遊☆戯☆王THE HANGS   作:CODE:K

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MISSION17-かすが店長の華麗なる昼時

 私の名前は鳥乃 沙樹(とりの さき)。陽光学園高等部二年の女子高生。

 そして、レズである。

「大浴場行くたびに思うんだけど。沙樹ちゃんは男湯に行くべきだよね?」

 開幕の一言。まさかの梓に奪われました。

「ちょっとどうしてよ梓。私ちゃんと性別女性よ? 女性の敵生えてないって話よ?」

 私は即、反論するも、

「けど女性の裸見る目は男の子寄りだよね?」

「ちょっ待っ、梓酷い」

 私の目線が男目線と同じって。……最近、ちょっとだけそんな予感はしてるけど。

「だから、全国の女の子は沙樹ちゃんを男湯に送ったほうが安全だと思うなー」

「いやちょっと待ってよ梓。それしたら私のほうが身の危険だから! 汚い男のオッサン共にエロ同人みたいなことをされ」

「たまには沙樹ちゃんもセクハラされる側の気持ち知らないとね」

 なんて笑顔でタブレットからフォトファイルを見せる梓。そこには、先日飛奈ちゃんが撮って木更ちゃんに渡した、BARなばなでやり取りしたメモ。なお、この件のハンマー制裁はすでに終わってる。

 あれから数日。

 今週の週末は祝日と重なって三連休。その初日である今日、私と梓は木更ちゃんからの誘いで旅行に同伴させて貰うことになっていた。曰く、親戚が木更ちゃんに会いに来るついでに、名小屋で観光がてら2泊3日の旅行をするのだそう。その為、地元民である私たちに案内役を頼みたいのだとか。

 思えば木更ちゃんも去年まではT〇kyoだったのだ。この機に観光したい場所も色々あるだろう。私と梓は快く引き受けることにしたのだ。木更ちゃんサイドからの要望で1泊だけ同じ旅館に部屋をとって。

 なお、これらの宿泊費は全部木更ちゃん持ち。どうやら任務の後方支援だけじゃなく、今日の為にスタジオのアシスタントや給仕で結構稼いでいたらしい。私は自分の分は自分でといったんだけど、押し切られてしまった。曰く「先輩に自腹で払わせると、自己責任いいことに3割増に好き勝手しそうですから」って。私の特性をよく分かってらっしゃる。

 確かに木更ちゃん名義で泊まるなら、もし問題起こせば親戚もみんな旅館から退去させられかねないもんね。何かするなら気を付けてナニかしないと。

 まあ、そんなわけで現在時刻午前10:00。

 私たちは駅の外で待っていたのだけど。

「あ、沙樹ちゃん。きたみたいだよー」

 梓がいった。見ると、総勢10名の女の子がぞろぞろとこちらに向かってくるのが見えた。しかも、その中心にいるのが木更ちゃんなわけで。

(え? 人数多くない?)

 なんていう私の心の中の突っ込みを余所に、

「徳光先輩、鳥乃先輩おはようございます」

 と、木更ちゃんが私たちに手を振る。今日の彼女は、シフォンブラウスとロングスカートの上に白のレースガウンを羽織っており、露出は少なめなのに透け感がエロく、しかも爽やかで可憐な雰囲気を纏っている。

「おはよう木更ちゃん」

「おはよう藤稔さん」

 私たちはそれぞれ木更ちゃんに手を振って返す。みると、梓も彼女が連れてきた人数に若干驚いてるのが見えた。なお、今日の梓はウールのセーターの上にジージャン、そして黒のミニスカートと、いつもより若干ストレート系に仕上がっている。

「どうされましたか?」

 そんな私たちに気づき、きょとんとする木更ちゃん。すると、親戚側からひとり、

「恐らく、私たちの人数に驚いてるのだろう。だから言ったじゃないか木更姉さん。こちらの人数は伝えておけって」

 と、木更ちゃんに注意し、

「姉が失礼した」

 って、私たちに向けて頭を下げる。見た目からして恐らく小学生だろうか。髪こそストレートロングに伸ばしてるが、雰囲気はむしろ威風堂々としており。実際、しっかり者の御様子。

「ああ、申し遅れた。私は」

 と、その子が自己紹介をしようした所、髪を二つ結びにした元気な子が、その肩に腕をまわし、

「まあまあ。堅苦しいことは抜きにして早く自己紹介に入ろうよ」

「まさにいま名乗ろうとした所だ」

「あ、そういえば、自己紹介まだだったね」

 と、反応したのは梓だ。

「初めまして、藤稔さんのお友達で2年の徳光 梓です」

「同じく2年の鳥乃 沙樹よ」

 私と梓がそれぞれ名乗ると、

「じゃあ、年齢高い順で名乗ろっ」

 左右非対称(アシンメトリー)でショート髪の一見男の子みたいな子がいった。彼女たちはそれぞれうなずき合って、

「まずは……私」

 と、読んでた本をしおり挟んで閉じ、もみあげの長いボブカットの子が。

「中学3年、藤稔 冥弥(めいや)……です」

 と、静かに名乗る。第一印象は、物静かで表情の少ない子って所か。

「続けて同じく中学3年。私が神、藤稔 天神(ぜうす)であ~る。畏敬を持って気軽にゼウスと呼んでくれたまえ。はっはっはー」

 で、ふたり目にして早速キャラの濃いアホっぽい子が。木更ちゃんより更に長い髪を後ろでひとつに縛り、なんか馬鹿笑いしている。

「次は私ですね。中学2年の藤稔 深海(みか)といいます」

 今度は、長い髪にお淑やかな風貌の、木更ちゃんをそのまま一回り幼くした感じの子が挨拶する。このまま残りも普通の子ならいいんだけど。

「……。…………え、あー、あたしの番? あたしは中学2年の藤稔 地津(ちづ)。じゃ、いまモンハンの真っ最中だから後でね」

 続いて名乗ったのは、調髪を面倒がって伸ばしたような痛みっぱなしのロング髪に眼鏡、さらにダボダボの服でブラの肩紐見えちゃってるヲタっぽい子。しかもゲームに夢中でこちらへはちらっと一回見ただけというね。まあ、ゼウスちゃんみたいにキャラの濃い子が増えるよりずっといいけど。

「おー次はわたしー? わたしはねー、中学1年の藤稔 メール。よろしくねー」

 続いてはポニーテール髪のゆるふわ娘。中1とはいうが、パッと見10人の中でも一際幼そうな子であり、舌足らずで伸びた口調が耳に甘く響く。

「ボクは彩土姫、小6の藤稔 彩土姫(さつき)さ。よろしくっ」

 そして、メールちゃんと正反対にはきはきと元気よく名乗ったのは、さっきの髪を二つ結びにした元気な子。

「同じく小6。藤稔 水姫(みずき)だよ、よろしくね」

 続けて左右非対称(アシンメトリー)のショート髪の男の子のような子が挨拶する。短パン姿なのもあって見た目は完全にボーイッシュだけど、挨拶から受ける印象は程よく元気で程よく大人しく、雰囲気も程よく中性的と親戚組の中でトップクラスにクセがない。

 そんな水姫ちゃんに続けて自己紹介するのは、例の威風堂々とした感じの子。

「先ほどは失礼した。改めて私は小5の藤稔 火竜(ナーガ)。火竜と書いてナーガだ。改めて今日はよろしく頼む」

 まさかのキラキラネームだった。しかも、これだけ大人びてるのに親戚組の中で特に年少組だとは。そして最後に、

「小5、藤稔 金玖(きく)だ。……火竜(ナーガ)とは双子の姉妹にあたる」

 と、見た目はナーガちゃんと殆ど同じの、寡黙な子が締める。

 そこに木更ちゃんを含め総勢10名。木更ちゃんのキャラが薄くみえるほど全員キャラが立っていて、濃い自己紹介だった。

「え、えっと……みんな凄く元気だね」

 梓は藤稔一族に完全に圧倒されてる模様だった。で、その隣で私は別のショックで全身をぷるぷる震わせる。

「木更ちゃん」

「はい、何ですか?」

「全員中学生以下じゃない!」

「ふふっ、そうですけど?」

 と、微笑む木更ちゃん。ああっ! その顔確信犯だ。わざとその事実を教えなかったって話ねこの子。

「沙樹ちゃん。何を期待してたの?」

 あ、梓がおもむろにハンマーを持ちだした。

「え、えっと梓」

 手振りで弁解しようとした所へ、木更ちゃんが、

「あ、徳光先輩。できれば今日それは二人きりのときにお願いしてもよろしいでしょうか? まだ小学生の子も見ていますから」

「え、あ」

 言われ、ハッとなった梓。即座にハンマーを引っ込め、

「ごめんね藤稔さん」

 と。まさか、ハンマーキャンセルが実現する日がくるなんて。グッジョブ親戚たち。

「じゃあ沙樹ちゃん。ちょっとコンビニ行こっか」

 キャンセルじゃなかった。私の天使、露骨にふたりきりになろうとしてる。堂々とハンマーしようとしてる。

 が、そこへ今度は。

「コンビニー。あーそうだ、あたしも用事あるんだった。一緒についてっていーい?」

 と、ゲームしたまま地津ちゃんがいった。

「え、あうん。いいけど」

 今度こそハンマーキャンセルを喰らい、改めて動揺する梓。

「でしたら、みんなで行きましょうか」

 と、木更ちゃんがいい、12人総出でコンビニに向かうことに。

 ちょうど駅前なのでコンビニなんてすぐ近くにあり、少し前まで〇ークルKだったフ〇ミマに入ると、地津ちゃんは真っ先にポイントカードのコーナーへ向かい、眼鏡をクイッと、

「諭吉1枚をリリースしてポイントカードを召喚。旅行先で買ったポイント。これならFG〇のピックアップガチャ大勝利ある」

「いや、諭吉1枚をリリースしてる時点で負けでしょ」

 私はつい返してしまうも、地津ちゃんの耳には届いてないようでホクホク顔でレジへ。

(……まあいっか)

 私には止める権利もないし、何より子供の矯正なんて絶対面倒になる。

「梓は何か買……いやなんでもないわ気にしないで」

「?」

 きょとんと首をかしげる梓。その買い物カゴには、ペットボトルのお茶に、サンドイッチ、菓子パン、おにぎり、パック寿司、カップサラダ、デザートのスイーツまで。もしかしてこれ朝食、いや間食なのかな?

