私の名前は
そして、かすが様愛です。
「さて」
2日目。深夜23:45。
すでに彩土姫ちゃんと水姫ちゃんが就寝し、金玖ちゃんが眠いのを我慢し起きてる中、私は深海ちゃんを除く残りのメンバーに伝えます。
「先ほど伝えた通り、夢月お姉ちゃんを誘拐した黒幕はかすが様。そして彼の部下には深海ちゃんがいて、金玖ちゃんも雇われてあちらサイドにいます。間違いはないですね、金玖ちゃん」
「その情報は、正しい」
目をこすりながら、金玖ちゃんはいいます。周りは完全にお通夜状態。地津ちゃんは私が拉致された辺りで勘づいてたらしく比較的冷静ですけど、冥弥ちゃんも、ゼウスちゃんも、メールちゃんも、完全にショックで目に光を失ってます。
「だが、尋問は無駄だ。まだ、情報は何も持ってない」
「大丈夫ですよ。少なくとも現状は尋問の予定はありませんから」
私は金玖ちゃんの頭を撫でます。
「なら寝かせてくれ」
ふぁぁ、と欠伸する金玖ちゃんですけど、残念ですけど今回それはできません。なお、周囲は私と金玖ちゃんの会話さえ耳に届いてないように映ります。
そんな中、ナーガちゃんは不機嫌そうに、
「木更姉さん。朝までそっとしておいてくれと言わなかったか?」
「確かに言いましたね」
「なら」
完全に、心がポッキポキに折れた顔でした。屋上にでも連れて行ったらそのまま飛び降りてしまいそうな。
でも。
「駄目ですよ、ナーガちゃん。まだ旅行の
「……は?」
力ない声で、何のことだと訊ねるナーガちゃん。一方、冥弥ちゃんとゼウスちゃんは。
「まさか……やるの?」
「正気か? そんな事実を前にして、おぬしはあれをやろうというのか?」
と、勘づいた模様。
「当然です」
私は言いました。
「確かに、私たちの平穏を奪い去ったのはかすが様です。恐らく、その事実に誤りはないのでしょう。その上で、私はみんなに聞きます」
私は、親戚たちに順番に顔を向けてから、
「この中に、憎しみのあまりにかすが様への愛を忘れた方はいますか? 失意のあまりにかすが様への情を忘れた方はいますか? 胸に秘めたそれぞれの想いを捨てきれる方はいますか? 私は捨てきれませんでした。私は、やっぱりかすが様が大好きです。例えかすが様と敵対しデュエルで殺し合ったとしても、その日の晩に、私はいつものようにかすが様の家にこっそりお邪魔するでしょう。ご帰宅されてなかったらお風呂を沸かし、掃除とベッドメイクを終え、夫の帰りを待つ妻のように家主を待ちたいと今でも思ってます。皆さんはどうですか? 想いや形はそれぞれ違いますけど、かすが様の為なら、あらゆる正気をドブに捨てれるのが藤稔親戚一同だと私は思ってます」
すると、妹たちはそれぞれハッとし、考え込みます。
「ぐぬぬ。たしかに」
「かすが様が、フィール・ハンターズなら……霞谷とのカップリングのいいスパイスになる。……問題ない、かも」
段々と私の意見に同調しはじめるゼウスちゃんと冥弥ちゃん。ところで地津ちゃん、「正気をドブに捨ててる自覚あったのか」とか驚かないでください。ドブに「捨て
でも、そのドブに捨ててる組のナーガちゃんは。
「木更姉さん。悪いが、私は反対意見を出させて貰う」
と、反論します。
「恐らく木更姉さんの言ってることは間違ってはいない。だが、私は憎むべき黒幕としての決闘を望む。たとえ、それがかすが様だとしてもだ。夢月姉さんを救い出し、私たちから全てを奪った奴を罰する。その為に私は世界の裏側に足を踏み込んだのだからな」
「ナーガちゃん」
「だが、いまは疲れている。深海だけでなく金玖までもがあちら側なんだぞ? 限界なんだ! 何もかも受け止めきれない! 寝込みを暗殺されてもいいから休ませてくれ!」
恐らく、今回の件で一番ショックを受けたのはナーガちゃんでしょう。
でも、私はいいました。
「ナーガちゃん。いまは全てを忘れて予定を執行しましょう」
「は?」
目を丸くするナーガちゃん。私は続けて、
「この夜だけは、誰が黒幕だったとか、誰が黒幕の味方だったとか、そんなのは些細な問題なんです。私は全ての真実を知った上で、真実とかすが様への愛は分けて考えるべきなんです。ナーガちゃんも、かすが様がどれだけ憎くても、あなたの中にまだかすが様への愛が残ってるなら、やりましょう! ナーガちゃん!」
私は、らしくないほどエネルギッシュに勧誘します。でも、
「そんなの、無理に決まっている」
ナーガちゃんは金玖ちゃんを横目で見て、いいました。
「深海だけなら納得できる。奴は姉妹を大切にしながら、かすが様の為ならその大切な姉妹だって手をかけそうな奴だからな。――だがしかし、かすが様と妹までも敵なんだぞ! このショックを、いますぐ忘れろというのか! できるというのか! そんな事ができるのは、木更姉さんだけだ!」
ナーガちゃんの嘆き叫び。しかし、そこへ口を挟んだのはメールちゃん。
「ねえ木更おねーちゃん。ルールは何も変わってないよね?」
「メール?」
誰がといわず呟く中、私は。
「はい。予定通りのルールでいくつもりです」
「それなら、もし私が勝っちゃったら、尋問してもいーい? かすが様のお尻を貰いながら、夢月おねーちゃんの事とか、これまでの悪事とか、全部吐いて貰うまで、何時間も、何時間も、ずこばこぉ」
はぁはぁと息を荒げるメールちゃんに、
「勿論です」
私は肯定しました。
「やったあ。じゃあ、わたし参加するねー」
メールちゃんは満面の笑みで万歳します。
「成る程な」
で、そんなメールちゃんの様子をみて、続いて動いたのは地津ちゃん。
「かすが様が黒幕だからって今日ヤりたかった事を辞める必要はねーし、何ならかすが様に愛も憎しみも狂気もショックも何もかもぶつければいいだけか」
「はい」
私はうなずき、
「なお深海ちゃんは、今日それを決行しますと伝えたら姿をくらませました。恐らくかすが様のボディガードとして私たちを全員撃墜してから、勝者となる算段なのでしょう」
「なら、アタシは参加するぜ。個人の欲求より家族の奪還を優先してー奴はアタシに協力しな」
「あ」
はっとなるナーガちゃんと私。かすが様への愛ではなく「そういう目的」での参加だって十分アリだということを、失念してたのです。
同様に、地津ちゃんの言葉に冥弥ちゃんとゼウスちゃんの目に炎が灯ったのが分かります。
「私は……協力しない」
一方、地津ちゃんの誘いを堂々と断ったのは、敵側に立ちながら今この会話に参加してる金玖ちゃん。
「私は、個人の欲求を優先する。……私は、かすが様の無様な泣き顔が見たい」
「お前の立場なら地津の味方しないのは当然だろう。だが、逆にかすが様の味方はしないのか?」
訊ねるナーガちゃんに、
「この機会を捨ててまで……仕事を選ぶ義理はない」
と、金玖ちゃん。
「そうか」
妹の言葉を聞き、ナーガちゃんは少し嬉しそうに、
「金玖。お前は私や藤稔の皆を捨てたわけではないのだな」
「何をいう。……そんなの、愚問の極みだ」
「愚問の極みか、失礼なことを聞いたな」
ナーガちゃんはいうと、その場であぐらをかき、目を閉じます。
「妹は悪魔に魂を売ってない。それが分かっただけでも十分だ。――皆」
ナーガちゃんはいいました。
「仮に勝者が私だった場合、数日後かすが様の葬式が行なわれても文句は言わないで貰おうか」
彼女の宣言に、周囲が一斉に驚愕します。
「いま、やっと私自身を理解した。我が愛と憎悪は表裏一体! ならば、かすが様を憎めば憎む程、私のかすが様への愛は溢れだし、いまや私の想いは宿命となった。愛を憎悪を呼ぶならば、憎悪が愛と読むならば、私はかすが様を討つことで、この乙女座の宿命に殉じよう」
そんな、ナーガちゃんの決意の語りに、
「これは、途中で阻止しないと……駄目」
「第一の敵はナーガか」
冥弥ちゃん、ゼウスちゃんがナーガちゃんに警戒を露にし、
「ああ。こいつは面白いことになってきたなぁ、おい」
普段は無気力な地津ちゃんが、好戦的な笑みを浮かべます。
「さて、全員心が固まったのでしたら。彩土姫ちゃんと水姫ちゃんを起こしましょうか」
私は皆を代表し、続けていいました。
「これより、私たちは第23回かすが様争奪戦を開始します」
かすが様争奪戦とは、今回の旅行を行うにあたり元々予定してたイベントです。
第一回の発案者が誰だったかはすでに思い出せません。なにせ、私やかすが様がT○kyoにいた頃は、親戚が3人以上集まれば息をするようにやってた行事でしたので。私もフィールを使えなかった頃から、この身ひとつの技術で色々かすが様愛の為に奮闘したものです。
それで、ルールなのですけど。
一、0時30分より行動開始とする。
二、他人の殺傷を禁止とし、それ以外のあらゆる手段を許可する。
三、かすが様のプライベート侵害は一切考慮しなくて善い
四、ストーキング、違法侵入、凶器の使用等は各自、自己責任とする。
五、以上を踏まえ、先にかすが様を獲得した人を勝者とする。
(どの状態を獲得したと判断するかは一同のノリで決める)
これが、今回かすが様争奪戦を行うにあたり、皆で決めた約束事になります。
実は集まったメンバーに併せて毎回少しずつルールを微調整してたのですけど、今回はほぼ全員集まった為、かつてない程に無秩序に行おうという話になったんです。いま思えば、フィール能力を得た人たちがその力を行使する気満々だったのが分かりますね。私もそのつもりでしたから。
――現在時刻0:35
といったわけで、争奪戦は始まりました。
すでに深海ちゃんを除いた私たち9名は全員旅館を抜け出しています。そんな中、現在私は。
「はあっ、はあっ」
その内8名全員に追いかけられ、全力で逃げてる所です。
何故なら、この9名の中で、私だけがかすが様の現自宅を知っていて、《ワーム・ホール》1発でかすが様の家に侵入できることを知っているから。
私は地の利を活かし複雑な路地裏を駆け回ります。街灯の光も遠く殆ど真っ暗闇の道、他の皆はデュエルディスクからライトを灯して移動するしかない中、構造を完璧に把握してる私は光を一切頼らず、逆に他のみんなのライトから避けるように移動します。
ですけど、
「逃がさないよ!」
と、前方から声。
先回りして最初に私の前に立ったのは、意外にもフィール能力を持たない彩土姫ちゃんでした。
「彩土姫ちゃん、どうして」
私の逃走ルートを掴んでるのですか? しかもライトの光もなしに。
「地の利があるのは木更姉ちゃんだけじゃないんだよ」
彩土姫ちゃんの言葉に、私はハッとします。
「もしかして」
後ろを振り向くと、直後ローラースケートを履いた水姫ちゃんがやってきたんです。
「や、やっと追い付いた。先回りありがと彩土姫ちゃん」
「いいっていいって、これでボクたちが仲良く一番乗りだっ」
私はここで初めてデュエルディスクのライトを灯し、気づきます。ふたりはライトではなく暗視機能付きの高価なDゲイザーを使っていたのです。もしかして彩土姫ちゃん、体を売って稼いだ資金を使って……!?
