それ往け白野君!   作:アゴン

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今回もキャラが全壊してます。

それを覚悟した後、お読みください。


こんなエピローグで大丈夫か? 後編

 

 

 オッス、オラ白野。皆、毎日朝昼晩キッチリご飯食べてっか? 飯はしっかり食べなきゃ力入んねえから、時間が許す限り食べるんだぞ?

 

………はい。のっけから奇妙なテンションでご免なさい。ですがどうかご容赦を、何分目の前の光景がアレなもので、自分としても少しばかり現実逃避に浸りたい心境でしたので。

 

けれど、いつまでも目を背けている訳にもいかない。ここは勇気を振り絞って現実を直視しようではないか。どんなに困難な道のりでも一歩ずつ前に進むのが岸波白野の数少ない取り柄なのだから……。

 

では、心を落ち着かせて………せーの。

 

「おいコラ白野、現実逃避してないでさっさと私の質問に答えなさい! ムーンセルを半分奪ってきたとか何考えてんの? バカなの? 死ぬの? つか私が殺してやるわ! そもそもムーンセルを個人で所有するとかあのバ会長すらやらなかったのに何平然とアンタの物になってるのよ! ちょっとでいいから貸しなさい! ほんの五分でいいから!」

 

鬼気迫る勢いで胸ぐらを掴んでくる遠坂凛さんに恐怖を感じずにはいられない。……うん。今すぐ回れ右してダッシュで走りたい。けれど凛の握力が凄くて逃げ出せないんだ。凄いね凛。

 

「う、うわぁ……凛の奴いつにも増して恐ぇ。なんか頭から角が生えてるように見えるのはアタシの気の所為か?」

 

「トオサカリン。まさかここまでの気迫を見せるとは……騎士でもないのに大した奴だ」

 

なんか向こうの方でヴィータちゃんとリインフォースが驚いたり引いてたり関心しているのが気になるけど、そろそろ現状について説明を語るべきだろう。

 

 まず自分達がいるのはムーンセル(仮)が安置されている地下BB階。あれから起床した自分はアーチャーに言われてセイバーとキャスター、そして凛とユーリにランサーを起こして食堂へ向かった。

 

女性サーヴァントの二人には枕元にあったプレゼントに気付いてお礼を言ったきたり、今度は凛やユーリ、ランサーにもプレゼントをすると約束して、一緒に食堂へ向かい。色々談笑などしたりして、今朝の朝食は比較的平穏に過ごせた。

 

その後はヴィータちゃんとリインフォースがはやてちゃんの約束通りに来てくれて、桜の案内のもと皆と一緒に地下へと降りていった。………と、ここまでは良かったのだが。

 

凛がキューブ状の物体を目にし、案内役の桜からソレがムーンセル(仮)だと言われた瞬間。

 

それまでに彼女が信条にしていた優雅さなどかなぐり捨てて………そう、いきなりシャイニングウィザードをかましてきたのだ。

 

顎にいい感じで入った一撃は白野の脳を揺さぶり、冒頭のように一時の逃避へと至っていたのだが……うん。やっぱりまだ痛い。

 

てゆーかホント落ち着いてくれ凛。止めようとしている桜がいい加減泣きそうだぞ。あとそこのAUO、こっち指差して爆笑すんな。

 

「……ち、分かったわよ。けど今度突飛な事言われたらゲリラ仕込みのCQCを叩き込むからそのつもりでいなさい」

 

 なんて理不尽! 最近凛の自分に対する容赦と言う物がなくなってきているような気がする。

 

「せ、先輩。大丈夫ですか?」

 

「凛さんの見事な膝蹴りに一瞬呆けてました。ご無事ですかご主人様」

 

 胸ぐらを離し、そっぽ向く凛に苦笑いを浮かべながら顎をさする。心配そうに歩み寄ってくる桜とキャスターに大丈夫だと返事しながら、依然として不機嫌全開の凛に視線を向ける。

 

まぁ、あの世界の住人で魔術師(ウィザード)として名を馳せてきた彼女が自分を疎ましく思うのはある意味当然だろう。

 

ムーンセルという願望器を半分とはいえこの場所に保管され、管理されている。その様は端から見れば自分が独占しているようにも見えるのだろう。

 

多くの人々が望み、手を伸ばし続けた聖杯を個人が独占し、所有しているのは世界を変えようと奮闘した彼女に対する侮蔑も良いところなのだろう。

 

「道理でこの場所でネットサーフィンをすると繋がりやすくなる訳よ。何だかここの電子機器には一々プロテクトが掛かっているのが気になったけど、要するにそれだけ高度の技術と術式が施されてるって事だから────もしここのパソコンを一台でも好きに出来たら世界の情報は全て丸裸に出来るじゃない。やだ、私の時代到来?」

 

………………………。

 

 さて、そろそろここへ来た本題に移るとしよう。向こうの準備は出来てるかな?

