魔法はお前の魂だ(魔法先生ネギま✖天元突破グレンラガン)   作:アニッキーブラッザー

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第5話 上を向いて歩けボウズ!

早朝、まだ日が完全には昇りきっていない中、一人の少女が教会に向かっていた。

 

「ふあ~~あ、昨日は遅かったから、眠いな~~」

 

目を擦りながら歩く少女、美空。

彼女は普段は学園の寮に住んでいるが、毎朝礼拝堂の掃除が日課となっているため、

眠さを堪えながら向かっていた。

教会にたどり着いた美空だが、すでにそこには自分のパートナーとも言うべき幼い少女が入り口の前に立っていた。

 

「おっはよーココネ」

 

元気よく挨拶をする美空。

美空に少女は気づいたが、大して顔色を変えることなく

 

「オハヨウ、ミソラ」

 

簡単に挨拶を返す。

これはいつもの事なので、美空もたいして気にする様子も無かったが、ココネの胸に抱かれている小さな動物に目が行った。

 

 

「おっ!ブータもおはよう!アンタらすっかり仲良くなったのね~~」

 

「ぶひー」

 

「ナカヨシッ」

 

 

ブータも「おはよう」と言っているかのように美空に向かって鳴いた。

美空もココネとブータが仲良くなったのが、少し嬉しかったようで、笑みを浮かべた。

 

 

「よっかったね~~あっ!ところでシスターシャークティとシモンさんは?」

 

「「びくっ」」

 

「えっ?・・・・どったのさ?」

 

 

美空の質問に明らかに体を震わせた二人、その二人の様子に美空は首をかしげた。

するとココネが教会の中を指差し

 

 

「怒られテル」

 

 

静かに答えた。

その答えに美空はわけが分からず、ココネの指差す教会のドアをゆっくり開けてみた。

すると中からは教会とは考えられないほど、怒気を孕んだ空気が漂っていた。

 

――――ゾクッ

 

「なっ!?なんなのさ・・・・あっ」

 

 

教会の空気に驚いた美空は何かに気づいた。

そこには礼拝堂の真ん中で正座するシモンとシモンの目の前で仁王立ちするシャークティがいたからだ。

美空は慌てて尋ねた。

 

 

「ちょっ・・ちょっとシスターシャークティ!シモンさん!何やってんのー!?」

 

「ふっふっふっ、美空オハヨウございます」

 

「あっ・・・・・み・・・・美空・・おっ・・・おはよう・・」

 

 

笑顔で美空に挨拶するシャークティ。

しかしその笑顔はまったく笑っていなかった。

少しビビッた美空は目をそらすように正座している男を見た。

そして美空は気づいた。

シモンの顔には昨日まで無かった、まるで殴られたかのような傷がいっぱいあったのだ。

 

 

「ちょっとシモンさん!その傷いったいどうしたのさ!!」

 

「今・・・そのコトについて、お聞きしているところです。」

 

 

シモンの代わりにシャークティが答える。怒った笑顔を崩さぬように。

 

昨日の戦闘の後、ブータの努力もあって、なんとか教会の自分の部屋までたどり着いたシモンは死んだように爆睡した。

朝になっても、まったくシモンが起きてくる気配が無かったため、シャークティは男の部屋に入るのは少し恥ずかしかったが、意を決してシモンの部屋に入り、そして驚いた。

 

開いたままの状態になっている部屋の窓。

そしてボロボロに倒れているシモン。

さっきまでの恥ずかしさはどこかに消え、その代わりこめかみに血管が浮かび上がった。

 

 

「あっ・・・あなたは・・・」

 

 

少し間をおいて、

 

 

「何をやってたんですかーーーーーーーーーー!!!!」

 

 

その怒号とともにシモンは飛び起きそして今に至る。

 

 

「ふう・・シモンさん、私は昨日あなたにゆっくり休むよう言いましたね」

「あ・・・うん」

「お医者様にも言われたように、あなたには心の休息が必要です。そんなあなたに私は少しでも力になりたい!そう思い、あなたを教会へ招きました・・・・」

「う・・うん、すごく感謝している」

 

正座のまま返事をするシモンと、シャークティの話を黙って聞いている美空。

 

「な、の、に、あなたは人の好意を無下にし、部屋を飛び出し、挙句の果てに大怪我までして帰ってくる・・・・・・・」

「ごめん、本当に反省している」

 

シモンのその言葉にシャークティはとうとう声を荒げた。

 

「どれだけ心配させるのですか!!こんな大怪我までして、いったい昨晩何があったのですか!?」

 

