魔法はお前の魂だ(魔法先生ネギま✖天元突破グレンラガン) 作:アニッキーブラッザー
「アスナ君・・・・」
「アスナさん・・・・・」
タカミチ、ネギ、両名もリングサイドにいるアスナに顔を向ける。
二人だけでなくシャークティやシモンたち、別の場所から試合を眺める刹那や龍宮。
そして主催者の超ですらアスナに注目した。
「アンタは自分を誰だと思ってんの!?想いがこの程度とか言われて、いつまでもグズグズしてんじゃないわよ!」
「アスナ・・・さん」
「周りが無茶だ無謀だ笑おうが、私はアンタを信じてる!だからアンタは自分を・・・・・・そして私を信じなさい!!」
「!?」
「アンタを信じる私を信じなさい!!!!だから・・・・・さっさと起きなさいよネギーーーー!!」
「「「「・・・・・・・・・・・・・・」」」」
観客の目が点になってしまった。
しかし一部の者たちには違った。
親指を自分の胸を指しアスナは叫ぶ。
この光景は以前にも見覚えがあった。
ネギもタカミチもエヴァも刹那、龍宮、シャークティ、美空やココネ。
あれはアスナが初めてシモンに会った日の夜、今のようにボロボロだったネギに当時シモンが告げ、そしてネギの魂を奮い立たせエヴァに勝利した日の夜。
「くっ・・・ぷぷ・・・ふふ」
「・・はは・・・笑っていいよシャークティ・・・」
「い・・・いえ・・くく」
アスナの言葉を聞いてシャークティは思わず口元を隠して笑う。
「ふふ・・・・まさかシモンさん以外から聞くとは・・くく・・」
「たしかに・・・・アスナさんもネギ先生同様、シモンさんに影響されていますけど・・・」
龍宮と刹那も同じだった。
「何や姉ちゃんいきなりどうしたんや?」
「アスナ殿?」
「くっ・・・・あまりいい思い出が無いなその言葉には・・・」
「ふふ、本当に素敵な出会いがあったようですね・・・・アスナさん」
その言葉を聞いたネギに敗れたエヴァは少し微妙な顔をしていた。
クウネルは少し驚いたような顔をしたが、すぐにアスナに暖かい目を送る。
そして・・・リングにいる二人も同じだった。
(タカミチは僕をお父さんの息子って言っていた・・・・・・でも僕はシモンさんとヨーコさんに出会って・・・・ただのネギでありたいと思っていた・・・)
しかし今こうして自分の名前を叫ぶものが、サウザンドマスターの息子ではなく自分を見てくれているものがいる。
「そうだ・・・・僕を信じてくれる人がいるんだ・・・・・こんな傷!」
『な・・・・・なんと・・・ネギ選手立ち上がりましたーーーー!?』
「「「「「「うおおおおおおおおおおお!!」」」」」」
その瞬間大歓声が巻き起こる。
もうダメだと誰もが思った中、一人の少女の言葉によって少年はもう一度立ち上がったのだから。
「ネギ君・・・・・・・アスナ君・・・・・・・ふふっ・・・そうか・・・伝染する・・・か・・・」
タカミチも初めてシモンと出会った日の夜を思い出した。
そして予選会で刹那がシモンの気合は伝染するという言葉を思い出し、思わず笑ってしまった。
「ネギ君・・・・・よく立ち上がったと褒めたいが、その傷でなにが出来るんだい?」
「タカミチ・・・・男なら・・・・男なら・・・・・・男なら、やせガマンだよ・・・」
ネギ自身失いかけていた闘志が徐々に戻っていく。
その瞬間会場中の者がネギの立ち上がる姿に心を打たれ、声を張り上げる。
「「「「「「「うおおおおおおおおお!!」」」」」」」
「ガンバレ子供先生!」
「いいぞ!いい根性だ坊主!!」
「ネギせんせ~ガンバレーーー!」
ただひたすら今の自分を応援してくれている歓声。それを聞いてネギはようやく分かった。
