラン。……なんで、ここに」
そこにいたのは、高村司令のクローンであり、黒山羊プライド派つまりフィール・ハンターズ所属の女だった。そして、過去に増田を殺し、たった一撃のフィール攻撃でアンを重体に追い込み、あのフィーアを相手にデュエルで完勝した事もある最悪な相手。私自身も、一度相対した際、地縛神の力を使っても全く敵わず殺されかけた過去を持つ。
肌・髪・瞳などの色彩以外は完全に一回り若くした高村司令。わざわざライダースーツを着ておりスレンダーな肢体はともかく膨らみゼロの胸板が更に強調されている。それでいて、セミロングの髪は銀色で、真紅の瞳と青白い肌が作られた美じみた異質感を思わせた。
「何って、任務」
ミストランは淡々といった。
「いま、闇のフィールに適正のある奴を県内各地からかき集めて拉致回収してるのよ。で、こいつもそのひとり」
言いながらミストランはりんの首根っこを掴み直し、持ち上げる。
「っ、ぁ」
呻きを漏らすりん。
「りんに適正? じゃあ、なんで梓まで倒れてるって話よ!」
「あの巨乳?」
ミストランは梓を一瞥し、
「私が誰か忘れた? 巨乳死すべし慈悲はない」
「ッ」
瞬時にブチ切れた私は、手首から内蔵ナイフを展開し斬りかかるも、刃物がミストランに届くより先に、相手のヤクザキックが腹を直撃。私は背中から壁に激突し、膝をついて倒れる。
ミストランは続けていう。
「で、そこへアンタがターゲットを連れてやってきたから、そこの巨乳に意識が向いてる間にターゲットの確保に成功。ラッキー。で、いまに至るわ」
私は何度も咳き込みながら、倒れた姿勢で見上げると、ミストランはいま正に懐から闇のフィールを纏ったカードを出し、りんに渡そうとしていた。
「まさか適正って」
私の脳裏で最悪な推測が過ぎり、それだけは避けようと今度は腕の内蔵銃でカード向けて発砲。しかしミストランは、カードの角で銃弾を弾き、逆に弾が私の頬をかすめる。
「ドラッグよ」
と、ミストラン。
「闇のフィールはロストや旧ソンブラ社製の牡蠣根ドラッグと併用する事で真価を発揮する。すでにアンタたちの耳にも渡ってるだろう情報よ」
「ッ」
私の最悪な推測は当たってしまった。
「りん! 死んでもあのカードを拒否して! あのカードを手にしたら最後、死ぬほうがマシな目に遭うわ」
私は叫ぶ。しかし、
「ごめんなさい。無理なんです」
りんはいった。
「すでに脅されてるんです。私がこれを拒否したらあずちゃんを殺すって」
「あ」
ミストランのやつ。そんな卑怯な手まで。
「梓は私が死んでも護るわ! だから、りんは!」
早く逃げて! 私は必死に呼びかけるも、
「大丈夫です。死ぬほうがマシな目はすでに経験済ですから」
「アレは一種の洗脳装置よ。心の闇とかいって、トラウマや腹の底のドロドロを思いっきり刺激しながら利用して自我や記憶を操ってくるのよ」
すると、
「あ。それは無理ですね。ちょっと耐えられそうにありません」
なんて、りんはさらっとのたまい、
「もし心の傷跡を全部開かれでもしたら、たとえ生きて助けられてもSAN値直葬してそうですね。ですので沙樹さん、私のことは一思いに殺っちゃってください」
「馬鹿言わないで!」
私はいうも、その間に闇のカードがりんの頭の上に置かれた。
直後、黒い瘴気がりんを包み込み、
「ひっ」
りんの目が見開き、瞳が絶望に染まる。瞼から涙を滲ませ、
「あ……ぁ……。こ、これ……本当に駄目なやつです。沙樹さん、あとはお願いしま」
言い切る前に、りんは再びだらんとなり、ミストランに掴まれたまま垂れ下がる。
「ぅ……あ、ぁ……」
意識はまだ保ってるようだった。しかし、
「りん!」
