魔法はお前の魂だ(魔法先生ネギま✖天元突破グレンラガン) 作:アニッキーブラッザー
時刻は夕方。教会に夕日の光が差し込む。
いつもは全員そろって食事をとるのだが今日は違う。
シャークティだけでなく美空とココネも教会の礼服を着てどこかに出かけるようだ。
どうやら魔法使いとしての真面目な話があるようだ。
「昨日話した世界樹のことについて学園長から魔法先生と生徒は全員呼び出されています。申し訳ありませんが夜はシモンさんとヨーコさんの二人で取っておいてください」
シャークティはそう言って美空とココネを連れて外へ出て行った。
残されたシモンとヨーコとブータは互いの顔を見合ってどうするのか話し合った。
「シモン、私たちどうしようか?外に食べに行く?バイト代あるんでしょ♪」
「ぶるみゅ!」
ヨーコの言葉にブータもそうだそうだと言わんばかりに鳴く。
まあ別にそれほど悩むことではない。
シモンもそれを了承しようと思った瞬間、教会の扉を叩く音がした。
てっきりシャークティたちが忘れ物でもしたのかと思い振り返るとそこには珍しい人物がいた。
「おまえは・・・・・」
「あなた・・・たしかネギの生徒じゃない?この間教室で見たわ」
中に入ってきた人物に言うシモンとヨーコ。その人物はニヤリと笑い口を開く。
「こんばんわ、シモンさんにヨーコさん。それにブータもネ」
超鈴音がそこにいた。
「確か・・・超、だったな?」
シモンも面識があるとはいえ修学旅行以来会ってなかった。会話も少ししかしていない。
しかしなぜか印象的だった少女、シモンは超のことを覚えていた。
「名前、覚えてくれてうれしいヨ、感激ネ」
「どうしたんだ?何か美空にでも用事があったのか?」
シモンの質問に超は黙って首を横に振る。
「修学旅行で約束したネ。もう一度デートすると。だから今からデートに行くネ」
超は笑顔でそう言う。
しかしシモンはその言葉に何かを感じ取った。
ヨーコも今までならシモンを殴ったりするのだがこの目の前の超という女から何かを感じ取った。
「ヨーコさんも来るといいネ。ついでにブータも。ダブルデートネ」
超はそう言って返答も待たずに外へ出た。
「シモン・・・・あの子は?」
「さあ・・・・ただのデートで終わればいいんだけどな・・・・」
シモンはそう言って超の後を追いかける。ヨーコもそれに従い黙って後を追う。
まったくわけが分からない突然のデート。
しかし急に誘われたその場所には、何かが待っているような気がした。
夕焼けの学園。祭りの準備に勤しみ汗を流す生徒たち。
もうすぐ始まる学園祭への準備を生徒たちが着々と進めていく中・・・・・・シモンたちは下水の道を通っていた。
「随分と素敵なデートコースね」
ヨーコは顔を引きつらせながら前を歩く超に言う。
「まあまあ、もうすぐでとっておきが見れるヨ、それまで我慢ネ」
超はそう言って後ろを振り返り、何の悪びれもないように言う。
そしてもう一度振り返り
「しかしそれまでお話で時間潰すネ、シモンさん、ヨーコさん、魔法の力をどう思うネ?」
「・・・・・おまえも魔法使いなのか?」
いきなりだった。
超が魔法使いであるとは美空やネギからは聞いていない。
しかしここはそういう連中が多数存在する学園。超まで魔法使いだったとしても驚くことは無かった。
シモンは普通に聞き返した。
「いや、私は魔法使いではないネ。その才能はあるかもしれなかたが、私は魔法よりも科学を選んだ」
「科学を?」
シモンが聞きかえす。
「魔法で出来て科学でできないことは無いネ。火を起こすことも物を凍らせることも、人工的に風や雷を起こすことも出来る・・・・・」
「たしかにそうね。私もそれに関してはあまり驚かなかったわ」
「ただ・・・どれだけの技術を注ぎ込んでも・・・・作り出せないものがあったヨ・・・・」
「作り出せないもの?」
魔法で生み出せるものはたいてい科学で生み出せると言いながら、それでも生み出せないものは何か?
