魔法はお前の魂だ(魔法先生ネギま✖天元突破グレンラガン)   作:アニッキーブラッザー

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第1部第6章:新生大グレン団VS火星軍団VS麻帆良学園
第71話 待ち合わせより早く来ちまう


「結局何? アンタたちキスの一つもしなかったの? あれだけ・・・あれだけイライラさせて・・・」

「な・・・なんだよ、したらしたで怒るだろ?」

「兄貴って妙なとこでマジメなんだね~。軽い気持ちでぶちゅ~といっちゃえば良いのに」

「美空!! 軽々しくそのような発言は控えなさい!!」

 

 

教会へ戻ったシモン。扉を開けた瞬間チョークとロザリオが顔の横を掠めた。

恐る恐る中を見ると、満面の笑みで額に筋を浮かべてご立腹中のヨーコとシャークティがいた。

 

「でもね、何時間もあの光景を見せられたのよ? 一人身の私たちへの当てつけかしら? そもそもアンタが居眠りしてたのが悪いのよ」

「そ・・・それはそうだけど・・・だけど俺は・・・・」

「あ~もう、たかがチュウ一つで兄貴は中学生かっての。まあ木乃香は中学生だけどさ~、ネギ君なんて既にアスナと本屋ともやってるし、今日はゆえ吉とパルとまでしてんだよ?」

「いや・・・まあ・・・そうだけど・・・・・」

 

 

図書館島ツアーに行ったとき、中から顔を真っ赤にして逃げ出すネギとすれ違った。

何事かと思ったら夕映とハルナと半ばムリヤリ仮契約をさせられたようである。

ハルナは純粋にアイテム欲しさにやったようだが、夕映はネギにのどか並みの想いを寄せていることが発覚した。

 

親友との友情とその想い人へのほのかな想いの板ばさみに合い苦しんでいた夕映。

一歩遠慮するようになったのどか。

この二人の境遇はまったく今の刹那と木乃香に当てはまり、木乃香も涙ながら夕映にエールを送ったりしていた。

 

当然後から尾行していた刹那もこの出来事を知っていたため、何か思案しているようだったが、二人には気づかれなかった。

 

 

「いいんだ、俺は俺のやり方がある。まあ、・・・・たしかにキスの数でネギに負けてるのは少しショックだけどな・・・・」

 

「「張り合ってもしょうがないでしょ!!」」

 

 

10歳の少年に負けていることに関しては苦笑せざるをえなかった。

 

「はいはい、今日はこれまだで! とにかく明日に控えて今日は・・・・・・・ん?」

「?」

 

今日は色々なことがあった。武道大会だけでなく、超との駆け引きや喧嘩、木乃香の前進、アスナの失恋・・・様々な思惑を抱え、あとは明日を迎えるだけだと思っていた。

しかし教会の外に無数の気配を感じた。

 

「みんな・・・・・」

「ええ・・・・・」

 

急に真面目な顔つきになるシモンとヨーコ、どうやらシャークティも気づいたようである。外に感じる気配は人ではない・・・しかし敵意は感じる。

すると全員それぞれの武器を手に構えた。

 

「明日じゃなかったの? あの子とのデートは・・・」

「さあ、でも気持ちは分からなくも無いよ」

 

シモンたちは集まり、教会の扉に手を掛けた。

するとそこには地下で確認した大量のロボットたちが、教会の扉の前に立っていた。

ご丁寧に武器までその手に持っていた。

人型のアンドロイド、一見ただのゴツイ男にしか見えないが、同じ顔をした物が大量に要ればいくらなんでも作り物だと分かる。

屈強のボディと黒いサングラスを掛けたロボット軍団がゾロゾロと教会を囲んでいた。

 

麻帆良大学工学部のロボット兵器。T-ANK-α3(ティー エーエヌケイ アルファスリー)通称田中さん。

 

それを詳しく知るものはこの場にはいない。

ただ分かっているのはこのロボットたちは戦闘体制が整っていることである。

 

そしてその数は軽く100を超えていた。

 

「うわ~、なんだこりゃ!? 一体なんなんすかコイツら!?」

「落ち着きなさい美空、少なくとも迷える子羊たちではないようですね・・・・」

「地下にいたロボットダ・・・・・」

「ぶ~う」

 

額に汗掻きながら慌てる美空をシャークティが冷静になだめる、だがその顔つきはいつもとは違った。

今の表情は悪魔のヘルマンが訪れたときの厳しく冷たい瞳をしている。

どうやらシャークティもすでに臨戦体制のようである。

 