となると、もしかしたら誘導されていたのかもしれません。実際、いま私がいるのは逃げ場のない一本道。まさか、このふたりに追い詰められるなんて。思わぬダークホースでした。
しかも水姫ちゃんの首には、少なくとも朝にはかけられてなかったロケットペンダントが。それも、カードを1枚収納できそうなサイズの。もしかして、かつてフィーアちゃんから貰ったというフィール・カードを?
水姫ちゃんが持ってるカードは高い回復能力のフィールを持っていると聞きます。本来体が弱い水姫ちゃんは、その力で人並みの体力を維持している。ならば。
「水姫ちゃん、ごめんなさい。永続罠《スキルドレイン》!」
私はハングドの技術でフィールカードに加工して貰った《スキルドレイン》を使用。水姫ちゃんのフィール・カードはモンスターだったはずですから。これでフィール・カードの恩恵は無効になるはず。
「っ、けほっ、けほっ」
予想通り。私の周りを特殊な結界が覆うと、中にいた水姫ちゃんは突然苦しみだします。
ローラースケートとはいえ、ここまで水姫ちゃんは全力で走ってきたのですから、本来ならとっくに体が悲鳴をあげる程に体力を消耗していたんです。
「ば、馬鹿! 木更姉ちゃん、そんな事したら水姫ちゃんが」
と、慌てて水姫ちゃんの下に駆け寄る彩土姫ちゃん。
「大丈夫です。この結界の外に出ればすぐ元気になりますから。……もちろん、追いかけて結界に入り直したら、またすぐ今の水姫ちゃんに戻りますけど」
言い残しながら私は走り去ります。後ろで、
「見そこなったよ姉ちゃん! 鬼! 悪魔!」
と、彩土姫ちゃんが叫びましたけど、かすが様への愛の為には無視するしかありません。
私はいまの道を突き当りまで進み、左へ曲がります。
すると直後、私の眼前に「死」と描かれた模様が浮かび上がり、突如巻きあがる煙に私は包まれました。
(え?)
と、思ったけどすでに遅く、私は煙を吸ってしまい、
「っ!? あ、ぅっ――」
初めて経験する心臓の発作。息もできず、私は苦しみながら倒れます。
もがきながら見上げると、前方には冥弥ちゃんの姿。
冥弥ちゃんは私の腕を手にとると、デュエルディスクから《スキルドレイン》を引き抜きます。すると周囲の結界は消えて、
「助かったよ冥弥姉ちゃん」
「し、死ぬかと思ったー」
って、彩土姫ちゃんと水姫ちゃんが追いついてきました。
「少し……待ってて」
冥弥ちゃんはいいました。
「いま、木更さんを生かさず殺さず苦しめて……体力を抜いてる、から」
「うわ」
ドン引きする水姫ちゃん。その横から彩土姫ちゃんが、
「地津姉ちゃんの指示?」
「はい」
「使ったカードは?」
「《死のデッキ破壊ウイルス》……です」
「うわ、いまの木更姉ちゃんにピッタリ」
酷い会話です。
「……え、何?」
突然、冥弥ちゃんが呟きました。見ると彼女のデュエルディスクの角から煙が巻きあがった様子。
これって。
心当たりが頭に浮かんだ直後でした。
煙の中から、鋭い注射針のような舌が顔を出すと、うにょうにょ動きながら冥弥ちゃんの耳の穴へと侵入。
「え?……あ、あへ。。。へ…あ…ぉぉぉ……」
途端、冥弥ちゃんの目がぐるんと白目を向き、涙、鼻水、涎を垂らしながらその場でぺたんと尻餅をつき、失禁する様まで晒します。
間違いありません。このカードって。
続けて、私の前方に《治療の神 ディアン・ケト》が浮かび上がり、優しい光で私を包みます。すると、ウイルスによる心臓の苦しみが段々消えていきました。
「大丈夫、木更ちゃん」
同時に道の奥の夜闇からひとりの少女が顔を出します。
「フェンリルさん」
私は、少女の名を呼びました。
「どうして」
「望遠鏡で眺めてたら、旅館を出るのが見えてね、こっそり付けてきたんだ」
え?
「あの、もう一度お願いします」
「望遠鏡で眺めてたら、旅館を出るのが見えてね、こっそり付けてきたんだ」
藤稔 木更、高校1年生。
まさか自分がストーキングされる日がくるとは思いませんでした。
「と、とりあえず。ありがとうございます」
動揺しながら、とりあえず私は頭を下げます。フェンリルさんは、やんわり微笑んで、
「ここからはボクも協力するよ、木更ちゃんの勝利に。見た所ルール無用だから、木更ちゃんの武装扱いってことでいいかな?」
「あの、フェンリルさん私たちの事情をどこまで」
「部屋の窓が開いたときにこっそり盗聴器を撃ち込んだんだ。だから直前の会話程度の内容は把握してるよ」
ストーカーって恐ろしいですね。
「気持ちはありがとうございます。けど、さすがに第三者を雇うのはルール無用でもフェアさに欠けてますから」
私はフェンリルさんにいい、冥弥ちゃんの前に立つ。そして、ロープを取り出し全身を拘束してから、
「治して頂けますか? 冥弥ちゃんを」
「ちゃっかり動けなくしてから言うんだ。まあ、いいんだけどね」
フェンリルさんは苦笑いしてから、2枚目の《治療の神 ディアン・ケト》を取り出した。ところで、
「昼間のデュエル。私もフェンリルさんの《ティンダングル・スパイク》の攻撃を受けてたら、こうなっていたのでしょうか?」
「さすがに違うよ」
フェンリルさんはいった。ですよね。さすがにもう少し加減してくれるはず。
「加えてボクを求めて自慰に耽り始めてたよ。あと、フィールをすっごい込めてたから、ボクの《治療の神 ディアン・ケト》では治らなかったかもしれないね」
私は聞かなかったことにしました。
その後、水姫ちゃんは冥弥ちゃんを連れて旅館へ。そのまま介抱に回ったそうです。
――藤稔 冥弥:リタイア
――藤稔 水姫:リタイア
彩土姫ちゃんは、冥弥ちゃんの事態にびびったのか、いつの間にか退却していました。それから何とか妹たちを振り切った私は《ワーム・ホール》を発動。かすが様の部屋へと繋ぎます。
カードの発動は無事成功。私はゲートを潜ろうとします。しかし、何故でしょうか。フェンリルさんの時と違い確かにかすが様の部屋と繋がりはしたのに、ゲートの入り口が壁みたいになっていて入ることができないのです。
(どうして)
私が思った瞬間でした。
突如、ゲートの中から《幻獣機レイステイルス》《幻獣機テザーウルフ》《幻獣機メガラプター》が飛びだしてきたのです。
「このモンスター、もしかして」
私が呟いた直後でした。
「その声、やっぱり木更ちゃんね」
ゲートの先から、鳥乃先輩の声が聞こえたんです。
「鳥乃先輩、どうして」
「どうしてって、当然って話でしょ」
先輩はいいました。
「過去の依頼のアフターフォローよ」
って。
「深海ちゃんの情報提供でね、木更ちゃんたちが今晩かすが店長の家を総出で襲撃するって」
「だからって、よく自分を一度殺した一味と知って協力できますね先輩」
「それが仕事って話。それに、私としてはほぼ同じ言葉を木更ちゃんに返したいって話だけど」
さすがに今回はごもっとも。
なんて話してる間に、3機の幻獣機は私の周囲を包囲し、
「それじゃあ仕事に入らせて貰うから。レイステイルス、テザーウルフ、メガラプター、攻撃開始」
3機は同時に私目がけて機銃をばら撒いてきました。
「《攻撃の無敵化》!」
私は咄嗟にリアルファイト用のカードで弾幕を防ぎ、続けて、
「《強制脱出装置》!」
包囲を切り抜けるのは困難と判断した私は、躊躇いなく引き返すことを選択。私の体は一瞬にして旅館前のスタート地点へ逆戻り。
しかし、直後私の体は地面に発生した穴に真っ逆さま。
「きゃっ」
まさか、ここにもハングドの包囲網が? なんて思った所、
「よう」
と、地津ちゃんが穴の上から私を覗き込んだのでした。
「さすがの木更でも、アタシら全員に狙われたら、いつか引き返すと読んでたぜー」
と、発動中のカードとは別に《落とし穴》のカードを私に見せてひらひらする。
「地津ちゃん?」
「っつーワケだ姉貴、交渉に入ろうや。大人しくリタイアしてかすが様の部屋に《ワーム・ホール》を繋いで貰えねーか?」
「え?」
「もし断ったら、《地割れ》でも使って争奪戦終了まで行方不明になって貰うけどな」
その様子から、どうやら地津ちゃんは何も知らない模様。
地津ちゃんは続けて、
「これで争奪戦はアタシのひとり勝ち。いやー楽な闘いだったぜ」
「待ってください。地津ちゃんは夢月お姉ちゃんの奪還を優先して、同志と組まれてたのでは?」
すると、地津ちゃんはニヒルに笑って、
「まーな。だが、アタシが個人の欲求を優先しないとは言ってねーぜ」
なんてのたまったのです。