シャークティの質問、美空が来る前から実は同じことをずっと繰り返している。

なぜなら、明らかに殴られたり蹴られたかのような傷跡に対してシモンは「外に出て転んだ」の一点張りだったからだ。

 

(昨日のアイツらは、自分たちはマホウ使いと言っていた。マホウが何か知らないけど、アイツらはきっと、この世界でも少し特殊な奴らだ、シャークティ達を巻き込むわけにはいかない・・・)

 

昨晩の魔法との遭遇、シャークティ達を巻き込まないようにシモンは苦しい嘘をつき続けた。

もっともシャークティも美空もココネもバリバリ魔法の関係者なため、嘘を言う必要は無いのだが、シモンがそのことを知るのはもう少し後。

 

 

「とにかくっ!」

 

 

突然正座から立ち上がったシモン。

 

 

「俺は絶対これ以上皆を不安にさせたりしない、大丈夫!俺を信じてくれ!」

 

 

シモンの言葉にムッとするシャークティ。

 

「だ、か、ら、それが心配なんです!そもそもまだ私たちはあなたのこともよく知らないのですよ!」

 

するとシモンは人差し指を上に突き刺し、シャークティに言う。

 

 

「大丈夫、俺を信じろ!俺を誰だと思っている!」

 

「ッ、だから!!誰か分らないと言っているんですよーーーーー!!」

 

結局罰としてこれから毎朝、美空たちと礼拝堂の掃除をすることになったシモン。

まだ彼が何者かは誰も知らない。

 

 

 

 

 

 

「気合・・・・気合・・・・気合」

 

同じ言葉を繰り返しつぶやくロボット。

ここは学園、自分の席でつぶやく茶々丸に誰かが話しかけてきた。

 

「茶々丸~、どう?からだの調子は?」

 

話しかけてきたのはこの学園でも有名なマッドサイエンティスト葉加瀬だった。

 

「ハカセ、昨日は夜遅く申し訳ありませんでした。体はなんともありません」

 

葉加瀬の質問に答える茶々丸。

どうやらシモンにやられた傷は昨日のうちに直したようだ。

 

「それはよかった、それほど大きな傷じゃなかったからね~、まっ、何があったかは聞かないけど・・・」

 

葉加瀬はとりあえず調子を尋ね、その後、

 

「で、何考えてたの?」

 

朝からボーっとしている茶々丸に尋ねてみた。

すると茶々丸は予想もしない事を聞いてきた。

 

「ハカセ、気合とは何ですか?」

「えっ?キアイ・・・・気合?」

 

思わず聞きなおしてしまった葉加瀬。

茶々丸はさらに続けた。

 

「はい、昨日私には気合が無いと言われました・・・・葉加瀬、気合をプログラム出来ますか?」

「えっ・・・ロボットに気合って・・無いのはあたりまえよ・・・・誰かしらそんなことを言った人・・・・茶々丸に気合・・・・」

 

以下、葉加瀬脳内妄想

 

 

「マスター!!ここは私にお任せを!!」

 

「よしっ!ここはオマエに任せたぞ」

 

「はあーーーーーーーー!!私の魂とエネルギーをこの一撃にかける!!この学園を脅かすものはこの茶々丸が許しはしません!!くらえ!○○○○○ビーム!!」

 

――――ちゅっどーーーん

 

「うむ、でかしたぞ茶々丸」

 

「キャーーー茶々丸かっこいいーーーー!」

 

「この学園はこの私が守ります!!」

 

 

以上、妄想終了。

 

 

「う~~ん、少しいいかも・・・・」

 

 

気合を入れて敵と戦う茶々丸。ありかもしれない、と想像した葉加瀬。

しかしそんな葉加瀬の妄想を邪魔するようにエヴァが話しかけてきた。

 

「くだらんことを考えるな」

「あっエヴァンジェリンさん」

「マスター、学園長の話は何でしたか?」

「桜通りのことを感づかれて釘を刺された、次の満月まで派手に動けん」

 

つまらなそうに言うエヴァ。

 

「ハカセ、茶々丸と話があるので向こうに行ってろ」

「はいはい、わかりましたよ~」

 

エヴァの言葉に葉加瀬はあっさり従い、その場から離れた。

葉加瀬が離れたのを見てエヴァは言葉を続けた。

 

「まあ、ぼーやのことはしばらくは大丈夫だろう・・・問題は昨日の気合バカの男だ」

「マスター、もう一度検索しましたがシモンという人物、彼の言っていたダイグレンダン、どちらもヒットしませんでした」

 