 

「きっとアイツは待ちきれなくて来ちまったんだよ。ほら・・・デートでワクワクしすぎて待ち合わせより早く来ちまうのと同じだ」

 

「なんだそりゃ!? 全然可愛らしさも欠片もねえっすよ~!」

 

「あきらめなさい、美空」

 

「美空、気合イレロ」

 

「だ~はいはい、やったろうじゃねえの!!」

 

 

ドリル、ライフル、ロザリオ、アーティファクト、それぞれの武器を身に纏い新生グレン団は構えた。

すると田中さんが無機質な機械声で口を開いた。

 

「ターゲット確認、直チニ捕獲シマス」

 

その言葉と共に他のロボットたちの目が光、向かってきた。

 

 

「気合のねえ声出しやがって! やれるもんなら、やってみやがれ!! いくぞ、みんな!!!!」

 

「「「「応(ぶう)!!!!」」」」

 

 

飛び出しロボット軍団に飛び掛るシモンたち。

雄雄しく、猛々しく、気合を叫び立ち向かっていく。

明日を待たずして、今ここに前哨戦が開戦した。

 

だがこの場に超鈴音本人はいなかった。

 

彼女は今、この大喧嘩を左右させるもう一人のキーマンと相対していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「超さん・・・・・」

 

「そんな怖い顔しないで欲しいネ、ネギ坊主。・・・楽しいお祭りが台無しヨ」

 

「誤魔化さないでください・・・・、全てを話してください」

 

 

世界樹広場の前で向き合う超とネギの二人。

ネギは超を睨んでいるわけではない。むしろ睨んでいるのは超のほうかもしれない。

超は笑顔でそれを悟らせないようにしているが、何も知らずにコアドリルを首から提げているネギを睨んでいるのは超かもしれなかった。

ことの始まりは超が出した退学届けから始まった。

もともとシモンと超との問題が気になっていたネギだったため、この行動には目を疑った。

しかし今すぐにでも聞き出そうとしたかったのだが、超の退学の話がクラス中に伝わってしまい、気づいたら超とのお別れパーティにまで発展してしまい、気づいたら夜遅くまでなっていた。

 

パーティで盛り上がったクラスメート達は今日一日の疲れからか眠りこけていた。

だがネギは決して眠ろうとはしなかった。

パーティの最後に言った超の言葉がとても気になったのである。

 

 

『私は未来から来たネギ坊主の子孫ネ♪』

 

 

大爆笑に包まれて終わった話題。だがネギには超の言葉が冗談には聞こえなかった。

それは魔法関係者の者もそうだった。

 

今この場にいるのはネギ、そして刹那、木乃香、夕映、のどか、ハルナ、楓、カモ、そして寝たふりをしながらも耳を傾けている千雨が真実を知るためにこの場にいた。

 

 

「超さん・・・さっきの話・・・アレは本当に・・・」

 

「はっはっは、あまりにも突飛過ぎると信じてくれないものネ」

 

 

いつものように冗談交じりで笑う超。

だが突然その笑顔が今までと違う笑顔になった。

 

「私は君たちにとっての未来、私にとっての過去、つまり歴史を変えるために来た、それが私の目的ネ」

「えっ? 未来? 歴史? 超さん、そんないきなり・・・・」

 

度肝を抜かれたのはネギだけではない、この場にいる全員が同じ顔をしている。

千雨などその言葉を聞いた瞬間寝ながら噴出してしまった。

だが今の超の表情はいつもの冗談交じりの顔ではなかった。

 

 

「世界樹の力を使えば可能ネ。・・・・・そんな力があれば・・・・ネギ坊主の不幸な過去だって変えることが出来るネ」

 

「!?」

 

「私の言いたいことが、分かるネ?」

 

 

突拍子の無い言葉。だがしかしその一つ一つがネギの言葉に響いた。

すると今まで黙っていた千雨が起き上がり口を挟んだ。

 

「つまり、テメエのやりたいことってのは、魔法を世界にバラすってことか?」

「千雨さん!?」

「落ち着くネ、ネギ坊主。既に千雨さんは武道会の時点で大よそ我々のことを気づいているヨ」

「えっ!? いつの間に・・・・・」

 

気づいたらクラスのほとんどが魔法を知ってしまったこの状況に顔がひきつってしまったネギだったが、それを無視して千雨がパソコンの画面を皆に見せた。

 

 

「武道会の出来事や、ここ数日の話題、ネギ先生の過去、魔法って単語がネット上で大流行してたんだ・・・」

 

