魔法はお前の魂だ(魔法先生ネギま✖天元突破グレンラガン)   作:アニッキーブラッザー

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第6話 逃げてちゃ何も掴めないぞ!

「なあ、そろそろ落ち着いたか?」

 

シモンは先ほど出会った、隣に座る子供に話しかけた。

少年は森の中で迷子で泣いていたが、シモンと会えてほっとしたのか、徐々に落ち着きを取り戻していった。

 

「は・・・はい。すみません、助かりました。」

 

ようやく少年は口を開いた。

 

「僕の名前はネギ、ネギ・スプリングフィールドと言います」

「そうか、俺の名前はシモン、よろしくなボウズ!」

 

まず簡単な自己紹介をし、シモンは疑問をぶつけてみた。

 

「ところでオマエ、あそこで何やってたんだ?」

 

しかしその質問を聞いた瞬間、

 

「う~~~~」

 

ズーン、と重たい空気を背負い、明らかにネギは落ち込んでしまった。

 

(あっ・・・あれ?ひょっとしてマズかったか?)

 

自分は地雷を踏んでしまったのかと思ったシモン。

一方でネギの心の中はどんどんネガティブになっていった。

 

(僕はなにをやってもダメダメで・・・・挙句の果てにこんな所まで逃げてきて・・・大切な杖までなくして・・・)

 

もはや完全に落ち込んだネギを見てシモンは急に「よしっ」と立ち上がり、

 

「ボウズ穴掘りをやったことがあるか?」

 

と聞いてきた。

シモンの質問がいきなりで急に何のことか分からずに戸惑ってしまったネギだったがとりあえず、

 

「あ・・穴掘りですか?・・い・いえやったことありませんけど」

 

ネギの答えにシモンは珍しそうな顔で言葉を続けた。

 

「なんだ、やったことないのか?俺はガキの頃から毎日掘っていたぜ」

 

そういってシモンは自分の手に持っていたドリルをネギに見せた。

一度もドリルを見たことなかったネギにとってはそれが一体何なのかは分からなかった。

しかしそんなネギにシモンはドリルを手渡し、辺りを見回し一つの大岩を見つけ、

 

「ボウズ、それであの大岩を掘ってみろ!」

 

と言い出した。しかしシモンの言っている意味が分からずネギは、

 

 

「えっ!?こ・・これで掘るんですか!?そんなの無理ですよーーー!」

 

とにかく、ネギは無理と決めつけた。

 

(こんなもので、あんなおっきな岩どうすることもできないよ~、いきなり何を言い出すんだろうこの人・・・・)

 

自分やシモンの身体をはるかに上回る大岩を魔法も使わず掘れと言うんだ。

無理に決まっている。ネギはそう思っていた。しかし

 

「こら、ボウズ」

「いたっ!?何するんですか~!?」

 

うじうじしていたネギの額に、シモンのデコピンが炸裂した。

 

 

「おいボウズ、やらなければ確かに無理だけど、もしやったらどうにかなるかもしれないぜ」

 

「えっ?」

 

 

ネギはドキッとした。

まるで自分が逃げ出してきたのがバレたのかと思って。

 

「まずやってみようぜ!やれば、少しでも前に進める、逃げてちゃ何も掴めないぞ!」

 

シモンの言葉が急に胸に響いてきた。

自分はクラスの教え子との問題を何も解決しないまま逃げ出し、勝手に迷子になってここにいる。

でも、今、逃げては何も掴めないという言葉を受けて、何かがネギの心の中で起こった。

 

「・・・・わかりましたシモンさん、僕やってみます」

「よし!そうだ男は気合でやってみろ!」

 

ネギはシモンからドリルを受け取った。

それは思いのほか重く、ずっしりとした質量を手に感じた。

ネギは少しよたよたしながらドリルを構え、大岩を突いてみた、しかし、

 

「エイッ!」

 

ドリルは突き刺さることもなく、大岩に弾かれた。

 

「ア・・・アレッ?・・・もう一度・・・エイッ!」

 

試しにもう一度やったが無理だった。

大岩はネギの突いたドリルを跳ね返し、びくともしなかった。

 

「う~やっぱりこんなのじゃ無理だよ~」

 

それでも、言われた通りに何度か挑戦したが、一向に成果が見られず、ネギはまたすぐに弱気になった。

 

「シモンさ~ん、やっぱり無理ですよ~」

「あ~力の入りすぎだな~、よしっ手本を見せてやる」

 

そう言うとシモンはネギからドリルを受け取り、ネギが挑戦していた岩よりもはるかに大きな岩に立ちドリルを身構えた。

これにはネギも驚き、

 

「ちょっ!?シモンさんそんなおっきな岩、無理ですよー!この岩よりずっと大きいじゃないですかー」

 

だが、そんなネギの静止にシモンはニカッと笑って

 

「まあ見てろ、ほら」

 

シモンがドリルを高速で回転させ大岩を突いた。

 

「えっうそっ?!」

 

