魔法はお前の魂だ(魔法先生ネギま✖天元突破グレンラガン)   作:アニッキーブラッザー

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第79話 すぐに辿り着くぜ!

巨大な鬼神兵の上に立ち、天に向かって指を指す男。

その男に続けとばかりに同じシンボルを背負った者達が世界樹を占領した。

数千体のロボットもイベント参加者も関係ない、突き進む者たちを止められはしなかった。

 

「よし、今日からお前の名前は魔道グレンだ! 俺たちと共に戦え!!」

 

たった今支配下に置いた巨大ロボに向けてシモンは名を与えた。

それを気に入ったかどうかは分らないが、新たな仲間に跨り前を向いた。

 

「さあ、他の2体をぶちのめすぞ!!」

 

魔道グレンの目の前にいるのは一緒に湖の底から現れた同等の巨大ロボット。

シモンが魔道グレンの上で殴る仕草をするとそれを真似して魔道グレンは巨大な拳を目の前の巨大ロボヘ振り下ろした。

二つは元々同等の力のはず・・・だった。

しかしシモンがラガンの役割を果たすことにより、シモンが突き刺したドリルから流れる螺旋力を受けて魔道グレンの攻撃力も防御力も大幅にアップしている。

 

「うおおおーーー!? あの兄さんの乗ってるロボットが一撃で隣のロボをッ!?」

「シ・・・シモンさんスゴッ!?」

「でもアレって味方なの? お助けキャラってことでいいのかな?」

「ええ~、それならマズイよ!? いかにも点数の高そうな敵が瞬殺されちゃったよ!?」

 

魔道グレンの振り下ろした拳は巨大ロボを叩き潰した。

驚愕と歓声が上がる中すぐに振り返りもう一体を睨みつける。

 

「お前もだ! もう一度地底深くまでふっとんでいけ!!」

 

叫びと共に螺旋力がシモンから湧き上がる。

この感覚は懐かしかった。

まるでラガンのコクピットで螺旋ゲージのメーターが振り切れた時のようにシモンのテンションは上がった。

その振り下ろした拳は魔道グレンに伝わり、もう一体のロボを巨大な水しぶきと共に再び水中に叩き付ける。

科学装置で制御されている兵器は再生力が弱い。

たった一撃で二体の体に大きな傷跡を残した。

 

「おおーー、スゲーー!!」

「何かしらねえけど、あのデカイロボット二体とも弱まったぞ!」

「ねえねえ、今の内だよ! 高得点のチャンス!」

「よーしやるわよ!」

 

シモンの攻撃に弱まった二体の巨大ロボたちは士気が戻った生徒達の一斉射撃を浴びる。

それを見てここはもう心配ないだろうとシモンは確信した。

そしてニヤリと笑みを浮かべてシモンはこの光景をどこかで見ているであろう女に向かって叫ぶ。

 

「さあ、すぐにテメエのとこに辿り付くぜ、超!!」

 

受け返す言葉はない。しかしシモンの言葉は絶対に超にまで届いただろう。

だが辿り付くのは簡単ではないことは確実だった。

 

「シモン君!!」

 

シモンの目の前に4人の者が現れた。

そこには先ほどまで呆然としていた魔法先生たちがいた。

 

「シモン君・・・・」

 

魔力の模様の上に乗り、宙に浮かびシモンに向かって呟く瀬流彦。

その後ろには神多羅木、ガンドルフィーニ、刀子がいる。

 

「こうしてアナタと話し合うのは初めてですね。私の名は葛葉刀子です」

「神多羅木だ」

「僕はガンドルフィーニ・・・君の事はエヴァンジェリンとネギ君の争いの時から少しだけ知っている」

 

刀を携えて冷静な口調で一礼する刀子。

タバコを咥えながら少ない口数でサングラスの奥から睨みつける神多羅木。

そしてナイフと拳銃をシモンに向けて構えるガンドルフィーニ。

闘う気の様である。

 