「「「ええ~!?」」」

 

「そうだったん?」

 

「き・・・・気づかなかったです・・・・」

 

「まあ、今は影を潜めちまったがな・・・・でも、これがお前の仕業だとしたら全部に辻褄が合うんだよ・・・・」

 

 

自分たちの知らなかった出来事に唖然としてパソコンを覗き込むネギたち、すると超は千雨の言葉に小さく頷いた。

 

 

「その通り、私の目的は魔法使いの存在をこの世界にバラすことネ!」

 

「ああ~? んなもんバラしたら世界が大混乱だろうが! アニキたちまでオコジョにされちまうぞ!」

 

「そうです、一体何のためにそんなことを・・・・・」

 

「・・・・不服カ? 魔法使いの力が世に知られれば、君たちももっと大きく行動できる。より多くの人たちを救えるのではないカ?」

 

「えっ・・・・?」

 

 

ネギはその言葉が胸に残った。

そして超の言葉をまったく否定できなかった。

ただ呆然とその場に立ち尽くした。

すると夕映が何か納得したような口ぶりで、口を挟む。

 

「なるほど、そういうことでしたか・・・・」

 

「夕映さん?」

 

「昨日シモンさんが言っていた、超さんの行動は魔法使いたちにとっての利点になるかもしれない、・・・・それはこういうことだったのですね」

 

「・・・・その通りヨ、私は混乱を収める対策もすでにしてある。絶対にうまくいく。しかしシモンさんはそれを邪魔するネ・・・・」

 

 

夕映の言葉にようやく全員が理解した。

シモンが魔法使いとしての答えをネギたちに出せとはこういう意味だったのである。

そしてたしかにネギは頭から超の言葉を否定できなかった。

たとえば木乃香のような巨大な魔力と回復呪文が使えれば、多くの人を文字通り救える。

今の魔法使いは存在の秘匿を遵守して、影でわずかながらの助力しか使えない。それはたしかに困難である。

しかし超が言うように魔法がバラされた後の困難を防げるならば、・・・魔法が認められれば、・・・それはすばらし世界になるのではとネギの頭の中に過ぎった。

 

 

「しかし、過去を変える行為が許されるとは限りません・・・・・」

 

「ほう、興味深いネ、教えてくれないか夕映さん?」

 

「嬉しいことも、悲しいことも全て過ぎ去った過去なら受け入れなければなりません。人はその上に立っているのです・・・仮に超さんが過去を変える原因が世界の滅亡を防ぐためなどなら一考しなければなりませんが、そうでないなら・・・・」

 

 

全員黙ってその話を聞いていた。

ネギも超の言葉、今の夕映の言葉を頭に浮かべながらもう一度考える。

だが、その言葉を全て言い終わる前に・・・

 

 

「ぷっ・・・・くくく・・・」

 

「超さん?」

 

「あっはっはっはっは」

 

 

超は笑った。

その笑いは明らかに嘲笑だった。

明らかに夕映を小ばかにしていた。

すると超は腹を抱えながらネギたちを見る。

 

 

「それを夕映さん達が言う資格は無い。それを言っていいのはシモンさん、・・・グレン団だけネ」

 

「な・・・なにを「それに!」・・・」

 

「もう遅いヨ、現にネギ坊主はその存在を知りながら何度もタイムマシンを使ってる。ネギ坊主たちが歴史の改ざんを否定することは不可能ネ」

 

「「「「!?」」」」

 

 

超はネギに向かって指を指し、ネギは慌てて懐にしまってあったカシオペアを取り出した。

そしてそれの力を知る皆がそれに注目した。

超から手渡されたタイムマシン、その意味がようやく理解できた。

 

「なるほど、ようやく分かったぜ、シモンの旦那が言っていたテメーの先手、そして何でシモンの旦那が俺っちたちを拒んだのか・・・」

 

カモの言葉を聞いて超はニヤリと笑った。

 

 

「つまりシモンの旦那がテメーと戦うのは『魔法使いの存在をバラす行動』についてじゃない、『過去を変えるという行為』だ。だからタイムマシンを既に何度も使った俺っちたちを仲間にすることが出来なかったんだ」

 

「ウム、正解ネ♪」

 

 

カモの言葉を聞いて皆ハッとなった。そしてようやく全ての謎が解けたことに気づいた。

目的が違うから仲間になれない。それがシモンの想いだったのである。

そして全てはそうなるように仕掛けた超の罠だった。

既にどうしようもない事態に刹那たちは悔しそうに唇を噛み締めながら超を睨んだ。

 