「ま、正確に言えば片方だけなんて面倒だから両方優先だけどな」
「なるほどねー」
そこへ聞こえたのは、メールちゃんの声。
地津ちゃんは振り返って、
「な、メール。どうして、いや、いつからここに」
「うーん。ずっとー?」
どうやら、穴の下からは見えないけど、すぐ傍にメールちゃんがいるようです。
しかも、メールちゃんだけじゃないみたいで。
「で、さ。いまの地津ねーちゃんの話、録音しちゃったんだけど。どうしよっかなー」
と、脅しにかかったのは、さっき交戦したばかりの彩土姫ちゃん。どうやら逃げた後に今度はメールちゃんと手を組んだ模様です。もしくは最初から三人一組だったのか。
「ぐぬぬ」
じりじりと後ろの下がる地津ちゃん。これはチャンスです。
「メールちゃん、地津ちゃんがほら、誘ってますよー」
私は穴の下から呼びかけます。すると、
「ほぁっ!?」
突然のことに動揺する地津ちゃん。そして、
「わーい♪」
瞬時に理性を手放し、飛び付くメールちゃん。でもって地津ちゃんの真後ろは、いま正に私が落ちてる穴。
結果。
ふたりは揃って穴に落下しちゃいました。
「道連れ2名ご案内ですね」
私は落下するふたりを避け、満面な笑みでいいます。
「ちょっ、あんな露骨な罠に引っ掛からないでよメールちゃん!」
「ご、ごめんなさーい」
穴の上から嘆く彩土姫ちゃんに、穴の下のメールちゃんが嘆き返します。なお、メールちゃんの男の人は当然おっきしてて、地津ちゃんのお尻のお肉に食い込んでるのが見えます。さらにメールちゃんの下に地津ちゃんが下敷きになる形で倒れてる為、地津ちゃんは振り払うことができず、
「や、やめろメール。まずその硬くなってるのを鎮めてくれ」
なんて言うのでつい、
「沈めてあげましょう、地津ちゃんのナカに」
私は追い打ちをかけてしまい、
「こらあああああああああああああああ」
地津ちゃんの絶叫が穴の中に響き渡ります。
――この時、穴の外が一瞬だけ不自然に真っ暗になりましたけど、会話がヒートアップしてたせいで「気のせい」と私は受け取り、
「いいじゃないですか。ずぼらな地津さんには勿体無い優良物件ですよ?」
「同性で妹にしか見れねぇよ」
「地津ちゃんはメールちゃんが可愛くないのですか?」
「可愛いよ! 目に入れても痛くないほど可愛いに決まってんだろ」
想像以上に妹溺愛でした。
「ていうか姉貴黒いな。こっちに来て一気にダーク化したんじゃねえか?」
「この位強くないと鳥乃先輩の相手できませんよ」
私は冗談半分に言ったつもりだったのですけど、
「あー。同じようにメールをアタシにけしかけたしな」
「あ」
そういえば、旅館の前でお別れの時、鳥乃先輩もメールちゃんを使って地津ちゃんにやり返してましたね。それも全く同じ方法で。
案外、先輩に適応するだけじゃなく先輩に影響された所もあるのかも。
「といいますか大事なこと忘れてました」
ここで、私は先ほど知った事実を思い出し、いいます。
「彩土姫ちゃん地津ちゃんメールちゃん、提案したい事があるので聞いてくれますか?」
「メールをどけてくれたら聞いてやる」
地津ちゃんがいった所、
「あ、ごめんねー」
と、メールちゃんが自分からどこうとするも、絶妙に狭い穴の中の為自力では離れられず、私が手を引っ張り、自分にしがみつかせて何とか解放。
「助かったぜ。で、なんだよ突然」
訊ねる地津ちゃんに私はいいました。
「突然ですけど、かすが様の前に辿り着くまで手を組みませんか?」
「え?」
と、反応したのはメールちゃん。続けて地津ちゃんが、
「何があった?」
「鳥乃先輩が、かすが様に雇われました」
「は?」「え?」
驚く地津ちゃんそしてメールちゃん。
「実は鳥乃先輩、一種の警備会社のような所で働いてるのですけど、どうやら深海ちゃんが、かすが様に私たちが今晩一斉に向かう事をばらしたらしくて、それで」
私は、反応がないとはいえ彩土姫ちゃんに伝えても問題ない範囲で詳細を明かします。しかし、やっぱり反応するのはふたりだけで、
「ということはー。ハ……その警備会社が敵に回っちゃったんだー」
と、メールちゃん。続けて地津ちゃんが、
「そいつはヤバいな。鳥乃さん以外にも警備に入った奴がいるかもしれねえ、アタシの監視に入ってた双子の姉ちゃん含めてな」
双庭さん姉妹。確かに彼女もあちら側に入ってる可能性はありますね。基本ハングズは単独で動くことはしませんから。
「ついでに、そんな事を頼むってことは《ワーム・ホール》での突入も対策されてしまったわけだな」
「はい」
私は肯定します。
地津ちゃんは、頭を一回掻いてから、
「分かった。とりあえず《落とし穴》は解除する」
と、地津ちゃんはデュエルディスクから《落とし穴》のカードを引き抜きます。直後、穴は盛り上がるように塞がり、押し出されるように私たちは外へ。
――そこで見たものは。
高村司令の娘、菫さんが意識のない彩土姫ちゃんをアイアンクローで掴み上げてる姿でした。
「え」「え」「え」
突然のことに茫然とする私たち。菫さんはこちらを尻目に、すでに戦闘不能に陥った彩土姫ちゃんと投げ飛ばし、
「緊急招集。今日は、姉妹水いらずの夜だったのに」
凍えるような冷たい声で、見下ろしいいました。
「ユルサナイ」
彼女の周りをドス黒いフィール、いえオーラが包みます。その顔は能面のように表情が無く、躊躇い無く人を殺しそうな精神状態を窺わせます。
そういえば聞いたことがあります。
菫さんは自分の姉妹を、特にお姉さんを大切に想ってて、想いが強すぎてたまに危険な精神状態になるって。
私たちは、恐怖と動揺に固まってましたけど、
「あ、あれはやべえ! 逃げろ!」
一足先に、地津ちゃんが硬直から抜け出し、敵に後ろをみせて駆け出します。直後、
「逃ガサナイ」
菫ちゃんが構えると、その姿勢のまま地を滑るように地津ちゃんを追いかけます。しかも残像を残して。
これが鳥乃先輩が言ってた「阿○羅閃空みたいな動き」なのでしょうか。
菫ちゃんは瞬く間に地津ちゃんに追いつき、彼女の頭を掴もうとします。そこを、
「駄目えっ!」
横からメールちゃんが地津ちゃんを突き飛ばし、代わりに菫ちゃんに頭を掴まれます。
「なら、まずはアナタカラ」
すると一瞬周囲がフィールで暗闇に包まれ、直後にはメールちゃんが全身何十発も殴られたようにボロボロな姿で、菫ちゃんに掴み上げられていました。
「え」「な」
私たちは、再び恐怖と動揺で硬直します。だって、私たちが見たのは、一瞬だけ辺りが真っ暗になっただけなんですから。
恐らく、これが先輩がいってた「瞬○殺っぽいこと」なのでしょう。そういえば私たちが穴に落ちてたとき、一瞬辺りが暗くなってました。ということは、あの時に彩土姫ちゃんは菫さんの瞬○殺を。
「次ハ、ドッチ?」
彩土姫ちゃん同様、投げ捨てられるメールちゃん。
「も、もう駄目だ。おしまいだ」
どこかの野菜の星の王子みたいな台詞を吐く地津ちゃん。ですけど、無理もありません。私だって逃げられないって確信できてしまったのですから。
「眼鏡の子? それとも木更ちゃん?」
能面のまま菫ちゃんは私たちを交互に見ます。恐らく、先に動いたほうから狙われるのでしょう。しかも、私や地津ちゃんが強制デュエルの赤外線を飛ばそうにも、避けられるか、それより早く瞬〇殺されるか。なので、私たちは固まるしかできず。
「どちらでもないよ」
そこへ一筋の赤外線が菫さんのデュエルディスクに飛ばされました。
メールちゃんでした。彼女は瞬○殺されても気を失うことなく、隙をついて死角から菫さんに強制デュエルを仕掛けたのです。
「あ」
一瞬だけ「しまった」って顔になる菫さん。
「メールちゃん!」「メール、おまえ!」
呼びかける私と地津ちゃんにメールちゃんは、
「おねーちゃん、いまのうちに行って。このおねーちゃんはわたしが引き受けるから」
と、すでにボロボロな体でなんとか立ちあがります。
「木更、ここはメールに任せて行くぞ」
地津ちゃんがいいました。
「でも」
一方、私はメールちゃんを放っておけず言いますけど、
「あいつの覚悟を無駄にするんじゃねえよ」
という地津ちゃんの言葉に、
「そうですね」
私は考えを改めてうなずきます。
「メールちゃん、必ず戻ってきてくださいね」
「うん。まかせてー」
笑顔でいうメールちゃん。私たちは、彼女を信じかすが様のマンションへと向かいました。
――藤稔 彩土姫:リタイア
――藤稔 メール:リタイア(?)