「ネギ君や学園長、そして高畑先生も何故か君の事を信頼しているようだ。しかし今回はそのネギ君の口から君を超鈴音同様に捕らえるように言われている」

「俺がそれに従うと?」

 

ガンドルフィーニの言葉を正面から受け返すシモンに、瀬流彦は慌てながら口を挟む。

 

「シモン君! 手荒な真似はしたくない、大人しく投降してくれないか?」

 

恐らくそれが最終警告だろう。これを断ればこの4人は同時に襲ってくるだろう。

だが望むところである。

返答の代わりに笑みを返した。

 

「ふう、だと思ったがな・・・」

「潔くする気はないようだね」

「愚かな、利口な方ではないようですね・・・」

 

煙を吐きながらためいきをつく神多羅木。そしてシモンの笑みにカチンと来たガンドルフィーニと刀子。

 

 

「ええ、利口な奴なら潔く出来る。だがグレン団はそうはいかない。 無茶と無謀で壁を突き破るのがグレン団の・・・そして俺の生きる証だ!!」

 

 

先に動いたのはシモン。その場で拳を下から振り上げ、魔道グレンのアッパーを四人に向けて放つ。

だが、4人はバラバラの方向へ避けて空中で四散した。

 

「いい度胸だ、嫌いじゃない」

 

神多羅木は両手の指をパチンと何度も鳴らす。

それと同時に神羅木の指から無数の魔法弾が弾き出され、シモンを襲う。

 

「大回転ブーメランシールド!!」

 

着弾の前に巨大化させたサングラスを手で回転させて攻撃を防ぐ。

しかしその瞬間、瀬流彦が呪文を唱え、浮かび上がった紋章が巨大化して魔道グレンの動きを止める。

 

「悪いね、シモン君。 手荒になるけど勘弁してね」

「なっ・・・これは!?」

 

自分の意思に反して魔道グレンが思うように動かない。おそらく瀬流彦の仕業だろう。

だが、その隙に残りの二人が魔道グレンの頭上に降りシモンを挟み撃ちにする。

 

「いくぞ!」

「観念してください!」

「断るに決まってんだろ!」

 

左右を挟まれたシモンはブーメランを構える。

 

「中々おもしろい能力ですが、手加減しません! 神鳴流奥義・雷鳴剣!」

 

雷を剣と共に振り下ろす刀子。

だがシモンは空中へ飛びのいて、そのまま落下しながらブーメランを振り下す。

 

「これは刹那と同じ・・・・」

「ほう、ご存知でしたか。ならばもっと堪能しなさい!」

 

刹那と同等かそれ以上の剣技。流れるような大胆かつ美しい攻撃にシモンは押されていく。

武道大会を経て大幅に力をつけたシモンだが、相手もプロ。更に複数で同時に襲われれば苦戦せざるをえなかった。

 

「やるじゃないか!」

「ふっ、アナタもやりますね」

 

ガキンと重い音が響き鍔迫り合いになる。

だがその隙にガンドルフィーニは背後から銃を撃ち、神多羅木も同時に指を弾く。

 

「ここまでだ!」

「捕らえさせてもらうよ!」

 

後ろからの攻撃の上に自分の手は刀子に押さえつけられている。

だが、生半可な攻撃はシモンには通じない。

 

「なめるな! 螺旋フィールド!!」

「なっ!?」

「むっ!?」

「ほう、そんなことも出来るのか」

 

螺旋力を増大させて、シモンは無我夢中でシールドを張った。

それはネギと闘った時の超銀河モードには及ばない物の、鉛弾と無詠唱呪文を防ぐには十分だった。

そして増大させた螺旋力は魔道グレンも影響を受けて、シモンの叫びと共に拘束を自力で破った。

 

「いつまでも押さえられるものか!! グレン団は拘束という言葉に反逆する者たちだァ!!」

「ぐっ、しまっ、ガンドルフィーニ先生たち、危ない!?」

 

