それ往け白野君!   作:アゴン

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復活! ブロッサム先生!

 

 

 

海鳴市。

 

海に面した街。気候は穏やかで特にコレといった大規模な事件や事故など起きず、至って平凡で平和な日々を過ごす街。

 

 空も夜の帳に染まり、住宅街の道路にも街灯の明かりが灯り、人々は夕食の用意をする為に自宅へと足を運んでいる。

 

そんな日常の中、とある二人の少女もまた夕食の仕度をする為、自宅へ向かう最中であった。

 

片や車椅子の少女、まだ歳も10に満たないだろう幼い少女は自身が乗った車椅子を押してくれている女性に、膝に乗せた買い物袋を落とさないよう気を付けながら顔を向ける。

 

「本当、いつもありがとう。お姉ちゃんにはいつも助けて貰ったばっかりや」

 

 はにかむ笑顔を浮かべながら、少女は女性にありがとうと礼を言う。

 

幼いながらも真摯に礼を言う少女に女性はやれやれと肩を竦め、その金色に輝くツインテールを揺らして。

 

「あのねぇ、アンタはそうやっていっつもありがとうありがとうって言ってるけど、あまり簡単に礼なんて言うもんじゃないわよ」

 

「せやけど、いつも凜姉ちゃんにはお世話になってるし、家ではウチの勉強だって見てくれてるし……どんなにお礼言っても足りひんやんか」

 

「世話をしているのは半年前、道端で倒れていた“私達”を拾ってくれたのと拠点として住まわせて貰っているからよ。既にキブアンドテイクは成り立っているんだから、余計な礼は不要よ。余分な感謝は心の贅肉になりやすいんだから」

 

「……う、うん」

 

 幼い少女の礼に金髪ツインテールの凜と呼ばれる赤い少女凜は突き放した物言いをした途端ハッと我に返る。

 

見れば車椅子の少女は冷たく言い返された事に少なからずショックを覚え、泣きそうな顔で俯いている。

 

しまった。いつもの調子でやってしまったとあたふたと慌て、やがて凜は一拍の間を置き。

 

「─────ま、まぁこっちもそれなりに色々やってあげているし? ちょっと余分だけどそのお礼は受け取っておくわ」

 

 それは、彼女なりのお礼の返しなのだろう。顔を朱くしてソッポを向いている凜に少女はつい可笑しくって笑ってしまう。

 

「ちょっと、人が折角真面目に返しているのに笑うのは失礼じゃない?」

 

「ご、ごめんな。凜姉ちゃんの赤くなった顔が面白くって」

 

「このぉ、年上をからかうんじゃないの!」

 

「ひゃあ! ぐ、グリグリは許してぇ!」

 

 自分をからかった少女にお仕置きとばかりにこめかみをグリグリする。

 

その光景は端から見ればとても穏やかで、見ず知らずの人が見れば、外見こそ似てないが二人は姉妹にも見えた。

 

「まったく、帰りが遅いから迎えに来てみれば、いつまでコントをしてるつもりなの?」

 

「あ、エリーちゃん!」

 

「ちょっとエリザ、何勝手に出てきてるのよ。アンタは留守番だって言ってたじゃない」

 

 目の前に佇む赤髪の少女。エリーやエリザと呼ばれる少女は凜の自分に対する扱いにムッと来たのか、眉を寄せて不機嫌を露わにする。

 

「いいじゃない別に、もうここらの住民は夕食を食べるのに家へと入ってるわ」

 

「そういう問題じゃないでしょ。アンタは色々目立つんだから、少しは自重してくれないと困るのよ」

 

目立つ。そう、エリザと呼ばれる少女は凜の言うとおり少々……いや、かなり目立つ姿をしていた。

 

服装? いや、彼女の現在の格好はピンクのワンピースを着た至って普通で可愛らしい服装だ。

 

ならば容姿? いや、これにも特に問題はない。寧ろ彼女の容姿は謂わば美少女に該当するだけである。

 

では、一体彼女のどこが問題なのか。それは────。

 

「ええやない。エリーちゃんの角はカッコいいし、尻尾だってスベスベで気持ちええよ?」

 