するとシモンのドリルは瞬く間に大岩に穴を開けた。

その穴はまるでトンネルのように人が通ることが出来るほどの穴だった。

岩を砕かずにこれほどの芸当をするシモンの技術にネギは唖然とした。

そしてネギは目をキラキラ輝かせてシモンに駆け寄った。

 

「すごいですよーーーーシモンさん!!まるで魔法みたいですよーーー!」

「んっマホウ?・・・まっでもそんな難しいことじゃないんだ、ほらオマエも少し力を抜いてやってみな!」

 

魔法という言葉に少し引っかかりを覚えたシモンだが大して気にせず再びドリルをネギに手渡した。

するとネギはさっきまで落ち込んでいた姿とは打って変わって、やる気を出しドリルを受け取った。

 

「はい頑張ります!」

 

ドリルを手にし先ほど挑んだ大岩にネギは挑戦した。シモンのアドバイスも受け入れ、ドリルを岩に突いた。

すると、今度は弾かれず、今までと違う結果になった。

-

「あっ」

 

シモンとは比べ物にならない。が、それでもネギのドリルは先ほどまでとは違って、岩を削っていった。

 

「シモンさーん見てください!さっきよりうまくいってますよーー!!」

 

うまく言ってるのがうれしいらしく、ネギははしゃぎながらシモンに言った。

シモンもまたそんなネギの反応が嬉しいようで親指を上に突き上げ、にっこり笑ってネギに向けた。

 

「ああ、少し前に進んだな」

 

朝に部屋を飛び出し、時刻はもう夕方になっていた。

ネギの服や顔はもう泥だらけになっていた。

しかしその表情は最初シモンと出会った頃とは全く逆で、満面の笑顔だった。

 

「シモンさん僕も出来ましたよーー!!」

 

時間は掛かったが、ネギもようやく大岩に風穴を開ける事ができ、シモンに駆け寄った。

そんなネギの頭をシモンはクシャクシャと撫で、

 

「ああ!やれば出来るじゃないか、ネギ!!」

 

いつの間にかネギへの呼び方が変わった。

それはまるで自分が認められたような気がしてネギはさらにうれしくなった。

 

「なあネギ」

「はいシモンさん」

「ドリルは廻した分だけ前に進む、でも廻すのをやめたら一歩も前に進まない・・・・」

 

突然真剣な声でシモンが話しかける。

ネギはシモンの話を黙って聞いた。

 

「人間だって同じだ、足掻くのをあきらめたら一歩も前に進めない。ネギ・・・オマエがどんな困難に打ちのめされたのか俺は知らない・・」

 

シモンは何となくだがネギがただ迷子で泣いていたわけではないことを見抜いていた。

 

 

「でも、足掻いて足掻いてジタバタすれば、少しだけ前に進める、無理かどうかを決め付けるな!無理を通して、道理を蹴っ飛ばせ!!」

 

 

胸が熱くなった。

今日始めて出会った男の言葉をネギは噛み締めた。

今までこんなことを言ってくれる人は誰も居なかった。

魔法学校を首席で卒業し、教師としての課題もいくつもこなしていき、順風満帆に思えた矢先に訪れた挫折、簡単に逃げ出した自分がすごく恥ずかしかった。

ネギは真剣なまなざしをシモンに向け

 

「はいっ!!ありがとうございますシモンさん!!」

 

力強く答えた。

 

「僕も自分に出来ることを全力でやってみます。そして無理を通して自分自身の問題に打ち勝って見せます!!」

 

答えは出た。逃げずに立ち向かう。

答えにたどり着いたネギにシモンはニッと笑って頷いた。

 

「ああ、男は気合だ!」

 

そう言ってシモンはネギに親指を上に突き上げた、するとネギもまた自分の親指をシモンに向けて突き上げた。

 

「はいっシモンさん!僕行きます!」

 

そしてネギは森の奥へと駆け出した。

 

 

シモンと別れネギは精神を集中させ自分の杖を探した。

 

森に落ちた時には見つけることは出来なかった、しかし今は違う、ネギは再び立ち直ったのだから。

 

見つけた。ネギは魔力を使い、自分へ杖を引き寄せた。

 

すると自分をめがけて杖が飛んできた。

 

 

「ありがとう僕の杖。そしてシモンさん。僕がんばってみます」

 

 

ネギは杖にまたがり夜空を駆け出した。再び自分の居場所に戻るために。

 

 

 

 

 

「そうかー、ネギもマホウ使いとかいうやつだったんだな~」

 

離れたところから飛んでいくネギを見てシモンは呟いた。

 

 

「マホウ使いってけっこういるのかな?・・・それにしても・・・ふふふ」

 

 

シモンは急におかしくなった。ネギの姿が昔の自分に重なったからだ。

シモンもかつて何度も弱音を吐いたがその度に自分の弱音を吹き飛ばしてくれた人が居た。

 

「アニキ・・・・・・・・さてっ!そろそろ俺も帰るか」

 

シモンも新しい世界に出来た新しい自分の家に向かって帰った。

この時シモンは分からなかった。

 

自分の家となった教会と、阿修羅と化したシスターと鉢合わせすることを。    

 


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