魔法はお前の魂だ(魔法先生ネギま✖天元突破グレンラガン)   作:アニッキーブラッザー

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第78話 こいつはいただいた

現在湖の畔に多数の生徒が集まっている。

その中にはネギの生徒の桜子、円、美砂のチアガール3人組の姿もあった。

彼女達も支給された武器とローブを身に纏い、参加するようである。

 

「ねー、私達の防衛ポイント、世界樹広場なのに何で湖にいるの?」

「フッフッフ。ネット情報で敵は湖から攻めて来るって噂が流れてるのさ」

「バンバン倒してして賞金ゲット♪」

 

イベント大好きな3-Aの生徒なだけあって、これから始まる戦いの真意を知らぬまま、やる気に満ち溢れている3人。

すると自分達以外に待機する参加者達が声を上げた。

 

「おい、見ろ! なんか来たぞ!?」

「な・・・なんだありゃー!?」

 

突然、辺りが騒がしくなった。慌てて湖の方を見ると、湖の中から大量の田中さんたちが現れた。

愛称こそ間抜けかもしれないが、見てくれはどう見ても、某州知事の全盛期の姿。初見の彼女達に驚きは隠せなかった。

 

「ちょっとまずいよ、何これ!?」

「聞いてないよ!? こんな可愛いカッコしてるんだから、敵もメルヘンなのかと思ってたよ~~」

 

現れたロボットは数え切れない、2500を越えているか越えていないか分からない。要するにとにかくたくさんである。

 

「よ、よぉーし! ちょっと早いが相手をしてやるぜぇ!」

 

最初はビビッたものの、好戦的な生徒達は意気込んで攻撃しようとしたが、その前に田中さんの口が開き、ビームが発射された。

 

「きゃーー!?」

「ちょっ、いきなりビームだ!?」

「ビームだーー!」

 

自分達の攻撃の前にロボット達は先制してきた。

驚く桜子達だったが、その隙に一体の宙を飛ぶロボットがこちらに照準を定め、攻撃してきた。

 

「キャ、・・・キャーーー!!」

「円ーーー!? 死んだーーー!?」

 

正面からビームを受けた円。しかし、彼女は無傷だった。当然そういう武器なのである。

しかし昨晩戦ったシモンたちとは違って、初見のネギたちも火星軍団の攻撃の内容を知らなかった。

そのため、ビームを受けた後の湖の光景に一瞬固まってしまった。

 

「ギャアアアアアア!? な・・・何よこれーー!?」

 

円を含みビームを受けた生徒達は男女問わずに下着一枚を残し、残りの衣類は全て吹き飛ばされてしまった。

 

「ぬぬ・・・脱げビームだ!!」

「違うわ! セクハラビームよ!」

「どうでもいいわよ! それよりどうすんのよこれ!?」

『武器とローブを無くした方は危険ですのでゲームエリアから離れてください!!』

 

突如聞こえる朝倉のアナウンスを聞き、脱がされた生徒達は慌てて退却した。

しかし超が一般人相手に物理攻撃をしないと予測しての作戦だったが、これはこれで脅威だった。

 

「どど・・・どうすんのよネギ!? これじゃあぶん殴られる方がマシじゃない!?」

「そんなーー、僕もこんな攻撃だなんて知らなくて~~」

「あ・・・悪夢だ・・・言っとくが私は絶対に戦わねえぞ」

 

ネギの胸倉を掴みながらアスナはガクガクとネギを揺する。

そこには仮装している神々しい騎士らしさの姿は無く、ただの中学生に戻っていた。

千雨もブツブツと言いながら絶対に戦場に出ないことを誓った。

それは女として目覚めた刹那にも言えた。彼女もかつてないほど悩んでいた。

 

「こ・・・このどこかにシモンさんもいる・・・。もしあの攻撃を受けたら・・・うう~~~」

「大丈夫やせっちゃん! むしろ知らない人に裸を見られるよりシモンさんに見られた方がよっぽどいいえ!!」

「そういう問題では無いですよ木乃香さん!?」

 