駅前の住宅街に建てられた高級マンション。その一室にかすが様の部屋はあります。
Kasugayaまで徒歩数分。辺りは程良く広い歩道に高級住宅が立ち並び、傍には祭り会場のとは一回り小さいものの児童公園も見当たります。いまは夜中なので、街灯をもってしても景色の全貌を見渡すことはできませんけど。
「すげーな。こんな所に住んでるのかよ」
かすが様の家の近くまでは、妨害もなくスムーズに辿りつきました。
私が少し遠目に見える正面のマンションを指していうと、左側で歩く地津ちゃんはいいます。ですが、
「で、ところでさ」
地津ちゃんは声を低く小さくしていいました。
「突然だが、アタシが『跳べ』といったら、すぐ右側に跳べるか?」
「? ええ」
私がうなずくと、
「了解『跳べ』!」
「ええっ!?」
間髪入れず告げられた言葉に、私は驚きつつも右へ跳びます。同時に地津ちゃんは反対側に跳び、直後私が先ほどまでいた位置に銃弾が飛来しました。
「これって」
「止まるな! 公園に逃げるぞ」
言いながら一足先に逃げ込む地津ちゃん。私も「はい」と続き公園に逃げ、遊具の後ろに隠れます。
「地津ちゃん、どうして狙撃手が狙ってるのに気づいたのですか?」
追撃がないのを確認してから、私は訊ねます。
「感知はしてねえ。狙撃手がいるものとして読んだだけだ」
地津ちゃんはいいました。
「まず、マンションに狙撃手が潜んでると仮定する。で、アタシらが通った経路、移動速度から狙撃手がいつからアタシらを標準定めてたか、何回標準を修正したか、一番狙いやすい場所は、タイミングは、その辺の所を予測しただけだっつーの。実際に居るか居ないかは関係ねーよ」
「……」
私は、地津ちゃんの並はずれた頭脳を目の当たりにして、知ってたはずなのに茫然とします。
「ふふっ」
そして、数秒の間の後に頬笑みをこぼしました。
「なんだよ」
「いえ、過去の争奪戦でも、いつも地津ちゃんには掌に転がされてたのを思い出しただけです」
「身体能力も無え、体力も無え、それを鍛える根気も無え、アタシが武器にできたのは頭だけなんだよ」
でも、その頭でいつも地津ちゃんは敵も味方もひっくるめて、時にはスタート地点から一歩も出ないまま実質勝利したこともある程なのですよね。
「そういえば、争奪戦で共闘したのは初めてですね。とても心強いです」
いうと、地津ちゃんはにやっと、
「謙遜はしねえ。冥弥とあのゼウスが、駒に利用されてると分かっても毎回アタシ側につきたがる気持ちが分かるだろ」
「はい、凄く」
そういえばオールバックの協力者探しも今回も、地津ちゃん冥弥ちゃんゼウスちゃんは大体一組で行動してました。何気に「利用されると知って地津ちゃんについてる」のは、たったいま初めて知ったことですけど、今はその気持ちが凄く分かります。
だって。
「地津ちゃんは仲間想いですものね」
「そ、そんなんじゃねーし」
地津ちゃんは顔を真っ赤にし、そっぽを向きながら照れ隠しに小石を拾い掌の上でポンポンと跳ねさせます。
けど、過去の争奪戦では地津ちゃんが組んだ仲間を勝者に導くこともあったりしましたし、仲間想いなのは確かなんです。もしかしたら私たち10人の中で一番って程に。
ですけど、ここは地津ちゃん謙遜してか、
「大体、仲間想いなのは全員だっつーの。深海や金玖も含めてな」
「そうですね」
間違ってはいないので否定はしません。私もまた、小石を拾い掌でポンポンと。
でもって。
私たちはフィールを使い、同時に小石を投擲しました。
結果、暗闇に隠れた何かに当たり、それは落下します。《幻獣機レイステイルス》でした。
私はすぐさま拳銃を取り出し、フィール込みで発砲。破壊に成功します。
すると地津ちゃんは、ちょっとびっくりして。
「おいおい木更が拳銃かよ。しかもそれ本物だろ?」
「いえ、ハングド製の改造エアガンです」
本物の拳銃を渡されたこともあるのですけど、あちらは私には少々重くて。
「まあ、どちらにしても苦手な代物ではありますけどね。どうやら私は銃の才能はないみたいですから」
とはいえ、今回みたく動かないものを至近距離で撃ち抜く程度はできますけど。
「そういえば、地津ちゃんたちはどうしてこちら側に?」
「いや、アタシらはいまの所は普通に昼側だ」
地津ちゃんはいいます。
「けど、そっち側の世界の情報はプライベートで収集してた。もちろん、オールバックの男、そして夢月の下に辿りつく為にな」
ということは、いま地津ちゃんたちはフリー。
「なら。私たちの下に、ハングドに来ませんか?」
気付くと、私は勧誘してました。
「相手がフィール・ハンターズとあれば、いずれ特捜課なりNLTなりから討伐依頼が来ると思います。そのとき地津ちゃんの頭脳があると、とても頼りになるんです」
しかし地津ちゃんは首を横に振ります。
「悪い、その話は断らせてくれ」
「そうですか」
残念ですけど、仕方ありませんね。
地津ちゃんも続けて理由をいう様子はないので、私は勧誘は諦め、改めて、どうやってかすが様の部屋に入ろうか考えることにします。
まず、かすが様のマンションに近づこうなら、先輩の幻獣機と、何者かの狙撃が私たちを襲うのでしょう。何らかの方法で回避する必要があります。
一番適任なのは強行突破でしょうか。私が前に立ってフィールの防壁を張り、地津ちゃんの盾になりながら真正面を突き進む。背後への対処は臨機応変で。まあ、強行突破を適任というのも妙な話ではありますけど。
なんて考えてると、
「もしもし、ゼウスか? ああ、終わったか」
地津ちゃんが、こっそりゼウスちゃんと通信を取ってるのがみえました。
「そうか。まあリタイアは仕方無ぇ。悪いな一番過酷な役を押し付けてしまって。……ああ、あとは任せろ」
と、地津ちゃんが通信を切った所を、
「あの。リタイアと聞こえたのですけど」
なんて私は訊ねます。
地津ちゃんは「ああ」と反応して、
「ゼウスが役目を果たした代償にフィールを使い切ったんだ」
「え、それってデュエルで負け」
「てはいねえらしい。全て使い切って勝利したんだとよ」
そこまで言ってから、地津ちゃんはにやりと笑い、
「凄ぇな、あいつ。アタシはさっきからどうやってゼウスに加勢しようか考えてたんだけどよ。ひとりで与えられた役目を果たしちまいやがった」
「何をしたのですか?」
「エレベーターを停止させ、1Fフロアにいる脅威を全滅させたんだ」
「え?」
な、なんて無茶を。
「恐らく相手は少なく無ぇ人員をそっちに配備してるだろうからな。そいつを分断させてやったわけだ。とはいえ、さすがにゼウスがひとりで全滅させるまでは想定してなかったから、嬉しい誤算だったぜ」
と言う地津ちゃんの顔は嬉しそうで。何というのか「凄い凄い」って興奮してるようでした。
これだから、冥弥ちゃんとゼウスちゃんも、年下の地津ちゃんについて行って、私も「誰より仲間想い」なんて思っちゃうのでしょう。
「これで攻略が一気に楽になった」
地津ちゃんが、珍しく握り拳を作っていいます。
「加えてゼウスには、事前に金玖とナーガがやってきたら無傷で階段を登らせるようサポートしろとも伝えておいた。これでナーガや金玖は、1Fの脅威と応戦することも後ろから挟み撃ちに遭うこともなくスムーズに2Fへと上がれてるはずだ。上の階層にいる戦闘員の掃除に使われたとも知らずによ」
「うわ」
今回の地津ちゃんの作戦、想像以上に汚い。
「で、だ」
ここで地津ちゃんがいいました。
「木更にもひとつ指示を出したいんだが、いいか?」
「何ですか?」
私は、身を強張らせ、構えながらうなずくと。
「今すぐモンスターに乗って、かすが様の部屋まで空から向かえ」
「モンスターで?」
「ああ。同時にアタシは地上から正面突破でマンションに向かう。上手く木更の陽動になってくれればいいんだがな」
しかも、地津ちゃんが自ら陽動に?