「そう、シモンさんは絶対に使わない・・・・それでどんなに救われると分かっていても、時計の針を戻そうとはしない・・・・」

 

今戦いの最中であろう、教会の方角を眺めながら超は呟いた。そしてもう一度ネギたちを見た。

 

 

「ところでネギ坊主、それに木乃香さんたちも、シモンさんシモンさん言ってるガ、シモンさんのことを・・・グレン団のことをどこまで知っているネ? 実はあまりよく知らないのではないカ?」

 

「えっ? シモンさんのこと・・・・それなら知っています!」

 

「そうです、これまであの人と行動して、そして昨晩あの人の話を全て聞きました!」

 

 

超の言葉にカチンと来た刹那も顔色を変えて、超に食いかかる。

そしてネギはシモンの話を超に向けてする。

 

 

「シモンさんは・・・・こことは違う世界の人間です・・・・」

 

「ウム・・・それで?」

 

 

なぜ超まで知っているのか分からないが、ネギは話を続ける。

途中知らなかった千雨とハルナがポカンとするが、ネギは昨晩教えてもらったことを説明していく。

 

地下の世界、地上への憧れ、カミナのこと、ガンメンのこと、グレン団、獣人、螺旋王、そしてグレンラガン、

 

 

「そしてその四天王との戦いでカミナさんは命を落としました・・・・でもその想いを受け継ぎ明日へ向かいました。その後はよく知りませんけど、シモンさんたちはきっと螺旋王を倒して地上を手に入れたんでしょう・・・・・」

 

「フム、・・・それで?」

 

「それでって・・・・ですから地上を取り戻してシモンさんたちは・・・・「やはりネ」・・・・超さん・・・?」

 

「思ったとおりネ、どうやらネギ坊主たちが知っているのはほんの序章ネ」

 

「えっ!? ど・・・どういうことなん?」

 

 

フンッと鼻を鳴らしながら超は告げる。

 

 

「螺旋王ロージェノムを倒し、地上を手に入れてから7年後、そのとき人類の・・・大グレン団の本当の戦いが始まった・・・」

 

「「「「!?」」」」

 

 

超の言葉に衝撃を受けるネギたち。

すると超はネギの首からぶら下がっているコアドリルを指差した。

 

 

「武道会でシモンさんは叫んだはずネ、それに眠っているのはカミナさんだけの魂ではないと」

 

 

そう、シモンは自分たちの知らない人たちの名前を大勢叫んでいた。

美空の話によればグレン団のメンバーの名前であるというのは分かった。

そして何故か螺旋王の名までシモンは叫んでいた。

 

 

「本当の戦いで多くのグレン団は散った・・・・そして最後には・・・・シモンさんの最愛の人・・・ニア・テッペリンという女性も・・・・」

 

「ニアさん!?」

 

「どういうことだ、超鈴音! 貴様、何を知っている! なぜニアさんのことを・・・・それに本当の戦いとはなんだ!? シモンさんたちの戦いは獣人との戦争ではなかったのか!?」

 

 

ニアの名前に木乃香と刹那は激しく動揺した。

そしてシモンが語らなかった真実を何故超が知っているのか、疑問が絶えなかった。

それはネギたちもそうだった。

結局試合の後は忘れたが、グレン団のメンバーで死んだのはカミナだけかと思っていた。

なぜシモンはカミナを殺した敵の親玉の名まで叫んだのか。

そしてよくよく考えれば、何故ニアという女性は死んだのか。

その全ての疑問の答えを超鈴音は知っていた。

訳が分からずネギたちは超の言葉を待つ。すると超はため息をついた。

 

 

「と言っても重要なのはそこではないネ。そのことについては改めてシモンさんに聞けばいい」

 

「えっ? どういうことですか・・・」

 

「シモンさんたちの本当の戦い、しかしそれはすでに終結した話。別に知ったからと言って所詮は異世界の出来事。ネギ坊主たちが気にすることではない。別にシモンさんも内緒にしてるわけではないと思うヨ。・・・・ただ・・・」

 

「ただ・・・なんなんです?」

 

「カミナさんを含めて、明日を手にするためにグレン団たちは命を燃やした。そうやって掴んだ明日だからこそ、シモンさんの今日はいつだって重い」

 

 

シモンが言っていた明日へ向かうという言葉、カミナや二アを失ったことを悲しむことはあれど、それでも懸命に明日へ向かう。その本当の意味を超もようやくシモンと直接出会って知ることが出来たのである。

 

 

