魔法はお前の魂だ(魔法先生ネギま✖天元突破グレンラガン)   作:アニッキーブラッザー

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第1部第4章:学園祭
第35話 あの頃から変わってない


「「「はあ~~」」」

 

女子寮の一室にて3人のため息が同時に聞こえる。

ネギ、アスナ、木乃香、彼らはつい先ほど部屋に帰って来たばかりである。そして部屋に着いた途端同時にため息を吐く。

この様子に刹那も少し困り果てていた。

 

「あの~・・・元気出してください・・」

 

それしか思いつかなかった。しかし次の瞬間涙目になった3人が刹那を見上げて反論する。

 

「せやかてせっちゃん、せっかく世界樹伝説にあやかろう思たのに、告白したらアカンゆわれたら落ち込むえ~~~」

「せっかく本屋ちゃんや木乃香を見習って今年こそと思ったのにさ~~」

 

よっぽど残念だったのか、彼女たちは目に見える落ち込みっぷりだった。

彼女たちはつい先ほど学園の魔法先生、魔法生徒の集まりに参加して、今年の学園祭での注意事項を説明された。

学園祭で世界樹の周りで告白禁止、それはそれぞれに思い人がいる彼女らにとってはとても残酷な通告だった。

 

「しかし禁止されたのは世界樹の下の告白だけであって、別に他の場所でも・・・・・」

 

刹那がそう言って宥めようとした瞬間、アスナが血の涙を流しながら叫ぶ。

 

「何言ってんの刹那さん!私が今年こそ今年こそと何年も結局先送りにされてしまった高畑先生への告白!木乃香を見習い私も勇気を出そうと決意してホラ!当日のデートーコースから告白までの事細かな計画を立てていたのよ!」

 

アスナはメモ帳にビッシリ書かれた計画表を見せた。そこには何度も消したり付け加えたりした文字が残っていた。

パレードの時間や祭りを回る順序などを分単位で刻んである予定表。しかし何度も試行錯誤してビッシリ書かれているため本人以外読むのは容易ではない。

だが、一つだけ読める箇所がある。最後の部分に「世界樹の下で告白」と書かれていたのは読めた。

 

「ふふふふ・・・これだけは絶対にハズせないモノだったのよ・・・・いきなり告白だけじゃ困ると思って、学園祭の内容や時間を事細かにチェックしまくってたてたプランが・・・・肝心な部分が禁止ってあんまりじゃないのよーーーーー!!」

 

よほど高畑のことが好きなのかアスナは一人吼えまくる。

これには刹那も唖然としていた。しかし一人それほど落ち込んだ様子の無い刹那を見て、木乃香は疑問をぶつけてみた。

 

「ウチはアスナの気持ちよ~わかるわ~、せっちゃんは好きな人いーひんの?」

「なあっ!?」

 

刹那らしくない声が上がった。木乃香は自分もアスナと同じように好きな人物がいるから、告白を禁止されたアスナの気持ちがよくわかった。

しかしこの中で刹那のそういう話を聞いたことが無かったため、木乃香も気になっていた。

木乃香の質問に刹那はかなり戸惑っていた。

 

(まずい・・・・どう答えれば・・・私に好きな人なんて・・・・・シモ・・・!?・・・・何を考えている私は!?このちゃんの思い人なのに!)

 

好きな人と聞かれて真っ先に思い描いた人物。しかし刹那はあわてて頭を振りその人物を振り払い、木乃香の質問に対して

 

「い・・・いません私には、強いて言うならネギ先生や・・・シモンさんあたりですかね親しい異性といえば」

 

無難に答えた、ネギの名前と親しい異性と付け加え、問題を回避しようとした。

 

「ネギ君かー、たしかにええよなー、でもシモンさんはアカンよー、せっちゃん」

「わ・・・わかってます・・・」

 

刹那の想いは友人としてであると思い込んだ木乃香は軽口で刹那に釘をさす。

その際に刹那の背中が異常に汗を掻いていたことは誰も知らない。

 

「まあ、姐さんの落ち込みは分かったが、肝心のデートの呼び出しは出来てんのかい?」

 

傍観していたカモが何気なく聞いてみた。しかし答えを聞く前にアスナはさらに落ち込んでいた。

 

「・・・・・う~・・・それが出来てりゃ苦労ないわよ・・・」

 