木乃香のズレた励ましがまた場を混乱させ、未だに踏み出せないネギたち。

しかしいつまでも悩んでる暇は無い。コアドリルに眠った男に笑われてしまう。

するとアスナは半ばヤケ気味に自身を奮い立たせて、ロボット達に向かっていく。

 

「あ~~~もう、やったろうじゃんかーー! スッポンポンになったって戦ってやるわよ! 気合よーーー!!」

 

覚悟の仕方が微妙ではあるが、アスナはアーティファクトを手に持ち、大群へ向かっていった。

出遅れたネギたちだが、覚悟を決めアスナに続いて走り出した。

 

『さぁ! 大変なことになってしまいました! 開始の鐘を待たず、敵・火星ロボ軍団が奇襲をかけて来たのです! 麻帆良湖湖岸では、既に戦端が開かれている模様!! さぁ、魔法使いの皆さん、準備はいいですか!? では、ゲームスタート!!』

 

世界樹広場では、同じく仮装をした朝倉が武道会同様に司会を担当していた。そしてその号令と共に、開始の合図の鐘が大きく鳴り響いた。

 

「「「「「敵を撃てーーーっ(ヤクレートゥル)!!」」」」

 

一斉に生徒達の放つ攻撃がロボットに直撃する、すると意外なことに十分効いている様子である。

ビームの攻撃に最初はビビッたが、自分達の攻撃が効いたのが分ると生徒達は一斉に向かって行った。

 

「いけるぞ!!」

「よぉし、敵を撃て!!」

「優勝賞金は俺達、軍事研が頂くぜっ!」

「そうはさせねえ!!」

 

皆、勇敢に立ち向かっていくが、ロボットたちも黙ったままではない。

生徒達に対抗するようにビームを放ち、その攻撃により桜子と美砂にも当たり、二人共あられもない姿を晒してしまった。

 

「うひゃ」

「やられたっ」

「ホラ、2人とも! 早く武器とローブ拾ってきなって! やられたらマイナス50ptsだってよ!」

「ええっ! 嘘っ、マイナスでかい!」

 

再び戦場に戻ってきた円に諭されて、桜子と美砂は慌ててローブと武器を拾いに向かった。

生徒達の活躍もあり、十分に火星軍団と渡り合っている。

しかしそれでも2500以上の数には敵わず、徐々に防衛が破れ、数対のロボット達が世界樹広場へと侵入した。

 

「来たよー! 反撃!! 準備は?」

「「「「OK!!」」」」

 

しかしここには既に防衛体制が整っていた。

ネギの生達の3-Aのメンバー、裕奈、アキラ、亜子、鳴滝姉妹の5人が武器を持ち構えている。

裕菜は両手に拳銃、アキラは杖、亜子は意外にもバスーカー、そして小さい銃を構える鳴滝姉妹。

 

「「「「「敵を撃てーーーっ(ヤクレートゥル)!!」」」」」

 

飛び掛る田中さんたちに向けて一斉射撃を放ち、数対の動きを止める。

しかし全てを行動不能には出来なかった。数対が人間離れした運動能力で回避して裕奈たちに襲い掛かる。

 

「む!? まだ来るか! 敵を撃て(ヤクレートゥル)!!」

 

田中さんがビームを撃って来たが、裕奈達は素の運動能力で交わし、それだけではなく反撃し、田中さんたちを撃退してしまった。

 

「裕奈スゴイ!!」

「カッコイイ!!」

「あはははは! どんなもんよー・・・ん? おわっと!」

 

あまりに見事な手際とポテンシャルに歓声が上がり高笑いする裕奈だったが、再び田中さんたちの群れが現れた。

 

「どんどん出て来るよ、このロボーー!!」

「何の何の! 点数稼げてラッキー!」

「優勝賞金は僕達がGETだね♪」

 

脱げビームの効果など全く恐れずに3-Aの生徒達は果敢に立ち向かっていく。

この予想以上の力はネギたちにとっては嬉しい誤算であった。

 

「皆さんスゴイです!」

「ああ、流石俺っちが認めた3-Aの生徒達だ・・・・だが・・・」

 

それでも徐々に押されているのは目に見えている。

倒しても倒しても次々と現れるロボット達に世界樹広場が徐々に占領されていく。

 