そう、彼女には普通の人間には到底有り得ない鋭利な角と鞭のようにシナる尻尾がそれぞれ頭と臀部から生えていた。

 

「当然よ。いつもバスでの手入れは欠かせないもの。それとはやて、カッコいいじゃなくて可愛いと言ってくれないかしら? 角だって私のチャームポイントなんだから。あとエリーちゃん言わない」

 

「えぇ? バッファ○ーマンみたいでカッコええのに?」

 

「誰が悪魔超人か!」

 

はやての指摘にキシャーと牙を向く。しかし、それも本気の威嚇ではない為はやても「キャー」とワザとらしく悲鳴をあげている。

 

そんな二人の漫才に呆れたのか、凜は溜め息をこぼし。

 

「もう。なんだっていいからさっさと家に帰るわよ。他の皆だってそろそろ帰ってくる頃でしょう?」

 

「あぁそうそう、あの子達帰って来てるわよ? ヴィータはソファーにウダーってなってたし、お腹減ってるんじゃないかしら?」

 

「えぇ!? ちょっ、エリーちゃん! それを早く言って!」

 

「だってしょうがないじゃない。言う前に凜が突っかかってきたんだもの」

 

「私の所為!? ああもう! 分かったわよ。はやて、少し飛ばすわよ!」

 

「うん、いつでもオッケーや!」

 

 今頃自宅でお腹を空かせて待っているはやての家族に向かう為、凜はその足に魔力の流れを巡らせ、急いで帰路につく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

嘗て、少女は一人だった。

 

父も母も少女がもっと小さかった頃に事故で亡くなり、少女は幼い頃から天涯孤独で当時から足の不自由さはあった。

 

 けれど幸い少女の家庭は上流階級で、遺産も残り、家もその周囲もバリアフリーに適した環境で少女一人なら車椅子生活でも不自由なく暮らせていけた。

 

だが、それでも少女は孤独だった。

 

 

親類からの誘いもあった。だが、それでも少女は家に残ることを選んだ。

 

今は自分一人しかいない空っぽの家だが、それでも少女にとっては父と母が残してくれたたった一つのカタチなのだと。

 

そしてその数年間。少女は一人孤独の生活を過ごしてきた。

 

だから、これはきっとそんな寂しさに耐え続けた自分に対する神様からのプレゼントなのだろう。

 

半年前、自分が10歳の誕生日を迎えた日、少女の世界は一気に変わった。闇の書の守護騎士と呼ばれる四人の騎士。

 

そして、夏頃に家の前で倒れた二人の少女。

 

たった一人、寂しさと戦い続けた少女の家族は一気に増え、賑やかになり、今は煩いと思う程だ。

 

泣いたり、怒ったり、喧嘩したり、仲直りしたり、その全てが少女の望みであり、願いだった。

 

故に、少女は幸福だった。故に、少女は欲深いと自覚しながら更に願った。

 

“自分はもう幸せだ。だから、短いこの命が尽きるまで、どうか皆と一緒にいさせて下さい”と─────。

 

そしてその願いは皮肉にも………聖夜の夜に裏切られる事になる。

 

「所で、どうして私には料理を作らせてくれないのかしら? これでも子ブタ一匹余裕で泣いてせがまれる程の腕前なのよ?」

 

「それはない」

 

「それはないなー」

 

「なんでよ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……む、むぅ?」

 

セイバー! 良かった。気が付いたか。

 

「そ、奏者? 余は確かあの女剣士と戦い………ここは?」

 

ここは俺たちの拠点。医療施設は流石に無かったからな。桜とアーチャー、キャスターも一緒になって急拵えだけど作って貰った。

 

「そう───か。皆には世話になったな」

 

そう言って天井を見上げる彼女の姿はどこか痛々しく、弱々しく見えた。

 

そんな彼女の額に手を乗せ、気にするなと意味を込めて軽く撫でる。

 

 ……あの女騎士との一戦の後、気絶をしたセイバーを拠点であるマンションに連れ込み、桜の手によって応急処置が施された。

 

幸いセイバーの傷は致命傷には至らず、ゆっくりと静養してくれれば一週間も掛からず完治する事だろう。

 

