それ往け白野君!   作:アゴン

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いやー、リアルが忙しくて執筆もモンハンもマトモに出来なかった。

感想返しも暫く出来そうにありません。

本当に申し訳ありません。


砕け得ぬ闇

 

 

 

 

 ピチピチ過激団の首領ジェイル=スカリエッティに捕まり、一時は危機的状況にあった私こと岸波白野でしたが、BBの御陰でどうにか窮地を脱して今は彼らの拠点らしき基地内を脱出を兼ねて探索中である。

 

なんとも呑気な話であるが、基地内の全てのシステムはBBによって完全に掌握され、安全は既に確保されているとのこと。

 

それを証拠に通路のあちこちでは防衛システムらしい機械が動かずにそのまま倒れている。……流石はムーンセルをも掌握したBB、その手腕は見事を通り過ぎて遣りすぎの一言である。

 

で、そのBB本人はと言うと……。

 

「…………」

 

先程から無言のままでヅカヅカと先を進んでいく為、会話所かマトモに目も合わせていない。 このまま終始無言なのは流石に不味い……というか自分が耐えられないので思い切って声を掛けてみる。

 

あの、ワザワザ助けに来てくれてありがとう。手間を掛けたね。

 

「手間? えぇ、掛かりましたとも。先輩があまりにも間抜けな所為で私の貴重な時間が大幅に削られてしまいました。この埋め合わせはどうしてくれるんです?」

 

ジト目となった目線だけをこちらに向けてくるBBに苦笑いを浮かべずにはいられない。今目の前にいるのは間違いなくBBだが外見はスカリエッティの秘書の戦闘機人(面倒だから秘書機人)な為、余計に話し掛け辛い。

 

だがこのまま何も言葉を交わさない訳にはいかない。どうして自分の所に彼女がいるのかは分からないが、自分を助けてくれる為にワザワザ駆け付けてくれたのだ。ちゃんと礼を返すのが筋と言うものだろう。

 

何回か咳払いをしながら、一向に振り返ろうとしないBBに改めて礼を言おうとするが……。

 

「あぁそれと、これ、先輩の携帯ですよね序でに取り返しておきました」

 

───その前に、急に振り返って携帯を渡してきたBBに遮られる。まさか向こうから声を掛けてくるとは思わず、突然の反応に喉まで出掛かっていた言葉を呑み込んでしまう。

 

ひとまず受け取る際にありがとうと礼を言うが、BBはそれに反応する事なく再び前を向いて歩き始めていた。

 

ドンドン遠くなっていく、遠くなっていく自分とBBの距離がそのまま自分達の居場所なのだと改めて実感させられる。

 

───分かってはいたが、忘れられるというものは何度経験しても辛いものだ。それも自分だけではない、忘れたBB自身もきっと辛い思いをしているのだろう。

 

……よそう。この事はいくら追求しても答えはでない。今はBBが自分を助けに来てくれたという事実だけで良しとしよう。

 

通路の奥へと消えていくBBの後ろ姿を追いながら自分はもう少し頑張ろうと気持ちを切り替えるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(あー! もう! どうしてそこで突き放す様な事言っちゃうの! 私のバカバカ!!)

 

 岸波白野がBBに対して負い目を感じている一方で、そのBB自身は白野とは別のベクトルで絶賛後悔中であった。

 

(折角メルトリリスと交代して狙ったかのように攫われたセンパイを助け出して晴れて私に惚れさせるという綿密な計画がぁぁぁ!)

 

綿密処か穴だらけなBBの計画。しかし、彼女が内心ここまで動揺したのには訳があった。

 

 月での戦いの一件以来、白野に負い目を感じていたBBは現実世界の白野と再会を果たしたもののその負い目から白野の事は忘れたと嘘を付き、自ら白野と距離を開けることにした。

 

しかし、現実世界でも発揮する白野のフラグ建築スキルに、今まで傍観していたBBも危機を感じ始める。ムーンセル(仮)を通じて街中の至る所から白野を監……見守っていたが最早それも我慢の限界。

 

確かに自分はもう岸波白野には迷惑を掛けないと誓った。けれど、彼女も白野を慕う乙女の一人。常識という道理などBBの“C.C.C.”でこじ開けられるだろう。

 

だが、白野の前で堂々と啖呵を切ったBBとしては真っ正面からのアピールは些か抵抗が大きい為実行不能。

 

それからというものの、BBは考えた。どうすれば白野を自分に振り向かせられるか、時には白野の寝顔を眺めながら、時には白野の入浴映像を保存しながら、BBはひたすら考えた。

 

そして閃いた。振り向いて欲しいのなら相手も自分の事を好きになって貰えればいいのだと。そして現在白野は戦闘機人なる者達から狙われているというタイミング的にもベストな状態。

 

そして女の勘が働き、今日という日にメルトリリスと半ば強引に代わって貰い、白野の携帯に潜んいると、これまた狙い通りに事が運び、まんまと捕まった白野にBBが駆け付けるという最高のシュチュエーションが完成した。──────なのに。

 

(折角センパイが私にお礼を言ってくれたのにぃぃぃ!)