「潮時だな・・・・アニキ!!」

 

カモの声でネギ、アスナ、刹那の三人は頷いた。

 

「では僕達は行きます。楓さん、古さんとともに、夕映さんたちも別の場所をお願いします!」

「ウム、まかせるでござる」

 

その言葉とともに楓と古は巨大な手裏剣と拳を上げる。

そして夕映、のどか、ハルナは己の仮契約のカードと支給された武器を手に持つ。

・・・・何故か千雨もカードを持っていた。

 

「そうだ・・・・これは緊急事態だったんだ・・・しょうがねんだ・・・」

 

顔を真っ赤にしながらブツブツと呟く千雨。・・・・いつの間にかネギと仮契約していたようだ。

 

「もう、千雨ちゃん。落ち込んでたらアカン」

「だあ~~うるせえ~~! つうか何で私がしてテメエがやんねえんだ!!」

「だってウチにはシモンさんがおるからな~。契約するならシモンさんとやも~ん。せやからこの杖でガンバル!」

 

そう言って木乃香は支給された杖を構えて意気込んだ。

周りに急かされて半ばヤケで仮契約をした千雨、しかし同じ非戦闘要員でありながら自分はしたのに木乃香が未だに仮契約をしていないことにかなりご立腹中のようだ。

 

「まあ、いいじゃない。とにかくこれより・・・・」

「はい・・・・皆さんの健闘を祈ります! では・・・・散!!」

 

ネギ、アスナ、刹那のグループ。

木乃香、楓、古、夕映、のどか、ハルナ、千雨のグループ。

二つのグループに分かれてネギたちは世界樹広場へ、そして木乃香たちは別の防衛ポイントへ向かった。

 

「このロボ軍団限が無いよ~~~」

「押されてる・・・・」

「これ占領されたら賞金パアなんでしょ? ヤバイよ~~」

 

善戦するものの圧倒的な質量差で向かってくるロボット達に裕奈たちも押され気味である。

しかしそんな弱音は受け入れられず、次から次へとロボット達が現れる。

 

「大軍団・・・こりゃあヤバイかも・・・・」

 

裕奈たちがあきらめかけたその時だった。

 

「ゆーな、どいて!!」

「へ?」

 

突如名を上から呼ばれて思わず見上げると、大剣を落下しながら振り下ろす剣士がロボット達を真っ二つに切り裂いた。

 

「なっ!?」

 

突如乱入した一人の騎士。その光景に驚いていると、更に二人の者が続いて降りてきた。

 

「ラス・テル・マ・スキル・マギステル・来れ虚空の雷・薙ぎ払え・雷の斧(ディオス・テユコス)!!!!」

「奥義・・・百烈桜華斬!!」

 

突如吹き荒れる雷と剣の暴風が大量のロボット達を吹き飛ばした。

あまりの出来事に訳が分からず裕奈たちが呆然とすると、突如乱入した三人の姿が見えた。

 

「皆さん、ご無事ですか?」

「ネギ君!? それにアスナに桜咲さんまで!?」

「なぜ先生や桜咲さんたちが?」

 

見知った乱入者に驚きの声を上げる裕奈たちだが、アスナはニカッと笑ってパンフレットを見せた。

 

「何って私達、ヒーローユニットやってるから」

「へ? ユニット? ・・・ってパンフに書いてる。ゲーム開始後、しばらくして強力な力を持つお助けキャラクター(ヒーローユニット)が現れます。彼らと協力して・・・ってアスナたちだけズルイ!!」

「大丈夫です。僕達は演出を盛り上げる仕事なので賞金は貰いません」

「えっ、そうなの? それならいいけど・・・」

『お待たせしました! ヒーローユニットの登場です! 強力な戦闘力を持つヒーローユニットと協力して高得点を目指し、世界樹を防衛して下さい!!』

 

するとアスナたちの登場を口火に学園側の魔法使い達も動き始めた。

その並外れた戦闘能力は、一度劣勢になった形勢をアッサリと覆していく。

それに負けないよう、参加者生徒達も一層気合が入り、次々とロボット達を撃破していった。

 