「天を突く力は生み出せなかった」
「「!?」」
その言葉に肩を震わせたシモンとヨーコ。
今の超の言葉はどういう意味なのか。
天を突く力という言葉は分かる。
しかし超には一言も話していない。この言葉にはさすがのシモンとヨーコも驚愕した。
そして超は巨大な扉の前に立ち止まった。
「ここヨ、ここには人類の希望になれなかった者の姿がある」
「「!?」」
扉を開けると、先ほどまでの下水とはかけ離れた広々とした巨大な部屋があった。
しかしシモンたちにはその巨大な部屋よりも、その部屋の中にある人間より遥かに巨大な、人の形をした鉄の塊に目が惹かれた。
鉄の塊を見て呆然とするシモンとヨーコ、そしてブータ。
シモンは辛うじて一言発する。
「顔が・・・・・二つ?」
そうその巨大なロボットにはなぜか顔が二つあった。
胴体に一つと頭に一つ。そして胴体の部分には見慣れたV字型の巨大なサングラスが
「・・・・・似てるわね・・・・・アレに・・・・」
「・・・ああ・・・細かい部分で違うところはいっぱいあるけど・・・・これは・・・・」
「ぶ・・・・ぶひ~・・・」
シモンとヨーコは呆然とその巨大なロボットを見上げる。
すると超は笑いながら答える。
「ハハハハ、細かい部分?全然違うネ。これはあなたたちが知っているメカとは全然違う。これがこの世界の未来の科学の限界ネ。そう人類の希望にならなかったものの姿ヨ」
「どういうことだ?・・・・俺は美空たちにしか話したことが無い・・・・何故・・・・何故お前が『グレンラガン』を知ってるんだ!?」
「名前をまだ言っていないのに、大グレン団の方にこれをそう呼んでもらえるとは光栄ネ」
グレンラガン。シモンたちグレン団の、人類の希望であるグレンラガン。それを真似した物が自分たちの前にある。
「あれは・・・・・・ラガンじゃない・・・胴体の部分もグレンじゃないわ・・・・・そもそもこれはガンメンじゃない!」
普段は冷静なヨーコも少し取り乱して言う。
「当たり前ネ、先ほども言ったヨ、これはこの世界の科学の力で生み出された物。シモンさんたちの言っているものとは違うネ」
「じゃあ何故グレンラガンを知っているんだ!?これが偽者なのは分かったが、お前が知っている理由になっていないじゃないか!」
シモンの言葉に超はゆっくり目を閉じて語りだす。
「私の一族はこの物語が大好きだったヨ。グレンラガンの物語が・・・・」
「も・・・・物語・・・?」
「そう、この話を語った者は細かい経歴は不明。しかし突如この世界に現れ、多くのものを惹きつけた。魔法界や科学界を巻き込んでネ」
「・・・・・・・?」
「魔法使い、そしてそれを使えないものを一般人などと言われていた世界ではこの物語は衝撃だった。なぜなら魔法などの力ではない、メカが宇宙を救う物語だたからネ」
「な・・・・何を言ってるんだ・・・・」
「本来なら空想上の物語、しかしその物語は多くの人の心を惹きつけたヨ」
超は再び目を開けて、巨大なメカを見上げ、それに手を置いて再び口を開く。
「私は没頭したヨ、幼いながらも夢を見ていた・・・・いつかグレンラガンをこの手で生み出すとネ・・・もっともそれは今より遥か先の未来の話ネ」
「未来ですって?」
「そうネ、ヨーコさん私はこの世界よりも遥か先の未来からやってきたネ」
超の言葉にシモンとヨーコはお互いを見合う。
そしてもう一度超を見て首を傾げながら聞く。
「未来なんて・・・・・・出来るのか・・・・そんなこと科学の力で・・・」
「それが魔法と科学の融合した人類の進化した力、『超科学』とでも言おうか、そう・・・最初から魔法と科学の力が協力し合えば・・・・・こんな出来損ないのグレンラガンに希望を託すことなんて無かったネ・・・・」
超は少し寂しげにグレンラガンを真似たメカを見上げる。
「何があったんだ・・・・・お前の話が全部真実だとしたら・・・未来で何があったんだ!?」
「いえ・・・・違うわ・・・未来の住人だとしたら、なんのためにこの時代に来たの?」
シモンとヨーコが超に向かって聞く。
「シモンさん、ヨーコさんには理解できない話・・・・・・未来を正すために根元を変える・・・」
「過去を変えるなんて言うんじゃないだろうな?」
シモンの問いに超はニッコリ笑う。その瞬間にシモンは剣幕を変えて超に食って掛かる