狸の皮算用だった。

 

 

「じゃあ意味ねえじゃねえか!?」

 

「う~だってさ~、バケモノ相手に大立ち回りやるよりよっぽど勇気いるのよ~、そう考えると本屋ちゃんや木乃香は勇者よ」

 

「あっその気持ち分かります」

 

 

アスナの少しずれた発言だが刹那はそれに同意する。その様子に少しあきれたカモはネギを見た。

 

「兄貴は兄貴で重症みたいだな・・・・・・」

 

さっきからずっと、うな垂れているネギを見てカモが聞いてみた、

 

「だって・・・・・僕は本当にどうすればいいか・・・・」

 

真剣な顔で頭を抱えて悩むネギ、

 

「宮崎さんに告白されて返事もちゃんとしてないのに・・・・最近ヨーコさんが気になるし・・・・それなのに宮崎さんとは文化祭回りの約束をしてしまうし・・・ああー僕は最低だ~!」

 

そう言って机の上に何度も頭を打ち付けるネギ、相当ヤバイ。

 

「兄貴も姉さんたちも全員年上が好きなんだな・・・・・」

 

木乃香はシモン、アスナは高畑、ネギはのどかに告白されているうえに、ヨーコのことも少し気になっている。刹那も心の中では年上の男を想っている。実に意外な共通点だった。それに気づいたカモはある提案をする。

 

「ようするに、これまで色恋の経験が無い上に相手と年が離れすぎてるから気楽に話しかけるのも難しいんだな兄貴たちは」

「まあ・・・・そうなるわね・・・・」

 

アスナが皆の答えを代弁した。するとカモは突如私物の袋から何かをゴソゴソと取り出した。

 

「そんな時はこれだ!赤い飴玉・青い飴玉年齢詐称薬~!!」

 

ものすごい直球な名前のアイテムを取り出した。

 

 

「何なの?そのいかにも都合のよさそうな名前の道具は?」

 

「その名の通り外見年齢を変えられる魔法薬だ。もっとも実際に肉体が変化するわけじゃねー。ま、幻術の一種だな、これで兄貴を大人に変えちまえばいい練習になるぜ!さらに兄貴も年上の姐さんとデートして練習すれば一石二鳥だぜ!」

 

 

カモの説明を聞いて真っ先に反応したのは木乃香だった。

 

「なあなあカモ君?ホンマにこれ大人になれるん?」

「試してみろよ赤で大人になれるぜ」

 

カモの答えを聞いて木乃香は一瞬も躊躇わずに赤の魔法薬を飲み込んだ。

すると次の瞬間煙と破裂音が響き、そして・・・・

 

「「「おお~~~!」」」

 

全員が驚きの声を上げる。そこには今よりも背も体つきも成長した木乃香の姿があった。

 

 

「見て見てアスナ、セクシーダイナマイツ!」

 

「どんなもんでえ姉さん」

 

「確かにすごいわね…」

 

 

ポーズをとり、その成長した体を見せびらかす木乃香。それを見て素直に感心するアスナ。

 

 

「なあなあ、これ今幾つぐらいなんかな?」

 

「ん~18歳ってとこじゃねえか?」

 

「22歳には出来ん?」

 

「「「「えっ?」」」」

 

 

あまりにも具体的過ぎる年齢に一同少し嫌な予感がした。

ある男と同じ年齢、そして木乃香の7年後の姿。答えにたどり着くのは容易であったが、カモは黙って赤い薬を木乃香に渡した。そして

 

「これが7年後のウチか~~」

 

うれしそうな木乃香の声、先ほどよりもさらに大人の空気をかもし出している。

 

「すご・・・木乃香・・」

「はい・・お美しいです・・・・」

「ホントです木乃香さん」

「ありがとな~~」

 

成長した木乃香の姿に見惚れるネギたち。一方木乃香もそこまで褒められればやることは一つしかない。

 

 

「よしっ!シモンさんのとこに行ってくるえ!!」

 

「「「「やっぱり!?」」」」

 

「ほなな~!」

 

 

そう言って木乃香は大人の姿のまま部屋から飛び出してしまった。

 

「やっぱ・・・・逞しいわね木乃香」

「そうですね・・・・」

「あっでもシモンの旦那はピッタリじゃねえか?」

「何がよ?」

「兄貴だと30代は離れすぎてるから無理だけど、シモンの旦那はこれ使えば30の渋い旦那になるぜ!」

 