拘束を破られた瀬流彦が慌てて叫ぶと、ガンドルフィーニたちの頭上に魔道グレンの手が頭の上に乗っている自分達を振り払おうとした。

瀬流彦の声に反応して咄嗟に魔道グレンの頭から飛びのいた三人。

しかし攻撃の手は止まらない。

シモンが飛び降りた三人に向けて指を指すと、魔道グレンの口が開いた。

 

「特大ビームをお見舞いしてやるぜ!!」

「まずい!?」

「くっ、させません!!」

 

巨大なエネルギー砲の威力を察した刀子は方向転換して全力でシモンに向かって切りかかる。

 

「無茶だ、間に合わない!」

「葛葉!?」

 

シモンの攻撃の方が一瞬早い。

シモンは目前まで迫った刀子に向けて指を指し、同時に魔道グレンの口から強烈なビーム砲が刀子を襲う。

それは先ほどまでとは比べ物にならないほど強大な光だった。

シモンの螺旋力を受けてパワーアップしたその威力を受けたら一溜まりもないだろう。

しかし・・・

 

「はああああああああああああ!!」

「何!?」

「刀子先生!?」

 

光の中から刀子の声が聞こえた。

これには流石のシモンも驚かざるを得なかった。

そして光の中から刀を振り上げた刀子が現れた。

 

「最初は驚きましたが、威力は大したことがありませんでしたよ! 覚悟!」

「ちっ!?」

 

襲い掛かる刀子の剣を咄嗟にブーメランで防ぎながら舌打ちするシモンだった・・・が・・・

 

「・・・・あれ?」

 

シモンが異変に気付いた。

それは先ほどまで刀子が掛けていたメガネが無くなっているのである。

だが、それだけならまだよかった。

光が薄れて、シモンの視界がハッキリする。すると目の前の女の姿の異常に気付いた。

 

「ぶううううーーーーー!?」

「とと・・・刀子先生!?」

「なななんという・・・・」

「・・・ふう、・・・悲劇だな・・・」

 

シモンだけでなく瀬流彦たちまで思わず噴出してしまった。

シモンと鍔迫り合いをする刀子は思わず首を傾げてしまった。

 

「一体何を・・・・・って・・・・えっ!?」

 

周りの状況に訳が分からないといった表情をする刀子だったが直ぐに異変に気付いた。

 

「かっ・・・・あっ・・・あっ・・・・」

「ご・・・・ゴメンなさい・・・」

 

固まる刀子に取り合えず謝罪をするシモン、彼も相当刀子に襲い掛かった悲劇に動揺してる。

刀子にとっての不幸中の幸いは今魔道グレンの頭上にいるため、一部の者を除いてこの状況を見える者が少なかったことだった。

だが少なくともシモンには間近で見られてしまった。

 

「い・・・いや・・・・」

 

彼女の悲劇。

それはビームの能力が脱げビームだということをシモンも含めてうっかり忘れていたことだった。

つまりシモンの螺旋力を受けてパワーアップしたのは脱げビームの方である。

 

「ううう・・・あああ・・・・・」

 

パワーアップした脱げビームは、刀子の下着を含め、全ての衣類を吹き飛ばしてしまった。

 

「本当に・・・・ゴメン・・・」

 

視線を逸らして俯くシモン。

目の前には女性として既に木乃香やアスナたちと違って成熟した体がある。

そう、今の刀子は刀を握り締めているだけで、完全な全裸の姿だったのである。

 

「いやあああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」

 

シャークティ同様常に学園内では冷静でクールな女として通っている彼女だったが、人生で最も大きいかもしれないほどの叫びを上げて、一目散にその場から走り去った。

シモンたちは彼女の悲劇に同情し、一次戦いを中断してしまった。

 

とにかく葛葉刀子、一次戦線離脱。

 

 

 

 

 

そんなことがあったとは知らずに世界樹広場から巨大ロボの魔道グレンを見るネギは、今にも飛び出そうとする雰囲気だったが、この場の状況がそれをさせなかった。

 

「くっ、こんなことになるなんて・・・・」

「魔法先生たちも苦戦してるわよ、流石に予想も出来なかったわ」

 