 

「ご主人様、今のは見なかった事にしましたね」

 

お黙り。藪を突ついて鬼を呼び出すほど岸波白野は命知らずではありません。

 

ええ見ませんでしたもの。そこで自分のパソコンをどう使わせて貰おうかとか、催眠にでも掛けるかとか物騒な単語を口にしている凛の姿なんて全っ然見ていませんもん。

 

「やれやれ、マスターの挙動不審な姿は兎も角として……凛、そろそろ落ち着いて貰おうか? このままでは話が進まないのでね。そこの騎士達も戸惑っているだろ」

 

「うっ、わ、分かってるわよ。確かにちょっとふざけすぎた。ご免なさい白野君」

 

 混沌になりかけてきた空気を我が家のオカンことアーチャーが戒め、アッパーな凛は正気に戻り大人しくなった。

 

流石のオカンぶりに関心しながら、アーチャーに用意できたのかと訊ねる。

 

「あぁ、どうやら向こうの方は準備出来ているらしい。リインフォース女氏、此方に来てくれ」

 

「あ、あぁ……」

 

アーチャーの言葉にやや尻込みしながら奥へと進む彼の後をリインフォースが追う。不安そうにしている彼女を見てヴィータちゃんも少し不安気味に自分に聞きに来た。

 

「な、なぁ、一体何をするつもりだよ。リインフォースに何かよからぬ事をするつもりじゃあ……」

 

それに……と、ユーリの方を見てヴィータちゃんは眉を寄せて不機嫌さを露わにして。

 

「それに、アイツは一体何者なんだ? リインフォースが言うにはアイツはナハトの奴を生み出した奴って聞いてるけど……何だってそんな危ねぇ奴がここにいんだよ」

 

なんて言葉を呟きながらユーリを見る目を鋭くする。そんなヴィータちゃんの視線に気付いたのかユーリは申し訳なさそうに俯き、居心地悪そうにしている。

 

「鉄槌の騎士よ。そう睨むでない。ユーリが怯えるではないか。そもそも愛らしい童女同士で喧嘩をするのはよすのだ。折角可愛らしい顔が台無しではないか」

 

と、そこへセイバーがヴィータちゃんに抱き付く。突然の包容にヴィータちゃんは激しく動揺している。抵抗しているも相手は超人の力を持つサーヴァントだ。武装もしておらず魔力の力を使おうとしないヴィータちゃんにはその腕力からは抜け出せる事は叶わず、セイバーの胸の中でもがいていることしか出来ないでいる。

 

その光景にうらや……ゲフンゲフン。微笑ましく思っているとユーリが自分の服に掴み、泣き出しそうな顔をして涙を流すのを懸命に堪えていた。

 

そんなユーリの頭にポンと手を置き、少しでも不安を和らげるように優しく撫でる。すると自分の手の感触に落ち着いたのか、涙を流しそうになっていた表情はなくなり、照れ臭そうに微笑んでいる。

 

頬を赤くしている事から、どうやら少しばかり気恥ずかしかったようだ。

 

「………相変わらずのフラグ建築ぶりね。しかも今度は幼女とか、ホントマジ一遍死んでみたら?」

 

「な、なによ。私だって似たような体型してるのにどうして私には靡かないのよ子ブタ!」

 

「ふふ、大丈夫。このタマモ呪術を使えばロリータへの変身も可能です。えぇ、ご主人様が望めばエターナルロリータになることも辞さない覚悟ですとも!」

 

 なんか向こうで三人程の鋭い視線を感じているのだが……うん、気にしないでおこう。

 

「雑種が修羅場って我のメシが美味い」

 

そして黙れよAUO。いつからお前はそんな俗的になった。

 

「フン。貴様等のネットスラングなんぞ。既に知り尽くしておるわ。だがこの時代の雑種共の煽動スキルは大したことないな。我を本気にさせたくばジナコ=カリギリを連れてこい」

 

 腕を組んでやたら偉そうにしているギルガメッシュ。というか、何故ジナコがそこで出てくる?