私が叫んでも、彼女は反応しない。何やらぶつぶつ喋ってる様子もあり、完全に妄想や幻覚の世界に取り込まれてるのが分かる。
しかしそれも次第に無くなり、目を半開きにしたまま一切の反応がなくなった。
「頃合いね」
ここで、ミストランが一度指を鳴らす。すると、りんの体が一度ビクッとなり、
「起きて」
ミストランの声に、
「はい」
と、りんは反応。ミストランが手を離すと同時に、りんは自らの足で立ち上がった。
「りん?」
私は訊ねる。すると、りんは顔半分を影で覆ったような凍える視線で、
「なに?」
と、返す。その様子は、明らかに私の知るりんとは違い、その変貌は今までの闇のフィール・カードのレベルを超えていた。
「確か、りんだっけ? アンタにちょっと質問」
ミストランがいった。
「アンタの所属とフルネームを言ってみて?」
「分かりました」
りんはうなずき、
「私は、フィール・ハンターズ所属、赤司 りんです」
「え」
りんの言葉に私は驚き、
「りん? 一体何が」
私は訊ねる。するとミストランが代わりに、
「マイケルとかいうのに聞けば?」
「っ」
私は察した。たったいま、りんは洗脳されてた時のマイケルと同じ状態に陥ったのだと。
一部ドラッグは被害者をトランス状態にする。それを利用し、
私はいま、第二のマイケル誕生の瞬間を目撃したのだ。
「そんな」
絶望に打ちのめされる私を他所に、
「行くわよ」
「はい」
ふたりはこの場を離れようとする。しかし途中、りんが気絶し倒れる梓の横を通りかかった際、不意に彼女の足が止まった。
「りん?」
ミストランが訊ねる中、りんは、
「この子が。この子さえいなければ」
そういって、りんは突然、梓を力強く踏みつけたのだ。
「ぎゃっ」
痛みに目を覚ます梓。
「ちょ、アンタなにやってるのよ」
直後、驚き制止しようとするミストラン。しかし、それより早く私はりんに踏み込み、
「何するよ!」
と、その頬を思いっきり殴りつけていた。
「ぶっ」
現在、お互いデュエルディスクは付けてない。
おかげでりんはフィールでガードする事ができず、一撃を貰ってその場で倒れる。私は梓の前で跪き、
「大丈夫、梓?」
「う、うん」
少しだけ、顔を青くし気持ち悪そうにしてたけど、軽く触診などチェックしたところ、大事には至ってないと私は判断。
梓がいった。
「それより、いまのって、りんちゃん?」
「ごめん。いま、りんは悪い奴に洗脳されてる。正気じゃないから、許してあげて頂戴」
私は梓を庇いながら、りんの前に対峙。
りんは起き上がり、
「沙樹さん、どいてください。そいつ殺せません」
「させるわけないでしょ」
私はいい、
「何より、どうして梓なのよ。私に殺意を向けるならともかく、梓は関係ないでしょ」
たとえ洗脳されようとも、むしろ洗脳済なら余計、梓を殺そうとする道理はないはずだ。
「あずちゃんがいたから。その子がいるから、沙樹さんは私たちのヒーローにはなってくれなかった」
彼女の口から出た理由は、恐らく洗脳とは無関係。闇のフィールで歪められたものだろうけど、りん自身の心の闇に感じた。
「沙樹さんには幻滅しました。あんな理由で私のジョーカーになってくれなかったなんて」
「っ」
…………。……全く。
「その言葉、そっくり返すわ。所詮趣味だから、その範疇を超える問題は無視したいから私のジョーカーにはなれないって話でしょ」
「それは」
痛い所を突くな。そんな顔をりんは見せる。
私は続けていった。
「デュエルよ、りん?」
「デュエル?」
「あなたにどんな理由があろうとも、梓に手をあげた時点で私の敵よ。今度こそ念入りに潰してやるから覚悟して頂戴」