予想を遥かに上回るグレン団の人数、そしてシモンの力を目の当たりにして、完全にネギたちは後手に回ってしまった。

ほとんどの人数をバラけさせないで世界樹広場一点に戦力を集中させることにより、彼らは壁を固めた。

これにはアスナも驚いていた。そして突如現れた集団に目をパチクリさせる裕奈たち、そして刹那も同じであった。

そして刹那はグレン団として行動しているある人物を見つけた。

 

「辻部長・・・部長まで・・・」

「やあ、桜咲」

「あら、アンタ達知り合いだったの?」

 

刹那に名前を呼ばれると、剣道着と防具、そして木刀を持った黒髪の男が現れた。

防具にはちゃっかりグレン団のマークが描かれている。

 

「刹那さんの知り合いですか?」

「はい、剣道部の部長です。一応格闘大会に参加していましたが予選で古に負けたようですが・・・」

「そうなんだ。 ・・・ってゆうか他の人達も格闘大会の予選で見たことあるわよ」

「あっ、僕もです・・・・」

 

ほとんどが予選会場でチラッと見たことがある者ばかりだった。

もっとも負けたりしたわけでも印象に残ったわけでもないのであまりよく覚えてはいない。

だが、それでも今の彼らから溢れる熱気は軽く見ることは出来なかった。

それはアスナたちにも感じた。

 

「桜咲、君は去年まで・・・というより今年の春頃まではクールで刀みたいに鋭い奴だと思っていた。でもある日を境に急に丸くなった気がした・・・」

「それは・・・・・」

 

同じ剣道部として、辻はそれなりに刹那を見る機会があった。しかし飛びぬけた実力を持っているものの人付き合いも悪く、クールで声も掛けづらいというのが印象だった。

刹那もあえてそうしていたのだ。だから周囲にそう思われているのも知っていた。

しかし辻は自分が変わったと言った。

その原因は一つしかなかった。

 

「見させてもらったよ、君のリーダーへの・・・シモンさんへの告白を」

「あっ、・・・あれは・・・その・・・」

 

思わず真っ赤になりモジモジしだした刹那。その仕草も以前までの彼女にはなかったものである。

それはクラスメートにもそうだった。

 

「でもたしか木乃香もシモンさん好きなんじゃないの?」

「そういえばエヴァンジェリンさんもそやったような・・・」

「ああ~~もう皆さん、その話は後で!!」

 

顔を真っ赤にさせて叫ぶ刹那に苦笑する辻。

だが途端に顔が険しくなった。

 

「だからこそ、・・・それをアッサリ断ったシモンさんが許せなかった」

「えっ? ・・・部長・・・」

「辻っち?」

 

辻の言葉に意外そうな顔を浮かべる刹那。それは豪徳寺たちも同じだった。

 

「ようやく変わった桜咲の勇気と想いを踏みにじった・・・だから許せなかった・・・」

「辻っち! 何言って・・・「だがしかし!!」・・・?」

 

険しかった表情が一気に崩れ、辻は苦笑した。

 

「もっとも許せないのは・・・そんな男の背中と魂に心を揺さぶられた自分自身だ!」

「部長・・・」

 

そう言って辻はニッと笑って木刀を構えた。自分達には及ばないものの、その体からは実に洗練された気が漲っている。

 

「男を見る目があるようだね、桜咲には」

 

言われた刹那も思わず苦笑した。

だが恥ずかしいとは思わない。真っ赤だった顔もいつもどおりに戻り、満面の笑みで頷いた。

 

「はい、・・・だからこそ、他の女性に今夢中のシモンさんを捕まえてお説教するんです」

 

自分達をほったらかしにして、これだけの大騒動を起こして大デートを超としようとしているシモンを皮肉って刹那は告げた。

刹那にしては珍しく冗談めいた口調だが、想いはネギたちも同じである。だがその前に立ちはだかる壁は厚い。

 

「あら、邪魔はさせないわよ」

「その通りです。ネギ先生・・・シモンさんは必ず勝ちます。だからこそ、邪魔はさせません」

 