「元々あったものを変えることが許されると思ってんのか!?今まで出会った人とのことも、そこにあった気持ちも、そして失った人への想いも全て無視してチャラにしようと思ってんのか!」
これはヨーコが世界樹の魔力について聞いたときに言った言葉である。
過去を変える、人を操る、どちらも人の気持ちを無視した手前勝手な行為である。
それにはシモンも我慢がならなかった。
しかし超はまったく悪びれた様子もなく答える
「それはシモンさんだから言えることヨ。シモンさんたちの物語はハッピーエンドだったから「パンッ!?」」
乾いた音が響く、
ヨーコの平手が超の頬を打った。
「アンタの知っているグレンラガンの物語がどういう形で語られているかは知らないわ・・・・でもね!」
肩を震わせ涙を浮かべながらヨーコは超の胸倉を掴んで叫ぶ
「ハッピーエンドですって?ふざけんじゃないわよっ!?どれだけの命が失われたと思ってんの!?カミナが、キタンが、ゾーシィ、キッド、アイラック、マッケン、ジョーガン、バリンボー、・・・そしてニアが・・・・これだけの命を前にしてハッピーエンドだなんて言えるの!?」
「言えるヨ、そのお陰で宇宙は救われたのだから」
赤くなった頬を押さえながら超は笑顔で答える。その超の態度がヨーコに火をつけた。
しかし・・・
「そして生き残ったアナタたちはそれを自慢するかのように、まったく関わりの無かったこの世界に広め、魔法を無視して人々を科学の世界に関心を向けさせた。もっともその話に影響されたのは私も同じネ・・・・」
「バカな、俺もヨーコもグレンラガンの話はしていない。なのになぜそんなことになっちまってるんだ!?」
「ある一つの偶然が・・・そして一人の愉快犯が・・・世界にグレンラガンの物語を世界にぶちまけた。どちらにせよこの世界に居続けるならシモンさんもヨーコさんも自分で思っている以上に世界に影響を与えるネ。なぜなら二人は魔法使いでもないのに魔法使いを上回るのだから」
シモンもヨーコも魔法使いではない。
しかしその力は一人の力ではないにせよ、スクナやヘルマンなど上級の力を持つものを打ち倒してきた。
実はこれは魔法使いたちから見れば異例のこと。そしてそれだけでなく彼らの熱い言葉はすでにサウザンドマスターの息子であるネギや、闇の福音エヴァンジェリンなどの心を動かしている。
彼らはそこに存在するだけで多くのものにすでに影響を与えている。
特にネギのような少年は少なくとも数年後にはその名を知らぬものはいない父親のような英雄になっているかもしれないのだから。
「バカな!信じないぞ!俺たちがここにいるだけで・・・・皆の話をしただけで・・・・この世界の未来を追い込んだって言うのかよ!?」
「私の目的は魔法の存在を全世界に公表すること、そしてその後の混乱などの対策も全てバッチリヨ。これで科学と魔法は互いに協力し合うはず・・・・科学だけで生み出した出来損ないのグレンラガンなんかに頼ることは無いネ!」
そう叫ぶと超は再び悲しそうな顔になった。
「未来ではグレンラガンの話の所為で魔法が忘れ去られ、科学だけの力になった・・・・・私も科学だけが絶対だったヨ・・・・しかしそれは間違ってるネ。それに私は気づいたヨ」
「だったら俺たちが元の世界にこのまま帰ればいいのか?グレンラガンの話をすることもなく・・・」
「それも違うネ・・・・少なくともシモンさんは近い未来ではこの世界では重要な人物となる。魔法や人外の枠組みに囚われないシモンさんだからネ。遥か先の未来でもシモンさんの残したものは欠かせない物になっているヨ」
「じゃあグレンラガンの話か?」
「それも違うヨ。魔法がそれによって影を潜めたのは事実だが科学の進歩に大きな躍進をもたらした」
「じゃあ何がいけなかったのよ!?」
「バランスが崩れたことネ。魔法で出来ることは進歩した科学の力で再現できる、元々日の当たらない職業ゆえに魔法を極めようとするものがいなくなった。要するに時代遅れと思ってたネ」
「それグレンラガン関係ないじゃない!?」
「しかし魔法が科学のように日の当たる世界に出ればバランスも保たれる、そうすれば科学と魔法が協力し合えば・・・・・」
そう言った瞬間超は自分の口元を隠した。
「これ以上は未来の情報は言えないね♪」
