それ往け白野君!   作:アゴン

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たった一つのシンプルな答え

 

 

 

 

 

 

 ユーリ─────“砕け得ぬ闇”がその真の覚醒を果たし、その猛威を一人の男に対して奮っていた一方、街の外れの山奥にてその様子を一部始終覗いていた者がいた。

 

「────どうやら、クアットロが上手く事を運んだみたいね」

 

端から見れば何ともない街並みを一人の女性が観察しているだけのなんて事無い光景。しかし、街を覆っている結界を通して見ている彼女からすれば、それは全く違う別の光景に視えていた。

 

 街全体を覆った銀氷の世界。凍り付いた死の世界を目の当たりにして、彼女は妹であるクアットロが事の成功を成し遂げたのだと確信する。

 

彼女の名はドゥーエ、戦闘機人のNo.2であり能力を用いた変身、偽装工作を得意分野としており、その能力でもって岸波白野を捕らえたスパイである。

 

そんな彼女の次なる目標はこの先で待ち構え ているであろう妹のチンクの回収と基地に向かっての一時撤退である。

 

 既に目標は果たした。あれから一向に基地からの連絡が来ていないのは気掛かりでもあるし、早い所離脱した方が良さそうだ。

 

クアットロの方はもう暫くは保ちそうだし、この隙に態勢を整え、改めてクアットロを回収しようと判断する……。

 

そしてドゥーエは最後にチンクと通信を交わした場所を特定、合流しようとその地点まで駆け付けたのだが、如何せんそのチンクの姿が見えない。

 

「……何か、あったのかしら」

 

No.5、チンクの戦闘能力は決して低くはない。その応用性の高さから言えば戦闘技能トップのトーレと対を成せる程だ。彼女の生真面目さから言えば持ち場を離れる事もなさそうだし。

 

一体どうして? ドゥーエの思考に煮え切らない疑問がグルグルと回っていると─────。

 

「へぇ、アンタが噂の戦闘機人? 聞いた話ではもっとヤバそうな連中みたいだけど……案外、見た目は私らと変わらないわね」

 

「─────っ!?」

 

ドクン。コア部分から一際甲高い音が耳朶に響いた。ここにはいない筈の第三者の声にドゥーエは振り返らずに停止する。

 

何故この場所がバレた!? 混乱する思考の中、出来るだけ相手に悟られないよう呼吸を整えながら、ドゥーエは周辺の索敵を開始する。

 

今ここにいるのは背後に立つ者と周囲に囲むように佇む四体の生命反応のみ。索敵を終えるとドゥーエは舌を打って現状の危うさを理解した。

 

自分は誘い込まれたのか。ここに来るのを知っているという事は既にチンクはここの連中に捕まったと見ていいだろう。

 

オマケに自分も今窮地に立たされている。ここを切り抜けてアジトに戻るには相当な技量を有する事だろう。

 

「そのまま大人しくしてなさいよー。出来れば痛い目に合わせたくないから」

 

後ろからの声にドゥーエは僅かに口元を弛ませる。

 

──────あった。この状況を覆す僅かな隙が。耳に入ってきた声を頼りに、ドゥーエは内部に蓄積されたデータ内を検索しながら事の手順を模索する。

 

そしてそのデータを見つけた時、ドゥーエの笑みはより深いものへと変わっていく。

 

 声の主は遠坂凛。八神はやての家で居候をしている魔導師。その実力は未知数だがデバイスを用いず、簡易な魔法しか行えないと推測される。

 

そしてこの少女には気になる異性がおり、彼の態度で遠坂凛は多大な感情的負担を被る可能性大。

 

 この項目を見つけた瞬間、ドゥーエは確信した。このやり方を持ちえば必ずこの窮地から脱せると。

 

たとえ四体一という不利な状況でも、やり方一つでどうとでもできるのだと、彼女は勝利の道順を構築する。

 

自分はスパイだ。この程度でどうにか成る程ヤワではない。ドゥーエは両手に頭を重ねながら、ゆっくりと声のする方へと向き直り。

 