カモの提案はまさに正論だった。

22歳のシモンに使えばまさにドンピシャである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そのころ教会では、超との決戦の約束をしたシモンとヨーコは教会に戻り、話し合っていた。

 

「ネギたちには話さないのは構わないけど・・・シャークティたちにも黙ってるの?」

 

ヨーコはシモンに尋ねる。

今回魔法を一般に公開するかどうかの問題はやはり一大事である。

シモンたちは超の過去の改ざんという行為を止めると言ったが、もし魔法が公開されればシャークティたちも被害に遭う。それが唯一の心配だった。

 

「う~ん・・・・シャークティたちはどう思ってるのかな・・・・・たしかに魔法が公開されれば今までよりも活動しやすくなるかもしれない・・・」

 

さらに超の行動はシャークティたちに利点になるかもしれなかった。

それを自分たちの手で台無しにしてしまうのは少し気が引けた。しかしヨーコは考え込むシモンの肩を軽く叩いて笑う。

 

 

「それでもグレン団として動くって決めたんだからやるしかないわね!」

 

「ヨーコ?」

 

「アンタが言ってたじゃない。魔法をどう扱うかは今後の人たちが話し合って考えればいいって。ただ超って子のような行動を起こすなんて間違ってるわ、そうでしょ?」

 

 

ヨーコは力強く言う

 

「見せてやろうじゃない!あの子が一度失望したグレンラガンの物語、私たちグレン団が改めさせてやるのよ!」

 

いつまでも変わらないヨーコの魂。それがシモンにはものすごく嬉しかった。自分と同じグレン団の視点で動いて考えることの出来るヨーコ。この世界に来てからようやく再びめぐり合うことが出来た。シモンは小さく笑ってヨーコを見る。

 

「ヨーコ、お前がいてくれて良かった!」

 

その言葉を聞いてお互いに笑い合う。

この世界に来てから家族や友とめぐり合うことが出来た。しかし自分と同じ無茶をして自分のことを理解してくれて、絶対的な信頼を寄せられる無二の仲間がヨーコである。

シモンとブータ、そしてヨーコ。シモンもようやく自分たちグレン団が揃ったという感じがした。

シモンとヨーコが自分たちのすべき事を確認しあったその時、

 

「何か内緒話ですか?」

 

シャークティが歩み寄ってきた。

 

「あっシャークティ・・・話し合いは?」

「ええ今終わらせてきました。それでグレン団のお二人は何を企んでいるのですか?」

 

ニッコリと笑いシモンとヨーコを見るシャークティ、

 

「学園祭でのことをな・・・自分たちの決めた行動をしよう、そう話し合っていた」

 

決して答えにはなっていない。そしてシャークティもただ事では無い何かを感じ取った。

 

「そうですか・・・・私たちにも内緒ですか?」

「・・・それを今考えていた・・・魔法使いであるシャークティたち「バンッ!」・・・?」

 

その時教会の扉が勢いよく開いた。シモンたちが振り返るとそこには、美しい長い黒髪をなびかせた女性が立っていた。

 

「・・・・・知り合い・・・というよりシモン・・あの人」

「知り合い・・・というか・・・・あれってほぼ間違いなく・・・」

「・・・・幻術ですね・・・・」

 

見知らぬ女性かと思ったが、よ~く見るとその女性は自分たちのよく知る女性だった。

そしてその女性は開口一番に告げる。

 

 

「シモンさんデートしてや!」

 

「「「木乃香(さん)・・・・」」」

 

 

驚きよりもむしろあきれたような声を上げる3人だった。

 

「ねえ・・・魔法ってあんなことも出来るの?」

「はい・・・といっても実際に大人になっているわけではなく、幻術の一つですが・・・・・」

「う~ん・・・奥が深いんだな・・・・」

「もうシモンさん反応薄いえ!せっかく7年後の姿で来たんやからもっと他にいうこと無いん?」

 

頬を膨らませる木乃香。しかし成人を越えた姿でやるのは少々ミスマッチであった。

 

「ん・・ああ・・・・う~ん・・・・美人だと思うよ・・」

「む~もっとないん?思わず結婚してまいそうや~とか・・・?」

「いや・・・・・ごめん・・・事態に少しついていけなくて・・・」

 