すると、後ろで梓が、
「沙樹ちゃん待って。りんちゃん、いま洗脳されてああなっちゃってるんでしょ? 許してあげてよ」
「梓」
私は、顔だけりんへの憎しみを取り繕いながら小声で、
「大丈夫よ」
と、伝える。直後、
「ふぅん」
ミストランがいった。
「そういって、体よくデュエルに持ち込んで洗脳を解こうって魂胆?」
「……」
私は無言を貫く。図星だった。
しかし、すぐにミストランは、
「まあいいわ。付き合ってやりなさい」
と、いったのだ。
「即席デュエル兵士の試運転にはなりそうだしね。洗脳した結果、早速トラブルを起こしたこいつが戦力になるかどうか、アンタとのデュエルで確かめてみるわ」
「まるで、私程度に勝てないと戦力外みたいな言い方ね」
「いや、実際そうだけど?」
当たり前でしょ? と言いたげにミストランはいい、
「罠カード《アームズ・コール》を発動」
と、カードを発動する。直後、脱衣所のかごがひとつ光ったと思うと、りんは湯で濡れたまま浴衣を纏い、デュエルディスクを装備した姿に変わっていた。
多分、先ほどのかごにりんは着ていた服やデュエルディスクを入れてたのだろう。そして、ミストランの発動したカードのフィールによって転送。その場で装備されたのだ。
「沙樹ちゃん」
一方、私の浴衣とデュエルディスクは梓の手渡し。ミストランとの会話の間に、梓は私の荷物の入ったかごを探し、持ってきてくれたのだ。
「サンキュ、梓」
私はバスタオルで軽く体を拭いてから浴衣を羽織り、デュエルディスクを装着。
直後だった。
りんの手によって強制デュエルを仕掛けられる。そこまではいつも通りの展開。しかし、同時に床に広がるのは紫色の光で描かれた模様。辺りは瘴気に包まれ薄暗さを見せ、蒼い炎がリングを形成するように私とりんを囲ったのだ。
これは、まさか!?
「ああ。言い忘れてたけど」
ミストランがいった。
「デュエルに負けたほうは、ガチで死んで貰うから」
「え?……さ、沙樹ちゃん!」
梓が悲痛な声をあげる。が、私は返事ができずにいた。
私は、その場でショックに放心し、立ち尽くしていた。まさか、りんとデスデュエルをさせられるなんて思ってもみなかったからだ。
しかし、思えば元々最初にデスデュエルを私たちに見せたのは、洗脳で即席のデュエル兵士となったマイケルだ。そう考えると、いまのりんにこのデュエルを仕掛ける技術があってもおかしくない。それを想定し忘れていたのだ。
「構えてください、沙樹さん。不戦敗になって貰いますよ?」
りんの言葉にハッとなる。彼女はすでにデュエルディスクを構え、手札を4枚引き抜いていた。
つまり、もうデュエルは開始されていたのだ。先攻は、不正なくランダム決定の機能でりんとなっている。
「やるしかないか」
私は手札を4枚引いて、
「梓は私から離れないで。いまのりんの様子だと、梓に攻撃を仕掛けてくる可能性もあるわ」
「う、うん」
梓は不安そうにうなずき、いった。
「沙樹ちゃん。死なないでね? それと」
「分かってるわ」
私はうなずき、
「私もりんも死なないし、必ずりんの洗脳も解いて助けるわ」
この時、私は気づかなかった。どうして、梓は知りもしないはずのデスデュエルにここまで順応してるのかと。
「デュエル!」
私たちは、すでに第一ターンのメインフェイズに入った状態で叫んだ。
沙樹
LP4000
手札4
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りん
LP4000
手札4
もうすぐ、マスタールールが新ルールに更新されますが、次回のデュエルは従来の新マスタールールによるスピードデュエルで行います。