 

「貴様が呑気に寝ている合間暇だったのでな、奴が立てたスレとやらを見ていた。いやはやああも有象無象の雑種共を釣るジナコの煽りの腕前は中々見事であった。我だったら直接乗り込んで切り刻んでいるな。うむ」

 

いや「うむ」じゃねぇよ。人が寝ている間何してんのこのAHOは? ジナコの立てたスレ監視とか、別に知りたくないなかったよ!

 

 …………イカン、アーチャーという真面目キャラがいなくなった途端に再び空気が混沌としてきた。いや、主に混沌にしているのはギルガメッシュだけだけど。

 

「だって我“混沌・善”だもん」

 

うるせぇよ。アンタが“もん”とか付けるな気色悪い。つーか朝っぱらから元気だなあんた。まだ十時になっていないってのに、相変わらずテンションの高い王様だこと。

 

そしてセイバー、いい加減ヴィータちゃんを離してあげなさい。窒息しかけてピクピクしてますよ。

 

「む? おお済まん。余のトランジスターグラマーに溺れてしまったか。可愛い奴よ。お持ち帰りしたいぞ」

 

──────さて、そろそろ話を戻すとしよう。何故リインフォースをここに連れてきたのか、その理由は………。

 

『収拾が付かなくなる前に無理矢理にでも話を変える。その一歩間違えればKYとも呼べる荒業をこなすとは……流石先輩ですね』

 

 自分達の前に現れた巨大な電子モニターを前に全員の視線がそこに集まる。そして映し出された黒コートを羽織ったもつ一人の桜───BBが無邪気に邪悪な笑顔を振りまいてそこにいた。

 

「………BB。実際見るまでは半信半疑だったけどまさか本当に生きてたなんてね」

 

横にいる凛の表情は険し……くはなく、寧ろ軽い。その顔付きと口振りからは親しみすら感じる。

 

『はい? どなたですかそこの守銭奴ツインテさんは? 私のことを知ってるみたいですけど気安く話しかけないでくれます?』

 

「………っ! アナタ、記憶が……」

 

BBの言葉に全てを察したのか、凛の視線が自分に向けられる。彼女の事を事前に知っていた自分としては頷く事しか返答出来ない。

 

『さて、雑談もそこまでです。そこの……えっと銀髪赤眼の方はそこの上に立ってください』

 

「こ、こうか?」

 

BBに言われるがまま、リインフォースは指定の場所に立つ。一見なにもない筈の空間は突如変質し、幾つもの電子モニターがリインフォースの周りに展開する。

 

加えて足下にも光の輪が幾つも顕現し、リインフォースを囲みながら上下に動いている。あれでリインフォースの事を調べているのだろうと何となく理解した自分は大丈夫だから楽にしといてと、言葉だけ送る。

 

さて、BBがリインフォースを調べている間此方はどうしようか。気絶したヴィータちゃんを抱きしめたままセイバーはユーリともじゃれついてるし、完全に手持ち無沙汰になってしまった。

 

「ちょっと、私の事忘れてんじゃないわよ」

 

………そうでした。一番厄介な事を忘れていた。しかし、説明しろと言われても正直なんて話せばよいのやら、何せ自分も教えられた身だ。凛が納得のいく説明をどうするか悩んでいると。

 

「ふん。ならば仕方あるまい。至らぬ契約者を立ててやるのも我の仕事だ。リンよ。しかと聞くがよい」

 

いつの間にやら眼鏡を掛けたギルガメッシュが教壇みたいなセットを背景に佇んでいた。……おい、やっぱり気に入ったのかギルガメッシュ先生。

 

そんな自分のツッコミも当然のごとく流され、自分達はセット同様用意された机に座り、アーチャーとリインフォース、BBを除いた全員がギルガメッシュ先生の話しに耳を傾けた。

 

まぁ、話の内容自体は以前聞いたものが殆どだったから、自分は聞き流していたけど。

 

 

けれど凛の方は初耳だったので、時折「はぁっ!?」とか言って奇声を上げて驚いたりしている。うん。ちょっと前の自分を見ているみたいで少し面白かった。………絶対口には出さないけどね。

 

そして自分の知ってる事を全て話し終えると、ギルガメッシュ先生は満足気に笑っている。意外と人に教えるのは好きなのかな?

 

ただ凛の方は口元を押さえて何やら考え込んでいるけど……一体どうしたのだろう?