少々シリアスな話し合いをしていただけにこの事態に食いついた反応が出来ない3人。

すると木乃香以外の者たちも扉から入ってきた。

 

「あっ・・・・こんにちわ、シモンさん、シャークティ先生・・・あの・・・ヨーコさんも・・」

 

ネギが少しヨーコを見て照れながら挨拶をする。その様子に少し訝しげなヨーコだったが笑顔で手だけを上げて答えた。

 

「どうも~急にお邪魔して申し訳ありません・・ちょっと用が・・・」

 

ネギと一緒に来たのはアスナ、刹那、そしてカモ。アスナは少し申し訳なさそうに用件を説明する。

 

アスナの用件は高畑のデートまでに年上の男の免疫をつけること、そこで魔法薬をシモンに飲んでもらい練習相手になってもらいたいとのこと。

しかし木乃香は猛反発。そして更に告白はダメだと言われたばかりにもかかわらず、告白をしようとするアスナにシャークティも反発した。

 

「アスナ~、シモンさんとはアカン!」

「あなたも告白禁止の話は聞いたはずですよ!聞いたそばから練習とはどういうつもりですか!」

「わかってるわよ~、もちろん世界樹ではしないわよ・・・・でも今年言えなきゃ一生言えないような気がするし・・・・・」

 

いつも勇猛果敢なアスナらしからぬ弱々しい姿だった。しかしシモンはあまり乗り気ではない

 

「わざわざ自分が老けた姿になるってのもな~」

 

木乃香たちが20代になるならまだしも、二十代のシモンがわざわざ自分がおっさんになる姿を拝む気にもなれなかった。

するとヨーコがカモから魔法薬を受け取り赤い玉をシモンに無理矢理飲ませた

 

「まあいいじゃない、アンタの十年後見せてよ!」

「あっ・・・・ごくっ・・・・」

 

有無を言わさずに飲まされシモンも反応できなかった。ヨーコも遊び感覚だったので悪びれた様子はない。

そしていきなり飲まされたシモンに煙が覆い、その中から少し皴と物腰が落ち着いた様子の渋い男が出てきた。

その男はとても低い声で口を開く。

 

「ほう、これが俺の10年後か・・・・・」

 

熱血兄ちゃんのシモンからは想像も出来ないほどの落ち着きを持っていた。

 

「すご・・・・アンタ・・・大人になったわね・・・・」

「あ~ん。シモンさんシブ~~!」

「たしかに・・・・」

 

意外と高評価の30代の姿のシモン、彼女たちでこれなのだから当然アスナは

 

「ぷるぷるぷる」

 

アスナは肩を震わせていた。

 

「アスナ~どうしたん?」

「ヤバ・・・・」

「ヤバ?」

「シ・・・・・シモンさんがど真ん中でメッチャ私好みにーーーーーーー!!」

 

顔を真っ赤にして興奮状態だった。

今のシモンの姿はアスナの超ストライクゾーンだった。興奮するアスナを見てシモンが顔を近づける。

 

「そうか、アスナはこれぐらいの俺が好みなのか?」

「うお~~~!?プシュー!プッシュー!」

 

近づいたシモンの顔に照れて頭から蒸気機関車のように湯気を出すアスナ。

 

「ちょっ・・・シモンさん近づきすぎですよ、アスナさんが困ってるではありませんか・・・」

「アスナ真っ赤になって~、でもわかるわ~シモンさん確かに渋くてエエわ~」

「はいっ!タカミチみたいです」

「アンタもやっぱり大人になってくのね~」

 

周りが少し騒ぎだす。しかしアスナはそれどころではない。あまりのシモンの変化に頭が正常に働いていなかった。

 

「あ・・・あの・・・う~・・・シ・・・シモンさん・・・・かっ・・・かっこいいですよ・・・」

 

旨く回らない頭と口だがようやくアスナはそれだけを口にした。するとシモンは再び低い声で

 

「あたりまえだ、俺を誰だと・・・・いや・誰でもないか・・・」

 

魔法薬を使った仮初の姿で本物の自分ではないという意味だったが・・・・

 

「ドカーーーン!?」

「アスナがたおれたーーーー!?」

「アスナさんしっかりしてください!」

 

爆発音とともにアスナは倒れてしまった。

シモンの言葉がどうやらツボに入ってしまい、それがトドメの一撃となってしまった。

 

「ぁ・・・あへ~~~・・あ~・・・・」

 

ゆでだこ状態になりアスナは完全にダウンしてしまった。

 

「まさかいつものセリフの裏をかくとは・・・・恐ろしい人ですね・・・・」

「こ・・・・こりゃあ・・・ストライクすぎて練習にならねえな・・・・」

 

アスナを哀れむような目でシャークティとカモが呟いた。

しかし年齢偽装薬の効果を気に入ったヨーコは続いて青い玉をシモンの口に放り込んだ

 

 

―――ボンッ!