 その時、桜と自分、アーチャーとキャスターで作った仮初めの病室は壁に白い布で覆い、棚やテーブルには薬品を散りばめられている。

 

そして元保険医だった為か、桜の応急処置の手当の手際は驚くほど手早く、正確だった。

 

 そのかいあってこうしてセイバーは目を覚まし、その顔を自分に見せてくれた。

 

後で桜や二人には改めてお礼を言っておかなければならない。

 

因みに自分は持ち前の強運が役に立ったのか、打ち身と打撲で済んで湿布と絆創膏程度ですんでいる。

 

「そ、奏者よ」

 

 呼ばれて視線を下ろすと、セイバーの頬は赤く高揚し、鼻先を毛布で隠しながら上目遣いで此方を見ている。

 

「そ、その、だな。て、手を、そろそろどけて………いや! や、やっぱりなんでもないぞ! うむ。もう少し撫で撫でするがいい」

 

 何故か最初の方は聞き取れなかったが、どうやら頭を撫でていたのには抵抗があったらしい。

 

いつもは撫でてとせがむ癖にこういう時は遠慮しがちなのだな。

 

それとも、やはり先程の戦いで彼女に思うところがあったのだろう。

 

セイバーは剣の英霊だ。そんな彼女が相打ちとはいえ遅れを取ったというのだから、彼女の心境は複雑な思いだろう。

 

気にするなと、言葉で言うよりも今はこうしてセイバーの頭を優しく撫でるだけにしておこう。どうせ、今日は一晩ここにいるつもりだし。

 

「なぬっ! それはまことか!?」

 

っ!

 

び、ビックリした。突然起きあがって来るものだから驚いて仰け反ってしまった。

 

いやそれよりも大丈夫なのかセイバー。傷、痛まないのか?

 

「~~~~~っ!!」

 

起き上がった拍子に腹部に刻まれた傷が響いたのだろう。痛みに悶絶し、傷口を抑える彼女に言わんこっちゃないと軽く戒め、ゆっくりと寝台に寝かせる。

 

 

「あ、当たり前だろう。 ここに来てからそなたとは別々の部屋で寝ているし、キャスターや桜がいては二人で仲よくイチャイチャ出来なかったではないか! その間余がどんなに寂しい思いをしたか……分かっておるのか!」

 

 は、はい。すみません。

 

横になりながらもセイバーの有無を言わせない迫力に思わず反射的に頷いてしまう。

 

 だが情けないと思うなかれ、歴戦の英雄である彼女が本気の怒気を纏いながら迫ってくるのだ。元々ただの一般人でしかない自分が、どうして耐えられようか。

 

「……とは言え、今回の一戦。奏者には情けない姿を見せたな」

 

 やはり、彼女は気にしていたようだ。

 

「あの者の剣技。恐らくは古い……何らかの流派、或いは我流によって鍛えられた業なのだろう。それほどまでに奴の剣技は凄まじく、洗練されていた」

 

 セイバーの口から聞かされるのは剣を交えた相手の情報だった。

 

卓越された剣裁き、けれど見たこともない技と魔の力。どこかの国のサーヴァントかと思われていたが、セイバーの話を聞く内にドンドン違うものに思えてきた。

 

無論、自分には満足な魔術知識など持ち合わせてはいないし、あの女騎士がサーヴァントかどうかなんて判断は出来ない。

 

だが、自分達を狙った彼女達は霊体化せずに空へと飛翔し、逃げていった。

 

 後でアーチャーに聞いてみた所、彼自身もあの様な魔術は知らないそうだ。

 

キャスターも同様の反応で、あの騎士達は自分達の知る既存の魔術師ではなく、平行世界────つまり、この世界に於ける魔の使い手なのではないかと推測が出てきた。

 

 そんな未知の存在を相手に善戦し、更には戦い方という情報入手できたのだ。セイバーには礼を言う事はあれど、非難するのは間違いである。

 

しかし、ここで礼を言っても彼女の事だ。素直に受け取ってもまた悔しそうに顔を歪めるかもしれない。

 

だから、ここはありがとうと言う場面ではなく。

 

「セイバー、次は勝とう。今度こそ、二人で」

 

「──────、う、うむ! 当然だ! そなたと余がいるのだ。次はあの女剣士を完膚なきまでに叩き伏せてくれよう」

 