そしてその際、彼女はある人物へと変身する。

 

「─────!」

 

その姿に少女は一瞬息を呑む。そしてそれを見たドゥーエは同時に彼女に向けて走り出した。

 

やはり人間、どんなに鍛えられようと心の隙を付ければ脆いもの。岸波白野へ変身したドゥーエは呆気にとられる凛を見てそうほくそ笑む。

 

既に間合いには自分と彼女しかいない。自分を囲むつもりで離れた位置にいるのだろうがそれが仇になったな。

 

後は戦闘機人の腕力でこの少女を締め上げ、人質として利用するのみ。幸い転移装置は近くにある。このままドクターの元へ戻れば新たな実験材料が増えたと喜んでくれるだろう。

 

さぁ。これで王手(チェック)だ。未だ呆けた遠坂凛にドゥーエの魔の手が迫った────

 

その瞬間。

 

「───────がっ!?」

 

突如、自分の顔に重い衝撃が走る。何事だと混乱するもあまりに強い衝撃の為にドゥーエは意識を保てなくなり。

 

彼女は、そのまま意識を手放すことになるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「凛、女性相手に魔力を込めた顔面パンチとか……流石にやり過ぎじゃない?」

 

「いいのよ。コイツ、普通の人間とは根本的に違うみたいだし、この程度でどうにかなるような奴じゃないでしょ?」

 

 倒れ伏した戦闘機人を見て、凛は殴った手を振るい、ランサーことエリザベートは呆れた様子で肩を竦めていた。

 

本来ならランサーが間に入る事でドゥーエの行動を阻止するつもりだったが、それ以上にマスターである凛の動きが早かった為に見過ごした形になったが……鼻血を流しながら気絶しているドゥーエを目の当たりにすると、やれやれと深い溜息を漏らしながら手にした槍を消して……。

 

「そういう問題じゃないでしょう? 折角綺麗な顔立ちしているのに可哀相じゃない。もし痕が着いたらどうするの?」

 

「何で襲われたアタシじゃなくてコイツの方を心配するのよ? というか、アンタの方がずっとエグいやり方してるじゃない!」

 

「私は無駄に傷を付けたりしないわ。ゆっくり、じっくりと調教してあげた方が良いって、最近解り始めてきたもの」

 

「あーはいはいソウデスカ」

 

 何を妄想しているのか、頬に両手を付けて恍惚な表情となっているランサーを尻目に、凛は木の影に隠れた残りの二人に声を駆けた。

 

「アンタ達も悪かったわね。余計な手間を掛けて」

 

「い、いえ、私は別に……」

 

「戦闘機人って……要するに私達と似たような存在なのにそれを一撃でノシちゃうとかこの人、何者?」

 

凛の呼び掛けに姿を現すのは、アミタとキリエの二人────フローリアン姉妹だった。

 

姉のアミタは恐縮しながら、妹のキリエは戦闘機人を戦闘不能に陥れた凛に戦慄しながら、それぞれ木の影から出てくる。

 

白野と共に連れてこられたアミタ、拠点で待ち惚けを喰らっていたキリエ、その二人がここにいるのは偏にネットワークを自由に行き来が可能なメルトリリスによる行動が大きな理由となっていた。

 

 情報端末ならどのような代物にも侵入できる彼女は端末から端末へと移動し、海鳴市に戻ってきた白野達にはBBを通して、キリエには“直接”侵入していた為、情報共有による連携した行動は割と簡単に移せた。

 

複雑な事情を持っていたこの姉妹も、事態が事態の為に一時休戦。現在は事態の収集に協力する事になったのだが……。

 

「…………」

 

キリエだけは納得できていないのか、姉であるアミタとは一言も言葉を交わしておらず、視線も合わせようとしない。

 

そんな妹の様子にアミタはドキマギしながら問い掛けるが……。

 

「あ、あのねキリエ。私も色々考えたけど……やっぱりここの世界の人達に迷惑を掛けるのは良くないと思うんだ。勿論お父さんや私達の世界の事も大事だし、蔑ろにしたくはないけれど、私達の問題をここの時代にまで持ってくるのは……やっぱり間違いだと思うんだ!」

 

精一杯の言葉で妹を説得しようとするアミタだが、当の本人であるキリエはどこ吹く風、全く反応も見せずに相変わらず明後日の方向へ向いている。

 

そんな妹に肩を落とすアミタ。そんな二人を凛や事情を知った様子で肩を竦める。

 

そして、そんな妹の方はと言うと……?