そう言って笑った。
超の言葉に少し黙るシモンたち。
しかしそれもすぐに終わる。シモンは再び顔を上げて超を見た。
「本当にグレンラガンの話だけなのか?どういう形で語られたかは知らないが・・・・俺が本当に語っていたのは大グレン団の話じゃないのか?」
「どういう意味ネ?」
「たしかに俺は魔法使いと一般人の線引きはおかしいと思っているが、魔法を貶したりなんかしない。シャークティも美空もココネも、ネギやエヴァも俺にとっては大切な人たちだ」
「なるほど・・・・シモンさんが本当に語りたかったのは無理を通して道理を蹴っ飛ばした者たちのことだと?」
シモンは頷く、しかし超は笑う。
「それなら私も学んでいる、こうして私は過去まで来て無理を通そうとしてるじゃないか?」
「だったらお前は何も分かっていない!お前はグレンラガンの話から何も学んでいない!」
「どういうことネ?」
「グレンラガンは・・・大グレン団の物語は無理を通して道理を蹴っ飛ばし、目指す天の向こうにある明日を勝ち取る物語だ!昨日を変えることなんて絶対にしない!俺はそう未来でも伝えたかったはずだ!」
シモンのその言葉を聞いて超は少し俯く。
「・・・・やっぱりネ・・・・本当に強いのはグレンラガンではなくシモンさんたち大グレン団ネ・・・・これじゃあ形だけ真似したグレンラガンではどうしようもなかったカ・・・」
超は寂しそうに呟く。
そう、彼女はずっと勘違いしていたのだ。強かったのはずっとグレンラガンだと思っていた。それは無理もないことだ。なぜなら彼女のいた世界には大グレン団がいなかったのだから。
「超・・・どうするんだ?本当に過去を変えるのか?」
俯く超にシモンが問いかける。
「モチロン変えるネ。それが間違っているとはいくらシモンさんたちにも言わせない。歪みと不均衡な世界を変えるために私は昨日を変えてみせるネ!」
「ならば俺は明日を手に入れる!生まれが違うだけで住んでさえいればそこは俺たちの世界だ!自分たちの時間は自分で刻んでいく!」
その言葉に再び笑い出す超、
「転ぶと分かって転ぶバカがどこにいるネ?」
「お前のやろうとしていることは、転んで立ち上がろうとすることも消そうとしてるんだぞ!」
お互いに一歩も引かない
「しかし魔法の力は必要ネ!」
「誰がそれを止めると言った?魔法をどう扱うかはこの世界の人たちが決める!俺が止めるのは超鈴音という女が過去を変えようとする行為だ!!」
過去を変えるという超の行為。それを見逃すことは明日を手にするために散った仲間を裏切る行為になる。
この時代の住人としてでもなく、魔法使いとしてでもなく、グレン団としてシモンは見逃せなかった。
「ハハハ、長々と説明したけど結局こうなるネ!」
「お前は修学旅行の時からこうなることが分かっていたな?」
修学旅行のときに超は自分の計画にシモンは邪魔だと言っていた。
自分の道をすでに持っているシモンと超では道は重ならない。超はあの時からこうなることを分かっていた。そしてそれにつられてネギまでがシモンの味方になることを恐れた。
シモンもそのことをようやく思い出した。そして超に告げる
「魔法使いたちがどんな答えを導き出すかは分からない。だからこの件を俺はネギたちには話さない」
「おや意外ネ?シモンさんが一言二言言えばネギ坊主たちはすぐにシモンさんの味方になるネ」
超の言葉に今度はシモンがニヤリと笑った。
「あの時に言っただろ?どういう答えを出すかはアイツ自身だ!俺は大グレン団としてお前を止める!過去を変える原因にグレンラガンを使われてたまるか!」
「まあそういうことね、私とシモンとブータの大グレン団。超科学、そして魔法使いの三つ巴よ!アンタの説得しだいではネギたちはソッチの味方になるかもしれないわ。でも魔法使いたちがアンタの味方になっても私たち大グレン団は負けない!」
シモンとヨーコの言葉に超はニヤリと笑う。
「学園祭最終日が決戦日ヨ!私が昨日を変えるか、大グレン団が明日を手に入れるか勝負ネ!」
「上等だ!俺を誰だと思っている!」
こうして宣戦布告がなされた。
この時代を超えてやってきた未来人。そして次元を超えてやって来た異世界人。
どちらも純粋な今いる世界の人間ではないが、ネギたちの知らないところで世界の行く末を左右する戦いの宣誓がされた。