「どうやらうまくいってるみたいね」

「そうでしょ~、でもアスナたちみたいなお助けキャラがいると逆に点数が稼げないから、私達もがんばらないとねー!」

「がんばるぞー!」

 

裕奈たちはアスナたちの登場で再び闘志を燃やし、各々の武器を手に、再びロボット達に向かおうとする。

作戦は順調である。

このままいけるかもしれない。

それはネギだけでなくアスナにも刹那にも感じた。

だが、一つの気がかりがあった。

 

「あの・・・裕奈さん、その・・・・シモンさんや美空さんを見ませんでした?」

「えっ? シモンさん? ううん、見てないけど・・・何々、シモンさんもヒーローユニットなの?」

「あっ・・・いえ、そういうわけではないんですけど・・・」

 

ネギが尋ねるが、気がかりは解消されなかった。

未だに戦場に現れないグレン団。いくらなんでも遅すぎると感じた。

既にやられたのか、それとも逃げたのか? 少なくとも後者はない、しかしシモンたちが既にやられているとも思えない。

いつもならドリルを片手に熱く戦う男が未だに姿を見せないことにネギたちも妙な不安に襲われた。

 

「シモンさん・・・一体何を企んでいるだろう・・・・」

「シモンさんは見つけ次第確保というのが我々の作戦・・・。しかしもうこの状況で捕まえるのは難しいだろう・・・。いや・・・その前に私達がシモンさんも捕まえようとしていることは知らないはず・・・。しかし私達の目を避けるように未だに現れない・・・・・・・まさか・・・」

 

顎に手を置き考える刹那は一つの予測をたてた。

 

「ネギ先生、ひょっとしたら私達の作戦は・・・・」

「はい、シモンさんに見抜かれているのかもしれません・・・」

 

それはネギも同じ考えだった。

そうでなければいつでも先頭に立って戦う男が現れない理由を説明できないからである。

 

「・・・それで僕達の作戦を逆手にとって、僕達とロボット達で潰し合わせる・・・っということでしょうか?」

「え~~? でもそれシモンさんっぽく無いわよ」

「えっ? どしたの~?」

「シモンさんがどうかしたんですか?」

 

シモンのことで悩むネギたちに首を傾げながら裕奈やアキラたちは聞いてくる。

しかしまだネギたちにはシモンの考えが分らなかった。

だが、呑気に考えている時間は無かった。

 

「ちょっ・・・・何アレーーーー!?」

「何かデッケーのが出てきたぞ!?」

「ガ・・・ガ○ダムだーーー!?」

 

響き渡る悲鳴にネギたちは慌ててハッとなって湖の方角を見た。

すると、巨大な水柱が立ち上がり、湖の中からこれまでとは桁外れな巨大なロボットが現れた。

その大きさ目算で30メートルを軽く超えるほどの質量だった。

 

「なっ・・・ちょっと聞いてないわよ!? どういうことよ、ネギ!?」

「ぼ・・・僕も知りませんよ! それに学園結界であんなに大きいのは動けないはずですし・・・」

「アスナーーー! 何アレ!? アレも倒すの!?」

「イ・・・・イベントにしては演出がスゴすぎる・・・・」

 

イベントだと思っている裕奈たちだけではなく、あまりにも規格外な怪物の出現にアスナも激しく動揺した。

 

「くっ、こんなものまで用意しているとは・・・それに学園結界まで・・・超鈴音の仕業か・・・」

 

刹那が歯軋りしながら出現した巨大ロボットを睨みつける。

 

「京都にいたスクナに似てる奴がいます・・・」

「・・・いえ、強さはアレよりも劣るでしょう・・・しかし生徒達だけの力では無理です。魔法先生たちの力を合わせねば・・・・」

 

冷静に相手の力を分析する刹那。

しかしそうやっている内にも上陸した巨大ロボットは田中さんとは比べ物にならないほどの巨大なビームで湖を防衛している生徒達を一蹴する。

 

「急いで他の人達を下がらせましょう! あれは僕達が行きましょう!!」

 

頷きあってネギたちは急いで湖に向かおうとする。

しかしその瞬間、亜子が何かに気付いた。

 