 

(というか、一体あの出鱈目AIはなんなのよ!? 人に言うこと聞かなければその人格を溶かすとか物騒な事言い出すし、それを証拠に私のプログラミングを一部融解させたし! 毒を盛ったって何!? 私、一体どうなっちゃうのよ!?)

 

などと、岸波白野の拠点にいた時に交わした彼女との“お話”を思いだし、キリエは一人戦々恐々としていた。

 

そして、恐らくはそんな事だろうなと察知していた凛は色々勘違いをしている二人を尻目に街の方へ視線を向ける。

 

「こっちの方は片付けたから……そっちの方は任せたわよ」

 

今尚、無様に足掻いているであろうその人物に向けて、凛は一人エールを送るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 男のその言葉を聞いて、少女は自分がこれからどうしたらいいか分からなくなっていた。

 

自分は破壊者だ。人に呪われ、蔑まれ、疎まれ、憎まれ、殺意を抱かる。そしてそんな負の中にいた自分にとって憎悪こそが全てだった。破滅こそが彼女の存在する意味だった。

 

なのに、この男はそれを祝福し、あろう事か感謝した。自分という存在と出会えたという─────そんな、ちっぽけな理由で。

 

けれど……嗚呼、そうか。そんな理由だけど、それだけで良かったのか。どんな小さな理由であろうと、どれだけ些細な事だとしても。目の前のこの人は、たったそれだけの事を伝える為に、自分の命を張れるのか。

 

バカな人だ。と、少女は思う。けれど凄い人だ。とも少女は思った。

 

理由なんていらない。ただ確かにある一つの事の為に、それが自分の事だろうと他人の事だろうと一生懸命になれる。

 

どこまでも愚かで、浅ましくて、呆れるほどにおバカさんで……けれど、それ故に眩しく、尊い。

 

だから、なのだろうか。こんなにも胸が苦しくなるのは………こんなにも、涙が溢れて止まらなくなるのは。

 

「全く、泣き虫なんだなぁユーリは。そんなんじゃ可愛い顔が台無しになるだろう?」

 

自分の頭に暖かい手が触れるのを感じる。血だらけになっても、どんなに自分が傷付いても何度でも立ち上がる。

 

そんな彼の腕に抱かれながら少女は自分の存在意義を新たに見いだそうとした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ったく、折角お膳立てしてあげたのに、余計な事をしないでくださいますぅ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────え?

 

そんな疑問の声が出てきたのは、岸波白野かユーリか。時が止まったかのように凍り付いた二人に聞こえてきたのは、ユーリの背後から現れる事の全貌の首謀者だった。

 

「ユーリさん? アナタもアナタです。私が折角用意した劇の演目をアナタ自身が壊しちゃってどうするんです? もぅ、私ってばプンプンですよ?」

 

背中から貫かれたユーリを見て、岸波白野の目が大きく見開く。その様を見て首謀者……戦闘機人のNo.4ことクアットロは気分を良くしたのか、その表情に歪んだ笑みを浮かばせている。

 

「けぇどぉ、ソイツを完膚無きまでにボロクソにしてくれたのは見ていてスカッとしましたので良しとしましょう。さて、残すは最後の仕上げです」

 

そう言ってクアットロはユーリを貫いた手を体内にまで引きずり戻し……。

 

「─────アクセス」

 

“接続”の意味の言葉を紡いだ瞬間。ユーリを中心に赤黒い魔力の渦が吹き荒れる。

 