「今なら地上はゼウスが対処し、他の階はナーガたちが対処してるだろうから、堂々と空から向かっても強制デュエルを仕掛ける赤外線はさほど飛んでこないはずだ。まあ、辿り着いても狙撃手や鳥乃さんと一戦交える可能性もあるが、仮に玄関前や室内に潜んでるなら、残念ながらどう足掻こうともアタシらに交戦を回避する術はない」
「あるとしたら、私やナーガちゃんたちが脅威を全て倒しつつ力尽きリタイア。その跡を悠々と階段上る地津ちゃんだけ、でしょうか?」
「チッ、バレてたか」
地津ちゃんは一回舌打ちし、
「で、どうするんだ? 部屋の位置を把握してるのは木更だけだ。『空から襲撃はテメエがやれ』とか言われてもアタシには無理だぜ」
「お断りします」
私は、はっきりと言いました。
「クソッ! だろうな。ネタがバレちまったわけだし」
と、反応を見せる地津ちゃん。
「落ち着いてください。別に共闘をやめる気で言ったわけではありませんから」
私は続けていいます。
「地津ちゃんの負担は増えますけど、もっと確実な方法があるんです」
「ほう、言ってみろ」
地津ちゃんがいうので、
「二人乗りでモンスターに乗りましょう」
「二人乗り?」
「加えて、狙撃手との交戦を避ける為に裏から向かいます。この際、入り口を破壊して突入するのに違いはないのですから」
私がいった所、
「ドア破壊する気だったのかよ」
と、地津ちゃんから今更な反応が飛んできました。
「まさか地津ちゃん。そこまで覚悟完了はしてなかったのですか?」
「してるわけねーだろ。アタシは昼側だっつーの」
「でもエレベーターを」
「停止させただけだ。破壊はしてねー!」
「えっ?」
「えっ、て何だよオイ! 姉貴アタシを外道を極めし者みたいに思ってねーか?」
「違うのですか?」
「ちげーよ!」
なんてやり取りしてから、
「それで、結局どうですか私の提案は」
私は改めて訊ねます。
「……いいぜ」
地津ちゃんはいいました。
「アタシとしたことが完全に盲点だったぜ、二人乗りも裏から突入もな。木更がそれをさせてくれるって言うのなら喜んで乗ってやる」
「窓ガラス破壊しますよ?」
「アタシ抜きでも破壊するんだろ? なら同じことだ」
「分かりました」
私は、クリフォートのフィールを使い周囲に《幻獣機レイステイルス》みたいなステルスモンスターや監視効果が発生してないのを確認してから、地津ちゃんの推測の下、狙撃手の死角を掻い潜るように場所を移動。マンションの裏から《クリフォート・アクセス》に二人乗りし、かすが様の部屋のベランダへ向けて空から全速前進しました。
しかし、窓ガラスを破壊しようとした所で、ベランダから誰かが円形タイプの強制デュエル機能を発動。これは半径数mに広がるプログラムフィールドで、引っかかるとデュエルディスクが強制的にデュエルモードになってしまう仕様です。しかも《クリフォート・アクセス》の急停止は間に合いません。
このままでは私のデュエルディスクは強制デュエルモードとなり、《クリフォート・アクセス》はモード移行によって消滅し、私たちの体は真っ逆さま。
「チッ、木更」
事態を察したのでしょう。後ろにしがみついてた地津ちゃんは、即座に私を横に蹴飛ばし、円形状に広がるプログラムから私を救いつつ自分からプログラムに引っかかりにいき、アクセスからベランダに飛び乗ります。
「地津ちゃん!」
落下しながら私は叫び、同時に《クリフォート・アクセス》を自分の救出へと向かわせます。
「アタシは大丈夫だ。今のうちに突入し直せ!」
「はい」
《クリフォート・アクセス》が私を拾い、再び空を駆けながら私は応えます。
そして、アクセスでもう一度ベランダに突っ込み、今度こそ防弾ガラスの窓を突き破って内部に突入。その際、
地津
LP4000
手札4
[][][]
[][][]
[]-[]
[][][]
[][][]
飛奈
LP4000
手札4
先ほど私たちに強制デュエルを仕掛けようとしたのが双庭さん姉妹の妹さん、飛奈さんである事が判明しました。
こうして、私は今度こそかすが様の部屋に足を踏み入れたわけですけど、着地した時、足元に網が敷かれてるのに気づきました。
(これって)
嫌な予感がした直後でした。その袋状の網が天井に吊り上げられ、またしても私は
「お疲れ様、木更ちゃん」
奥から鳥乃先輩がやってきていいました。
「そして、悪いけど木更ちゃんはここでリタイアって話だから」
――藤稔 ゼウス:リタイア
――藤稔 木更:リタイア
というわけで、地津ちゃんが繋いでくれたチャンスも空しく、私は捕まってしまいました。
この網に掴まってしまうと、フィールも電子機器の回線も使えなくなってしまうので、誰かが外から助けて貰えない限り、私はもう何もできません。
「出して欲しい? 木更ちゃん」
にやにやしながら先輩が訊ねます。もうこの時点で何が言いたいのか丸分かりなので私は、
「脱ぎませんよ」
「じゃあオ〇ニーして」
「録音しましたので、あとで徳光先輩にご褒美貰ってくださいね」
「許してくださいお願いします」
「駄目です」
私はにっこり笑って返事します。電波回線は使えなくても、録画や録音は問題なく使えて安心しました。
(これで、出してもらえるよう交渉すれば)
しかし、私はここで大きな思い違いをしていたことに気づかされます。
先輩はいいました。
「この際、網越しでも問題ないわね」
「え?」
「というわけで木更ちゃん、今から無理矢理脱がすけど暴れないでね」
「は、え?」
思わず固まる私。そうでした、先輩がこの程度で諦めるような性欲の持ち主なわけなかったんです。今まで防犯ブザー慣らせば誰かしら制裁に駆けつけてくれる状況だったから未遂に済んでただけで。
手をわきわきさせながらにじり寄る先輩。私は、
「ひっ」
となるも、状況が状況だけに逃げ場がありません。
あの、私ほんとにノーマルですから、たまによく先輩からかってますけど、本気で行為する気一切ないですから。
そんな時でした。
「かすが様ぁあああアアアアアッ!」
と、部屋のドアを蹴破り、ナーガちゃんがやってきたのは。
すると先輩は驚いた顔で、
「え? 正面? もしかして玄関から入ってきたの?」
その問いにナーガちゃんは、
「勿論。そうに決まってる」
「1Fの包囲網は? 玄関前の双庭先輩は?」
「1Fの包囲網は全部ゼウス姉さんが引き受けてくれた。玄関前のは現在金玖がデュエルしている」
双庭先輩というのは双庭さん姉妹のお姉さん、弓美先輩のことでしょう。玄関前ということは、先ほどの狙撃手は彼女だったのかもしれません。
続けてナーガちゃんはいいました。
「というわけだ。鳥乃さん、囚われの姫を解放して貰おう」
「駄目」
先輩はいって、
「木更ちゃんを解放して欲しかったら、デュエルで私のフィールを空にしてみなさいって話。でしょ?」
「誰が木更姉さんを解放しろと言った」
「え?」
ナーガちゃんの返事に、先輩はきょとんとして、
「え、でも、さっき囚われの姫を解放しろって」
するとナーガちゃんはニヒルに笑い、流し目で。
「フッ、姉さんが囚われの姫とは、血迷ったか」
「いや私は状況的に極々普通の判断を」
「囚われの姫といえば、かすが様に決まってるだろう!」
「は?」
先輩は一度目を点にしてから、
「ちょ、待っ、何言ってるのナーガちゃん、それ明らかに血迷ったのそっちでしょ?」
と、困惑。
しかし、その言動がナーガちゃんの気に障ったみたいで、
「貴様、木更姉さん如きをかすが様と同類扱いした挙句、私のほうが血迷ったと言うか! 堪忍袋の緒が切れた! 許さんぞ! ガ〇ダム!!」
「それ完全に後半グ〇ハム・エーカーの台詞! それにガン〇ムとか言っちゃってるじゃない」
先輩は絶叫で突っ込みを入れてから、がくっと項垂れ、
「そうだった。ナーガちゃんも他人のブレーキができるだけの立派な木更ちゃんの同類だった」
そんな先輩に私は横から、
「待ってください先輩」
「木更ちゃん? そうよね、今回は木更ちゃんも如きとか言われて立腹してるって話だったわね」
「いえ、そんな事よりかすが様が眠り姫なんて素敵な発言も一緒に否定しないでください!」
と、網の中で熱い想い込めていいます。
「へ?」
「純白のドレスに身を包み、白雪姫のように眠るかすが様。なんて素敵♪」
「あ、あの」
「そんなかすが様を眠りから覚ますのは私たちの、キ……キ、せっぷ……きゃーーーっ♪」
言えない、かすが様とキスだなんて、唇と唇なんて♪ 考えただけで卒倒しちゃいます。
「待っていて下さい囚われのかすが姫! 私は、木更はいますぐ貴方の下へ向かいます」
「このナガハム・エーカーも続こう。ああ……抱きしめたいな、かすが様!!」
「はい、鳥乃先輩を倒し、皆で向かいましょう。ナーガちゃん、いえ……ナガハム・エーカー」
本来なら、今回の私とナーガちゃんは互いに目的が相反しすぎて手を組む余地のない相手。ですけど、ハングドという共通の敵が現れたせいか、または親戚としてずっと姉妹のように接した仲だったせいでしょうか。気付けば、私たちは敵対意識を忘れ、目的を同じくとした強い絆と結束に結ばれてました。
そんな中。
「ナガハム・エーカーって何?」
ひとり先輩が空気に混じれずにいました。どうしてでしょう?