 私は見なかったことにした。

「木更ちゃんは……いやなんでもないわ気にしないで」

「?」

 きょとんと首をかしげる木更ちゃん。その買い物カゴには、ありったけのKasugayaカップ麺。

 私はこれも見なかったことにした。

 とりあえず私も何か買おう。そう思ってペットボトルのドリンクコーナーに足を運んだ所、地津ちゃん含めた9人がたむろしてるのが見えた。

「どうしたの?」

 訊ねてみると、

「あー。沙樹おねーちゃーん」

 と、メールちゃんがほわほわ笑顔を見せ、続けてナーガちゃんが、

「鳥乃さんか。いまみんなで何のジュースを買うか考えてる所だ。2~3本買ってみんなで回し飲みしようって話になって」

「なるほどね」

 仲いいんだなぁ、この子たち。親戚っていってたから、それぞれ家や親が違ってたりするはずなのに。

 私は、そんな彼女たちの姿にアインスとシュウが理想とする「家族の姿」があるような気がした。

 彼女たちは相談した上、コーラ、スポーツドリンク、お茶を1本ずつ買った。まわし飲みには木更ちゃんも参加していた。

 

 しかし、ほっこりできたのはここまでだった。

 名古屋城では金玖ちゃんが。

「これが噂に聞く金のシャチホコか。……貴様の閃光の光、とくと見せて貰った」

 と、まさかの「寡黙な私かっこいい」な厨二病だと発覚し、さらに名所への移動中ア○メイトが見えると冥弥ちゃんが立ち寄りたいと強く希望しだし、

「あった。……ミスト亭のBL本新刊。さすが地元、置いてあるのが早い」

 と、観賞用、保存用、布教用の3冊購入。なおミスト亭というのはスタジオミストつまりハングドの表事業の同人サークルとしての名義だ。あそこ、一般向け成年向け女性向け全部に手を出してるのよね。

 さらに冥弥ちゃんは自宅近辺や秋葉原で揃えきれなかったというミスト亭のBL同人を沢山購入し、表情ひとつ変えないまま男と男の恋愛を熱く語る腐女子っぷりをみせつける。

 そして、極めつけは昼食時。

「じゃ、そろそろ12時だけどお昼どうする? 名小屋といえば名小屋飯ってくらい他所にない独特なものが沢山あるけど」

 私が提案した所、木更ちゃん含む藤稔10名は口を揃えて、

『当然、かすがさ……Kasugaya本店!!』

 と。誰ひとり欠けることなくかすが店長狂いと発覚。そんなわけで、12人で店に入った所。

「いらっしゃいま…………ぎゃああああああああぶくぶくぶくぶく」

 即座に泡吹いて倒れかけるかすが店長の姿。そこからはもう、地獄絵図だったわけで。

「わわっと、大丈夫かすが様」「かすが様、お仕事そんなに大変だったの?」

 と、驚き慌てて彼を抱える彩土姫ちゃんと水姫ちゃん。このふたりは(しっかり様付けな以外)まだマトモだったんだけど。

「会いたかった……会いたかったぞ、かすが様!! 乙女座の私には、センチメンタリズムな運命を感じずにはいられない」

 ナーガちゃんが突然グ○ハム化し、

「大丈夫ですか、かすが様? 少し奥で休んでは如何ですか? そして私と子作りしましょう」

「何いってんだミカァ……」

 深海ちゃんが、どさくさに紛れ木更ちゃんよりぶっ飛んだことをいい、それを地津ちゃんが突っ込む。

「そ、そんな。かすが様私たち10人全員孕ませるだなんて、きゃーーっ! かすが様、新婚旅行はどこにしましょう? あ、その前に挙式ですね。うふふ、かすが様そんな目で見ないでも分かります。早くウェディングドレス姿の私たち10人を踊り食いしたいのですよね? 他の方だったらともかく、妹たちとなら私は」

 そんな深海ちゃんの影響を受け、木更ちゃんがいつもの暴走モードをしていると、

「それは駄目……です」

 と、冥弥ちゃんが止める……かと思いきや、

「かすが様は……後ろも前も霞谷のもの。……ミスト亭の新刊にも描いてあります」

 なんて別の意味で恐ろしい願望を吐露。なお霞谷とは表向き特捜課に席を置いたNLT幹部のひとりだったはず。もちろんノンケの男性で、かすが店長との繋がりも、私の知る限りではこの店の常連という程度。

「ふっふっふ、皆が争ってる間にかすが様の社会の窓を開けて神のひとり勝ちである。さすが神、天才的なのだー」

 なんて、どさくさにセクハラに及ぼうとするゼウスちゃんを、

「おら」

 と、金玖ちゃんが蹴飛ばし、

「クッ……沈まれ我が脚よ。いまはまだ、かすが様を踏んで愉しむときではない」

 とかのたまいながら、代用にゼウスちゃんを踏んづける。

「こらー金玖! この神を踏むは何のつもりなのだー」

「……ハッ! ち、違う。脚が勝手に」

「さっき思いっきり『おら』と言って……」

「フッ、気付かれたなら仕方ない! かすが様を見ながら神を踏んづけ、かすが様を踏んづけたつもりになろう」

「つもりになるなー! しかも、すでにやってるではないか!――ぃ、ぁっ」

 うわ、この子妹に踏まれて感じてらっしゃる。

「もー。みんなー。他のお客様にめーわくだから、お店で騒いだらメッなのー」

 そんな中、精神年齢が一番幼そうなメールちゃんが、頬をぷくーと膨らませてみんなを止めようとする。意外にも出来た子だ。

「あ、あがが……来るな、来るなぁアアア」

 なのに、かすが店長は何故かメールちゃんを一番怖がってる様子。一体店長とメールちゃんの間に何が?

「金玖やめるのだ。嫌……かすが様の前なのに、神なのに感じちゃうのであ~ビクンビクン」

 あ、ゼウスちゃんイッた。うわあ。

「フッ……またつまらぬものを踏んでしまった。して、かすが様よ。私の前で腰を抜かすとは。……誘っているのか? この私に踏まれるのを」

 金玖ちゃんも変なポーズ取ってないで。ていうか、誘ってないから。誰かこの厨二病を止めて! あ、うんメールちゃんありがとう。けどあなたは厨二病止めるより店長から離れてあげて。って、そこ深海ちゃんここぞと店長の股間に跨ろうとしないで、待った冥弥ちゃん店長の耳元でBL同人誌朗読しないでいま店長逃げられないから、そして木更ちゃん早く妄想から戻ってきて、ああもう……いいや。

「とりあえず座ろっか、梓」

「あ、うん。そうだね」

 私と梓は、彼女たちを止めるのを放棄しテーブル席に対面で座る。すると、

「あ、ボクたちも席一緒していい?」

 と、水姫ちゃん。その隣には彩土姫ちゃんも一緒だ。

「いいよー」

 梓がいうと。

「サンキュー、じゃあボクこっち」

 と、彩土姫ちゃんが私の隣に座り、

「ボクはこっち座るね」

 水姫ちゃんは梓の隣に座り、メニュー表をとって「はい」と彩土姫ちゃんに。今更だけどふたりともボクっ娘だったのね。

 しかし、こうしてふたりを見比べてみると、見た目こそ完全に水姫ちゃんのほうがボーイッシュなのだけど、言動は彩土姫ちゃんのほうが男っぽいのがよく分かる。

 こうして私たちは、現実逃避しつつ、まだ軽度なふたりと一緒にラーメンを堪能し――。

「あ、かすが様? あたし今日のためにかすが様の絵を描いたんだ。見てよ見てよ」

 と、地津ちゃんがおもむろにデュエルディスクを起動し、カードを1枚読み込ませる。すると、飲食店の中に突如として浮かび上がる「裸の上から童貞を殺すセーター1枚のかすが店長がセクシーポーズを決める」拡大ソリッドビジョン。

『おげええええええええ』

 突如、店中からどんぶりに胃の中のものを吐き出す客多数。もちろん、その中には私に含まれてる。

「おおおっ、可愛いよ!かすが様」「ねえ、ちづちづ。これどうやって作ったの?」

 一方、同席してる彩土姫ちゃん水姫ちゃんからは大好評の模様。

「大変だったぜー。あたしが元の絵を描いて」

 地津ちゃんがいい、

「私が……それを3Dに加工して」

 冥弥ちゃんがいい、

「神が元のカードのイラストデータと差し替えたのだ。さすがは神、天才なのであーる」

 天災(ゼウス)がアヘ顔のまま高笑い。

 デュエルディスクでカードを確認してみると、そこにはイラストだけ裸セーターかすが様で《薄幸の美少女》のカード名とテキストが。薄幸なのは間違いないのがまた酷い。

「も、もう金はいい。全員早く帰ってくれー」

 心がポキポキに折れ、もはや半泣きに入りかけてるかすが様。しかし、悪夢はまだまだ続く。

「そーっと」「そーっと」

 木更ちゃんと深海ちゃんがソリッドビジョンを下から覗き込もうとし、

「みっともないからやめろ姉さんたち。……しかし、これは。抱きしめたいな、かすが様」

 そんなふたりを制止するナーガちゃんも末期症状。息も荒いし完全に変態の仲間入り。

「撮っていい? ねえ、撮っちゃってもいーい?」

 止める側だったメールちゃんも、そんな事いい始めちゃうし。

 先に食べ終わった彩土姫ちゃんが、ソリッドビジョンの股間部で割り箸をブンブン振って、

「さあ、飲み込めるなら飲み込んでみせろ! このかすがのゾーク・ネクロファデス♂をなァ!!!」

 と、かすが店長の口真似で恐らく「僕のエクスカリバー」を魔改造したと思われる台詞をいい。

「やめろォ!」

 ナーガちゃんが顔真っ赤になって注意する。しかし、そこへ当然のように木更ちゃんと深海ちゃんは。

「悦んで!」

「悦ぶな木更姉さん!」

「かすが様と目指す場所へ行けるんだったら、何だって犯ってやります」

「ミカァ!!」

 ツッコミ役のナーガちゃん、二重の意味でそろそろ倒れそう。ところで深海ちゃん、何気にガ〇ダムの三〇月ネタもするのね。

「全く」

 金玖ちゃんがいった。

「煩くて敵わん。……これだから、かすが様を前にした姉さんたちは」

 ソリッドビジョンのかすが様の股間部に体を潜り込ませながら。

「何やってるの? 金玖ちゃん」

 水姫ちゃんが訊くと、金玖ちゃんは。

「……臭いは無臭だった」

 ついにかすが様が泣き崩れた。

 

 午後からは、かつて某ゲームで聖地といわれた舞鶴公園に行ったり、大須商店街で買い食いしたりし、一旦みんなの荷物をとりに木更ちゃんの家に戻ってから、本日泊まる旅館に到着。時刻は大体16:30過ぎ。

 玄関前には女将さんや仲居さんが待機しており、私たちが近づくと

「いらっしゃいませ。ようこそお越し下さいました」

 と、和服姿でお出迎え。

 とても綺麗で美しかったので、私は早速挨拶しようかと思ったけど、

「沙樹ちゃん?」「先輩?」

 と、梓と木更ちゃんが、それ以上に綺麗で美しい笑顔で言うのだから、私は苦笑いしつつ押し黙る。

 旅行バッグはみんな各自手持ちだった為、仲居さんのひとりが奥から台車を持ってきて、

「お荷物をお持ちいたしましょう」

 と、みんなから確認を取って、旅行バッグを積み上げていく。

「さあ、どうぞこちらへ」

 女将さんに案内され、私たちは中へ。

 外観こそ和風だったものの、内装は若干洋風で広々としており、ロビーにはソファとテーブルが幾つか設置され、奥には売店や喫茶ルームなどが見える。

「徳光先輩、鳥乃先輩。受付で少し席を外しますので、妹たちをお願いしますか?」

 木更ちゃんがフロントに向かい、チェックインを済ませる間、私たちはソファに座って小休憩。仲居さん曰く、簡単な飲み物をサービスで出してくれるそうで、皆で点呼を取り、私、梓、冥弥ちゃん、深海ちゃんはコーヒー、ナーガちゃんと金玖ちゃんの双子コンビは紅茶、地津ちゃんと水姫ちゃんは緑茶、残りのゼウスちゃん、彩土姫ちゃん、メールちゃんがオレンジジュースを頂いた。

 水姫ちゃんがオレンジジュースを頼まなかったのが少々意外だったのと、ナーガちゃんが年齢に見合わぬ優雅さで紅茶を飲むのに反し、双子の妹である金玖ちゃんが四苦八苦しながら必死に優雅なフリして紅茶を飲む姿が印象的だった。結局飲み切れず戻ってきた木更ちゃんが金玖ちゃんの分を代わりに飲むというオチ付きで。

「藤稔様ですね。お待たせ致しました。お部屋にご案内致します」

 木更ちゃんが紅茶を飲み終えるのを待っていたのだろう。ちょうどいい頃合いで女将さんがやってきて、

「皆様のお部屋は203号室、そして大部屋の212号室でございます」

 と、途中浴場、売店等の施設を紹介して貰いつつ、私たちは客室へと案内される。

 最初に到着したのは203号室。私と梓はこの部屋で泊まることになっており、一旦荷物を置いてから木更ちゃんたちが泊まる212号室へと一緒に向かった。

 そこで、部屋で女将さんより幾つか説明を受けてから、18:00の夕食まで自由時間。

 私と梓は一旦木更ちゃんたちと別れ部屋に戻り、

「さてと、じゃ、早速温泉って話よね」

 と、私が伸びしながら言った所、

「あ。沙樹ちゃんは11時までは男湯に入ってね」

 なんて梓に言われてしまう。

「えっ? なんでよ、どうして」

 しかも男湯? まさかの冒頭ここに繋がるの?