「なっ!? クッソ!」

 

吹き荒れる魔力の暴風に岸波白野はユーリの体にしがみつく事で抗う。傷口からボタボタと血を流しながら、全身から襲い来る激痛に耐えながら、歯を食いしばって耐えて見せる。

 

────しかし。

 

「さぁ、いい加減お邪魔虫は消えなさいな。目障りなのよ」

 

眼鏡を取り外し、束ねた髪を解いたクアットロが白野の撃ち抜かれた腹部を蹴飛ばした。

 

痛みが走る。激痛に苛まされながらも白野は言葉に出来ない悔しさを抱いたまま、その意識を閉ざした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一体、どれだけの間気を失っていたのだろう? 一分か一秒か、はたまた数日は眠っていたのか。

 

冷たい地面の感触が感じている辺り、どうやらまだ自分は生きているようだ。

 

ならば起きなければ、起きれるなら立ち上がらなければ。自分にはまだやるべき事がある。自分にはまだ……ユーリから聞かされていない言葉がある。

 

腹部の開いた穴は、礼装の一つである“鳳凰のマフラー”が自分が寝ていた合間に傷を癒してくれていた。

 

サーヴァントだけにではなく使用者にまで効果を発揮できる事実を嬉しく思いながら、自分は体に力を込めて立ち上がれる。

 

……何だ。まだ自分には込められるだけの力が残されているではないか。所々傷だらけだがまだ動ける自分の体に苦笑いを浮かべる。

 

 ユーリの方へ視線を向ける。相変わらず赤黒い魔力の渦が今も渦巻いている事から、どうやらそれほど時間は経っていないようだ。

 

だが、先程と比べて明らかに巨大化している魔力の渦は、時間が経つに連れて更に大きく肥大化していく。

 

一体なにがどうなっている? そう疑問を感じた瞬間、突然渦は弾けたように掻き消え、その中から現れたのは……。

 

『あぁ、あぁ! これが力! 悠久の刻の中で培われた魔の力! 凄い! 素晴らしい! 嗚呼、見てますかドクター! 私、今、スッゴく幸せです!!』

 

それは人間の負をその身に受け、巨大化し、欲望の権化と化し────異形となったクアットロの姿だった。

 

見上げるほどに巨大化したクアットロは、此方に気付いた様子はなく、手にした力に喜び、その両手を天高く広げ、翳している。

 

『あぁ凄い。これが数多の魔導師が求めた闇の力。砕けず、滅びず、決して色褪せない永遠の力! フフ、アハハハハハハ!!』

 

自分の手にした力が余程気に入ったのか、先程から歓喜の声を上げるクアットロ。そして彼女の手にした力も凄まじく、魔力の余波がビリビリと肌を突き刺してくる。

 

だが此方にはそんな事はどうでもいい。ユーリはどこにいるのか……と、目線を目の前の巨人に這わせ。

 

見つけた。胸元のコアらしき部分に、磔のように四肢を一体化させられたユーリが、力なくうなだれていた。

 

ユーリ! 彼女の名を叫ぶと、ピクリと体が動き、僅かに反応している。……良かった。どうやら生きているようだ。

 

彼女の無事に安堵していると、今まで空を煽っていた巨人が、自分を見下ろす。

 

『あらあらぁ、まだそんな所にいたんですかぁ? ふふ、ホント貴方ってグズでノロマですのね』

 

 クアットロの卑下た笑みが、巨人の顔を通して見える。その見下した態度が癪に障るが、今はそれ所じゃない。

 

ユーリ! コア部分に捕縛された彼女に何度も呼び掛ける。だが、意識はないのかあれから自分の言葉に反応する事はなかった。

 

『うっふふー♪ ホーントバカな人。いい加減無駄って理解しないのかしら? この子は最早私のお人形で養分。そう、私に力を流し続ける部品なの。今更声を出した程度で、どうにかなる話じゃないの』

 