「えっ? ・・・あれ? ・・・あれ?」

「どうしたの亜子?」

「えっと・・・・あれ」

 

そう言って亜子は空に向かって指を指した。

つられてネギたち亜子の指差す方を見上げたら。箒で空を飛ぶ者がいた。

 

「え~~、って魔女!? なになに、魔女もいんの!?」

「本当に浮いているみたい・・・CG?」 

 

空を飛ぶ魔女に興奮する裕奈たち。だが別に驚くことでもなかった。

そもそも魔法使いが何人もいるのだから、箒を使う者がいてもおかしくはない。

しかし、ネギたちはその箒にまたがっている人物に驚いた。

 

「あれは・・・・マスター?」

「エヴァちゃん・・・」

 

そう、空を飛んでいるのはエヴァンジェリンだった。

姿が見えないと思っていたが、彼女は箒に跨り、一直線に巨大ロボの方角に向かっていた。

 

「いえ・・・それより・・・」

 

しかしネギたちが驚いているのはそこではなかった。

 

「はい・・・マスターの後ろに乗っている人・・・」

 

ネギたちが驚いているのは、エヴァの後ろに一緒に箒に乗っている人物だった。

 

「「「シモンさん!?」」」

 

そう、シモンがようやく現れたのである。

しかもエヴァンジェリンの箒に一緒に乗るという予想外の登場だった。

これにはネギたちも呆然と眺めているしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「生徒達は下がらせましょう! 我々が前に!」

 

 

現れた巨大ロボの力を認識して、刀子は声を上げる。

 

「あんな物まで動かすとは・・・」

「でも僕もたまにはいい所を見せないとね」

 

それに頷いて、同じく魔法先生のガンドルフィーニ、瀬流彦、神羅木が前へと出る。2500のロボットだけでも難儀なうえに、それを遥かに上回る巨大なロボットが現れたのには脅威だったが、そこは裏の世界を生きてきただけあって、全員が少ない動揺ですみ、現れた3体のロボットに向かっていこうとする。

だが、冷静さを保っていたはずの彼らだが、すぐにそれは変わる。

 

「あれ・・・あれは?」

「どうしたんだい瀬流彦くん? ・・・あっ・・・あれはエヴァンジェリン!? それにもう一人いる・・・・あれは・・・」

「シ・・・・シモン君!?」

 

瀬流彦の言葉に全員が注目した。

瀬流彦は修学旅行でシモンとは親しくなったので、直ぐに気付いた。

しかしシモンの顔だけなら、ガンドルフィーニたちも知っていたのである。

それは修学旅行前のネギとエヴァの戦い、その戦いを彼らは離れた場所から見守っていた。

そしてネギのピンチの時、颯爽と現れたのがシモンだったのである。

彼らはその時のことをよく覚えていた。

 

「間違いない、彼だ!」

「ようやくお出ましか。たしか彼も今回の騒動の中心人物だから捕獲するんだったよな?」

「ええ、しかし何故エヴァンジェリンと・・・・、ってあの巨大生体兵器に向かっています!?」

 

激しい戦場の中、自分達の真上を優雅に通過していくエヴァとシモン。

突然のことにネギたち同様彼らも一瞬出遅れてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわあ~~、随分ハデにやらかしてるな~。あっ、あそこにいるのはネギたちだ。はは、口あけて驚いてるよ。あっ、あっちには瀬流彦先生もいるよ」

 

エヴァの箒の後ろに乗り、シモンは上空からの眺めを楽しんだ。

 

「それにしても、空を飛ぶのは久しぶりだよ。エヴァ、協力してくれてありがとな」

 

この世界に来て初めて見る上からの光景に、シモンは少し感動していた。

するとお礼を言われたエヴァは少し顔を赤らめながらソッポを向いた。

 

「ふ・・・ふん、か・・・感謝することだな。そ・・・それよりもっとくっ付かないと落ちるぞ?」

「そうか? 別に大丈夫だけど・・・」

「いや、落ちたら危険だ! もっと・・・こ、腰に手を廻しても構わんぞ! え・・・遠慮せずにギュッと!」

「うん、・・・でももうここまでで十分だ。あのデカ物の真上で下してくれればいい」

「むっ、そうか・・・」

 