「だって沙樹ちゃん。女湯に入ったら手当たり次第色んな人をエロい目で見たりセクハラしたりするでしょ」

「大丈夫よ。気づかれずに犯るわ」

「……」

 あ、梓がにっこり笑顔でハンマーIN。

「それに、木更ちゃんの妹さんたちも襲いかねないからねー。特に冥弥ちゃん、深海ちゃん、地津ちゃん辺りを」

 梓、さりげなく中学生組からゼウスちゃんを外した。

「全員中学生以下じゃない。私がガキは襲わないの知ってるでしょ」

「えっとシルフィちゃんだっけ?」

「襲ってないから! あれも襲ってないし中学生と分かってからそういう素振りひとつしてないって話だから!」

 梓、私の大失態を未だに根強く印象残してるみたい。だけど、その件に限っては結果的に中学生に発情したのは事実だから、これ以上の弁解はできない。

 年上に見える中学二年生とか、地雷もいい所すぎない?

「そんなわけだから、沙樹ちゃんしばらくの間留守番お願いね」

 と、備え付けの浴衣やタオル等を持って梓は行ってしまった。ああ……ここで着替える気もないのね。

 ……。

 さて、仕事の時間だ。

 私はデュエルディスクのタブレットを起動し、木更ちゃんに「私の部屋にきて」とメールを送信。すると10秒も経つことなく、

「先輩、私です」

 と、木更ちゃんの声。恐らくメールを見るまでなく向かってたのだろう。部屋を開けると、

「徳光先輩は?」

「先に温泉行っちゃった。で、私お留守番って話」

「そうでしたか、では失礼致します」

 と、小声で会話し木更ちゃんが入ってきた。なお、木更ちゃんは羽織ってた上着のレースだけ部屋に置いてきたらしい。残念ながら浴衣姿ではなかった。

「で、今回の依頼だけど。木更ちゃん再確認と現在の状況お願いできる?」

「はい」

 木更ちゃんはタブレットを開き、

「今回の依頼人はNLTの外部協力者です。T○kyo在住の方で、現地ではロウ属性の個人同業者をしている傍ら、互いに任務が相手側の地域まで及んだ時に現地協力をしあう間柄のようです」

「ここでNLT、ね」

 正直言って、気が重い。

 何故なら私はユニオン・ジャックの依頼の際に、知らなかったとはいえ結果的ハイウィンド越しに敵対している。それで懲罰はないだろうし、それがこの裏社会の常だとはいえ、事と次第によっては完全に敵対しかねない。

「安心してください、先輩。私が最悪の結果にはさせませんから」

 心情を察し、木更ちゃんがいってくれる。実際、クラスメイトに機械的と誤解されるほどの「理想や希望に沿って」「目的に近づけるか考えて動く」という彼女の一面は、いまの私には頼らざるをえない大きな力だ。

「話を続けますね」

 木更ちゃんはいった。

「依頼人は今日から3日間ほどこちらに滞在する予定で、しかも偶然にも同じ旅館に宿泊することが分かっています」

「今日、連絡は?」

「取れています。予定通りだそうで、すでにチェックイン済のはずです」

 良かった。

「なら木更ちゃん、この部屋に依頼人を呼んで?」

 現在梓は温泉に向かってるはずなので、しばらくこっちには戻って来ない。そして、この間は私たちが誰かと接触しても彼女の目に届かない貴重な時間である。

 それに、部屋はオートロック式。キーを持たずに梓は出て行ったので、もし、交渉中に戻ってきても依頼人を《ワーム・ホール》で帰してから梓を入れればいい。

「分かりました」

 木更ちゃんも、ここを逃すと案外タイミングがないのを分かってたのだろう。既にタブレットを「後は送信をクリックするだけ」状態にしていたのが伺えた。さすが、仕事が早い。

「返事がきました。いま向かうそうです」

 それから待つこと数分、誰かが部屋の外から戸を叩くのが聞こえた。

「来たみたいですね」

 と、木更ちゃん。

「そうね」

 私はデュエルディスクを装着し、もし依頼が罠でも対処できるようにしてから、私は戸を開ける。

 しかし直後、

「あれ?」

 と、私は声を出していた。そこに立っていたのは依頼人ではなくナーガちゃんだったのだから。しかし、不思議なことに訊ねてきた彼女自身もなんだか驚いてる様子。

「どうしたの、ナーガちゃん?」

「あ、いや。鳥乃さんこそどうしてここに」

 変なことを聞くナーガちゃん。

「いや、ここ私の客室だけど」

「え?」

「もしかして、部屋間違えた?」

「いや、そんなはずは。……まさか」

 何か思い至ったようで、ナーガちゃんはぼそっと呟く。

「ドラゴン・キャノン」

「っ」

 その合言葉は。

「通じたようだな。なら、そういう事と受け取って入らせて貰うぞ」

「え、ちょっ、ナーガちゃん?」

 動揺している私に、ナーガちゃんは「まだ分からないのか」とため息一回に、

「私が依頼人のNLT外部協力者だ」

 と、いったのだった。

 奥に進むと、当然木更ちゃんも目を真ん丸にして驚いてるわけで。

「嘘、ナーガちゃんが?」

「まさか木更姉さんまでハングドだとは。お互い宿泊先が被るわけだ」

 と、ナーガちゃんは適当な座布団にあぐらをかく。

「けど、納得といえば納得ですね」

 木更ちゃんがいうので、

「なぜ?」

 と、訊ねると。

「姉をさらったオールバックの男が名小屋にいる。その情報を持ってきたのがナーガちゃんだったんです」

「ああ」

 なるほど。するとナーガちゃんが、

「その情報はNLTから得たものではないんだけどな。むしろ、その情報があったから私もNLTと接触したのだが」

「なら、その情報はどこから」

「私が現地で個人の裏稼業してるのは調べついてるんだろう? その裏稼業こそ、行方不明の姉さんを捜索する為に始めたのだからな」

 ああ、今度こそなるほど。

 ってことは、年齢こそ私のほうが5つか6つ年上だけど、業界人としてはナーガちゃんのほうが先輩って可能性もありえるわけだ。始めた時期まで聞く気はないけど。

「さてと、姉さん? 時間もないことだから。早速本題に入っていいか?」

 と、木更ちゃんに確認を取るナーガちゃん。

「お願いします」

「分かった。といっても、私からの依頼は件のオールバックの男への調査だ」

 ナーガちゃんはいった。

「現在、私はNLTと連携して調査した結果、奴が名小屋でフィール・ハンターズとして活動してる所までは掴んでいる。が、そこから先はさっぱり。いまの私が持つ情報網では限界だと思ってな、パイプを広げたいと思い今回依頼に踏み切らせて貰ったわけだ」

 それは、ぶっちゃけ言うと私たちも同じだったりする。もっとも、情報屋を頼れば色々と分かるのかもしれないけど、現状だと組織の金で買うわけにもいかないので実行してない。木更ちゃんサイドが絡んでくるまで、そこまで深追いする気もなかったしね。

 情報屋の件は木更ちゃんにも伝えてあるので、ちょうど二人で溜めている所へ今回の依頼が舞い込んできた形だった。

「期限は無制限、報酬は情報の提供に応じてその都度相応の金額を払う形を希望したい。ただ、私に提供された情報はまずNLTにも流れると思ってくれ。そんな所でどうだろうか?」

「その資金はどこから?」

 木更ちゃんが訊ねると、

「大半は私の自腹で払う。それだけの金銭の用意はある。加えて、NLTも一部負担してくれるそうだ」

 なるほど。しかし、そうなると金を貰う以上仮にハングドが不利になる情報が入ったとしても、NLTに流れることを拒否できないわけであって。これは考えないといけない。

「でしたら、私は受けてもいいと思います」

 しかし、木更ちゃんはいった。

「調査に費用がかかった情報はその分多めに請求すればいいですし、NLTに伝えたくない情報は依頼の外で無償提供してもいいんですよね?」

「ちょっと木更ちゃん。その言い分がNLTに知られたら」

「大丈夫ですよ」

 木更ちゃんは微笑んで、

「恐らくNLTも外部協力程度の繋がりな以上、すべての情報をナーガちゃんに伝えてるとは思えません。それに、逆にナーガちゃんも無償提供された情報ならNLTに対し同様の黙秘権もあるはずですから。何より、今回は一応ナーガちゃん個人の依頼と分かった以上、NLTに対し不必要にごまをする必要もありませんよね?」

「ま、まあ」

 確かにそうなのだろうけど。だからといって、曲がりなりにもNLTの息のかかった人間の前でここまで堂々というのも。

「勿論ナーガちゃんがチクるようでしたら、組織の人間としても姉としても、今後の妹への対応を考えなくてはいけませんけど」

 最近、木更ちゃんが本当に腹黒いんじゃないかと思えてきた。

「分かったよ姉さん。NLTにはプライベートのくだりは省いた上で交渉成立と伝えておくよ」

「ありがとうございます」

「別にいいさ。私が上手くやれば想定よりお互い利のある契約に収まったんだ。何より、勝手知る仲だからできる交渉なんだろう?」

「ナーガちゃん、あなた本当に小学生」

 その大人すぎる対応に、私はつい聞いてしまう。ナーガちゃんはフッと笑い、

「あの親戚たちの輪でストッパーしてると自然とこうなるさ。この木更姉さんだって暴走する側なんだから、私が頑張らないとストッパー不在だ」

 と、苦労人過ぎる台詞を吐く。

「さて。私からの依頼はこれで以上のはずだったのだが、担当が身内と知るなら、実はもうひとつ頼みたいことが」

 ナーガちゃんが続いての要件に入り始める。そこへ、

「沙樹ちゃーん」

 と、部屋の外から梓の声。

「タイムリミットね」

 私は小声でいい、相手がナーガちゃんだったので《ワーム・ホール》は使わないまま、戸を開け梓を中に入れる。

 梓は笑顔で、

「ただいまー。いい湯だったよ。あれ、藤稔さんに、ナーガちゃん?」

「おかえりなさい徳光先輩。お邪魔してます」

 木更ちゃんがいい、続けてナーガちゃんも、

「売店を見てたらみんな温泉に向かってしまって、部屋に入れず一時こっちにいさせて貰ってたんだ」

 と、それらしい言い訳をしていた。

 

 その後、ふたりで温泉に向かった木更ちゃんより、メールで「続きは食後になりました」と報告を受けた。

 

 

 夕食は、木更ちゃんたちの大部屋で懐石料理を食べた。

 おしながきや説明の限りだと、どれも地元の食材を使った料理で、かつ私たちにとっても普段口にしたい美味しいものばかり。軽く自分たちの知らない名小屋の一面を再発見した気分になる。

「しっかし。かすが店長が絡まないとみんな割と正常なのね」

 と、料理に舌鼓を打ちながら私は改めて周囲を見渡す。

 さすがにこの時間になってくると私を含めみんな浴衣姿になっており、胸部控えめの木更ちゃんと胸部の凄い梓が、相反しつつどちらも可憐さエロさが数割増しというのは言うまでもなく、元気な彩土姫ちゃんとゼウスちゃん、そして和服の着こなしが苦手なのか金玖ちゃんの三人は既に着崩れしかけ、逆に着崩れなく着こなしてるのは深海ちゃんと冥弥ちゃん、そして意外にもメールちゃんの三人。地津ちゃんと水姫ちゃんは着心地や動きやすさを重視し最初から少し着崩してる模様と、浴衣ひとつ着てもみんなの個性が色強く表れてるのがわかる。ナーガちゃんに至っては浴衣姿であぐらをかく様が剣客のように空気出してるしね。この子ほんとに小学5年生?