(そうか・・・・そうだったんだ・・・僕が勝手にお父さんの息子って言葉に惑わされていただけで・・・・・最初から多くの人が僕を僕として見てくれていたんだ・・・)
シモン、ヨーコ、さらにアスナやのどか達を始め自分のクラスの生徒たち。
彼女たちは最初からネギをネギとして見ていた。
しかしネギはそのことに気づかずにいた。
(言葉にこだわり過ぎて気づかなかった・・・誰でもない自分になるということは・・・・いつもと変わらない自分でいること!・・・)
今、自分の名を懸命に叫ぶアスナの姿を見てようやくネギはそのことに気づいた。
「タカミチ!」
「?」
「これが最後の勝負だよ!今の僕の全力を見せてみせる!」
「そうだネギ君・・・・それでいい、・・・・シモン君はシモン君・・・・キミはキミ、今のネギ君こそ誰でもないネギ君自身だ!」
背伸びなんて必要ない。ただ全力でぶつかる。それだけでよかった。
タカミチを指差してネギは言う。
その瞳は先程までギラギラと戦いに集中していたネギとは違う。
子供がまるで自分の練習の成果か何かを親に見える時の様な笑顔に見えた。
その表情を見てようやくタカミチに笑みが戻った。
「おもしろい!受けて立とう、ネギ君!」
「いくよタカミチ!!」
その瞬間ネギの周りに九つの光の玉が出現する。
(この技を・・・・拳に乗せて撃つことは出来たんだ・・・・これで体ごとぶつかれば・・・・・)
ネギは考えた瞬間少しゾクッとした。
なぜならもしこのまま突撃すれば間違いなくタカミチの居合い拳が迎撃に出されるはずである。
その威力は何度も味わっている。
(風障壁(バリエース・アエリアーリス) ・・・・あれで着弾の瞬間に放てば・・・タカミチの強力な一撃を防げる・・・・ )
(ネギ君・・・悪いが君の決め手は見抜いているよ、魔法の射手(サギタ・マギカ)と瞬動術の併用で突撃し、僕の居合い拳を風障壁で防ぐ・・・・悪くない手だ・・・)
(これがまともに入ればタカミチでも・・・・・・けど・・・タカミチは見抜いているかもしれない・・・)
(悪いが分かっててくらうほどお人よしじゃない、居合い拳と見せかけた拳で障壁を破る、たしかに風障壁は強力だが効果は一瞬だけ・・・その後に無防備のキミに渾身の一撃を入れる・・・突撃の威力は凄いだろうが・・・渾身の一撃ならば打ち落とせる!)
(障壁が無くなった後が勝負!)
(それなら・・・)
二人の間に静寂が流れる、お互いが最後の一手を模索し、探り合っている。
「実戦経験の少ないネギ先生の手はおそらく読まれています・・・」
「手が読まれていても・・・・まだアイツには残ってるものがある・・・高畑さんがそれを読むかどうか・・・・」
シモンも二人の最後の攻防に息を呑んで見守る。そして・・・・
「「勝負だ!!」」
ネギが渾身の力を込めて突撃する。
「魔法の射手(サギタ・マギカ)!!雷の九矢(セリエス・フルグラーリス)!!」
瞬動術により加速したネギの体当たりが高畑を襲う。
「やはりね!読んでいたよ、ネギ君!風障壁を消して返り討ちだ!」
ネギの作戦。
真っ向勝負を挑み高畑に強力な居合い拳を出させて、それを一瞬の風障壁で防ぐ。
強力な居合い拳の一撃は予備動作が大きいため連打するには一瞬のタメが必要である。その隙を突く・・・そうタカミチは思っていた。しかし・・・・
「・・・・・・なっ!?・・・」
風障壁を消すために放ったモーションの少ない拳は簡単に弾かれる。
続いてもう一度放つが障壁を破る感触が無い。
軽い拳は簡単に弾き、そのままネギは近づいてくる。
「まさか!?」
ネギは最初から風障壁を使っていない。