「というわけだ鳥乃さん」
ナーガちゃんは先輩に赤外線を飛ばし、強制デュエルを仕掛けます。
「この私、ナガハム・エーカーは君との果たし合いを所望する! 私が勝ったら、大人しくかすが様がどこにいるのか吐いて貰おう」
裏のベランダから入った私、正面玄関から入ったナーガちゃん、どちらもかすが様の姿を見ていないということは、恐らくかすが様はどこかに隠れているか、マンションの外に逃亡している可能性があります。加えてまだ深海ちゃんの姿を見ていないということは、彼女がその場所で待機している可能性も。
「うん、分かったわ。私も疲れたからそろそろデュエルに逃げたかった所」
死んだ目をして、先輩はいいました。
ナーガ
LP4000
手札4
[][][]
[][][]
[]-[]
[][][]
[][][]
沙樹
LP4000
手札4
「先攻は貰った。私のターン」
デュエルはナーガちゃん先攻で決まったようです。
「ナーガちゃん、気を付けてください。鳥乃先輩は高いフィール量と対応力を備えています」
「ああ、元より油断する気はない。出せる力を出しきるつもりで行く! もし相打ちになったら、後は頼むぞ、姉さん!」
私の声援を受けながら、ナーガちゃんは最初の手札を確認すると、
「いい手札だ。我慢弱いこのカードは私の場にモンスターがいない場合、かすが様を求めて出陣する。来い! ナガハム・フォワード!」
そういって場に現れたのは《ジャンク・フォアード》。攻撃力900の戦士族モンスターです。
「続けて、初手にこいつを単体で引けようとは、乙女座の私には、センチメンタリズムな運命を感じずにはいられない。ライティ・ナガハム・ドライバー!」
さらに通常召喚されたのは、レベル1チューナー《ライティ・ドライバー》。
「ライティ・ナガハム・ドライバーの効果を発動! デッキからレフティ・ナガハム・ドライバーを特殊召喚する」
しかし、ここで小さなトラブルが発生しました。
本来なら、デュエルディスクは音声を読み取って行う自動サーチ機能で目当てのカードをデッキから軽く押し出してくれるのですけど、今回はそれがありません。
(あれ?)
と、思ったのは私だけではないでしょう。ナーガちゃんも《レフティ・ドライバー》を引き抜けず、
「故障か? バグか?」
と、つぶやくのが聞こえました。
結局ナーガちゃんは諦めて手動でサーチしようとデュエルディスクから一旦デッキを取り出し、
「レフティ・ナガハム・ドライバーを特殊召喚する」
今度こそ《レフティ・ドライバー》の特殊召喚に成功しました。
「無事、受理されたか。しかし何だったのだ一体」
軽く考え込むナーガちゃん、に対して先輩は、
「だってレフティ・ナガハム・ドライバーなんてデッキにないカードをサーチしたでしょ」
と、返します。
ナーガちゃんは「は?」と反応し、
「いやだが、いままでデュエルディスクがこんな動作を起こしたことなんて無いのだが」
「でしょうね。だって、今回のは私のデュエルディスクのオートジャッジ機能の問題だもの」
先輩はいいました。
「普段、仕事で敵対する相手が相手だからね、少々セキュリティは重くしてるのよ」
「クッ、身持ちが堅いな」
と、苦みの入った顔のままナーガちゃんは、
「なら、あえて言わせてもらおう。レベル2《レフティ・ドライバー》に、レベル1《ライティ・ドライバー》をチューニングであると!」
ここで初めてナーガちゃんは正規のカード名で宣言。《ライティ・ドライバー》が1つの輪に姿を変えると、内側を《レフティ・ドライバー》が潜り、混ざり合います。
「シンクロ召喚! 我が愛の下、宿命をねじ回せ! レベル3シンクロチューナー《ジャンク・ドライバー》!」
現れたのは全身に無数のドライバーを装備した小型の戦士。
「《ジャンク・ドライバー》は場と墓地に存在する限り《ジャンク・シンクロン》として扱う。更に、このカードのS召喚に成功した場合、デッキからジャンクモンスター1体を手札に加える。私は《ジャンク・ディフェンダー》を手札に加える。来い、ナガハム・ディフェンダー!」
「結局ナガハム呼びは変わらないのね」
はあっ、と一回嘆息する先輩。
「続けていくぞ。さらに私はレベル3《ジャンク・フォアード》にレベル3《ジャンク・ドライバー》をチューニング! 乙女座の星を焦がす聖槍よ!!かすが様への愛を放ち世界を醒ませ!! シンクロ召喚! レベル6《スターダスト・アサルト・ウォリアー》!」
続けて現れたのは、両腕にドライバーを模した武器を持った戦士族モンスター。
「《スターダスト・アサルト・ウォリアー》の効果発動! スターダスト・アサルトナガハム・ウォリアーはS召喚成功時に、私の場に他のモンスターが存在しない場合に、墓地のジャンクモンスターを蘇生する。舞い戻れ《ジャンク・ドライバー》! 守備表示だ」
さらにアサルト・ウォリアーが空間に武器を穿つと、空間の歪から《ジャンク・ドライバー》が舞い戻ります。
「私はこれでターン終了だ」
まさかの伏せカードなし。ですけど、場にシンクロモンスターを2体も展開しておいてナーガちゃんの手札は3枚。さらに《レフティ・ドライバー》には、墓地の自身を除外してデッキの《ライティ・ドライバー》をサーチする効果を持っています。その為、ナーガちゃんは実質このターン手札消費を全くしてないことに。
ナーガ
LP4000
手札3(《ジャンク・ディフェンダー》)
[][][]
[][《ジャンク・ドライバー(守備)》][]
[]-[《スターダスト・アサルト・ウォリアー(ナーガ)》]
[][][]
[][][]
沙樹
LP4000
手札4
「なら、私のターンね。ドロー」
続いて先輩のターン。正直、先輩のデッキは幻獣機をメインにしてるのは分かりますけど、実際に動くまでデッキの傾向を把握するのは難しかったりします。何故なら先輩は頻繁にデッキを弄って「型」を変えてくるのですから。
恐らく私が最初にデュエルしたときのデッキは、マスターデュエルを活かしてエクシーズを主軸にしつつシンクロ・融合を織り交ぜた汎用型、ハングド入りする時の実技試験では増田さんのサイバースを何とかして使おうとしつつ純粋な打点を視野に入れた高火力型、メールちゃんとデュエルした際は聞いた話だと、ゲイ牧師さんとのデュエルやアンさんとのデュエル等、比較的多い傾向のある高ランクエクシーズとRUMをメインに添えた型でしょう。
なので昨日から今日までデッキを弄ってないなら、メールちゃんに使ったものと同じ型になるのですけど。
「じゃ、早速だけど。手札の《幻機獣アベンジャガー》の効果を使用」
「あっ」
あのカードは私と初めてデュエルした時にダークドローで創造したカード。実技試験のときはPスケールに置いてましたけど、確かモンスターとしてのアベンジャガーは。
「まず、このアベンジャガーは幻機獣モンスターとして扱うわ。その上で、アベンジャガーは手札・フィールド上から自身を含む幻獣機モンスターで融合召喚を行う」
「融合だと」
驚くナーガちゃん。間違いありません、先輩はデッキをすでに変えてます。
旅行中の先輩のデッキは、親戚たちとデュエルしてもいいよう、幻機獣など先輩専用のカードは抜いていたはずですので。クリアウィング以外は。
「気を付けてくださいナーガちゃん。先輩のデッキはメールちゃんとデュエルした時のデッキとは別物です」
「何!?」
と、私たちが会話する中で、
「私は《幻機獣アベンジャガー》と《幻獣機オライオン》を融合。火器の力を得し半機獣よ、獅子の力を得し宇宙船よ、科学の力にて混ざり合い、命の冒涜の上に進化せよ! 融合召喚! 撃ち貫け、レベル6《起爆獣ヴァルカノン》!」
「ヴァルカノン!?」
私は驚き、声をあげます。
だって、このカードは、私と先輩の最初のデュエルで先輩が最後に出したモンスターなのですから。確かあのときは私のモンスターがPモンスターだったおかげで命拾いしましたけど。
「《起爆獣ヴァルカノン》のモンスター効果。このカードと相手モンスター1体をそれぞれ破壊する。私が破壊するのは当然、《スターダスト・アサルト・ウォリアー》」
「なっ」
驚くナーガちゃん。けど、効果はこれで終わりではありません。
「さらに、破壊して墓地に送った相手モンスターの攻撃力分、相手ライフにダメージを与えるわ」
両肩に機関砲を積んだ機械の一角獣《起爆獣ヴァルカノン》は、出現するとすぐ両肩の機関砲アサルト・ウォリアーを撃ち抜き、自らもGに耐えきれず破砕します。それでも、ヴァルカノンの掃射は勢い余ってナーガちゃんへと届き、アサルト・ウォリアーの爆破も伴って、
ナーガ LP4000→1900
一気にナーガちゃんのライフを削ります。
「さらに融合素材となって墓地に送られた《幻獣機オライオン》の効果、私の場に幻獣機トークンを発生」
幻獣機トークン。これを利用するデッキなのは、先輩がどんなデッキであっても変わらない事実ではあるのですけど。
「で、速攻魔法《エネミーコントローラー》」
今回の先輩のトークンの使い方はよりえげつないものでした。
「コマンド入力、←→AB! この効果で、私は幻獣機トークンをリリースし、ターン終了時まで《ジャンク・ドライバー》のコントロールを得るわ」
「くっ、私のモンスターが両方とも、いとも簡単に」
悔しげに呟くナーガちゃん。先輩は手に入れた《ジャンク・ドライバー》のテキストを確認すると、
「なるなる、《ジャンク・ドライバー》には相手によって破壊された場合に1枚ドローする効果も持ってたわけね。で、このターンに破壊されるようなら壁の役目を果たしつつ手札アドに繋げて、生き残ったらシンクロ素材にする算段って所?」
「その通りだ」
狙いを完全に読まれ、さらに顔が歪むナーガちゃん。
「じゃあ悪いわね。ちょうどレベル3チューナーが欲しかったのよ、有効活用させて貰うわ」
そんなナーガちゃんに、先輩は更に煽るようなことを言って、
「手札から《サイバース・ガジェット》を召喚。効果で墓地の《幻獣機オライオン》を蘇生」
「幻獣機に加えサイバースだと?」
これはナーガちゃんびっくりするのも仕方ありません。
「そしてレベル4《サイバース・ガジェット》にレベル3《ジャンク・ドライバー》をチューニング。この方法で墓地に送れば、ナーガちゃんのドローもないって話」
《ジャンク・ドライバー》が3つの輪に変わると、内側を《サイバース・ガジェット》が潜って混ざり合う。
「未だ穢れに染まらぬ無垢なる翼よ。その透明さで敵を討て! シンクロ召喚! 飛翔せよ、レベル7! 《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》!」
こうしてフィールドに出てきたのは、デュエルモンスターズ展最終日の日から先輩のエースになったドラゴンのモンスター。そして、メールちゃんを詰みに追い込んだカードでもあります。
「気を付けてくださいナーガちゃん。このモンスターは上級モンスターに極端なほどの耐性を持つ、先輩のエースモンスターです」
「分かった」
うなずくナーガちゃん。しかし、
「だが姉さん。悪いがこれ以上の助言は無用だ。奴が鳥乃さんのエースというなら、このナガハム・エーカー。あのモンスターは自らの力で攻略してみたい」
「わかりました」
ナーガちゃんには、相手のエースの情報を教えるのは無粋だったようです。
それにしても、先輩は現在のフィールドを作り出すため手札を4枚一気に使ってしまい、
「カードをセット」
さらに最後の1枚も伏せ、もうハンドレス。
ヴァルカノンの使用にしろ今回にしろ、もしかして今回の先輩は短時間でデュエルを終わらせる為の強襲型?