 そんなナーガちゃんがお茶を呷り(これがまた熱燗でも呷るようなね)、

「この面子を普通を称するなら、鳥乃さん今日一日で相当毒されてるんじゃないのか?」

「正常とはいったけど、まともとは言ってないからね」

 と、私は刺身をぱくり。

 実際、Kasugayaのときが嘘のように平和だった。

 彩土姫ちゃんと水姫ちゃんコンビの、ごく普通のガキらしい挙動が一番騒がしく聞こえるのがそのもっともで、時たまゼウスちゃんが、

「この刺身はすばらしい。これこそ我が神の食べるべきも……辛~~~。誰なのだ、神の刺身にわさび塗りたくったのは」

 と、彩土姫ちゃんの悪戯を受けたり。

「……究極の至高だ」

 とか、金玖ちゃんが呟いてたりするくらいか。

「梓おねーちゃーん。これ、おいしーねー」

 メールちゃんは、いつの間にか梓に懐いていたらしい。梓も笑顔で、

「そだねー」

「そだねー」

 カーリング女子のあれを言い合うふたり。ゆるふわ型同士気があうみたいで、梓も楽しそう。……あれ? ゆるふわ? 最近ハンマーで殴られっぱなしだったせいか、梓への認識がゲシュタルト崩壊しかけてたらしい。危ない危ない。

(ん、あれ?)

 と、ここで私はふたりの様子からもうひとつ違和感を覚える。梓をみるときの、メールちゃんの目だ。

 梓と視線が合いかけると僅かに視線を逸らし、梓の意識が別の所に向いてるときは、ちらちらっと胸を凝視する。だからといって恋慕の熱っぽさがあるわけでもない。それは、まるで彼女くらいの年ごろの男子のようだった。お姉さんの色気にドキッとして、おっぱいが気になって仕方がないような、ね。

「あれ? 梓とメールちゃん、いつの間に仲良くなったの?」

 まあ半分ほど「梓をエロい目で見るなクソガキ」って意図込みだけど、気になった私は軽く横槍を入れてみる。とはいえ、本命には直接アクションせず。メールちゃんは見る分には癒されても話す分には苦手なタイプなのだ。

 その上、実は幼いフリして猫被ったなにかって疑惑も生まれちゃったわけで。

「あれ、そういえばいつからかなー? うーん」

 と、梓は思いだせないって素振りをみせる。私から見ると「これは心当たりある」のが顔にかいてあるんだけど。梓はあくまで誤魔化し、

「温泉もメールちゃんとは一緒じゃなかったよねー? だけど、観光中も結構話してたから、いつの間にか、かなー。ねー?」

「ねー」

 と、メールちゃんも笑顔で応える。ここだけ見ると仲睦まじい似た者姉妹みたいな感じなんだけど。

「気にしないでやってくれ」

 ここでナーガちゃんが、小声で私に。

「え?」

「メールの目線が気になったんだろ? 大事に至ることは無いから大丈夫だ。それにメール自身も気にしてることだから、できれば見て見ぬふりしてくれると嬉しい」

「けど」

 私がいうと、ナーガちゃんは「フッ」と一回笑い、

「変な所で息ぴったりなんだな。ふたりは」

「え?」

「徳光さんも全く同じこといってたぞ。メールがお前をえっちな目で見てると」

 えっと、ちょっと待って? 理解が追いつかない。

 メールちゃんは私にも、いまの梓への視線みたいなのをやってて、それを梓が気にした? どういうこと?

「とりあえず徳光さんは、いまはメールを受け入れてるようだから鳥乃さんも受け入れてくれないか? 重ねていうが、メールが誰かにセクハラしたり襲うことはないから」

「根拠は?」

 梓が大事すぎたせいか、気づくと私は更に踏み込んで訊ねてしまった。

(あ、しまった)

 後悔するもすでに遅い。さすがのナーガちゃんも「イラッ」とした顔でこちらを睨む。当然だ、自分の姉がここまで疑われたのだから。

「私たちの中にメールの性的悪戯を受けた人がいる。木更姉さん以外の誰かだ。で、その結末はメールのトラウマになっている。これでいいか?」

 それでも、そっぽを向きながらではあるがナーガちゃんはいった。しかも、内容を聞くにそれは「できれば他人に喋りたくない」だろうもの。

「そう。ありがとう、不快な思いをさせちゃったわね」

「気にするな」

 ナーガちゃんは、自分の湯呑にお茶を注ぎ、一気に呷る。

「今日これで二度目だから覚悟もしていた。だが、これ以上追及するなら私も堪忍袋の緒が切れる」

 二度目ってことは、梓にも同じように弁解をしてたのだろう。

「分かったわ」

 私は、改めて周りを見る。

 すでに料理はみんな殆ど食べ終え、冥弥ちゃんと地津ちゃんがゲームで対戦をし、彩土姫ちゃんはいつの間にかタブレットを弄ってばっか。水姫ちゃんは料理が多かったようで少し苦しそうに横になり、そんな彼女の残した料理をゼウスちゃんと金玖ちゃんが分け合って平らげ、木更ちゃんと深海ちゃん、梓とメールちゃんがそれぞれ談笑している。

 ナーガちゃんはというと、私と同じく周囲を眺めてたのだけど、その表情は眉間にしわが寄っていた。

 で、そんな私の視線に気づいたようで、

「どうした?」

 と、ナーガちゃんが訊ねる。私は素直に、

「ごめん、顔色伺いすぎてたわ。ナーガちゃん、ずっと不機嫌そうな顔してるから」

「ああ」

 すると、ナーガちゃんは罰が悪そうに、

「さっきの事は気にしてない……とは言い切れないが、別の問題だ。そうか、そんなに顔に出てたか」

 と、ナーガちゃんは立ち上がり、

「ごちそうさまでした。せっかくの機会だから少し旅館を探検してくる。一応、保護者として誰かに付いてきて貰えると嬉しいんだが」

 と、私を横目でちらっと。恐らく誰かとはいいつつ、私と木更ちゃんを指名してのことだろう。

「じゃあ、私でいい?」

 ナーガちゃんはフッと微笑み、

「鳥乃さんか、感謝する」

「いってらー」

 彩土姫ちゃんがいい、続いてみんなが一歩も動かずまま見送る。木更ちゃんは、いつの間にかメールちゃんと梓も交え4人で盛り上がっており、残念ながら気づいてない様子だった。

 なので、私たちは一旦そのまま部屋から離れ、後から現在位置を伝えることにした。

 

 

「あの中に、オールバックの男の味方がいる?」

 ナーガちゃんがいった別の要件、そして「眉間にしわが寄っている」本当の理由は、正直信じたくない内容だった。

「嘘。本当なの、ナーガちゃん」

 合流した木更ちゃんなんか動揺して目が泳いでいる。私でさえショックなのだから、彼女が受けた衝撃は相当なもののはず。

「分からない。私も信じたくない情報だからな」

 現在、私たちは玄関を出て、壁に沿って進んだ右端の曲がり角にいる。ちょうど旅館からの電灯も殆ど届かず、夜の暗さもあって施設の内外から絶好の死角になっているのだ。

「だからこそ、嘘か本当かこの3日間で突き止めなければいけない問題でもある。私自身確定情報と思ってないのと、追加料金を払う余裕がないせいで本当ならハングドを頼る気はなかったのだが」

 けど、その自分の担当になったハングド構成員が身内と知った為、協力を要請したというわけらしい。

 私は事務所と繋いだ通信機に、

「そういうわけだけど、こっちも引き受けちゃって構わない?」

『サポートに掛かった費用を何とかしてくれるなら構いませんわ』

 と、返事する通信先の鈴音さんに、

「分かった。じゃあそこは私のポケットマネーで払っておくわ」

『だと思いましたわ。なら半額だけ払ってくださいませ、残りはこちらで何とかしますわ』

「ありがと」

 するとナーガちゃんが、

「いや、私は鳥乃さんに依頼料を負担してくれなんて一言も」

「気にしないで。サービスの一環だから」

 私がいうと、今度は木更ちゃんが、

「でしたら私も払います。むしろ払わせてください」

「木更ちゃんは今日の旅行代で金欠でしょ」

「あ……」

 言われて気づいた木更ちゃんは、その場で引き下がる。

 ナーガちゃんはすまなそうに、

「申し訳ないことをした。プライベートで頼むつもりだったのだが、そこまでしてくれるとは」

「プライベートだと、逆に費用がかさばるのよ」

 言うと、ナーガちゃんが「あ」となる。

「それに可愛い後輩の可愛い妹の頼みよ。レズとか関係なく恰好付けさせて」

「レズ?」

 は? と目で訊ねるナーガちゃんに、木更ちゃんが、

「ハングドの構成員としては、レズの肌馬って言われてるんです。先輩」

「っっっ」

 途端、木更ちゃんの背に隠れるナーガちゃん。

「いや大丈夫よ。私中学生以下は手を出さない主義の子供嫌いだから。実際、昼も梓と比べて私あんまり皆と接触しなかったでしょ」

「そ、そうか」

 ちょっと複雑そうにほっとするナーガちゃん。もちろん、残念って意味ではなく「子供嫌いだから助かった」って部分だろう。彼女の年ごろは子供扱いって嫌だろうし。

「とりあえず、これはNLTからの情報なのだが、先日名小屋近郊のとあるビルがフィール・ハンターズの襲撃を受けたらしい。首謀者は仮面をつけたオールバックの男。そして、男の部下と思われるフードとローブで身を隠した殺戮者が、ビルにいた住人を皆殺しにしたらしい」

 その情報は聞いたことがある。一般的な情報機関からは真実を捏造されて報道されてたけど、フィール・ハンターズがフィール・カードの強奪目的でビルを襲撃し、関係者無関係問わず多数の犠牲がでたって。

「殺害された被害者は、いずれも鈍器のようなもので頭部か心臓を潰されていたらしい。そして、数少ない生存者曰く、殺戮者の顔は伺えなかったものの、声色から少女だったと。そして、オールバックの男から藤稔と呼ばれたそうだ」

「なるほど」

 木更ちゃんがうなずく。

「女性ではなく少女ということは、まだ幼さの残る声だったのですね。そして、藤稔という姓はとても珍しいですから、私たちの中に該当者がいる可能性があると考えられてもおかしくありません」

 私は通信機に向かって、

「鈴音さん、事務所のほうでその事件に関する資料って存在しない?」

『資料はありませんけど、関係があると思われる依頼なら一件ありますわね。いま残ってるメンバーで当れそうな人を探してみますわ』

「ありがとう」

 私がいうと、

『ってわけで、鈴音はそっちに回ったから。それまで通信は私が引き継ぐわ』

 と、ここでまさかの高村司令参戦。ほんとにうちのボスはフットワークが軽い。

 私はナーガちゃんに向かって、

「それで現在の経過は?」

「残念ながら手がかりなしだ。それとなく木更姉さん含む全員に一回ずつカマはかけたが、私たちの中にいないのか、上手く回避されたのか」

「そう……」

 できれば、前者であって欲しいんだけど。

 そんな所へ。

「ナーガちゃーん、木更おねーちゃーん」

 と、玄関から出てきて私たちを探す声。

 メールちゃんだった。

「潮時ね。戻りましょ」

 私は提案するも、

「いや、メールなら大丈夫だ」

 ナーガちゃんはいい、しかもあろうことか。

「メール、こっちだ」

 と、むしろこちらへ呼び出したのだ。

「ナーガちゃん!?」

 私そして木更ちゃんが声を抑えて驚く仲、

「あ、ナーガちゃん、おねーちゃん」

 私たちを見つけたメールちゃんは嬉しそうに小走りで駆け寄ってくる。

「なにしてたのー? みんな遅いから心配してたよぉ」

 と、訊ねるメールちゃんに、

「仕事の話だ」

 と、ナーガちゃん。

 これって。

「もしかして、メールちゃんもこちら側なの?」

 私が訊ねると、

「おー。もしかして、襲撃事件の犯人さがし?」

 と、メールちゃんはいう。

 ナーガちゃんがいった。

「改めて紹介しよう。彼女は藤稔 メール。私の個人的な協力者でもあり、ある全国展開している組織のメンバーだ」

「全国展開している組織?」

 ってことは、間違いなくハングドやNLTよりも大規模になる。私が知る限り全国規模の組織はフィール・ハンターズ以外心当たりないのだけど、

「組織の名前は?」

 木更ちゃんが訊ねると。

「ごめんねー。それは喋れないのー」

「なら、活動内容は教えれそう?」

 と、しゃがんで目線を合わせる木更ちゃん。

「それなら、木更おねーちゃんになら特別にちょっとだけ。わたしたちはフィール・カードやフィールを持ったアイテムを回収して、フィール関係の脅威とかから、みんなを護ってるのー」

 あれ、それって?