外野が何か囁いているが、構わず自分はユーリの名を叫んだ。例え意識がなくとも声が掠れても、何度だって呼び続ける。

 

すると、そんな自分の声が届いたのか───。

 

「……う、うぅ?」

 

今までうなだれていたユーリが、その瞼を開けてゆっくりと自分を見えるように顔を上げてくれた。

 

「…………ハクノ?」

 

未だ意識がぼやけているのか、ユーリの目は虚ろだった。だけど自分に反応してくれた事に嬉しくなった自分は溜まらず「そうだ」と返事をする。

 

『あぁもう! 鬱陶しい虫が!』

 

そんな自分の前に、巨人の深紅の腕が振り下ろされる。衝撃と風圧に吹き跳びされ、何度も地面に打ち付けられながら転がり、漸く止まった頃には……ユーリとの距離は何百メートルと引き離されていた。

 

『いい加減理解なさい。貴方のその行いは無意味、無駄なの。無力なの!』

 

空から叩きつけれる罵声に体が沈む。……そうだ。自分は無力だ。誰かに助けられないと何一つ出来ない……ちっぽけで惨めな存在だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 けれど、こっちはそんな事────────百も承知なんだよ。

 

手足に力を込め、もう一度立ち上がる。そして今度は肺に一杯の酸素を取り込み、大声と共に外気に解き放った。

 

───────ユーリ!

 

「─────っ!」

 

自分は言った! 君が生まれてきて嬉しいと! 一緒に過ごせて楽しいと!

 

また一緒にご飯が食べたい! 皆と一緒に遊びに行きたい!

 

君は、どうなんだ!!

 

「わ、私は…………」

 

『このゴミ屑がぁぁっ!! 性懲りもなく! いい加減諦めろぉぉぉ!』

 

巨人が迫る。赤い拳に魔力を込めて先程とは比にならない程の一撃が自分に向けて振り上げている。

 

けれど、自分は声を出すのを止めなかった。止めたくなかった。

 

まだユーリの気持ちを聞いていない。まだあの子の言葉を聞いていない。自分はまだ、彼女の本当の想いを聞いていない。

 

彼女は“砕け得ぬ闇”多くの人を殺し、呪い、悲しみの連鎖を生み出した負の遺産。けれど、いや、だからこそ聞きたかった。

 

君の、本当の気持ちを、言葉にして聞きたかった。

 

『トマトのように潰れろやぁぁぁっ!!』

 

遂に巨人の拳が、自分を捕らえて振り下ろされる。

 

逃げない。逃げられない。最後の瞬間まで彼女の前に立ち続けた。

 

そして、巨人の拳が眼前にまで迫った──────その時だ。

 

 

 

 

「私は──────“生ぎだい”!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その声を、言葉を、想いを耳にしたとき、嗚呼、やっぱり自分は単純なのだと、岸波白野つくづく思い知るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私は、もっと生きたい。皆ともっとお話ししたい。皆ともっと……ご飯が食べたい」

 

もっと笑いたかった。もっと、解り合いたかった。

 

浅ましいと思う。今更自分だけの幸せなど願う事など赦されないのも分かっていた。

 

けれども、思ってしまった。感じてしまった。

 

もっと知りたい。もっと解りたい。

 

怒って泣いて、笑って喧嘩して、誰かの為に何かをしてみたいと。彼女は強く願った。

 

自分はシステムで闇だ。そんな願望、抱くこと自体矛盾し、破綻している。

 

けれど、それでも……大粒の涙を流しながら少女は彼に懇願する。

 

「お願いハクノ───────助けて」

 

それは掠れる程に小さな声だった。目の前の巨大な拳に潰された彼には………届く筈がない。

 

けれど─────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あぁ、助けるさ。俺が……俺達が!」

 

そんな少女の 願い/想い は確かに届いた。

 

その手に、黄金に輝く聖剣を携えて─────。

 

 

 

 

 

 

 




次回、果たしてどうなるのか!?(ゲス顔)

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