 

 

再び破裂音とともに煙がシモンを覆う。

そして中から出てきたのは身長も縮み、顔もものすごく幼くなり、しかしヨーコとブータにとってはものすごく懐かしい、そんな気持ちにさせるシモンがいた。

 

「ブヒ~~!?」

「あら、懐かしいわね~!アンタが14の時ね~」

 

そこには14歳のころの姿。シモン、ブータ、ヨーコ、そしてカミナとともに地上へ旅立ったときのシモンがそこにいた。

 

「あれ~、何か今度は背が縮んじゃったよ・・・・」

 

先ほどの低い声とは打って変わり、今度はいつもよりも高めな声で慌てるシモン。

いつもカミナの後ろをついて歩いていたころのシモン。ブータもヨーコも思わず微笑んでしまった。

その当時のシモンを知らないシャークティたちだが、

 

「か・・・・可愛い・・・です・・・」

 

顔を真っ赤にさせるシャークティ。いつもの男前なシモンではなく、慌てふためく少し弱々しい姿のシモンにいつものギャップを感じて母性をくすぐられてしまい少し取り乱してしまった。

 

「こ・・・これが14歳のときのシモンさんですか・・・・背・・・低かったんですね・・・しかし・・・・か・・・かわ・・」

「あ~ん、これが今のウチと同じぐらいの時のシモンさん?これはこれでかわええな~」

 

今のシモンとものすごくかけ離れているために少し戸惑いながらも、刹那も心の中で何かがくすぐられるような感覚を感じた。

そして木乃香も自分の年齢が近かったころのシモンを見れてすごくうれしそうだった。

 

「ええ~、でもこれってどうやって元に戻れるのかな~?」

 

上目遣いで覗き込んでくるシモン・・・・

 

 

「「「うっ!?」」」

 

「なんと罪深い・・・一瞬このままでもと思ってしまいました・・・」

 

「くっ・・・この程度で取り乱すとは修行が足りない・・・・しかし・・・」

 

「あ~ん、かっこいいシモンさんとかわええシモン、どっちも迷ってまう~~」

 

 

チビバージョンのシモン。昔はウジウジしているだとかで色々と不評だったが、この世界では案外好評だった。

そして昔のシモンに懐かしさを感じたヨーコも青い玉を飲み込んだ。そして

 

「あっ・・・・ヨーコ・・・・なんか懐かしいな~」

「ブヒッ!」

「ふふふ、もう一度10代に戻るとは思ってなかったわ」

 

かつて獣人やガンメンと戦っていた頃のヨーコ。美しさより少し可愛らしさが際立っていたころのヨーコの姿があった。

 

「今の私の姿で、目の前にアンタがいるとなんだか昔に戻ったみたいね。ブータはちっとも変わってないし」

「うん、俺もそう思うよ」

 

ヨーコがその場でくるっと回って今の自分の姿を見ながら呟いた。

シモンもブータも本当に昔に戻ったような感覚だった。

 

 

「ヨーコさん昔から美人やったんやな~、でも美人ってゆうよりかわええの方が正しいかもな~、しかも胸は昔から大きいなんて反則や!」

 

「そ・・・・そうですね・・・・お二人とも私たちと同じぐらいの年齢のときのお姿なのに、見違えました」

 

「はい、ヨーコさんもシモンさんもすごく素敵だと思います」

 

 

当初はアスナのデートの練習のためにシモンを訪ねに来たのだが、アスナ自身がシモンの言葉にダウンしていたため、もはや全員目的を忘れ年齢偽証薬で遊んでいた。

すると再び教会に訪問客が現れた。

 

「シモンいるか!」

 

勢いよく教会の扉を開けて入ってきたのは、見た目幼女の最強の吸血鬼エヴァンジェリンだった。

突然の登場に皆反応出来なかった。

 