「もしかして、ハイウィンド?」

 私が訊ねる。するとメールちゃんは驚いた顔で、

「あ、それ。わたしたちの組織の傘下」

「っ」

 驚く私。と同時に、

『鳥乃! 聞き出しなさい、そのメールとかいう子の組織の名を! それ以外にもハイウィンドの創設者は誰かとか、てめーらは敵か味方か!』

 と、興奮状態の高村司令。

「わたしたちはロウの組織だよー」

 メールちゃんはいう。すると、さらに司令は、

『アレで正義(ロウ)? ざけんじゃないわ、ウチの組織はアンタのトコのフィーアってのに護衛対象もろとも構成員ひとり殺されてるのよ。しかも目的は正にアンタがいってたアイテムの回収。説明して頂戴』

 と、通信先で怒鳴りだす。

「司令、落ち着いて」

 私が宥めてる間に、木更ちゃんが。

「いま、通信機の先にいるのは私たちの司令です。メールちゃん、いま司令が言ったことは全部……」

「うん、知ってるぅ。生の声を聞くまで信じたくはなかったけど」

 メールちゃんは、しゅんとしながら、

「あのね木更ちゃん、それと司令さんも聞いてくれますか? 今日、わたしが名小屋に来たのって、みんなで旅行もそうなんだけど、組織のお仕事もあったのー」

「え?」

 ナーガちゃんも知らなかったらしい。メールちゃんはいった。

「今回のわたしのお仕事はねー。まさに、そのハイウィンドの監査と最後通告なの。それでね、本当にやっちゃいけない人殺しをしてるのが分かったら、良くて活動停止、最悪ハイウィンドの解散と、重~い処罰をさせなくちゃいけなかったの。……けど、もう確定なんだね」

 私の目には、メールちゃんがただ「処罰」を嫌がってるようには見えなかった。それ以上に心を痛めてるのがすごく伝わり、

「メールちゃん。もしかしてハイウィンドができた経緯を」

「うん、知ってる。プリントを読んだくらいだけど」

 やっぱり。形は違うけど、メールちゃんだって行方不明のお姉さんを探してる立場なのだ。同じように家族を探し、その結果が形になったハイウィンド。その結末にメールちゃんは悲しんでるのだ。

「メール……」

 ナーガちゃんが、メールちゃんの頭を撫で、焼け石にでも慰めようとする。そこへ、再び誰かが玄関を出る音が耳に届く。しかも、今度はふたり。

「みんな」

 私はすぐ皆にいい、気配を消して様子をうかがう。

 出てきたのは彩土姫ちゃんだった。しかも、見ず知らずの小太りしたオッサンとふたりでこちらの方角に向かってきている。私たちに気づいてる様子は見られないけど。

(みんな、隠れて)

 私は目で皆に伝え、物音を立てないように更に奥へと逃げ、ちょうど停まっていた車の後ろに身を潜める。

「へへ。おーじさん、ここなら誰にも見つからないよ」

 私たちに気づかないまま、彩土姫ちゃんは先ほどまで私たちのいた死角に辿り着くと、おもむろにオッサンの肩に腕を回し正面から背伸び。

 そして、オッサンはあろうことか彩土姫ちゃんと唇を重ねだしたのだ。

「っ」

 あまりに衝撃的な光景を前に、私はその場で固まる。

 え、彩土姫ちゃん恋人がいたの? けど、何だかんだあの子かすが店長LOVEのひとりなんじゃ。

「きき、木更ちゃんこれって」

 と、説明を求めるも、木更ちゃんも顔を赤く青くさせ、とても説明できる状況じゃない。

 一方メールちゃんは深く落ち込み、泣きそうな目で彩土姫ちゃんを見ている。

「あいつ、こんな所でも」

 と、ナーガちゃんがいった。

「どういうこと、ナーガちゃん」

 訊ねると、心底言いたくなさそうにナーガちゃんは、

「サポだよ」

 と。それって、

「援助交際!?」

 ちょっと待ってって話なんだけど。確かに、小学生で援助交際に手出す子はいるって聞くし、そういえば食事中も途中からタブレットばかり弄ってたけど。彩土姫ちゃん全然そんな感じの子には見えなかったのに。むしろ、まだ色気とか知らなくて、男子に混じってサッカーとかドッジしたり、うんこだちんこだで盛り上がったりしそうな子なのに。

 ナーガちゃんがいった。

「《ワーム・ホール》で戻るぞ。さすがに姉がお金貰って好きでもない奴と行為に及ぶ姿は見たくない」

 私たちは《ワーム・ホール》で逃げ、二重の意味で「会話不可能」としてこの場は解散になった。

 

 余談だけど、暇になったので私は女将さんを探し一夜の誘いを持ちかけるも、梓に見つかりハンマーされました。

 

 

 ――現在時刻23:20。

 やっと梓から許可をもらった私は、替えの下着とタオル、一応自衛のデュエルディスクをもって女湯と書かれたのれんを潜った。

 この時間までお預けを喰ってしまうと、さすがの私も「女体を拝む」という本来の目的より「入浴」に優先順位が向いてしまう。まあ、おかげで、がらんがらんの脱衣所を見ても「まあ、そうよね」と諦めがつけれたのは幸運だったかもしれない。

 私はロッカーに荷物を入れ、タオル1枚になって一直線に露天風呂へ。すると、誰もいないと思ってた浴場には、見覚えのある女の子がひとり、ゆったりと湯に浸かっていた。

「メールちゃん? いたんだ」

 私は、その女の子の後ろ姿に声をかける。

「っ!? ふぇっ?」

 そんな驚くことでもないだろうに。メールちゃんはビクッと一回体を跳ねさせ、恐る恐る私に振り返る。

「あ……っ」

 メールちゃんはすぐ正面を向き直して、

「沙樹おねーちゃん。お風呂、入りにきたのー?」

 なんて、すごい慌てた口調。

「ん、まあそうだけど」

「そうなんだ。ごっ、ごめんねー。わたしーすぐ出るからごゆっくりー」

 と、メールちゃんは立ち上がり、体をタオルで隠しながら顔を下向けて露天風呂を立ち去ろうとする。

「え、ちょっ」

 なんで逃げるの? 私、メールちゃんみたいな子はレズの対象外もいいとこなのに。

 けど、私を見ないように逃げようとしたせいだろうか。メールちゃんは私と正面衝突し、

「きゃあっ」

 尻餅ついて転んでしまう。

「メールちゃん。大丈夫?」

 と、私は彼女に手を伸ばそうとし、気づいてしまった。

 メールちゃんの股間部についている。女の子についてはいけない、アレを。

「え……」

 硬直する私、それに気づいたメールちゃんが。

「あっ」

 と、慌てて股間を隠し、

「ちがうの、ちがうのー」

 と、泣きじゃくりながら弁解する。

「メールちゃん。もしかして男の子だったの?」

 私は言ってしまうも、すぐメールちゃんの胸部が僅かだけど膨らんでるのにも気づいてしまう。何より、過去に出会った男の娘であるヒロちゃんと同類って感じは全くしないのだ。

 これって一体。

「ちがうのー。わたし、ちゃんと女の子なの。体もちゃんと」

 そういって、メールちゃんは恥ずかしそうに股間の男の子をめくりあげる。確かに、そこには男の子にはついてない(らしい)一本筋が確かに。

 つまり、アレだ。

 基本R-18指定の漫画とかアニメの世界によく出てくる。

「両性具有」

 つまり、ふたなりだ。

「うん……」

 メールちゃんが、小さくうなずいて肯定する。

(なるほど、ね)

 メールちゃんの秘密、8割程度は分かったわ。彼女の股間の真実を知って、私は思った。

 そりゃあ、メールちゃんくらいの年の男の子なら、年上のお姉さんを前にして気にならないわけがない。彼女は女の子でもあったけど、あの時私が感じた「男の子みたいな視線」は大正解だったわけだ。彼女くらいの歳なら二次成長期、性自認を強く意識する頃だしね。

 残る謎は、ナーガちゃんがいった「親戚の誰かに性的悪戯し、その結末がトラウマになっている」か。誰が被害にあったのか、セクハラの程はどれ程なのか。どちらにしても、逆にいえば「メールは女を襲わない」と断言できるほど、心に深い傷を負ってるのは間違いない。

「とりあえず、お風呂入り直さない?」

 私はいった。

「え?」

 涙声で顔をあげるメールちゃん。が、その目の動きは激しくキョドったのが見える。タオル越しとはいえ胸とか股間とかまともに視界に映せないのだろう。私は、レズだから彼女の気持ちが分かるとか哀しい事実には自覚しないよう意識して、

「ほら、私も早く温泉に入りたいし、メールちゃんもずっと裸で尻餅ついてたら風邪ひくでしょ。それに」

 私は先に温泉に入り、いった。

「メールちゃんには、仕事の話もあるから。今なら他に人いないし、うってつけでしょ?」

「でも、わたしこんな体なのに、いいのー?」

 びくびくと言うメールちゃんに私は、

「ナーガちゃんが言ってたわ。メールちゃんは安全だって、だからメールちゃんを信じるわ」

 言うと。

「そ、それなら。ありがとう」

 と、メールちゃんは温泉に入り直し、私の隣に座る。

「それで、お仕事の話ってー?」

「メールちゃん、ハイウィンドの監査に来たのよね? だったら、あのチームの雇い主が誰なのか、知ってるんでしょ?」

「……うん、知ってるよ」

 メールちゃんはうなずく。

「でも、教えられ」

「ない。とか言ってられない事態なのは分かってる? 私の組織はあなたの所のハイウィンドに直接被害被ってるって話だから。それも理不尽に。はっきり言うけど、もう私と木更ちゃん以外はハイウィンドを敵組織と断定してるからね。実際、トップからハイウィンドと交戦したら遠慮なく殺害しろとも言われてる」

 多少オーバーだけど間違ってはいない。

「通信機からの司令の声、聞こえたでしょ? ひとつ間違ってたら、あなただって殺害対象に入りかねない」

 さすがに、そんな事言い始めたら私は拒否するけど。でも、いまの司令は感情的になりすぎてるから本当に言いかねない。

「アインスがいってたわ。ハイウィンドの雇い主は私の味方だって。けど、現状そうには見えない。だから、確認しに行かないといけないのよ。メールちゃんの監査に任せるんじゃなくて、私自身の目と耳で確かめて、確固たる証拠と今後互いの為にも契約を持ち帰る。メールちゃんにとっても、うちとの契約に持ち込めればハイウィンド解散を回避する大きな武器になるでしょ」

「うん……」

「利害は一致してるはずよ、メールちゃん」

「……」

 メールちゃんは、無言のまましばし考え込む。何が彼女をそれだけ縛り付けてるのか。どうして首を縦に振らないのか、口を割ろうとしないのか。

「あ、そうだー」

 程なくして、メールちゃんがいった。

「ねえ沙樹おねーちゃん。いまナーガちゃんから依頼を受けてる途中みたいだけど、わたしからも依頼頼んでもいーい?」

「え?」

「わたしの監査に同行して欲しいの。わたしが雇ったボディガードとして。この方法なら、名前を知るだけじゃなくて対面もできるよね? そして、わたしが協力できるうちに、おねーちゃんがいった証拠と契約を持ち帰って欲しいの」

 なるほど。

 メールちゃんは首を縦に振ろうとしなかったわけでも、口を割ろうとしなかったわけでもない。

 どうすれば、お互いの目的をもっと確実に実行できるのか。そんな一歩先を見据えた手段を考えてたわけだ。この子、幼くみえて賢い。

「いいの? 勿論、うちの組織が依頼として請けさせてくれるかはともかく、私としてはこれ以上ない話だけど」

「もちろん」

 メールちゃんはにこっといい、

「あ。だけど、ひとつだけ条件はあるかなー?」

「条件?」

「うん。一応、リアルファイトとデュエルの実力は見ておきたいかなって」

 なるほどね。

「分かったわ」

 私はうなずく。と、同時に手首から射出されたワイヤーがメールちゃんの首元に巻き付き、内蔵してる拳銃が彼女の心臓部を捉える。

「え」

 さすがに驚くメールちゃん。私はいった。

「私の体の中には武器が幾つか仕込んであるわ。故に私の持ち味は今みたいに裸でかつフィールなしでも多少の戦闘行為が可能。加えて、一番の得意分野は早撃ち。どう?」

 訊ねると、メールちゃんは「おーっ」と関心しながら、

「もしかして、わたしの組織でも都市伝説だった田村崎研究施設の半機人?」

「大正解」

「なら、リアルファイトは問題ないねー。間違いなくわたしより強いもん」

 メールちゃんはいった。

「だったら、次はデュエルだねー。そうと決まったら一回戻ろー」

 なんて、嬉しそうにメールちゃんは脱衣所へ戻っていく。

 それは、カードを武器としてではなく、純粋にホビーとして楽しむ子供の姿そのものだった。

 