 

不思議に思っていると凛は口元から手をどけて何時にも増して真剣な顔付きになる。

 

「………白野、アンタ自分が元の世界でどんな扱いになっているか知ってる?」

 

……………………。

 

「時間旅行とか魔法じみた力を行使したという所業の事は今は置いておくわ。けれどそれ以上に気になるのはあの世界での現在に於けるアンタの立ち位置よ。聖杯戦争が終わりムーンセルは人の手には届かない位置にあるけど、ここにはその半分がある。いい? 半分とはいえ願望器の半分がアナタの手中にあるのよ? この意味、分かってる?」

 

 凄みを増して顔を近付けてくる凛に少しドギマギしながらも、自分は心のどこかでやはりと納得していた。

 

それは今まで意識しながらも避けていた話題。ここ最近巻き込まれたりバイトしたりなどですっかり忘れていたが、どうやら遂にその謎を解き明かす時が来たようだ。

 

 だから問いただす。あの未だに教壇の上で偉そうに講釈垂れてるAUOに、ヴィータちゃんとユーリと戯れてるセイバーに、自分の隣でわざとらしく視線を逸らすキャスターに、自分はあそこの世界でどうなっているのかと。

 

「え、えーっと、なんと話せばよいのやら、お、おほほほほ」

 

「う、うむ。奏者よ。そう細かいことを気にするでない。アレだぞ、あまり神経質だと禿げるらしいぞ?」

 

「ふん。間の悪い奴よ。察するがいい」

 

露骨に話を逸らすんじゃありません。そして察するじゃない、いいから教えよ。

 

自分の視線に合わせないよう顔をこちらに向けないでいる。くそぅ、令呪があれば無理矢理にでも答えさせるのに!

 

悔しく思う自分。すると今まで黙していた桜がおずおずと手を挙げて……。

 

「え、えっと、その話をする前に一つだけ確認させてください。先輩、アナタは以前ムーンセルの半分を奪う話を聞きましたね?」

 

今更な質問をする桜にどうしたんだと疑問に思いながら頷く。

 

「実はその時、その事が世界中に知られちゃって、その時姿だけは隠し通せたので私達の存在を知られる事はなかったんですけど……」

 

ですけど?

 

「その時、ムーンセルを奪った容疑が……その、先輩に向けられまして」

 

…………………え?

 

「その後も私達が世界を移動する際に色々準備している間も、ちょっとここでは言えないやんちゃをしてしまいまして……」

 

「私達のやる事なす事が“それも岸波白野って奴の仕業なんだよ!”といった具合に全ての罪がご主人様に集中しまして……」

 

え? え?

 

「しまいには奏者の賞金首の額と写真が全世界に行き渡ってな。いやぁ、余の奏者が世界に注目される存在になったと知ったとき、余の胸が高鳴ったものだぞ」

 

セイバーの証言は置いといて、あの……桜さん。どうでも良いことかと思いますが、その賞金首の額とやらは────おいくら?

 

「は、はい。何分一日毎に額が更新されていましたので……その、私が最後に確認したのは日本円で換算した所──────30兆円ほどでした」

 

おぅふ。今まで抉っていた自分の良心を最後の桁外れな賞金額の所為でゲイボルグの如く射抜かれてしまった。

 

何て事だ。これでは仮に元の世界に帰った所で居場所なんてないじゃないか! そもそもどうして聖杯戦争の優勝者が自分だと知れ渡っている!? ……いや、西欧財閥辺りの情報網ならソレぐらい調べるのは容易いのか?

 

とは言え自分はこれでまた一つ失った。皆を責めるつもりはないが、胸の辺りがポッカリと穴が開いた気分だ。

 

すっかり意気消沈となった自分。落ち込んだ自分の肩を優しくも温かい感触が振れる。

 

「元気出しなさいよ。たとえ世界から見放されてもアンタの居場所はここでしょ? なら胸を張りなさい。アンタのサーヴァント達は文字通りアンタの為に世界を相手にしていたんだから」

 

………そうだ。結果的に世界から追放されたとは言え、自分の居場所は依然としてここなのだ。セイバーやキャスター、アーチャーにギルガメッシュ、桜達のおかげで今の自分がいるのだから文句などあるはずがない。

 

ありがとう凛。君のおかけで目が覚めたよ。そのお返し……ではないが此方も一言かえさせてくれ。

 

「ん、なに?」

 

非常に良いことを言ったみたいだけど、その$った目が全てを台無しにしてること……気付いてる?