構えるネギたちの前にヨーコとシャークティが一歩前へ出る。

 

「人の恋路を邪魔すると、グレン団に蹴っ飛ばされるのよ」

「だったら蹴り返します!」

 

刹那は翼を出した。

シモンの下に向かうためである。だがしかし、そう簡単にはさせない。

 

「シモンの邪魔はさせないわ」

「誰もリーダーの所にはいかせねえ!」

「予選じゃ負けたが、喧嘩じゃ負けねえぞ!!」

 

道を遮るグレン団。そしてそれだけではない。再び上陸した田中さんたちの軍団が世界樹広場に現れた。

 

「いっきにいくわよ、ネギ!」

「はい、必ずシモンさんの所へ行きます!」

「行きます、グレン団の方々! そして人形ども!」

 

ネギ、アスナ、刹那、そしてヨーコとシャークティを始めとしたグレン団、さらに田中さんの群れは一点にぶつかり、戦闘を開始した。

 

「ちょっと、ちょっと~~!? なんでなんで!? どうなってんの!?」

「だ・・・誰が味方で敵か分からない・・・」

 

突如自分達を置いてきぼりに戦闘を始めた三つのグループに訳が分からずにしばらく裕奈たちはおろおろして戸惑っていたが、それを無視して彼らは戦いを始めた。

 

 

 

 

そしてネギたちと別れた木乃香たち、彼女達は世界樹に集まったグレン団のことはまだ知らないが、巨大ロボを手に入れたシモンの姿は見ていた。

 

「シモンさんカッコええ!!」

「ホントホント! いいね~、敵を仲間にするってのは少年漫画の醍醐味!!」

「そうじゃねえだろ!? ってゆうかカッコイイか!?」

「千雨さんもハルナも木乃香さんも落ち着いてください。今はどうやってシモンさんを捕まえるかです」

 

取り乱す者を宥めながら夕映は落ち着いて考えようとするが、彼女自身も相当動揺していた。

 

「魔法先生がシモンさんと戦ってるけど、まだ捕まえられないみたい・・・」

「ええ、ネギ先生も恐らくどうすればいいのか戸惑ってるのかもしれません。あんな巨大な物ですから・・・」

 

離れた場所でもその巨大さを理解できる。

そしてその周りで激しい戦闘を繰り広げる魔法先生達。正直レベルの違いに思わず手に汗を握ってしまう。

 

「だがしかし、やるしかないでござる」

 

考えは纏まらないが躊躇するわけにはいかないと楓は口を挟んだ。それには古も賛成だった。

 

「そうアル、むしろシモンさんの方から来てくれたのだから好都合アル」

「でも、どうやって・・・・」

「いえ、魔法先生が奮闘している今こそチャンス、加勢すればシモンさんだけでも捕まえられるかもしれません」

 

巨大な兵器を手に入れても魔法先生四人を相手に手こずるシモンを見て夕映たちは好機と見た。

そして楓が前へ出る。

 

「ならば、拙者が行くでござる」

 

一言断って楓は一瞬で建物の屋根まで上がり、シモンの下へ向かおうとする。

忍者なだけあって身軽な彼女は屋根の上を高速で走り出した。

しかし横から迫り来る気配を感じた。

 

「むっ!?」

 

別の方角から、自分と同じように高速で接近する気配に楓は思わずその場を飛びのいて屋根から地面に飛び降りた。

 

「悪いけど通さないよ」

「通サナイ」

 

屋根の上から声がした。

楓たちはその人物を見上げると、そこにはよく見知ったものがいた。

それは黒いシスター服に身を包み、背中には燃えるドクロのマークを背負った二人組。

美空と肩車されているココネだった。

 

「美空ちゃん、ココネちゃんまで!?」

 

二人はグレン団なのだ。不思議ではない。

しかし彼女達にはこの状況で美空たちが現れるのは予想外だった。

 