「ふむっ」とあごに手を当て考える仕草をするエヴァに茶々丸が質問した。

 

「学園長に報告は?」

「するわけないだろ、つまらんからな」

「つまらない?」

「奴はこちらで片付ける・・・・・私は・・・・」

 

そう言うと少しエヴァは悲しみの表情を浮かべたがすぐに怒りの表情を浮かべ

 

 

「ああいう口だけのバカな男は死ぬほど嫌いなんだ!」

 

怒りの籠った言葉だったが、しかしその直後に……

 

(くっ・・・何が気合だ・・・それに・・・・なぜあのバカを思い出す・・・)

 

エヴァは再び悲しみの表情を浮かべた。

その心にはかつて自分の前から居なくなった赤い髪の魔法使いを思い出していた。

 

 

 

 

 

 

魔保良学園女子寮の一室にて、女と子供と一匹のオコジョが会議していた。

 

「兄貴!エヴァンジェリンってのはホントにやばいぜ!」

 

しゃべるオコジョ、カモミールことカモは言う。

そんなカモの忠告に、ようやく登場した学園一の有名人ネギは答える。

 

「う~ん、で・・でもエヴァンジェリンさんも茶々丸さんも僕の生徒だし・・・」

 

弱気だがネギの意見に明日菜も賛成のようで

 

「確かにねー、2年も二人とは同じクラスだったし、命まで狙うなんて・・・・・」

「なーーに悠長なコト言ってるんすか!!あのエヴァンジェリン調べたんすけど、なんと600万ドルの賞金首だったんですぜ!」

 

二人の意見にカモは全面的に否定し、エヴァンジェリンの賞金リストを見せた。

これには明日菜も驚愕し

 

「ちょっ・・なんでそんなのがクラスにいるのよーー!?」

 

今までそれほど話したことがあったわけではないが、自分のクラスメートが超高額の賞金首であったことに明日菜は信じられなかった。

そんな明日菜に追い討ちをかけるように

 

「そうですぜー、やつらが本気を出したらヤバイっすよ!姐さんや他の寮内のカタギの連中まで・・・・・」

「うっ・・・・・うわーーーーーーーーーーーーん」

 

その時だった。

急に黙っていた子供が泣き出してしまった。

カモの話を最後まで聞くことをせず、ネギは窓から逃げ出し飛んでいってしまった。

 

「なっ!?ネギーーーーーーーーー!?」

「兄貴ーーーーーーーーーーーーーっ!?」

「「・・・・・・・・・」」

 

突然のネギの行動に驚いた二人。

明日菜はその元凶たるカモを乱暴に手で握り締め、

 

「あんたが余計なこと言うからーーーーーーーーーー!!」

「まっ・・・・まってくれーーーー、とにかく兄貴を追いかけなければ」

 

ぎゃーぎゃーカモに怒鳴りつける明日菜。

しかしその間にどんどんネギは麻帆良から離れていく。

 

 

 

 

泣きながら飛び出したネギは当ても無く杖に乗って飛んでいた。

 

 

「僕のせいで皆に迷惑を・・・・・・どこか遠いところに逃げなくちゃ・・・でも、僕はどうすればいいんだろう・・・・」

 

空の上でどんどんネガティブになっていくネギ、だがそれがまずかった。

前もよく見ずに飛んでいたネギは前方にある木に気づかなかった。

当然、

 

「あっ!?しっ・・・しまったーー!ぶつかったーーーおっ・・・落ちるーーーー」

 

ネギの不注意により木にぶつかりなんとネギは落ちてしまった。

しかしこの失敗のおかげでネギは運命の出会いをすることを知らない。

 

「・・・・・・うっ・・・・・ここは・・・・あっ!」

 

どうやら森の中に落ちてしまったようだ。

まったく知らない場所に慌てたネギは、更にまずい状況に気づく。

なぜなら先ほどまで自分が持っていた、魔法使いの必需品を持っていなかったからだ。

 

「あっーーーーーーー!?つ・・・つ・・杖が無い」

 

杖が無ければたいした魔法も使えないネギは、この事態の深刻さを理解した。

 

「どっ・・・どうしよーーー!あれがないと僕帰れないよーーー」

 

もはや完全に10歳の子供になってしまったネギはただただ泣き叫んだ。

あたりは一面森に囲まれている。

動物の鳴き声や深い茂みがネギを更に不安にさせる。

 

 

「あわわわわ、助けてー・・・・・うっ・・・・お姉ちゃ~ん・・アスナさ~ん・・・」

 