「バトル! 《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》でナーガちゃんに直接攻撃。これを防がないとデュエルは私の勝ちって話だけど、どうする?」
「当然、防ぐに決まっている。手札から《ジャンク・ディフェンダー》を守備表示で特殊召喚だ」
ナーガちゃんが場に出したのは、《ジャンク・ドライバー》の効果でサーチしたジャンクモンスター。良かった、これで1ターンキルは防げます。
「なら《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》で《ジャンク・ディフェンダー》を戦闘破壊してターン終了よ」
「私のターンだ、ドロー」
ナーガちゃんはカードを引き、
ナーガ
LP1900
手札3
[][][]
[][][]
[《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン(沙樹)》]-[]
[][《ガジェット・トークン(守備)》][《幻獣機オライオン(守備)》]
[《セットカード》][][]
沙樹
LP4000
手札0
「墓地のレフティ・ナガハム・ドライバー!……否、《レフティ・ドライバー》の効果を発動。このカードを除外し、デッキから《ライティ・ドライバー》を手札に加える。そして、召喚しデッキの《レフティ・ドライバー》も特殊召喚だ」
実質的に手札を消費せず2体のモンスターをナーガちゃんは並べて、
「先ほどは使わなかったが《レフティ・ドライバー》にはもう1つ効果を持っている。このカードは特殊召喚に成功した場合、ターン終了時までレベルを3にできる。これによりライティ・レフティの合計レベルは4! いくぞ、2体でチューニング!」
再び、ナーガちゃんはこの2体でシンクロ召喚を行います。
「シンクロ召喚! 可変機構を持つ機装の戦士! レベル4《フラッグ・ウォリアー》!」
こうして現れたのは、攻撃力1800の戦士族モンスター。
「カードをセット。行くぞ、バトル! 《フラッグ・ウォリアー》で《幻獣機オライオン》を攻撃」
《フラッグ・ウォリアー》はオライオンに飛び掛かると、腕に持つ剣で両断。
「けど《幻獣機オライオン》は1ターンに1度、墓地に送られたときに幻獣機トークンを呼び出すわ、守備表示で特殊召喚」
再び先輩の場に現れるトークン。ですけど、ここでナーガちゃんは勝気な笑みを浮かべ。
「その瞬間を待っていた!」
と、言い放ちます。
「《フラッグ・ウォリアー》のモンスター効果発動、ナガハムスペシャル! このカードをリリースし、墓地のジャンクもしくはウォリアーのSモンスター1体を特殊召喚する。私が呼び出すのはこのカードだ。《スターダスト・アサルト・ウォリアー》!」
ソリッドビジョン上では《フラッグ・ウォリアー》が変形し、《スターダスト・アサルト・ウォリアー》へと姿を変えます。
「追撃だ。《スターダスト・アサルト・ウォリアー》で幻獣機トークンに攻撃。そしてこのモンスターは守備表示モンスターを攻撃した際、相手に貫通ダメージを与える」
「げ」
と、先輩がいった所を、アサルト・ウォリアーが幻獣機トークンを穿ち、勢いをそのまま先輩の腹部に攻撃。それもフィールありで。
「っ」
先輩は、咄嗟に腕からワイヤーを伸ばし、アサルト・ウォリアーのドライバーに巻き付かせ、引っ張って軌道を逸らすことで回避。
「リアルダメージは避けられたか。だが、切れ味は受けて貰うぞ!」
と、ナーガちゃんが言ったようにデュエルでのダメージは成立。先輩のライフが大きく削られます。
沙樹 LP4000→1900
ナーガ
LP1900
手札2
[][《セットカード》][]
[][][《スターダスト・アサルト・ウォリアー》]
[《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン(沙樹)》]-[]
[][《ガジェット・トークン(守備)》][]
[《セットカード》][][]
沙樹
LP1900
手札0
これで、ふたりのライフは並んで、ボードアドバンテージは先輩が、ハンドアドバンテージはナーガちゃんがそれぞれ制した形になりました。
「私はこれでターン終了だ」
「なら、私のターンね。ドロー! そして、クリアウィングで《スターダスト・アサルト・ウォリアー》に攻撃」
ドローからほぼ間を置かずの攻撃宣言。クリアウィングが空高く舞うと、ジャイロ回転しながらの急降下体当たりでアサルト・ウォリアーを破壊。
ナーガ LP1900→1500
「ターン終了」
そして、再びナーガちゃんのターンに。先ほどのナーガちゃんのターン終了宣言から、まだ5秒も経ってません。ナーガちゃんからすれば呼吸を整える暇もなく瞬きひとつで自分のターンが戻ってきたわけですから、急激なテンポの変化に焦りが生じ、フィールの使い所を間違えたりプレイングミスを引き起こしかねません。
恐らく、先輩はわざとそういうプレッシャーをかけにきたのでしょう。敵対し、その上で第三者の目でデュエルに立ち会うことで、この人を敵にまわせば、どれだけ厄介なのかを私は改めて思い知りました。
「ま、まだだ!」
しかし、ナーガちゃんはいいました。
「鳥乃さんのターン終了時、永続罠《強化蘇生》を発動。このカードはレベル4以下のモンスターをレベルを1つ上げた状態で蘇生させる。私が墓地から戻すのはこいつだ、《フラッグ・ウォリアー》!」
《フラッグ・ウォリアー》 レベル4→5
フェイズの巻き戻しが発生し、墓地からフィールドに舞い戻ったのは1体の戦士族のシンクロモンスター。
「そして、私のターンだな。ドロー」
ナーガちゃんは、自分から先輩のターンに割り込むことで強引に呼吸を整え、焦りやテンポの狂いを解決したようでした。
しっかりと、この1枚のドローにフィールを注ぎ込んでいるのが分かります。
「よし」
ナーガちゃんはいいました。
「《フラッグ・ウォリアー》の効果発動! このカードをリリースし、墓地の《スターダスト・アサルト・ウォリアー》を特殊召喚する。ナガハムスペシャル!」
再び《フラッグ・ウォリアー》は変形し、《スターダスト・アサルト・ウォリアー》へと姿を変えようとします。ですけど、ここでクリアウィングの翼が光を放ち、
「《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》第一の効果。1ターンに1度、このカード以外のフィールドのレベル5以上のモンスター効果の発動を無効にし破壊する」
《フラッグ・ウォリアー》の変形は失敗し、空中分解を起こし破壊されます。
「なるほど」
ナーガちゃんはいいました。
「これが木更のいう上級モンスターへの過剰な耐性。しかし、1ターンに1度と知った以上、ここさら先はカウンターを気にする必要はない」
と、ナーガちゃんはクリアウィングを指さし、
「対処させて貰うぞ、クリアウィング!」
と、宣言。
ナーガちゃんはそのまま手札2枚をフィールドに置いて、
「私は《ジャンク・チェンジャー》を通常召喚。さらに場にジャンクモンスターが存在することで《ジャンク・サーバント》を特殊召喚」
その2枚をすぐ墓地へと送ります。
「いくぞ、私はレベル4《ジャンク・サーバント》に、レベル3《ジャンク・チェンジャー》をチューニング! 光を切り裂き、闘いの場に介入せよ! ナガハムの願いは、誰にも撃ち落とせない! シンクロ召喚! レベル7《セブン・ソード・ウォリアー》!」
直後、ナーガちゃんの前方に7つの斬撃の残光が発せられ、内側から黄金の戦士が現れます。攻撃力は2300。
「そして、手札から《アサルト・アーマー》を《セブン・ソード・ウォリアー》に装備。攻撃力を300上げるが、ここで《セブン・ソード・ウォリアー》の効果を発動。1ターンに1度、このカードに装備カードが装備された時、相手ライフに800ポイントダメージを与える。この一撃、逃れられるか? ガ〇ダム!」
セブン・ソードの体が《アサルト・アーマー》によって赤紫色に輝くと、複数のビームを斬撃のように飛ばし、先輩のライフを削ります。
沙樹 LP1900→1100
《セブン・ソード・ウォリアー》 攻撃力2300→2600
効果の発動は成功。手札誘発も伏せカードの発動も無い模様です。
「クリアウィングも今回の効果は防げなかったようだな」
ナーガちゃんの読みは正しく、1度先ほどの効果を使ったクリアウィングに、いまのバーン効果を防ぐ術はありません。さらに、いまなら《セブン・ソード・ウォリアー》の攻撃力は先輩のクリアウィングを超えて2600です。このまま攻撃すれば、恐らく攻略は可能です。
「なら、このターンで抱きしめさせてもらおう、壊れるまでな!」
ナーガちゃんはいって、装備していた《アサルト・アーマー》を墓地に。……って、え!?