少し残念そうに呟くエヴァ。

しかし対照的にシモンの表情は実に活き活きとしている。

今から自分が行なう行動を考えただけでもゾクゾクしているのである。

 

「作戦通りだな」

「そのようだな、お前達の予想通り学園結界も落ちた。茶々丸の仕業だろうが・・・これでようやくお前の出番というわけか」

「ああ、流石に魔法使いとロボット同時は辛いからな。でもこれでなんとかなりそうだ。あの巨大ロボットが予想以上強そうでよかった」

 

ネギたちや魔法先生たちも自分の存在に気付き驚いた表情をしている。

だが、これで驚かれては困る。

今からシモンはかつてのグレン団と同じ事をしようとしているのである。

考えただけでも興奮を抑えられなかった。

 

「おい、ここでいいのか?」

 

スクナに似た巨大ロボットの真上に到着した。

それを確認してシモンもドリルを出した。

巨大な螺旋槍、シモンの魂である。

そして同時に螺旋力を体中に流した。

 

「ああ、こっちの準備は万端だ!」

「そうか、・・・協力はここまででいいのか?」

「ああ! あとはのんびり高みの見物でもしておいてくれ! お礼に退屈させないものを見せてやるよ!」

「そ・・・そうか///」

 

間近でシモンの笑みを見てエヴァは顔を真っ赤にして逸らした。

 

「まあいい、見せてもらうぞ。キサマの道を!」

「しっかり見ておけよ!!」

 

そう言ってシモンはエヴァの箒から飛び降りて、垂直に落下していく。

そして同時にドリルを激しく回転させてそのまま巨大ロボ頭上に突き刺した。

 

「いくぜ、シモンインパクトォォーーーーッ!!!!」

 

スクナに似た巨大なロボットにドリルは膨大な光と衝撃音を上げて突き刺さった。

 

『おお~~っと、突然の乱入者です! 新たなヒーローユニット登場か!?』

「おい、あの人!」

「そうだ、武道会で見たぞ!」

「ねえ、美砂、桜子・・・・」

「うん、シモンさんだ!」

「すごーい! まさかあんな大きいの倒したの?」

 

シモンの登場と派手な攻撃は参加者全員の注目を集めた。

そしてそのドリルが巨大ロボットを倒した。誰もがそう思っていた。

しかし本当は違う。シモンの今の技は攻撃ではなかった。

 

「シモンさんいきなり現れて・・・ってあれ? なんかシモンさんの技の光が消えていくよ!?」

「ほんとうです・・・まさか効かなかったのでしょうか!?」

 

シモンが巨大ロボットに突き刺したシモンインパクト。

しかしその技は最初こそ膨大な光を放ったものの、徐々にその光が薄れていくことに離れた場所にいるアスナたちにも見えた。

 

「いえ・・・様子がおかしいです」

「・・・・あのロボットの動きが・・・・止まっ・・・てる?」

 

そう、ロボットに目に見えるダメージはない。

しかし先ほどまで容赦ない攻撃を繰り出していた巨大ロボの動きが、シモンが放つ光と共に完全に止まったのである。

すると巨大ロボの頭上にいるシモンがドリルの槍を突き刺したままゆっくりと立ち上がり、いつもと同じように天に向かって指を指した。

そうしたらなんと・・・・

 

「えっ?」

「う・・・・嘘!?」

「な・・・・そんな・・・」

 

ネギたちだけではない。

先ほどまで戦っていた参加者の生徒達、

別の場所で動いている木乃香たち、タカミチや刀子たちを始めとした魔法先生、魔法生徒達。

この場にいる全ての者たちがピタリと騒ぎを止めて、目の前の光景に目を疑った。

 

そしてこの光景を別の場所で眺めている超鈴音だけは、一人大爆笑していた。

 

目の前で起こった光景、それは?