 と、顔を真っ赤に染め上げながらも微笑んでくれる。

 

やはり彼女はそういった笑顔が似合う。────と、そう言えば。

 

「? どうしたのだ奏者よ。ゴソゴソと下を弄って、何かあるのか?」

 

 覗き込んでくるセイバーに今見せるからと促し、彼女の前にトレーの上に乗ったを小振りの土鍋を差し出した。

 

 鍋に入っているのはお粥。しかも怪我人、病人には定番の卵粥である。アーチャー先生の指導の下、一度目の失敗を経験しながら漸く造れた渾身の作品である。

 

「これを……奏者が?」

 

起き上がろうとするセイバーを支えながら身体を起こさせ(何度も動かしてごめんね)彼女に蓮華を渡す。

 

一応味見もしたし、不味くはないと思う。

 

アーチャーからも取り敢えずは及第点と褒めて(?)くれたし、味に問題はないはず。

 

しかし、セイバーは蓮華を受け取ってくれない。やはりどこかまだ調子が良くないのだろうか。

 

もう夕飯の時間は過ぎてるし、良い感じにお腹が空いているのだと思うのだけど………。

 

「─────そ、」

 

 

「奏者が、食べさせてはくれぬか?」

 

 モジモジと指を弄って上目遣いをしてくるセイバーに即答で勿論と答え、蓮華を持って土鍋に入った粥を掬い、火傷しないよう冷ましながら彼女の口へと運ぶ。

 

もぐもぐと口を動かしてよく味わい、やがてゴクリと喉を鳴らして呑み込む。

 

お、お味はいかが?

 

「う、うむ。程良く甘みがあって美味である。……というか、恥ずかしさが上回って味がよく分からぬ」

 

 シーツを握りしめ、顔を真っ赤にしながらプルプルと震えているセイバーに、思わずクスリと笑ってしまう。

 

とは言え、折角作ったのだからちゃんと完食して貰おう。幸いセイバーの口には合ったらしく、その後も彼女は黙々と卵粥を食べてくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方。部屋の外、廊下側では………。

 

「キーッ! セイバーさんてば何て羨まけしからん事うぉぉっ! 本来ならばあそこは正妻である私の役回りでしょー! どうしてこうなった? どこで選択肢間違えた? タイガー道場カモーン!」

 

「……本当、いい加減自重したまえよ?」

 

二人の様子を見る為、そっと待機していたオカンと正妻(自称)であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……………。

 

……………………。

 

……………………………………。

 

 

──────ハッ!

 

微睡みの中から、瞬間的に目を醒ます。

 

どうやらあの後、セイバーと色々世間話をしていたら疲れて眠ってしまったらしい。

 

セイバーもセイバーで今もスヤスヤと寝息を立てているし、どうやらお互いに疲れてしまっていたようだ。

 

 電気も備え付けのテーブルの上にあるスタンドしかついておらず、それ以外は完全に夜の静寂に支配されている。

 

ふと、片付け忘れたトレーと鍋が目に入る。

 

中に入っていた粥は全て平らげ、鍋は綺麗になっている。

 

トイレに行くついでに片してしまおうと、トレーを持って部屋の外へ出ると。

 

「ここにいたか。雑種、この我自ら足を運ばせるとは不敬ここに極まったな」

 

っ!

 

突然横からの声に思わずビクつき、思わずトレーを落としかけてしまう。

 

───ぎ、ギルガメッシュ? 一体どうしてここに?

 

「我を前にしてその態度、益々もって度し難い。我がマスターといえど首を斬り落とす所だが。よい。今の無様な姿を見て少しは溜飲が下がった。特に許す」

 

 な、なんか知らない内に命の危機があってよく分からない内に許して貰えた。

 

相変わらず唯我独尊な男である。

 

というか、そっちこそ今までどこに行ってたんだ? 全然見当たらなかったからどこかに出掛けていたのかと思った。

 

「それを今から説明してやる。ついてくるがいい」

 

 そう言うと、ギルガメッシュはヅカヅカと歩き出して廊下の向こうへと一人消えていく。

 

え? ちょ、なんなんだいきなり。

 