「やっぱりタカミチなら見抜いていると思ったよ・・・・僕はそれに賭けた!」
風障壁ばかりに意識が行っていたタカミチの作戦は裏目に出てアッサリとネギを近づけてしまい・・・
「ぐおおおおお!?」
間髪入れず、高畑先生にネギの渾身の突撃が炸裂する。
『両者激突!! 今のはネギ選手の体当たりなのか!? 煙で何も見えません!』
そこから先は、両者の激突で噴き上がった煙のせいで、何もわからなくない。
「く・・・・・効いた・・・・まさか僕の裏をいくとは・・・・・しかし・・僕が風障壁を予測せずに、居合い拳を入れたらどうするつもりだったんだい?」
タカミチは肩膝を付きながら呟く。
そう、もしタカミチが予測せずに最初から居合い拳を打ち込んでいたら、その衝撃を正面から受けることになる。
さらに自身の瞬動による加速分も加わり大ダメージは必死だった。しかし・・
「タカミチなら僕の戦略を読むと思っていた・・・・でも僕の勇気までは読めなかったようだね!」
「!?」
「そう・・・わずかな勇気が本当の魔法!!魔法が僕の魂なら・・失敗を恐れず勇気を出して前へ行く!それが僕だ!!」
頭の回転の速いネギなら無謀な特攻などせずに充分な戦略を立ててからぶつかってくると思っていた。
しかし今のネギの攻撃は、大ダメージを受ける覚悟で突進してきた。
しかしネギは信じていた、自分の戦略は必ず成功すると。
「そして・・・この距離ならタカミチの攻撃は使えない!!」
タカミチの背後に立つネギは再び九つの光の玉を出現させ拳に纏う。
「くっ!?・・・・・・やるな、ネギ君・・・・」
「これが今の僕の全力だ!最大!!桜華崩拳!!」
「ぐおおおお!?」
周りから見たらネギの行動はただの特攻にしか見えなかった。
しかしネギの今の行動は相手と自分の状況を冷静に導き出した戦略である。
無論自分がやられる結果もありえた。しかしその恐怖をネギはシモンのような気合や無茶でも無謀でもない、ネギ自身の「わずかな勇気」これで乗り越えることが出来たのである。
「はあ、はあ、はあ、はあ、」
巻き上がる煙が晴れる。そして朝倉や観客がリングの上の状況をようやく視認出来るようになった。
そこにいるのは、立ち尽くすネギ、そしてリングの上で倒れているタカミチだった。
『ネギ選手の光るパンチが炸裂!倒れているのは高畑選手です!さすがの高畑選手もこれは大ダメージか!?まさかまさかの大逆転!はたして勝敗は!?』
大ダメージかと思われたタカミチだが、何事も無かったかのように体を上半身だけを起こした。
「やれやれ・・・・まさか本気を出しながら、ここまで見事に一本取られるとはね・・・・・スゴイよネギ君・・・・・」
「タカミチ・・・・・効いてなかったの?」
これにはネギも驚いた。しかしタカミチは少し肩を震わせている。表情には出さないがタカミチ自身もかなりダメージを受けているようである。
「いや・・・・効いてないわけ無いよ・・・・本当にスゴかった・・・・・・さすが・・・・」
その言葉の続きをネギはなんとなく分かっていた、
しかし違った、
「さすがネギ・スプリングフィールドだ!この勝負、僕の負けだ!」
「・・・・あっ・・・・タ・・・・タカミチ・・・・・」
さすがはサウザンドマスターの息子・・・・ではない。
さすがはネギ・スプリングフィールド。
タカミチの口から出された言葉は、ネギの想像と大きく違っていた。
『高畑選手ギブアップ宣言!つまり・・・・つまり・・・・この死闘を制したのはネギ選手!子供先生2回戦進出です!!』
「「「「おおおおおおおおおおおおおおおお!!」」」」