 

・・・シモンが乗っかっている巨大ロボットが・・・・シモンと同じように指を天に向かって指しているのである。

 

静寂する戦場。そんな中シモンはニヤリと笑みを浮かべて叫んだ。

 

 

「こいつはいただいた!! 今からコレは俺の・・・俺たち新生大グレン団の物だ!!」

 

「「「「「「「「「「えええええええええええええーーーーーーーーーーー!!!!」」」」」」」」」」

 

 

全ての人間の叫びが学園に響き渡った。

そう、シモンは巨大ロボットを支配して仲間にしてしまったのである。

エンキと同じ要領で、かつてグレン団がしてきたように、相手の武器をかっぱらって自分達の物にする。そうやってガンメンを手に入れた。

そしてシモンは今、新たな武器を手に入れた。

 

「どど・・・どうなってんのよーーー!! ロボット仲間にしたって!?」

「僕が知りたいですよーーー!?」

「こ・・・細かいことは気にしな・・・無理です! 全然細かくありません! 一体アナタはなんなんですか!?」

 

何が何だか分らなかった。

刹那ですら完全に取り乱してその場で混乱していた。

 

「シ・・・シモンさんスゴすぎ!!」

「シモンさんってああいう人だったんですか?」

「「僕達も乗りたーーい!」」

 

目の前で巨大ロボットの頭上で叫ぶシモンに裕奈たちも興奮が抑えきれず大声で叫んだ。

だが、人間は驚いているが、ロボットは違う。

この状況でも忠実に行動をしている。

 

「って裕奈!? 亜子!?」

「えっ・・・ってまた来た!?」

 

シモンに気を取られていると、新たな田中さんの部隊が世界樹広場に再び現れ、一気に襲い掛かってきた。

 

「しまった、いつの間に!?」

「くっ、取り合えずシモンさんは後です! 今はここを・・・・」

 

ネギたちも直ぐにハッとなり、迎撃体制を取ろうとした。

しかし一瞬だけ出遅れた。素早い動きで田中さんは一瞬で間合いを詰め、亜子を攻撃しようとしている。

 

「亜子っ!?」

「くっ、間に合わない!?」

 

田中さんが口を開き亜子にビームを当てようとしてる。

さすがに一般人の亜子に一瞬で反応することは不可能だった。

ネギたちも慌てて助けようとするが間に合いそうにない。

しかし、

 

「ほら、アナタたち、ボケッとしない!!」

 

女の声と共に一発の銃弾の音が鳴り響き、亜子の目の前にいた田中さんの頭を打ち抜いた。

 

 

「ぼやぼやしていると廊下に立たせるわよ!!」

 

 

振り返るとそこには相変わらず色気抜群のカッコをした女がいた。

 

「「「「ヨーコさん!!」」」」

 

ウインクをして応えるヨーコ、そしてその背後からはドカドカと大勢の男達が現れた。

 

「なな・・・なによ?」

「こ・・・これは・・・」

 

ヨーコの背後から現れた男達にネギたちは驚いた。

何故なら彼らはシモンやヨーコと同様にグレン団のマークが描かれた旗を掲げているのである。

 

 

「おっしゃあ! 新生大グレン団参上だぜ!!」

 

「「「・・・・・・へっ?」」」

 

 

ヨーコの後ろから現れた豪徳寺の言葉にネギたちは一瞬目が点になってしまった。

すると豪徳寺と同じように男達は前へ出る。

 

 

「うっひょー、本当にあんなの仲間にするったぁ、流石リーダーだぜ!」

 

「おうおうおう! 火星軍団だか魔法騎士団だか知らねえが・・・・」

 

「今からこの場はグレン団が乗っ取った!!」

 

「魔法だかロボだろうと俺達の気合を見せてやるぜ!!」

 

「「「はあっ!?」」」

 

 

それは一瞬の出来事だった。ヨーコを先頭に突如現れた50人を超えるグレン団があっという間に世界樹広場を占領してしまったのである。

その光景を巨大ロボの頭上から眺めるシモン。

下には田中さんの大群と口を半開きにして眺める生徒達。

そして目の前にはガンドルフィーニ、瀬流彦、神羅木、刀子たち魔法先生たち。

それを見てシモンはニヤリと笑い叫んだ。

 

 

「さあ、開戦だ!!」

 

 

新生大グレン団参戦!!

 


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