 

白野を前にした途端、考えていた言葉を全て頭の中から消し飛んでしまったBBは、持ち前の反抗的な態度で接してしまう。

 

月の裏側で演じていたモノが今なお染み付いて離れない事実にBBは心の内で涙を流す。世界はいつだってこんな筈じゃない事の連続である。そんな言葉がふと脳内で浮かんだ。

 

ここからどうやって巻き返す? 通路を黙々と進みながらBBはふとそんな事を考えると……。

 

「あ、あの! そこの人、ちょっと待ってくれませんか!」

 

「…………はい?」

 

何処からか声が聞こえてくる。何だと思い乗っ取った戦闘機人の能力を使って周囲の生命反応を割り出していると。

 

「ここ! ここです! あの、助けてくれませんか!?」

 

 すぐ隣からの熱源反応に振り返ってみれば、変わった格好をしたショートヘアの女の子が牢屋らしい部屋に軟禁されてるのが確認された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ………なるほど、じゃあアミティエさんは妹さんを追って未来からやってきたんだ。

 

「はい。けど時空間を漂っている内に物凄い衝撃に遭遇しまして……気付いたらここの基地の前に倒れていて」

 

「そのまま捕まり牢獄行きですか」

 

基地内の探索中、偶然出会った少女。彼女はアミティエ=フローリアンさんでとある事情を持ち、家出した妹さんを追って未来からやってきたという。

 

最初こそは未来からの来訪者辺りで驚きもしたが、自分達も似たようなものだと気付き取り敢えず納得する。

 

しかし過去に遡る程の家出をするとは……アミティエさんの妹さんは随分ダイナミックなんですね。

 

「アミタでいいですよ。ハクノさんも拉致されたと聞きましたけど随分落ち着いてますね? 私がここに来たときは警備ロボがわんさかと配置されていたのに今は何だか静まり返ってるし……それに、その人ってここの人ですよね?」

 

戸惑いながら秘書機人の方を見やるアミタさん。中にいるのは秘書ではなくBBなのだが……その事を知らないアミタさんからすれば訳の分からない事だらけだろう。

 

順に追って説明する。結構複雑な事情なので言葉を選びながら丁寧に言葉を紡ぐ……が、一体どこから話せばよいのだろうか。

 

ムーンセル(仮)の事は……流石に話さないほうがいいか。そこまで話す必要はなさそうだし、彼女だって妹さんを連れ戻したくて躍起になっている筈だ。

 

手短く話そう。頭の中で話の順序を想定し終えた自分はアミタさんに掻い摘んで説明しようとすると……。

 

『そんな所にいたのか。全く、手間の掛かる雑種だ』

 

ふと、聞き慣れた声が耳朶に届いた瞬間、自分達の前にあった通路が轟音と共に崩壊し、辺りは瓦礫と砂塵で埋め尽くされていく。

 

「な、なにー!? 何事ですかー!?」

 

突然の事態に混乱するアミタさん。対するBBは呆れたように溜息をこぼし、またこんな事をしでかす人物に心当たりがありすぎる自分も顔を手で覆いながら深々と溜息を漏らす。その心境はまさにアチャーである。アーチャーではない。

 

「まさかこの我自ら迎えに来させるとは……の愚鈍さは最早度し難いを通り越して見事と賞賛できるな。え? 雑種?」

 

砂塵の中から現れ出るのは黄金の甲冑をその身に纏うAUO。……というか、一体どうやってここまできたのだ? アミタさんやBBが言うにはここはどうやら別世界の惑星らしいし、ここに来るには次元の壁を越えなきゃいけないらしいけど……。

 

「我と我の財に不可能はない」

 

あ、そうですか。その言葉で納得できてしまう辺り、この金ピカ王様のトンでも具合が分かる。ただアミタさんだけは事情が把握出来ておらず挙動不審に陥っているが……。

 

「貴様の方は………ほう? まさか自ら白野を救出に出てくるとは一体どういう風の吹き回しだ? BB」

 

 秘書機人の方を見て一目でBBだと見破ったギルガメッシュ。まさか一度見ただけで彼女の存在を認識するとは、流石人類最古の英雄王。

 

だが、何故だろう。今のギルガメッシュのものいいに少しばかり違和感を覚えた。

 

ニヤニヤと厭らしい笑みを浮かべているギルガメッシュとは対照的にBBの方は鬱陶しそうに顔を歪めて舌打ちを売っている。

 

「そんな事はどうでもいいです。それで、アナタの方はどうなんですか? 其方にはネズミが一匹向かったそうですけど…」

 

「我がここにいる時点で気付け戯けが、この我が雑種一匹に手間を掛ける道理はない」

 

「誰もそんな事は聞いてません。私が訊ねているのは“生かしているか否か”です。ここにいる者達には改めて報復する必要がありますからね」

 