沙樹

LP4000

手札4

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[][][]

メール

LP4000

手札4

 

 迷惑行為ではあるんだろうけど、一度脱衣所で浴衣とデュエルディスクを装着し直して再び露天風呂へ。

 仕事の一環ではあるんだけど、久しぶりに私は相手を傷つける必要のないデュエルをすることになった。

「先攻は私ね」

 私は最初の4枚の手札を引き、

(って、うわ)

 早速、気を楽にしていたことを後悔する。

 手札事故というほど事故はしていない。だけど、ブラフ以外にセットできる魔法・罠がないのだ。

 仕方ない。とりあえず私は手札から2枚をデュエルディスクに読み込ませ、

「モンスターとカードを1枚ずつセット。私はこれでターン終了」

 と、それとなく最低限の布陣っぽく見せておく。

「わたしのターン」

 メールちゃんは、ゆるふわボイスでいった。

「ドロー」

 お互い服を着ているせいか、メールちゃんは恥ずかしそうな様子なく私を見据えている。

 さて、彼女はどんなデッキでくるのか。見た目雰囲気は藤稔で一番精神的に幼そうで、しかし実はハングドより規模の大きな組織の構成員。事前情報も無い為、どんなカードを使うのかが全く推測できないのだ。

「じゃあ、いくねー」

 メールちゃんは、まず魔法カードを1枚、デュエルディスクに差し込んで発動した。

「魔法カード《進化の秘宝》。このカードは《レベルアップ!》1枚をデッキから手札に加えるカードなのー」

「LVモンスターデッキ!?」

 これは、予想できない中でも特に予想外な。

「それでねー。わたしは《ホルスの黒炎竜 LV4》を通常召喚。《レベルアップ!》を使って《ホルスの黒炎竜 LV6》にレベルアップぅ」

 しかもホルス軸ときた。

「カードをねぇ2枚セット。バトル~《ホルスの黒炎竜 LV6》でセットモンスターに攻撃ぃ」

 緊張感のない声と裏腹にモンスターが名前の通りに黒炎のブレスで私の裏守備表示のカードを炙っていく。こうして、耐えきれず姿を現したのは一機のハムスターの顔をした幻獣機。

「《幻獣機ハムストラット》の効果発動。このカードがリバースした時、幻獣機トークンを2体特殊召喚するわ」

「でも、ハムストラットは破壊するよー」

 幻獣機には、トークンがいると破壊されない効果を持つのだけど、ハムストラットの効果はリバース効果同様の裁定な以上、ダメージ計算が確定してからトークンが生成される。つまり、幻獣機トークンが発生した時には、すでに戦闘破壊が確定しているのだ。

「それでねー、モンスターを戦闘破壊した《ホルスの黒炎竜 LV6》はターン終了時に《ホルスの黒炎竜 LV8》に進化」

 こうして、最初は下級だった隼の頭部を持つ一匹の竜は、たった1ターンで最上級モンスターへと上り詰める。攻撃力は3000、その効果は。

「《ホルスの黒炎竜 LV8》は、魔法カードの発動をいつでも好きなだけ無効にできるのー。わたしはこれでターン終了ぉっと」

 つまり、私は魔法カードをロックされたも同然なのだ。そういえば木更ちゃんはモンスター効果を無効にして、メールちゃんは魔法カード。もしかして藤稔一族はこういうロックデッキが好きなのだろうか。

 

沙樹

LP4000

手札2

[][][《伏せカード》]

[《幻獣機トークン》][][《幻獣機トークン》]

[]-[]

[《ホルスの黒炎竜 LV8》][][]

[][《伏せカード》][《伏せカード》]

メール

LP4000

手札1

 

「私のターン」

 と、いって私はドロー。引き当てたのはようやくの罠カード《聖なるバリア -ミラーフォース-》。だけど、私はメールちゃんの2枚の伏せカードを眺めつつ思った。

(ホルスデッキときたなら、たぶんアレ伏せてるわよね?)

 前のターンに引いてたら確実にホルスを対処できてたのに。まったく来るのが遅いわミラフォさん。

 まあいいわ、いまの手札なら対処は可能なのだから。

「私は手札から《幻獣機ハリアード》を通常召喚。さらにトークンを1体リリースしてハリアードの効果発動、手札の《幻獣機メガラプター》を特殊召喚するわ。続けて残りのトークンもリリースして幻獣機メガラプターのモンスター効果を発動。デッキから《幻獣機テザーウルフ》を手札に、さらにハリアード以外の効果で私のモンスターがリリースしたことでハリアードのモンスター効果。幻獣機トークンを1体生成」

 とりあえず、私は2体の幻獣機を展開しつつ何かと握っておきたいテザーウルフの確保に成功。さらに幻獣機トークンを維持できたことで、

「幻獣機モンスターたちは、幻獣機トークンのレベルだけ自身のレベルを上げる共通効果を持ってるわ。その為、現在ハリアードとメガラプターのレベルは7。私はこの2体でオーバーレイ! 2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築」

 せっかくなので、銀河の渦は温泉に発生させてみる。

 フィールで演出をリアル化させた結果、夜の温泉は夜景を強く映し出しながら渦を巻き、霊魂となった2体のモンスターが温泉に呑み込まれる。

「竜の名を持つ機械の鳥よ。いまこそ空を支配し、私に勝利を輸送せよ! エクシーズ召喚! 発進せよ、ランク7《幻獣機ドラゴサック》!」

 温泉の湯が割れ、中から浮上したのは先端に竜の首を模した部位を持つ大型の航空機の姿。

「わあー。いい演出」

 何となくやった遊び心だったけど、どうやらメールちゃんにも好評だった模様。

 とても嬉しそうにするメールちゃんを見て、私はやって良かったと思った。

「《幻獣機ドラゴサック》のモンスター効果。このカードのオーバーレイ・ユニットを1つ取り除き、幻獣機トークンを2体生成。さらに第二の効果を使用し、3体になった幻獣機トークンのうち1体をリリースして、相手フィールドのカード1枚を破壊するわ。破壊するのはもちろん、ホルスよ」

 幻獣機トークンがドラゴサックの背に搭載され、ホルス向けて射出される。トークンはカミカゼアタックでホルスの腹に穴を開け、爆発。

「《ホルスの黒炎竜 LV8》撃破」

「ええっ、もう対処されちゃったのぉ? でも、ドラゴサックは確かこの効果を使ったターンは」

 どうやら知ってるらしい。

「その通りよ。このターン、ドラグサックは攻撃できないわ」

「そっかー。なら安心~」

 ほっとするメールちゃんに私は、

「ドラグサック“は”ね」

「え?」

 と、なるメールちゃん。私は少しだけ意地悪っぽく笑って、セットカードを表向きに。

「リバースカードオープン。魔法カード《RUM-アージェント・カオス・フォース》を発動」

「RUM!?」

「このカードは、フィールド上のランク5以上のXモンスターをランクアップさせる。私はランク7の《幻獣機ドラゴサック》1体でオーバーレイ・ネットワークを再構築」

 今度は普通に銀河の渦が上空に出現。

 ドラゴサックが光の粒子となって渦に取り込まれると、銀河の爆発と共に舞い降りたのは、ドラゴサックの面影を残す禍々しい幻獣機。

「冒涜なる科学の力よ、いまこそ機械の鳥に魔竜を宿らせ、銀河の海を支配せよ! ランクアップ・エクシーズ・チェンジ! 機動せよランク8《CX幻獣機レヴィムリーヤ》!」

 確かにドラゴサックはこのターン攻撃できない。しかし、バトルフェイズを行なえないわけでも、他のモンスターの攻撃を制限するわけでもないので、こうしてしまえば問題ないのだ。さらに、このカードの効果を用いればこのターンに勝利さえ可能だったりする。

「カードをセット」

 とりあえず私はミラフォをセットし、

「バトル。《CX幻獣機レヴィムリーヤ》は、バトルフェイズ中に他の幻獣機をリリースすることで通常の攻撃とは別に追加で攻撃が可能。いま私のフィールドには幻獣機トークンが2体、つまりこのターン私はレヴィムリーヤで計3回の攻撃が可能となる。まずは一打目! レヴィムリーヤでメールちゃんに直接攻撃よ」

 すると、メールちゃんは驚き、

「わー。待って待ってぇ! リバースカードオープン、速攻魔法《レベルゼロ!》を発動するからぁ」

 と、伏せカードの1枚を表向きにする。

「このカードは、わたしの手札・フィールド・墓地のLVモンスターのみを素材にリンク召喚かX召喚を行うカード。開いてぇ、私のサーキット!」

 すると、メールちゃんの真下にリンクマーカーが発生し、そこから電子の奔流が巻き上がってメールちゃんの体が宙に浮かぶ。

「召喚条件はLVモンスター1体。私は墓地の《ホルスの黒炎竜 LV6》をリンクマーカーに挿入。さあ、飲み込んでぇ……私のドラゴン」

 いま、ホルスの黒炎竜だったもの股間から出なかった? しかも矢印じゃなくおたまじゃくしの形で。

「アローヘッド受精確認! リンク召喚。生まれて、LINK-1《ミスティック・ソードマン LV0》!」

 こうして誕生したのは、《ミスティック・ソードマン LV2》そっくりの小型の戦士。……ていうよりね、それよりも。

(……怖い)

 私は思った。

 メールちゃん、何なのその召喚口上と演出。男のほうの性欲丸出しじゃない。しかも色々拗らせ過ぎて発想がそれ上級者超えて超級者だし、何なのよアローヘッド受精確認って。怖い、怖いわこの子。ナーガちゃん、本当に大丈夫なのよね?