「おい、春日にチビっ子! どうゆうことだ!」

「そうです、そこを通してください!」

「チッチッチ、ゆえ吉に千雨ちゃん、悪いけどそうはいかないよ! 私達の戦いに邪魔は・・・アニキと超の喧嘩の邪魔はさせないよ」

「それが世界に混乱をもたらすとしてもですか?」

「もたらさないよ。だって勝つのは私達だもん!」

 

魔法使いとしてではない。グレン団として参戦した美空の意思は固い。

彼女の力強い瞳は、同じクラスメートの木乃香たちも見たことのないものだった。

その強さを感じた楓が再び前へ出た。

 

「ならば、ここは拙者が受け持つでござる」

「楓さん!?」

「楓、いいアルか?」

 

今の美空は姉妹合体状態である。

その効果を楓たちは知らないが、それでも美空が脅威であることなど対峙しただけでも分る。

ずっと一緒に居ても知らなかったクラスメートのベールを脱いだ姿に楓は武人として思わずニヤリと笑った。

 

「美空殿、お主を認めるからには手加減せぬでござるよ」

 

学園でもトップクラスの者からの通告である。その強烈な覇気はいつもの美空ならば持ち前の逃げ足でトンズラするだろう。

しかし彼女は多少面倒くさい表情はしたものの、その場から逃げる気配はない。

 

「うっは~~、楓か~~、あ~やだやだ、だから熱血は嫌なんだよね~」

「美空、気合入レル」

「はいはい、分りやしたよ~~」

 

ココネを肩に乗せたまま美空は屋上から飛び降りて魔力を体に流した。

武道大会では荒々しかった魔力が実にキレイに美空の体を覆っている。それを見て楓は自分の勘が当たっていることを確信した。

 

(これは・・・簡単にはいかないでござるな・・・)

 

楓も相応の覚悟を持って美空に向けて構える。

 

「いくよ、楓!」

「受けて立つ!!」

 

その瞬間二人の姿は木乃香たちの視界から消えた。

 

「「「消えた!?」」」

 

否、消えたわけではない。見えないだけである。

 

「二人共・・・・物凄いスピードアル・・・」

 

常人レベルを遥かに上回る楓と美空の速さを見極めることなど彼女達には無理だった。

ここで全員で美空を捕らえてからの方が確実なような気がしたが、その考えはあっという間に却下された。

むしろ自分達は足手まといでしかないと夕映たちは理解した。

だからこの場は悔しさを噛み締めながら、楓を置いて進むことにした。

だが・・・

 

「おい・・・・いらん奴まで来やがったぞ・・・」

「茶々丸?・・・いや、違うアル・・・」

 

前へ進もうとした自分達の前に茶々丸と瓜二つのロボットが数人、銃を装備して現れた。

クラスメートに似た人物の出現に驚く木乃香たちだが、ロボットはゆっくり口を開いた。

 

「ハイ、私ハ茶々丸専用のボディニインストールサレタ、データ収集用ノ中距離専用ノプログラムデス」

「茶々丸さん・・・じゃないのですね?」

「失礼デスガアナタ方ヲ排除サセテ頂キマス」

 

その言葉と共にロボットは体中に電流を流し、戦闘態勢に入った。

 

「私達もやるしかないようですね・・・」

「うっは~、全裸にならないようがんばるか~」

「冗談じゃねえ、気合入れて・・・イカンイカン、死ぬ気でやるぞ!!」

「私もがんばる・・・」

「絶対にシモンさんのとこに行くえ!」

 

支給された武器をロボットに向ける木乃香たち。彼女達もようやく戦闘を始めた。

それを別の場所で眺めている一人の女。彼女もとうとう動き出した。

 

「さて、楓と美空の戦いに興味あるが、私も仕事をしないとな」

 

相棒のライフルを手に、龍宮もとうとう参戦を決めた。

 

「まずは邪魔な魔法先生からか・・・シモンさんは・・・・運次第だな」

 

学園祭の特殊弾。これを受ければ強さに関係なく、三時間後、全てが終わった頃に跳ばされてしまう。

笑みを浮かべながらその弾を詰め込み、龍宮はシモンと魔法先生のいる湖へ向かった。 

 


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