「《セブン・ソード・ウォリアー》は1ターンに1度、自身の装備カードを墓地に送り、相手モンスター1体を破壊する。終わりだ、クリアウィング!」
その瞬間、赤紫色の光を纏った《セブン・ソード・ウォリアー》から強烈なエンジン音が走ると、残像を残しながらの高速移動でクリアウィングに肉薄。それは、まるでト〇ンザムのように。
「ナーガちゃん、駄目です! その効果を使っては」
私は叫びましたけど、すでに遅く。
「斬り捨て御免!」
ナーガちゃんが叫びセブン・ソードは両腕に剣を1本ずつ握り、同時に振り下ろします。
先輩が「にやっ」てなったのが見えました。
「《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》第二の効果。1ターンに1度、フィールドのレベル5以上のモンスター1体のみを対象とするモンスターの効果が発動した時に発動。その発動を無効にして破壊する」
直後、再びクリアウィングの翼が光ると、セブン・ソードを覆う赤紫色の光がかき消され、クリアウィングの全身から放たれた光に撃ち貫かれ破壊されます。
「……な、なにっ」
呆然とするナーガちゃん。対し先輩は涼しい顔で、
「で? まだ何かある?」
「……。…………ターン、エンドだ」
悔しそうに、ナーガちゃんが言った所を、
「了解。じゃあ私のターン、ドローして《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》で直接攻撃」
フィールを使わず、先輩はサクッと、とどめを刺しました。
ナーガ LP1500→0
ナーガちゃんのライフが0になり、彼女のリタイアが確定したとほぼ同時に、
「沙樹ちゃん先輩、沙樹ちゃん先輩、この子すんごい強かったけど何とか迎撃に成功したよん」
と、飛奈さんが地津ちゃんを引っ張って現れ、
「私も終わったわ」
弓美先輩が金玖ちゃんを連れてやってきました。ふたりとも意識はありません。
「そんな」
ふたりまでもやられるなんて。となると、残すは菫さんとデュエルしてるメールちゃんだけですけど。
ここで《ワーム・ホール》が開き、意識のないメールちゃんの髪を引っ張って菫さんが現れました。
「三人ともお疲れ様。ちゃんと勝てたみたいね」
先輩がいうと、
「ううん。私は負けちゃった」
と、菫さんはいって、
「だから、木更ちゃんたちと合流しようとしたこの子を後ろから」
「リアルファイトで殴り倒したと」
先輩の言葉に菫さんはうなずきます。見ると、メールちゃんの顔や腕の痣が更に増えてます。これはよくある後頭部をトンではなくボッコボコに殴ったのでしょう。すでに「瞬○殺っぽいこと」をされた後だというのに。
といいますか、これって大丈夫なのでしょうか? 命に別状ない程度に加減してあるようには見えないのですけど。
「あの、デュエルで勝ったのにリタイアさせられるのはどうかと」
自分もハングドとはいえ、さすがにどうかと思って訊ねてみるものの、
「フィール失った相手に倒されるほうが悪いわ」
と、先輩。
「後は水姫、彩土姫、冥夜だけか」
ナーガちゃんが言います、けど。
「三人はすでに」
「そうか」
私の返事に、落胆します。
先輩はいいました。
「つまり、残念だけどあなたたちはナーガちゃんの敗北をもって全滅って話」
「ッ……いや、まだだ!」
少しの間の後、ナーガちゃんがいいました。
「デュエルはメールが勝ったのなら起こせばいい、それに木更姉さんも救出すれば」
「残念だけど」
先輩はいい、直後腕からワイヤーを放ち、ナーガちゃんを拘束。
「それはさせないって話だから」
続けて先輩は意識のないメールちゃんに強制デュエルをし、デュエルディスクを操作してサレンダーさせてフィール抜きも完了。さらに亀甲縛りまでされてしまいます。
「はい、改めて終了よ」
「くっ」
今度こそ、ナーガちゃんは諦めるしかありませんでした。
いつの間にか双庭さん姉妹の手によって地津ちゃんも金玖ちゃんも全身拘束されてて、この場の5人が全員たとえ意識があろうとも動けない状態に。悪あがきする余地もなく万事休すです。
「あれ、そういえば沙樹ちゃん先輩? 依頼人のかすが店長は? どこにも見当たらないんだけど」
飛奈さんが訊ねます。どうやら彼女も知らない模様。
「ああ」
先輩はうなずき、
「押し入れに隠れて貰ってるわ。脅威は全部対処したから、報告兼ねて確認して貰ったほうがいいわね」
と、先輩は押し入れの戸をトントン。
「店長、お仕事終わったからそろそろ出て来てくれる?」
しかし、奥からの反応は全くありません。
「あれ、店長?」
首をかしげながら、先輩は戸を開けます。
そこで見たものは。
顔の腫れあがったかすが様。
意識はすでになく、下半身を脱がされ、その上に深海ちゃんが跨り。……えっと、その、ズコバコ真っ最中。
逆レ○プの現場がそこにありました。
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
この場の意識ある6人、全員絶句。そんな私たちに深海ちゃんは気付くと。
「あ、鳥乃さんお疲れ様です。申し訳ありません、厄介事に付き合わせてしまって」
なんて、腰を打ちつけかすが様を求め続けたまま、いつもの微笑んだ顔で、いつも通りのテンションでいいます。
私たちは、全員叫びました。
「何やってんだミカァ!」
「ミカァ!」
「ミカァ!」
「ミカァ!」
「ミカァ!」
「ミカァ!」
私たちは藤稔親戚一同は、全員忘れていたのです。
深海が私たちを迎撃する側である以前に、彼女も立派な争奪戦の参加者だったことを。そして、彼女は過去の争奪戦においてもフライングや奇襲、ルール違反の常習犯だったことを。
――藤稔 ナーガ:リタイア
――藤稔 地津:リタイア
――藤稔 金玖:リタイア
勝者:藤稔 深海
こうして、私たちの長い長い旅行は終わりを迎えました。
この3日間の間に、私たちの関係は大きく変わって、かすが様を中心に様々な勢力図が入り乱れる形となり、恐らく私たち10人が無邪気な笑顔のまま一同に会することは、もう二度とないことでしょう。
それでも。
私たち親戚の絆は、深海ちゃん金玖ちゃんを含め、変わらず、そこにあり続けることでしょう。
そう。
かすが様への愛がある限り。
これにて、長かった藤稔親戚旅行編は終了になる想定です。
一部のキャラは再登場するとは思いますが、突然いきなり9名もの新キャラを一気に出してしまい、すみませんでした。
●今回のオリカ
ジャンク・ドライバー
シンクロ・チューナー・効果モンスター
星3/地属性/戦士族/攻 400/守 400
チューナー+チューナー以外のモンスター1体
(1):このカードのカード名は、フィールド・墓地に存在する限り「ジャンク・シンクロン」として扱う。
(2):このカードがS召喚に成功した時に発動できる。デッキから「ジャンク」モンスター1体を手札に加える。
(3):このカードが戦闘または相手の効果で破壊され墓地へ送られた場合に発動できる。デッキからカードを1枚ドローする。
幻機獣アベンジャガー
ペンデュラム・効果モンスター
星2/風属性/炎族/攻 500/守 200
【Pスケール:青5/赤5】
(1):自分フィールド上にトークンが存在する限り、「幻獣機トークン」が戦闘を行う事によって受けるコントローラーの戦闘ダメージは0になり、「幻獣機」モンスターと戦闘を行ったモンスターはダメージ計算後に破壊される。
【モンスター効果】
このカードはルール上「幻獣機」カードとしても扱う。
(1):このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、自分フィールド上のトークンは戦闘及び効果では破壊されない。
(2):1ターンに1度、自分メインフェイズに発動できる。
自分の手札・フィールドから、融合モンスターカードによって決められた、
このカードを含む「幻獣機」融合素材モンスターを自分フィールドから墓地へ送り、
その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。
この効果によって特殊召喚したモンスターはターン終了時に破壊される。
(GAU-8 Avenger:アヴェンジャー+ジャガー)
フラッグ・ウォリアー
シンクロ・効果モンスター
星4/闇属性/戦士族/攻1800/守1600
チューナー+チューナー以外のモンスター1体
このカード名の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):このカードをリリースして発動する。自分の墓地の「ジャンク」Sモンスターもしくは「ウォリアー」Sモンスター1体を特殊召喚する。
この効果で特殊召喚したモンスターは、ターン終了時まで直接攻撃できない。
この効果は相手ターンでも使用できる。