 そういえば、梓が今朝いってたっけ。「セクハラされる側の気持ち知らないと」って。むしろいま私、生まれて初めて「同性に身の危険を覚える」体験してるんだけど。

「じゃあ、ミスティック・ソードマンのモンスター効果いくよぉ」

 しかも当のメールちゃんは普通にデュエルを続けようとしてるし。……。…………まあいいか。

 見てる限り、メールちゃんは心の底からデュエルを愉しんでる。闘いの道具なんかでなく純粋にデュエルモンスターズが大好きなのだろう。いまのメールちゃんには、食後の展開とかデュエル前の空気みたいなものを引きずってる感じはみられない。もしかしたら、あえて目を背けていまはデュエルを、なのかもしれないけど。

 どちらにしても、そんな彼女のテンションに付き合いこそしても、水を差すわけにもいかないわよね。それでデュエル中断になったりしたら、仕事が絡んでる以上そこに影響してしまう。

「《ミスティック・ソードマン LV0》は特殊召喚の成功時に相手モンスター1体を裏側表示にできるの」

「うっ」

 裏側表示になってしまうレヴィムリーヤ。これでは連続攻撃どころか、このミスティック・ソードマンを対処することができない。その上、このカードもLVモンスターなのだから、恐らく《ミスティック・ソードマン LV2》を出す効果を持ってるはずなのだ。これはやばい。

 しかし、私には何もできない。

「ターン終了」

「じゃあ、私のターンだねー。ドロー」

 メールちゃんはカードを引き、

「あっ」

 と、反応する。引いたら駄目なカードを引いちゃった。そんな顔だ。

「もぉ、こんな所で来ないでよぉ。《ミスティック・ソードマン LV0》の効果発動。このカードはリリースすることで、手札かデッキからLV2を特殊召喚できるの。私は手札からLV2を特殊召喚するね」

 なるほど、さっきのドローはデッキから呼び出す予定だった《ミスティック・ソードマン LV2》だったらしい。そして、彼女のデッキにLV2は1枚しか投入していない様子。

「続けて、《ホルスの黒炎竜 LV4》も通常召喚」

 再び登場する隼の頭を持ったドラゴン。

「バトル。私は《ミスティック・ソードマン LV2》でセット状態のレヴィムリーヤに攻撃ぃ! ミスティック・ソードマンは、裏側守備モンスターをダメージ計算を行なわず破壊できるのー」

 そう。だからやばかったのだ。

「レヴィムリーヤ撃破ー」

 嬉しそうにいうメールちゃん。ああもう、こんなにはしゃいじゃって。――クックック。

「それはどうかな?」

 私は、ニヤリと笑った。

「罠カードを発動!」

 伏せカードをオープンし、舞いながら私は叫ぶ。

「底知れぬ絶望の淵へ沈――」

「あ、罠カード《王宮のお触れ》でミラフォは無効にするねー」

「でしょうねー」

「そだねー」

 まあ、そんな茶番はともかくとして、レヴィムリーヤはミスティック・ソードマンに破壊され、続けてホルスの黒炎竜が2体いるトークンのうち1体を戦闘破壊。

「《ホルスの黒炎竜 LV4》の効果発動。このカードが相手モンスターを戦闘破壊したターン終了時、このカードはLV6にレベルアップ」

 こうして再び現れる上級モンスターのホルス。今回はLV8まで一気に来なかっただけラッキーだけど。

「わたしはこれでターン終了」

 

沙樹

LP4000

手札1

[][][]

[《幻獣機トークン》][][]

[]-[]

[][《ミスティック・ソードマン LV2》][《ホルスの黒炎竜 LV6》]

[][][《王宮のお触れ》]

メール

LP4000

手札0

 

「私のターン、ドロー」

 私はカードを1枚引く。新たに手札に加わったのはレベル3チューナーモンスターの《幻獣機ソユーズピニ》。このターンで一気に攻めることは難しそうだ。とはいえ、ホルスはまだLV6のうちに強引でも対処しなければならない。

「《幻獣機テザーウルフ》通常召喚、効果で幻獣機トークンを1体生成」

 私は《幻獣機メガラプター》の効果でサーチした幻獣機を出し、

「バトル! テザーウルフでホルスに攻撃。そしてダメージ計算時にテザーウルフはトークン1体をリリースすることで、ターン終了時まで攻撃力を800アップさせれる」

 ホルスの黒炎竜が迎撃に炎のブレスを吐くも、デコイのホログラムが陽動し、代わりに受ける。その隙にテザーウルフは鎖を飛ばし、ホルスの黒炎竜を拘束。

 

《幻獣機テザーウルフ》 攻撃力1700→2500

 

 ホルスが身動き取れなくなった所を、テザーウルフは機銃をまき散らし撃破。

 

メール LP4000→3800

 

「私はこれでターン終了」

 

沙樹

LP4000

手札1

[][][]

[《幻獣機トークン》][《幻獣機テザーウルフ》][]

[]-[]

[][《ミスティック・ソードマン LV2》][]

[][][《王宮のお触れ》]

メール

LP3800

手札0

 

 現状、私の場にはテザーウルフが1体と幻獣機トークンが1体。対して相手の場はミスティック・ソードマンと他の罠の効果を無効にする永続罠《王宮のお触れ》。

 一応現在の場は私が有利といえる。しかし、メールちゃんのデッキは間違いなくホルス召喚特化。いまLV8を出されてしまうと、私は魔法と罠の両方を封じられてしまう。今日の私のデッキは完全に幻獣機軸。モンスターだけで展開するのは難しい分、二度目の突破は難しい。

 メールちゃんが2度目のLV8召喚を成功させる前に、デュエルを終わらせるかLV8を対処する準備を終わらせなければ。

 しかし。

「わたしのターン、ドロー」

 メールちゃんはカードを引くと、

「魔法カード《進化の道標》を発動。このカードは墓地のLVモンスター1体をデッキに戻して、そのカードに書かれてるモンスターをデッキからサーチするカード。わたしは墓地の《ホルスの黒炎竜 LV8》をデッキに戻して、《ホルスの黒炎竜 LV6》をサーチするよ」

「あ」

 駄目、このカードは。

「わたしは《ミスティック・ソードマン LV2》をリリースして《ホルスの黒炎竜 LV6》をアドバンス召喚。いくよー。ホルスでトークンに攻撃」

 再び現れたホルスが、今度は最初からデコイのトークン目掛けてブレスを吐き、破壊する。

「そして、ターン終了時に《ホルスの黒炎竜 LV6》はLV8にレベルアップ」

 まさか。こうもあっさりLV8を許してしまうなんて。

「わたしはこれでターン終了」

 なんて、にこっと笑うメールちゃん。

 

沙樹

LP4000

手札1

[][][]

[][《幻獣機テザーウルフ》][]

[]-[]

[][《ホルスの黒炎竜 LV8》][]

[][][《王宮のお触れ》]

メール

LP3800

手札0

 

(さて)

 私は現状を分析した。

 テザーウルフが生き残ったことで、実はホルスの効果を封じるモンスターの召喚は可能になった。しかし、そのモンスターの攻撃力は2500とホルスの数値には及ばない。出しただけでは次のホルスの攻撃で沈むだけ。

 現在、明らかにパーツが足りなかった。

「私のターン、ドロー」

 フィールを込め、私はカードを引き抜く。そして、ドローカードを確認し、

(なるほどね)

 と、思った。勝てるかはともかく「このカードを使う状況」は間に合った。ならば、まずホルスの効果を封じる「あのエース」を出すしかない。

「私はチューナーモンスター《幻獣機ソユーズピニ》を召喚。そして、レベル4《幻獣機テザーウルフ》にレベル3《幻獣機ソユーズピニ》をチューニング! 未だ穢れに染まらぬ無垢なる翼よ。その透明さで敵を討て! シンクロ召喚! 飛翔せよ、レベル7! 《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》!」

 私の場に出現したのは、そろそろ私の代表モンスターになってそうな借り物のエース。その攻撃力は2500。続けて私は、たったいま引いたカードを使用する。

「魔法カード《貪欲な壺》を発動」

「え?」

 メールちゃんはきょとんとし、

「いいの? ホルスLV8はいつでも何度でも魔法の発動を無効にできるよー?」

「別に構わないわ」

 私はいった。

「けど、その効果を使った瞬間、メールちゃんの負けは確定するけどね」

「えー? どうして?」

 訊ねるメールちゃんに私は。

「クリアウィングには3つの効果を持ってるわ。1つ、1ターンに1度レベル5以上のモンスターが発動した効果を無効にして破壊する。2つ、1ターンに1度、レベル5以上のモンスター1体のみを対象にする効果を無効にして破壊する」

「あっ」

 メールちゃんも気づいたらしい。ホルスの効果を発動したら、1つ目の効果で逆にホルスが破壊されてしまうことに。

 さらに、

「3つ、クリアウィングは自身の効果でモンスターを破壊した場合、ターン終了まで破壊したモンスターの元々の攻撃力分アップする」

「ってことは、もしホルスの効果を使ったら、クリアウィングの攻撃力は5500になって」

「そういうこと」

 言いながら私は、墓地から《幻獣機ハリアード》《幻獣機メガラプター》《幻獣機テザーウルフ》《幻獣機ドラゴサック》《CX幻獣機レヴィムリーヤ》の5枚を戻しカードを2枚ドロー。

 よし!

「続けてフィールド魔法カード《フル・フラット》発動。当然、ホルスはこの発動も無効にできるけど」

「しちゃ駄目なんだよね」

 まさか、ホルスの効果が無効化されてないのに封じられるとは思わなかったのだろう。驚きながらも目が「そんなぁ」って訴えてるのがみえる。

 《フル・フラット》の効果が受理されると、辺りは一転空を舞う空母の甲板へと景色を変える。

「《フル・フラット》は1ターンに1度、800ライフ払うことで幻獣機トークンか手札の幻獣機を召喚できる。私は幻獣機トークンを攻撃表示で特殊召喚」

 

沙樹 LP4000→3200

 

 メールちゃんは「え?」て顔で、

「攻撃表示で? 攻守0なのに?」

 そんなメールちゃんに、私は最後の1枚を見せていった。

「ところで、私の手札を見てくれ。こいつをどう思う?」

「すごく……詰みです……」

 そのカードは《強制転移》。メールちゃんはしょんぼりとデッキに手を添えた。

 

メール LP3800→0(サレンダー)

 

 

 デュエルが終わり、お互いの出したソリッドビジョンが同時に消える。

 メールちゃんは、がくっとなって。

「はあっ、負けちゃったぁ」

 と、いいつつ。すぐぱっと笑顔で、

「でも、楽しかったー」

「それは良かったわ」

 私はいって、

「で、デュエルの実力のほうも信用して貰えそう?」

「え? あ」

 メールちゃんは、一回きょとんとしてからハッとなり、

「う、うん。大丈夫だよぉ」

「忘れてたのね」

「ごめんなさい」

 指摘すると、メールちゃんはすぐ認めて謝った。

「まあいいわ」

 いい気晴らしになったみたいだしね。

「さてと、じゃ私はお風呂入り直すけどメールちゃんは?」

「あ、わたしもー」

 メールちゃんは言おうとして「あ」となり、

「で、でもでも。それだとわたしおねーちゃんの裸え見ちゃうよ」

「子供に見られた所で気にしないって話よ。さ、行きましょ」

 いま私すっごい嘘ついたような気したけど、大丈夫よね?

 まあ、それはともかくとして私はメールちゃんの手を引いて脱衣所に向かう。

 道中。

「それにしても、まさかメールちゃんにヤマジュンネタが通じるとは思わなかったわ。そんなネタ振った私も私だけど」

 なんて軽く雑談。

「あ、それはね。冥弥おねーちゃんと地津おねーちゃんに教えて貰って」

「ああ」

 確かに、あのふたりなら知ってそうなイメージ。あと金玖ちゃんとかも数年後くらいには。

「けど、あの本でひとりエッチしたらふたりに驚かれて、それでネット上で昔流行ってたネタなんだって教えて貰ったの」

「そりゃあ驚くわよね」

 今の時代、あれを本来の用途で使うような人が存在するなんて。

「じゃあリンク召喚の口上と演出は? あれ自分で考えたの?」

「ううん、あれは全部ゼウスおねーちゃん」

 やっぱりあの子天災か。

「ねえメールちゃん。あのリンクの演出とか自覚して使ってる?」

「ふぇー? なにが~?」

 もしかしてと思ったけど、どうやら本人分からずやってたらしい。

「いや、アローヘッドにセットするモンスターがお股から出てたじゃない」

「うん。それがミソなんだって~」

「で、それがおたまじゃくしじゃない。普通リンク召喚だとアイコン多いのに」

「でも、最近は霊魂タイプも増えてるよね?」

 まあそうなんだけど。

「で、その上で聞くけど。受精ってどういう意味かは知ってる?」

 すると、メールちゃんは恥ずかしそうに、

「え、えーと。確かえと、男の人と女の人が」

 そこまで言って、メールちゃんはハッとした顔になり、

「あ、あああああああああああああああああっ」

 と、錯乱半分に絶叫する。

「アローヘッド受精完了ってそういう。ってことは口上の挿入も!? ぜ、ゼウスちゃん。わたしそういうネタ避けてるの知ってるのに、もー」

 その後、「僕のエクスカリバー」のくだりも教えてあげると、もうメールちゃんは顔真っ赤にぷんすか。

「ごめんね沙樹おねーちゃん。もしかして、あのとき怖かった?」

「う、ううん。そんな事なかったから安心して」

 実際は、すっごい怖かったけど。

「ありがとう」

 メールちゃんは言いながらゆっくりフェードアウトしていく。

 脱衣所についた。

 早速私はタオル諸々の入ったロッカーを開け、デュエルディスクを入れようとする。そこへ、

「あ、待ってぇ」

 メールちゃんがいった。

「あのねぇ、脱ぐ前に聞いて欲しいことがあるの」

 見ると、メールちゃんの表情は憂いに満ちていた。それでいて、何かを決意したような。そんな意志も感じる。

「なに?」

 訊ねると、メールちゃんは2~3回深呼吸してから、

「あのね、わたし前にね、彩土姫ちゃんにえっちな酷い事、しちゃったことがあるの」

「メールちゃんが?」

「うん。わたしがまだ中学に入る前の話だけど」

 それは、夕食時にナーガちゃんが言ってた「トラウマ」に触れるくだりだった。

 メールちゃんが語り始めた。

「最初はね、わたし女の子をみてもどきどきしなかったよ? かすが様を見て、胸がきゅんきゅんして、おちんちんがむずむずしたくらい」

 早速地雷を聞いた気が。

「だけどね、ある日おちんちんが大きくなっちゃって、その日からかな? わたしが男の子としてもえっちな気分になれちゃったの。急に、男子が女の子をスカートめくりする気持ちが分かったり、ちょっとクラスにおっぱい大きい子がいると目がいっちゃったり。でもね、でもね、ちゃんと女の子でもあるんだよ? 男子のお尻とかすっごく気になったもん」