会場が破裂したかのような歓声が響き渡る。
その中で自分の勝利、そしてタカミチの言葉にしばらく呆然としていたネギだが、リングの上に上がりネギへ駆け寄る小太郎やアスナたちによりすぐに現実に引き戻された。
「ネギ!!ようやったで!!」
「兄貴~~!スゲーぜホントによう!!」
まるで自分のことのようにハシャギ、ネギの勝利に喜ぶ小太郎たち、そして
「あっ・・・・・アスナさん・・・・」
ネギの目の前まで近づくアスナ、そして
「まったく・・・・アンタは・・ぶつぶつ・・心配かけて・・・・ごにょごにょ・・・・・」
先程大声で会場に全体に響き渡る声を出していたアスナだが急に恥ずかしくなり口を濁す。
しかしネギはそんなアスナを見つめ。
「アスナさん・・・・ありがとうございます!アスナさんから気合をもらったから・・・・僕は立ち上がれました!」
「~~~、あ~もうこのバカネギ!」
ネギの真っ直ぐなお礼にアスナは照れ隠しのようにネギの背中をバンバン叩いた。
「アスナさ~ん・・・」
「ああ~もう、ウルサイ!ほらさっさと手当てするわよ!」
「はい・・・・あっ・・・・」
その時自分に近づくもう一人の女性にネギは気づいた。
「ヨーコさん・・・」
名を呼ばれヨーコはニッコリと笑う。
そして隣にいるアスナの肩に手を置く。
「アスナ・・・・満点の解答をみせてもらったわ・・・」
「あっ・・・は・・はい!」
「そしてネギ・・・・かっこよかったわよ・・・」
ヨーコのお世辞ではない言葉にネギもアスナも照れてしまった。
そしてヨーコは屈んでネギの頬に手を置く。
「あの・・・」
「約束のご褒美♪」
―――チュッ♪
「・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・」
「「「「はあああああああ!?」」」」
その瞬間歓声が怒号に変わった。
『なんとネギ選手!ヨーコ選手によるホッペに祝福のキスだーーーー!』
「コラーーーボウズ!羨まし過ぎるぞコノヤローー!!!!」
「んなのありかーー!?俺はこの歳になってもされたことねーぞー!!」
「勝負せんかーー、子供先生!!」
賞賛の嵐がブーイングに変わった。そして当の本人は・・・
「あわ・・・・あわ・・・・ああ・・・・うあ・・・」
顔を真っ赤にしてテンパり・・・そして
「きゅ~~~、バタン・・・」
「兄貴が倒れたーーー!」
「アカンネギ!?しっかりせぇ!」
ヨーコの一撃は・・・・ネギにとってタカミチの拳より効いた。
この光景を観客席では・・・
「俺が子供のときに、あんなご褒美無かった・・・・」
――ピクッ!?
「シモンさん?・・・・羨ましいのですか?」
「シモンさんホントなん!?シモンさんもヨーコさんのキス欲しかったん!?」
シャークティと木乃香がジト目で睨み、シモンは慌てて誤魔化した。
しかし・・・
(俺もあれがあれば・・・・昔もっと頑張れたかも・・・・)
心の中では羨ましかった・・・・
「「シモンさ~ん?」」
「あっ・・・・あの・・・・いや~、ネギも勝ったことだし会いに行こうよ!ほら、綾瀬たちも・・・・・」
その時シモンは見た。リングの上で気絶しているネギと同じような顔をして頭から煙を出している少女を。
「あわ・・わ・・・う・・・よ・・ヨ~コさんが・・・・ネギせんせ~に~・・・」
「のどか、あれはただの挨拶のようなものです!気をしっかり!」
「あっはははは!いや~いきなりやってくれるとはヨーコさんはさすがだね~~」
「本屋サンが壊れた・・・」
「・・・・・・・・・・・・皆も行こうよ・・・」
のどかとネギが正常な意識を取り戻すのには少し時間がかかったようだ。