「シモン!学園祭の最終日の予定なんだが・・・・・・・・っ!?」

「あれ~・・・エヴァ・・・どうしたの?」

 

首を軽く傾げるシモン。いつもは見下ろしてエヴァを見ていたシモンだが今は身長が近いため、そんな必要は無い。

エヴァは何かを言おうとしたが目の前にいる人物の姿に思わず口を詰まらせてしまった。

 

 

「お・・・・おい・・・・キサマ・・・その姿・・・・」

 

「ああ、魔法の力みたいだよ、背が低くなっちゃったよ」

 

 

そう言って苦笑するシモン。エヴァは少し頬を染めてシモンを見る。

 

(これが昔のシモンか・・・・しかし・・・・なんだ・・・この・・・・無性に虐めたくなる感覚は・・・・)

 

刹那やシャークティとは違うスイッチが入ったエヴァだった。

 

「エヴァ?」

「はっ!?・・・いや・・・・気にするな」

 

言葉を濁し、一度咳払いをして息を整えてから用件を告げる

 

 

「学園祭最終日の予定なんだが・・・・」

「ああ、もう俺予定は入ってる」

 

「「「えっ!?」」」

 

「どういうことだキサマーーー!?」

 

「どういうことやシモンさん!?ウチもシモンさん誘おう思とったのに!まさかヨーコさんと?」

 

「う~ん、まあ私も関係なく無いんだけどね~、でも私にとってもシモンにとっても大事な日ではあるけどね」

 

「ふざけるなーー!この私の誘いを断る気か!?今すぐ予定を中止しろ!」

 

「せやシモンさん、ウチもシモンさんと回りたい!」

 

 

超とのデートが先に入っているとはとても言えず、場が再び混乱しだした。

いつものように「やだっ」と言いたいところだが、自分に向けられる好意を粗末にも出来ず、とりあえず最終日以外の日にデートということで納得してもらった。

 

 

 

 

 

 

結局アスナもダウンしたままのため、練習も何もないので今日は結局シモンとヨーコの昔の姿を見れただけで皆満足して帰っていった。

帰路に着くネギたちの背中を見てヨーコは呟いた。

 

「最終日には世界を左右する大喧嘩になるかもしれないのに平和なものね・・・・・」

 

ヨーコの呟きにシモンが答える。

 

「左右されるのは超が勝った場合だ。俺たちが勝てば変わらない明日になるさ」

「そうね・・・でもあの子達はどういう答えを出すかしら・・・・」

「ここからはアイツら次第だ・・・・その結果、あいつらが超の味方になっても、しょうがないさ」

「そうね・・・ネギとアスナたちが導き出す答えがあの子達の道・・・かつて私たちがそうしたようにねっ!」

 

自分たちはグレン団として動く以上その考えをネギたちに強制することは無い。今回の戦いはそれだけこれまでの戦いとは違うものなのだから。

シモンの言葉を聞いてヨーコは微笑む。

 

 

「シモン・・・・魔法の薬で昔の私に戻った時・・・・私・・気づいたんだ」

 

「ヨーコ?」

 

「あの頃の私は今と違って本当にガサツで精神的にも脆くて、変なところで強がったりしてた・・・・・でも今は違う・・・何にも迷わずに自分の答えを出すことが出来る」

 

 

ヨーコの言葉にシモンもうなずく。

 

 

「俺もそうだ・・・・昔はあんなに道に迷ったりしてたのに今は違う。自分が決めた一つのことが自分にとっての答えだって分かってる・・・・俺もヨーコも大人になったんだよ・・・」

 

「そうね・・・・だけどまったく変わらないものもある・・・・そうでしょ?」

 

「ああ!俺もさっき魔法の薬で昔の姿に戻ったときに気がついた・・・・あの頃から変わってない・・・・」

 

「そう・・・・私たちは何年たっても・・・どれだけ大人になっても・・・・」

 

 

ヨーコとシモンはお互いを見合い、同じ言葉を言った。

 

 

「「グレン団であることをやめられない!」」

 

 

どれだけの月日が過ぎようとグレン団であり続けるのが彼らの誇り。シモンもヨーコも、そしてブータも同じだった。

カミナと地上へ旅立ってから8年、あのころからシモンもヨーコも様々な困難や悲しみを乗り越えて大きく成長した。しかしそれでも彼らはカミナの掲げたグレン団をやめることが出来なかった。