 いや、それはおかしい。とは流石にいえない。

「わたし、抑えられなかった。ううん、その頃のわたしは、それが悪いことって知らなかったから。だから、まず大好きなかすが様のお尻に挿れようとして、でもそれは逃げられちゃって」

「あ……」

 だから、かすが店長メールちゃんを一番怖がって。

「それで、次に目に入ったのが彩土姫ちゃんだったの。それで、お医者さんごっこっていって、酷いことしちゃった」

「……」

 私は、そこに何も返せなかった。

「その後ね、地津おねーちゃんとナーガちゃんが沢山叱ってくれて。教えてくれて。それで、やっと、やっとわたし、取り返しのつかないことしちゃったって気付いたの。わたし、沢山謝ったよ? 謝っても駄目って分かってたけど、それ以外できなかったから。でも彩土姫ちゃんはやっぱり許してくれなくて。……その内、彩土姫ちゃん引っ越しちゃった。前のお家はわたしのお家と近かったから」

 言ってから、メールちゃんは後ろを向いて、風呂場とは反対側に歩き始める。

「沙樹おねーちゃん、わたしがリンク召喚した時ね、ちょっとお顔引きつってたよ? 本当は怖がったんだよね?」

 メールちゃん、気づいてたんだ。

「否定はしないわ。でも、私はもう気にしてないって話よ。メールちゃんが本当に分かってなくてやったのも分かったし」

「でも、だめだよ。あの時のお顔の意味知ったら、やっぱりわたし、おねーちゃんと一緒にお風呂入れない。入っちゃ駄目だよぉ」

 メールちゃんが振り返る。笑顔をつくりながら、彼女は泣いていた。

「ごめんね、沙樹おねーちゃんが凄く優しいから、わたし甘えちゃってたみたい。わたし悪い子なのにね、女の子の敵なのにね。大切な彩土姫ちゃんに酷いことして、たぶんわたしのせいで彩土姫ちゃんおかしくなったのに、体売り始めちゃったのに、なのに、まだわたし許されてるって思ってたのかなぁ、そんなはずないのに」

 まるで、自分を痛めつけるかのような言葉。いま、私が矯正しなければ、この子は今後ずっとそうやって自分を責め続けるのだろう。

「メールちゃん」

 私は、何とか声をかけようとする。

 そんな時だった。

 

「そんな事ないッ!!」

 

 突然、声が響き渡った。

 私は振り返る。そこには、脱衣所の入り口で、まさに話題の彩土姫ちゃんがひとり立っていた。

「ふぇ、さ……彩土姫ちゃん?」

 目をぱちくりするメールちゃん。

「どーしてここに?」

「さっきまでちょっと運動してて、汗かいちゃったんだよ。って、それよりも」

 彩土姫ちゃんはずかずかとメールちゃんの前に歩み寄り、

「勝手に何でもかんでも自分のせいにしないでよ! ボクはとっくにメールちゃんのこと許してるし、そんなうじうじしてるほうが見てて辛いんだから、もっと堂々としててよ姉ちゃん!」

 と、メールちゃんの肩をガシッと掴む。

「確かに酷いことされたと思ったよ。めっちゃくちゃ痛かったし、怖かったし、死ぬかと思ったよ。それに、あの頃のボクはえっちな事何にも知らなかったから、てっきり虐められたのかと思ったし、嫌われたのかと思った。だからあの時メールちゃんを許さなかったの!」

 と、言葉を吐き捨てるように言った彩土姫ちゃん。そこから、少しトーンを落とし。

「お父さんもお母さんも、ボクが何されたのか教えてくれなかったし、訳分からないままメールちゃんと会わせないようにって引っ越し決めちゃうし。だから、引っ越した後、ナーガちゃんと連絡取って、どうしてメールちゃんボクのこと嫌いになったのか聞いたんだ。そしたら、ボクが思ってたのと全然違っててさ、だから転校先で先生に頼んで性教育のこと教えて貰ったんだ。その時にエンコーのことも教えて貰って」

 待った、それってつまり下手したらその「性教育」って。

 メールちゃんも私と同じ推測をしたようで顔を青くしてる。けど、彩土姫ちゃんは自分が爆弾発言した自覚がないようで、

「だからさ、いまはむしろメールちゃんにされて良かったって思ってるくらいなんだ」

 と、更に正常な思考を疑う発言を。

「ほら、ボクって色気もないし、おっぱいもないし、男みたいじゃん。だけど、メールちゃんや先生は女の子扱いしてくれたって事だよね。そう思うとすっごく嬉しくて、また女の子扱いして欲しくなっちゃって。それがエンコー始めた経緯。それにさ、先生もいっぱい数こなせばかすが様も振り向いてくれるって言ってるし、慣れればすっごい楽しいし」

 駄目だこの子、その先生に都合よく洗脳されている。

「だから、ボク――」

 彩土姫ちゃんが何か言ってるのは分かるけど、恐らく彼女の言葉が耳に入ってる人は、この場にはひとりもいないだろう。

 私はメールちゃんに視線を送る。

 メールちゃんは、いまにもショックで倒れそうな顔してたけど、私に気づくとすぐ叫んだ。

「沙樹おねーちゃん! その“先生”の余罪を全て調べ上げて!」

 よしきた。

「全額こちら持ちで引き受けるわ。で、それだけでいいの? 冤罪は?」

「可能な限りやっちゃってー。彩土姫ちゃんの人生狂わせた真犯人には、死刑さえ生温い制裁をー」

「なら、ついでに真犯人の後ろ掘る?」

「掘るー」

 こうして、「え、え、え?」と困惑する彩土姫ちゃんを他所に、私はゲイ牧師と永上さんに連絡を取るのだった。

 

 数日後、その先生はゲイ牧師兄弟4人とメールちゃんの計5人によって後ろの穴を破壊された挙句、永上さん協力の下、冤罪増々の無期懲役で今後一生臭い飯生活が約束されるのだけど、それはまた別の話である。

 

 

 ――現在時刻0:00。

 結局、あの後彩土姫ちゃんとメールちゃんがお風呂に入っていった為、二人きりになりたいだろうと私は脱衣所を後にした。

 部屋で梓が待ってるだろうとは思ったけど、私はすぐ部屋に戻らず、途中トイレに入り誰も聞いてないのを確認してから事務所と通信を繋ぐ。

「――ってわけで、多重依頼引き受けそうになっちゃったわけだけど。許可をお願いできる、司令」

 私は事の経緯を伝えた上で、司令にメールちゃんからの依頼も受けたいと懇願すると、

『鳥乃、アンタさ……』

 通信先から、妙に感情の籠った司令の声。これはお叱りを受けるかな、そう思った矢先。

『グッジョブよ! よくこんな最高の話を持ち込んでくれたわ』

 と、興奮した様子で司令がいった。

「なら、許可くれるって話?」

『当然よ。ただし、多重依頼を回避する為に担当の構成員をそれぞれ変更するわ』

「え、変更?」

『元々の依頼だったオールバックの男関連は引き続き鳥乃・藤稔ペアで向かって貰うわ。けど、ナーガから請けたもう片方の依頼とメールのボディガードは両方同時は無理でしょ』

「あ」

 そうだった。

『今後、藤稔は支援からナーガの依頼のメインに変更、支援には双庭姉妹を寄越すわ。で、鳥乃はメールのボディガードに就いて頂戴』

「じゃあ、私の支援は」

 双庭姉妹曰く、いまの私の支援は木更ちゃん以外務まらないらしい。確かに、今回の依頼を私と木更ちゃんで分けるのは仕方ないことだけど、まさか私単独で依頼に就けとでも言う気なのだろうか。

 なんて不安になる私に、司令は驚きの言葉を発するのだった。

 

『私が入るわ』

 

 って。




今回のサブタイトルは嘘です、すみませんでした。
元々は「藤稔だよ、全員集合」ってサブタイの予定だったのですけど、4月1日にアップする形になったので、せっかくですから。


●今回のオリカ


進化の秘宝
通常魔法
(1):デッキから「レベルアップ!」1枚を手札に加える。この効果の発動時に手札を1枚捨てる事で、かわりに「レベルアップ!」魔法カード1枚を手札に加える。

CX幻獣機レヴィムリーヤ
エクシーズ・効果モンスター
ランク8/風属性/機械族/攻3000/守2500
レベル8モンスター×3
(1):自分または相手のスタンバイフェイズ時に、このカードのX素材を1つ取り除いて発動できる。
自分フィールドに「幻獣機トークン」(機械族・風・星3・攻/守0)2体を特殊召喚する。
(2):自分フィールドにトークンが存在する限り、このカードは戦闘・効果では破壊されない。
(4):このカードが「幻獣機ドラゴサック」をX素材としている場合、以下の効果を得る。
●自分バトルフェイズ中に、このカード以外の「幻獣機」モンスター1枚をリリースして発動する。
このカードは通常の攻撃に加えて、もう1度攻撃できる。
(レヴィアタン+An-225ムリーヤ)

レベルゼロ!
速攻魔法
(1):手札・フィールド・墓地の「LV」モンスターのみを素材として、「LV」モンスターもしくは、素材モンスター1体と攻撃力が同じモンスター1体をEXデッキからリンク召喚またはX召喚扱いで特殊召喚する。この効果でリンク召喚する場合、素材モンスターはゲームから除外される。

ミスティック・ソードマン LV0
リンク1/地属性/戦士族/攻 900
【リンクマーカー:下】
「LV」モンスター1体
このカード名の(1)(2)の効果は1ターンに1度、いずれか1つしか使用できない。
(1):このカードの特殊召喚した場合、相手モンスター1体を裏側守備表示にできる。
(2):このカードをリリースして発動する。手札・デッキから「ミスティック・ソードマン LV2」1体を特殊召喚する。この効果は相手ターンでも使用できる。

進化の道標
通常魔法
(1):墓地に存在する「LV」モンスター1体をデッキに戻し、そのカードに記されているモンスター1体をデッキから手札に加える。


幻獣機ソユーズピニ
ペンデュラム・チューナー・通常モンスター
星3/風属性/機械族/攻200/守100
【Pスケール:青2/赤2】
このカード名のの(1)のP効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):このカードを発動したターンの自分メインフェイズに発動できる。
もう片方の自分のPゾーンにPカードが存在する場合、 「幻獣機トークン」(機械族・風・星3・攻/守0)1体を特殊召喚する。
(2):このカードのPスケールは自分フィールドの「幻獣機トークン」のレベルの合計分だけ上がる。
(3):自分フィールドにトークンが存在する限り、このカードは効果では破壊されない。
(4):自分フィールド上の「幻獣機トークン」1体をリリースして発動する。このカードを手札に戻す。
【モンスター効果】
(宇宙船ソユーズ+ズビニ鉤虫)

フル・フラット
フィールド魔法
(1):1ターンに1度、800ライフポイント払い、以下の効果から1つを選択して発動する。
●「幻獣機トークン」(機械族・風・星3・攻/守0)1体を特殊召喚する。
●手札から「幻獣機」モンスター1体を通常召喚する。

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