理不尽に思いながらもトレーを床に置き、俺はすぐさまギルガメッシュの後を追った。

 

 すぐにギルガメッシュに追いついたかと思ったら今度は高級マンションにありがちなエレベーターへと乗り込む。

 

グングン下へ降りていく中、流石に理不尽すぎると思いギルガメッシュに問い掛けた。

 

─────一体、どこに行くつもりだ。と

 

 すると、ギルガメッシュは一拍の間を置いた後。

 

「雑種。貴様はこの安宿についてどれ位知っている?」

 

 安宿? 安宿とはこの高級マンションの事だろうか。(安宿という発言に対しては最早突っ込まない)

 

知っているも何も、この高級マンションは地上12階の地下三階。超が三つ位付く高級マンションだろう?

 

今更その質問は──────待て。今、エレベーターに表示されるB3からB4に変わった?

 

このマンションの地下は3階までじゃなかったのか? いや、3階までしかなかった筈だ!

 

4階まで続く階段なんてどこにもなかったし、エレベーターにだって地下4階行きのボタンは存在していなかった。

 

 混乱する脳内。だが、事態はそれだけには留まらなかった。

 

ガクンとエレベーターの全体から音がすると、今度は爆発的に加速し始めたのだ。

 

地下10階、20階、30階……ドンドンエレベーターは下へ下へと加速していく。

 

そんな中、ギルガメッシュだけは落ち着いた様子で佇み王の風格を損なわないでいる。

 

「半分は正解だな。確かにこの安宿の地上は十二階までだ。だが、地下は違う。貴様が呑気に身体を絞っていた合間、我と桜は別件を済ませていた」

 

 桜? 唐突に出てきた桜の名前に頭の中の混乱は収まらず、余計に収集の付かない状態になってしまっている。

 

今自分に出来るのはこの慢心王の言葉に耳を傾けるだけ。

 

やがて地下への階数は90台へと突入し、それにつれて徐々にエレベーターの落ちる速さが緩やかになっている。

 

そして、階数は遂に99と表示され…………。

 

「さぁ、答え合わせだ雑種。この階貴様はなんと読む?」

 

 数学的に数えれば99の次は100。だが、今表示されているのは数字の100じゃない。

 

 地下の階数を表示を表しているBの文字、その隣にあるのは………。

 

───────『BB』

 

 

ガコンッ、と重苦しい音と共にエレベーターの扉が開き、自分の目に映ったものは………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 とてつもなく広く無限と思わせる空間にそれはあった。

 

 淡く輝く巨大な箱。幻想で、且つ神秘的な輝きを放つ透明な箱が宙に浮かんでおり、その中に巨大な球体が埋め込まれている。

 

…………知っている。自分はあの物体を知っている。

 

“外側からは見たことなく、また内側しか知らない”自分だが、目の前のアレがどういうモノか瞬時に理解してしまった。

 

何せ、あの中で自分という存在は目覚め、セイバーや桜達と出会い、命がけの戦いを繰り広げてきたのだから!

 

「今宵は“あの女”が目覚める日だったのでな。桜と貴様を立ち会わせたいと思ってここに連れてきた」

 

「……先輩」

 

 聞こえてきた声に振り返る。そこには嘗て旧校舎で着ていた黒を強調させたセーラー服を身に纏う桜が、申し訳無さそうな表情で佇んでいた。

 

「ごめんなさい。ギルガメッシュさんに口止めをされていて……」

 

 その口振りは同時に自分の中にある疑問にに対する答えでもあった。

 

──────そして。

 

『良い子の皆も悪い子の皆も、みーんなが待ってた新番組! いよいよはじまるよーーー!』

 

 嗚呼、やっぱり彼女なのか………。

 

『せーっの! BーBー……チャンネルゥーーッ!!』

 

 現れた巨大なモニター。そこに映し出されているのは嘗て敵であり、ラスボスであり………そして、岸波白野を守る為にたった一人で戦い続けた少女。

 

 

 

 

無邪気で邪悪な笑顔を振りまく彼女が、───そこにいた。

 




………駆け足感が否めない。

兎に角、次回、何故サーヴァント達が受肉したのか、言い訳気味に説明します。

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