「それこそ無粋な問いかけだぞBB。いたぶる事に関しては我の得意分野だ。手足こそは削いで身動きを封じているが……まぁ、そこは機人と名乗るだけあって頑丈に出来ておるからな。少し楽しみ過ぎたのは認めよう」

 

「………まぁいいでしょう。生きてさえいるのなら後でどうにでもできますから」

 

いや良くねぇよ。なにサラリと恐ろしい事を語り合ってんだよアンタ等、見ろよ。アミタさんが顔を真っ青にしてガタガタ震えているぞ。

 

「む? 雑種よ。少し見ない間にまた女を手込めにしたか? 愉悦要素が増えるのはいいが今は自重しろよ? 流石にここで新しい要素をドラマに付け加えるのは難しいからな」

 

と、今まで眼中になかったのかアミタさんと目が合った途端そんな事を抜かしやがるAUO。というか、自分が女の子と一緒にいること=フラグ建築済みにするんじゃない。いつから俺はそんな女誑しになった? あと、ドラマってなにさ?

 

AUOの意味不明な言動に首を傾げていると、今まで静観していたBBが割って入ってくる。

 

「センパイも金ピカも漫才はいい加減止めて下さい。頗るつまらないし下らないです」

 

どうやらいつの間にかBBの中には自分とギルガメッシュはお笑いコンビにされていたようだ。酷く遺憾である。

 

訂正させたい所だが、何やらBBが何か受信したのか、指を耳に当てるとボソボソと何かを呟き始めた。

 

彼女の仕草を見て思い出す。今BBが取っている仕草は念話をしていたフェイトちゃんの仕草と似ているのだ。

 

では、今彼女は誰かと念話で交信しているのか? ギルガメッシュも黙って見ているし、自分も声を掛けずに静かに眺めていると………。

 

「今、メルトリリスから連絡がありました。システムU-D……いえ、ユーリが家を出たそうです」

 

 ザワリ。BBから告げられるその言葉に岸波白野は嫌な予感を感じていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 どうして、私は生まれたのだろう?

 

恨まれ、憎まれ、蔑まれ、人は私に指を指しながら言ってくる。

 

悪魔、化け物、死神。闇の書を通してありとあらゆる罵倒が私に向けて言い放たれていく。

 

どうして、私は生きているのだろう? 誰にも望まれていないのに、誰からも愛されていないのに……。

 

愛とはなんだ? 友とはなんだ? 絆とはなんだ? 家族とはなんだ?

 

分からない。触れたことも見たこともない私には理解出来ない言葉。

 

一体、どうして私は存在しているのだろう?

 

分からない。どんなに思考を巡らせても答えには至れない。

 

「うふふ、嘘ば~っか。ホントはとっくの昔に知ってる癖に♪」

 

────知らない。私には分からない。一体どうして……。

 

「ふーん、あくまでシラを切るんだぁ。じゃあ、代わりに私が教えてあげましょう」

 

─────イヤだ。聞きたくない。話さなくていい、言葉にしないで欲しい。

 

「そんな遠慮せずに、親切な私が丁寧に且つシンプルに教えてあげます。えっと、どうしてアナタがそんななのかと言うと────」

 

止めて、止めろ、止めて下さい。そこから先は言わないで、ソレを聞いてしまえば私は…………今度こそ、私は────!

 

目を閉じ、耳を抑え、うずくまりながら声を拒絶するが、声の主はそんな私の抵抗を嘲笑うかのように透き通った声を出し。

 

「皆が、そうなるように望んだからだよ」

 

そんな、極めて単純な答えを私に教えてくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あ、アハハハ、アハハハハハハハハ、アハハハハハハハハハハハハハハハハ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぉぁぁぁぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああうああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

猛烈な魔力。幼い少女からは想像もつかない巨大な魔力が一瞬の内に街を呑み込み、街を生命の息吹が感じられない閉ざされた氷の世界に変えてしまう。

 

禍々しい赤黒い魔力を放出されるユーリを眺めながら、戦闘機人No.4クアットロはほくそ笑みながら眼鏡を外す。

 

「ほーんと、お子様は御し易くていいわ。チョロッと幻を見せて上げたらこの通り、簡単に暴走してくれるんだもの♪」

 

未だに魔力を出し続けるユーリにクアットロはその笑みを更に歪め、両手をオーケストラの指揮者の如く掲げると、喝采を浴びるかのように天を仰ぐ。

 

「さぁ、暴れなさい。解放なさい! 純然たる破壊の力を! 圧倒的な暴力を! アナタのその名の由来を世界に見せ付けなさい!」

 

高々と狂ったように笑う道化。その眼下には真実を告げられ正気を失う一人の少女。

 

“砕け得ぬ闇”全ての元凶と呼ばれていた少女の力が────目覚める。

 

 

 

 




はい。という訳で精神的攻撃な得意なクアットロさんでした。

確かStsでも似たような事してましたよね彼女は。主に聖王様に対して。

果たしてユーリはどうなるのか!?

そしてクアットロの末路は!?(え?

次回も楽しみにしてくれると嬉しいです。

PS
そろそろ次の世界の内容が決まりそうです。

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