 

もうネギにはどうすることも出来ず、ただその場で泣きながら森を歩いた。

その時だった。

下を向いて歩いていたネギはまた前方にある何かにぶつかった。

 

「うわっ!」

 

ぶつかった反動で後ろによろめき、尻餅をついたネギ。

そこでぶつかったほうから声が聞こえた。

 

 

「上を向いて歩けボウズ!」

 

「えっ?・・・・・・」

 

 

これがシモンとネギの出会いだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

それは、シモンにとって、ほんの少し前のことだった。

 

「しばらく学園歩くの禁止?」

「そうです」

 

シャークティの言葉に思わず聞き返すシモン。

 

「えっ・・なんで駄目なんだ?」

 

シモンの疑問にシャークティは答える。

 

「あなたはこの学園ではまだ顔が知られていません。ですからそんな人物を学園内でうろつかせるわけにはいきません」

 

それはまるで「当然です」と言わんばかりの言葉だった。

シモンも何度も世話になっているシャークティにこれ以上迷惑をかけるのも気が引けたため、

 

「わかった、学校をうろつくのはやめるよ」

 

あっさり承諾した。

シモンにシャークティはニッコリ微笑んで、

 

「理解いただけてよかったです。あなたの体がもう少し良くなったら、この学園を案内しますよ」

 

シモンは精神が不安定という設定にされてるため、シャークティもシモンの体を気遣い、今は体を休めることを薦めた。

 

「では私は仕事がありますので、少し出ます。教会にあるものは自由に使っていただいてかまいません、それでは」

「ああ、じゃあまた後で」

 

シャークティはシモンに告げ部屋から出て行った。

自分の言葉に素直に従ったシモンはシャークティを安心させた。

わけの分からないことを言い出したり、大怪我して帰ってくるシモンに、シャークティは気が気じゃなかったが、ようやく自分の言うことを聞いてくれたのだと思いうれしく思った。

 

(このまま徐々によくなっていけばいいですね・・・・・・ふふっ、もう少ししたらシモンさんを外に連れて行ってあげましょう♪)

 

機嫌よく歩いていたシャークティだがハッとした

 

(お、男の人と外で・・・・・こ、これってまさか・・デ・・デデ・・デートでは・・・)

 

その瞬間シャークティは顔を真っ赤にして頭を抱えながら顔を横にブンブン振った。

 

「なななな、いいえ、わ、わ、私はシスター!か、神に仕える者です、なんてふ、ふふ、不埒な・・・」

 

顔を真っ赤にしながらブツブツ独り言を言っているシャークティ。

しばらく同じことを繰り返していた。

 

 

一方あんなことを言っていたが、この男に窮屈な暮らしは無理なわけで・・・・

 

「学園以外のところなら、シャークティも迷惑しないだろう」

 

こんなことを考えているわけで・・・

 

「よしっブータ!この街の外に行ってみよう!」

「ブヒー!」

 

結局、こうなるわけだ。

 

 

 

 

 

 

「驚いた!こんな山に囲まれた場所があったなんて」

 

学園を飛び出して、シモンは深い山に囲まれた森の中にいた。

思えば久しぶりに触れ合った気がした。

 

「俺たちのいた世界ではこういう場所がいっぱいあったからなー」

 

この世界に来て最初の夜。

シャークティ達に会い、魔法使いと戦い、その怪我でしばらく部屋に閉じ込められていた。

しかしこういう自然と一緒にいるほうがシモンにとっては落ち着く。

シモンはとくに目的も決めず森の中を歩いていた。

 

すると子供の泣き声が聞こえた。

 

その声に気づき、辺りを見回すと、向こうから子供が下を向いて泣きながらこっちに歩いてくる。

どうやらこっちには気づいていないようだ。

 

ふとシモンは昔を思い出した。

 

 

あれは自分がまだ小さかった頃、下を向いて歩いてた時・・・・・

 

「上を向いて歩けシモン!」

 

そこにいたのは、いつだって、でかかったあの男だった。

 

「カ、カミナ・・」

「カミナじゃねえ!兄貴って呼べ!」

 

 

 

 

 

 

 

「ははは。俺みたいだな」

 

シモンは可笑しかった。

目の前から歩いてくる子供が、昔の自分に重なったからだ。

 

「うわっ」

 

自分にぶつかって少年が尻餅をつく、その少年を見てシモンは告げた

 

 

「上を向いて歩けボウズ!」

 

「えっ?・・・・・・」

 

 

少年は少し驚いたように見上げてきた。

  


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