 

「え、えー? 一体何の事かしらー? 私全然しらないなー? あ、そう言えば私元の世界に忘れ物したんだった。ねぇ白野君ちょっと一緒に来てくれない?」

 

今このタイミングでそんな事を言ってる時点で認めているようなモノじゃないか! あからさま過ぎるだろ!?

 

「いいから! なんなら腕一本、いや指一本でいいから! そうすりゃアンタを討ち取ったってでっち上げるから! ね、いいでしょ減るもんじゃないし!」

 

減るわ! 主に自分の体と心が! 折角良い話しになりかけていたのに台無しだよ! シリアスを壊すのはキャスターだけかと思ったけどここにもいたよ!

 

「ふははははは! いやはや全く貴様は我を厭きさせぬな雑種! 二度も世界を救った男がなんの因果か犯罪王とはな! もし貴様が英霊の座に着くことになれば間違いなく反英雄の類であろうな!」

 

 そんな王の称号いらないから! なにさ犯罪王って! どんだけ脚色されてんだよお前の頭の中で!

 

「いやー、ご主人様。割とマジで浸透してますよ? “極悪犯罪王岸波白野”いやん、ワイルドですぅ」

 

ワイルドの範疇超えてるから! 寧ろ外道の類になるからその呼び方だと! おかしい。一体何故自分にそんな不名誉極まりない通り名を受ける羽目になったのだ!?

 

常に周りから最弱、人畜無害系とか色々言われてきた自分が何故!

 

「受け入れなさい。それが真実よ」

 

そんな真実いやだぁぁぁぁぁっ! てか凛、意外と乗ってきたな! 愉しいか? 自分を虐めて愉しいか!?

 

「ほう? やはり見所のある女だったか。ならば凛よ。貴様には愉悦部の部員ナンバー4の称号を授けよう。因みに会長は我であの店員が会計だ。我がマスターは庶務だが……特別だ。貴様には副会長の座をくれてやるとしよう」

 

「ははぁ!」

 

なんなの? ねぇなんなの? なんでそんな息ぴったりなの? 自分がおかしいの? あとさり気なく自分も巻き込まないでくれない? なにさ愉悦部って? てかあの神父も混ざってたの?

 

 

────温めますか?

 

 

なんか変な電波受信した!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やれやれ、相変わらず賑やかだなウチのマスターの周辺は」

 

「……………そういう割にはお前も楽しんでそうだな」

 

「む? そんなつもりはないのだが……いや、やはりどこか楽しいと感じるのだろうな。アイツにはいつも手を焼くが────その分嬉しく思う自分がいる」

 

「羨ましいよ。私には遂ぞそんな主とは巡りあえなかったからな」

 

「だが、それも過去の話だ。これからは違う。お前もあの少女と共に当たり前の幸福を得てくるといい」

 

「………あぁ、そうだな。償うべき罪を精算したら、必ず」

 

「では往くとしよう。BB、後は頼んでも?」

 

『はいはーい。そこのリインさんの欠損された所とか上書き、歪んだ箇所は全て治しましたので、さっさと帰ってくださーい』

 

「済まない。礼を言う」

 

『お礼なんか結構ですので、私達に迷惑を掛けるのはこれっきりにしてくださいね? あの人の頼みでなかったら八つ裂きにしても飽き足りないんですから』

 

 BBの手厳しい言葉に苦笑いを浮かべつつ、二人は騒がしいあの場所へと戻っていく。

 

彼の受難はまだまだ始まったばかり。はてさて、岸波白野の今後の冒険はどうなるのか! 愉悦に浸りながらお楽しみに!

 

 

 

 

 

そして……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「手に入れるんだ。お父さんの夢の為に、システムUーDを、絶対に!!」

 

 

 

 

「ドクター、これを」

 

「これは?」

 

「闇の書にまつわる資料です。古いものですが……情報は確かかと」

 

「ほう。無限の力を生み出す“アンブレイカブル・ダーク”か、興味深いね」

 

たった一人の少女を巡って、歯車と欲望が彼等の前に現れるのは……そう遠くない話し。

 

 

 

 

 

 




これで終わりじゃないぞ。もうちっとだけ続くんじゃ。

という訳でA’s編はこれにて終了。次回からはオリジナルなGODになりそうなので、あまり期待せずにお読みください。

そして、白野君が最近ツッコミ化してますけど次回はボケも出来るのだと証明しつつ、幕間な話しをお送りしたいと思います。

それではまた次回!ノシ

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