「夕映さんの言葉を借りるなら、シモンさんは過去を受け入れ前へ進んでいる・・・・仮に・・・・タイムマシンを持っていたとしても・・・・死者を生き返らせる力があっても・・・・使わない・・・それがシモンさんネ・・・。私も・・・あの人と話、最近になってそれを知ったヨ・・・・」

 

 

シモンの過去で分からないところがあるのは相変わらずだった。

しかし今の説明だけでシモンの信念、そして自分のやってしまった行為、それらをネギも理解した。

タイムマシンを手にした時自分が言った言葉、「これで一日を何度もやり直せばいいんだから」それを思い出した。

 

「だから・・・・今日を軽んじてしまった僕とは一緒には戦えない。 ・・・超さんの計画に賛成するか反対するかでしか・・・僕は動く資格は無い・・・そういうことですか?」

 

超はコクリと頷いた。

そして誰も反論することが出来なかった。

なぜならシモンの信念はこれまで多くの戦いと出来事を乗り越えて導き出したもの。

それを今の駆け出しの自分たちが何かを言えるものでもない。

そして目の前にいる超鈴音もそうである。

自分たちでは想像も出来ないような過去を送ってきたのかもしれない。

過去を変えようなどと大それたことはそうでなくては思いつかない。

そして何よりシモンという男が敵になると分かっていながら実行しようとしているのである。

シモンと同様に超鈴音も揺るげない信念の元に動いている。

そのためどちらが正しいのか正しくないのかなど、分かるはずも無かった。

 

 

「そう、過去の改ざんだとか歴史がどうのとかネギ坊主たちに言う資格は無い。ネギ坊主たちが動けるとしたら魔法をバラすことに賛成か反対か、これだけヨ。・・・そしてネギ坊主も分かっているはず。魔法が広まる世界を否定できないことを・・・・」

 

「ですが・・・・そのために・・・・」

 

 

そのためにシモンと戦うのか・・・・あまりにも重過ぎる選択にネギはどうしようもなかった。

答えなど、出るはずが無いのである。

シモンは自分たちの信念を押し付けたくないから、ネギに魔法使いとしての答えを出せと言った。

だがどうせなら押し付けてほしかった。

それは昨晩シモンと話した彼女たちも同じであった。

そうすればこんな重い選択などする必要も無かったのである。

答えが出ずに押し黙るネギたち。

今、答えが出るはずも無いのは超も承知の上である。

 

 

「否定も賛成も出来ないなら、黙って結末を見ているネ・・・・」

 

 

超はその一言だけを呟きネギたちに背を向ける。

 

「超さん、・・・・どこに・・・・・」

「ふふふ、私もネギ坊主に構ってばかりいられないネ。敵は少なくとも強敵だからネ・・・・・・それでは、また!」

「まっ・・・待ってくだ・・・・」

 

ネギたちに教えることは教え、超鈴音は姿を消した。

その姿が消えても、誰一人口を開くことが出来ずに、しばらくネギたちは少しその場に立ち尽くしていた。

 

(ウム、まあこれで少しは牽制になったようネ。シモンさんが意外にフェアで助かたヨ)

 

超の懸念はシモンの言葉でネギが簡単にシモンの仲間になることだったが、少なくともそうなりそうにないので少し安心した。

 

(出来れば仲間になって欲しかったガ・・・この様子だとどう転ぶか分からないネ・・・・ならばネギ坊主たちには悪いが、強制的にこの戦いからは退場してもらおう。そのためにカシオペアに罠をしかけておいたのだから・・・・。)

 

超は立ち去った場所を振り返りながら思案する。

それは超の仕掛けたもう一つの罠だった。

 

(カシオペアにあらかじめ時限式の罠を仕掛けて置いた・・・これでネギ坊主たちは強制的に明日を迎えることなく、学園祭の終わった・・・私たちの戦いの終結した後の未来へ行ってくれる・・・少なくともこれで邪魔はなくなるネ)

 

それがシモンたちも知らない超のもう一つの手だった。

ネギが仲間になれば解除する予定だったが、今の様子だとどう転ぶか分からない。

そのためネギたちを強制的に戦いの場から外すことにより、自分はグレン団のとの戦いに集中しようとしていた。

 

「さて、アッチはどうなったかな? そろそろ茶々丸がアレを動かし教会へ到着するころ・・・・シモンさんたちはどんな反応をするか楽しみネ」

 

だが、超鈴音は知らなかった。

そしてネギも気づいていなかった。

 

カシオペアに既に異変が起こっていることに、まだ誰も気づいていなかった。

 


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