 

 

「勝つわよシモン!」

 

「当然だ!」

 

「ぶひっ!」

 

 

そしてグレン団である限り負けることは許されない。夕焼けの教会でシモンとヨーコは互いに決意を交わした。

そして・・・・

 

 

「二人・・・・いえ・・・三人だけでですか?」

 

「「!?」」

 

 

振り返るとシャークティがいた。そして

 

 

「何か企んでるんだって、兄貴?」

 

「隠し事ズルイ」

 

「おまえたち・・・・・なんで?」

 

 

美空とココネもいた。

 

「兄貴たちが何か企んでるって聞いてね~、こうしてネギ君たちが帰るまで待ってたのさ!でも、水臭いよ兄貴!」

 

美空がニヤリと笑ってシモンたちを見る。

 

「美空・・・、でも隠してたわけじゃない、今回のことは俺たちグレン団の勝手な行動であって、魔法使いの・・「それが!」」

 

シモンの言葉に美空が口を挟む、

 

「それが水臭いっての!私たちは魔法使いである前に兄貴の家族なんだからさ!」

 

美空の言葉にシャークティとココネもうなずく。そして言い終わった後美空は自分が言った青臭いセリフに後悔し悶えていた。

するとシャークティが美空の代わりに言葉を告げる。

 

「美空の言うとおりです、魔法使いであることよりも今の私たちは家族を選びます。こんな選択をするのはあなたの所為ですね」

 

そう言ってシャークティはイタズラっぽく笑った。

シモンが来る前までは決して考えられなかった、冷静で厳しい魔法先生であった彼女が初めて選んだ、ただのシャークティとしての選択だった。

そしてココネもシモンの隣に立って手を繋ぐ。

 

「兄貴教エテ」

 

ココネも同じ考えだった。その様子を見てヨーコは微笑んだ

 

「ものすごく頼もしい助っ人ね!シモン、決めるのはアンタよ!」

「ああ、そうだな・・・」

 

シモンも口元に笑みを浮かべ、

 

 

「話すよ・・・・全て・・・ただし約束してほしい、この事は他の魔法使いやネギたちには教えないでほしい。今回の相手はワザワザ情報が漏れるのを知りながらも対戦相手に俺たちを指名してきた者だ。だから俺も奴とは公平に戦う!奴自身からネギたちに話すまで俺は誰にも言わない。仲間以外だけどな」

 

「仲間ですか?」

 

「そうだ!今日から俺たちは、もうただの家族じゃない!シャークティ、美空、ココネ、そしてヨーコにブータ!」

 

 

シモンはクルッと振り向き両手を大きく開き叫ぶ

 

 

「俺たちは新生グレン団だ!!!!」

 

「「「!?」」」

 

 

シモンの声が響き渡る。

シモンはグレン団のメンバーにシャークティたちを加えることを宣言した。

その言葉に一瞬皆あっけにとられたが、すぐにシャークティたちは笑い出す。

 

「グレン団ですか?ふふふ、マギステル・マギより名誉かもしれませんね」

「いいね~、何かこうゾクゾクしてきたっ!マジ最高っす!」

「オー、グレン団!」

「いいんじゃない?まさかまたメンバーが増えるなんてうれしいかぎりじゃない!」

「ぶひー!」

 

この世界に最初に来た頃、もし彼女たちにグレン団に入れてやると言っても、絶対に嫌がっていただろう。

しかし今は違う、グレン団を理解してくれた彼女たちはグレン団のメンバーになることをとても喜んでいる。

 

 

「光栄ですシモンさん!」

 

「私も!こりゃあ、いつまでもメンドくさがりじゃあダメッすね!」

 

「美空気合入レロ」

 

 

もう決して動くことが無いと思っていたグレン団の魂が新たな世界で伝染し、新たな仲間を向かえた。

シモンもヨーコもブータもこの出来事に興奮した。そして、かつての心が再び湧き上がってきた。

 

この時シモンは思った。

 

超は自分たちの物語は、グレンラガンそのものだけしか未来では語られていないと言っていた。

 

しかしそんな未来にはさせない。グレン団の誇りをいつまでも不滅にしていくことをシモンは誓った。

 

 

 

―――そして学園祭が近づく。

 

 

 


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