魔法はお前の魂だ(魔法先生ネギま✖天元突破グレンラガン)   作:アニッキーブラッザー

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第30話 いくぜ、ダチ公!

「終わりだ!君は中々楽しかった!!」

 

「くっ・・・くそ!!」

 

 

ヘルマンはそのままブーメランの刃を立て、シモンへ突き刺そうとする。

 

 

「なっ!?」

 

「ブミュウウ!」

 

「シモンさん!?」

 

「しまった間に合わない!!」

 

「アカン・・・・嫌・・・・やめて・・・・嫌ーーーーーーーーーーーー!!」

 

 

ダメだ、間に合わない!

動くより先にそのことを誰もが理解してしまい、ただ、叫ぶだけしかできなかった。

 

「「「「「シモンさーーーーん!!!!」」」」」

 

自分たちの大切な存在。自分たちをいつも奮い立たせてくれた男がこのままでは!

だが、多くの者が悲鳴の叫び声を上げるも、ヘルマンは止まらない

迫りくるヘルマン。

この時シモンは思った。

 

(この光景・・・・以前にも・・・そうだ・・・・アニキが死んだ時と同じじゃねえか!・・・・)

 

この瞬間、シモンは目に写るものが全てスローモーションに見えた。

しかし体はまったく動かない。

 

(そうだ・・・8年前・・・ダイグレンを奪うとき・・・俺がモタモタしていた時にアニキが俺を殴りに来たんだ・・・)

 

シモンは急に昔を思い出した。

 

(アレは痛かったな・・・・・でもその時、アニキに自分を信じろって言われたんだっけ・・・・)

 

シモンは心の中で笑った。

 

(アニキの言葉はすごいや・・・・その言葉は違う世界の住人のネギたちにまで伝わっている・・・・)

 

シモンは心の中であのデッカイ背中の男のことを思い出した。

 

(でもあの後すぐに・・・・アニキは死んだ・・・)

 

シモンを殴りに来たカミナ。

その後、復活したシモン。

それを見てカミナが安心した瞬間にやられた。

 

(なんだよ、俺・・・目の前でニアを攫われたように・・・今回も美空とココネを攫われて・・・そして今・・アニキと同じ死に方をするのか?・・・・)

 

迫るヘルマン。

しかしシモンの体は動かない。

だが、だからどうした!

 

(まだだ!あきらめてたまるか!!)

 

足掻いて足掻いてジタバタするのが自分のはず!

最後の最後まで死を受け入れるな! 抗え! 動け! 

シモンは必死に体を動かそうとする。

 

 

「「「「シモンさん!!!!」」」」

 

「うおおおおおおお!!!!」

 

「無駄だ!あきらめたまえ!!!!」

 

 

悲鳴を上げるネギたち。

必死に抵抗しようとするシモン。

しかしヘルマンの無情な攻撃が振り下ろされる。

 

 

 

 

その時だった!

 

 

 

 

 

――――ドンッ!!

 

 

 

 

何かの音がした。

 

 

何が起きたか分からなかった。

 

 

しかしヘルマンの持っていたブーメランの刃は、シモンに突き刺さることなく粉々に砕けていた。

 

 

シモン、そしてネギたちを含め、一体何があったか分からなかった、そしてそれはヘルマンも同じ、ただ呆然としていた。

 

 

「えっ・・・・・な・・・・・何があったんだ?」

 

 

シモンが呆然としたまま、それだけを口にする。しかし誰も答えられない。

 

しかし次の瞬間、誰かの声がした。

 

 

「カミナの時と同じ光景を二度も見せようとするなんて・・・・・・」

 

 

全員が声の方向に振り向く。

 

 

「ちょっと見ない間に、ずいぶんと酷い男になったんじゃない?・・・シモン」

 

 

女の声だった。

 

「・・・・なっ・・・・あっ・・・・」

 

声の方向には、赤い長い髪をなびかせ、肌の露出の多い服を着て、豊満な胸を揺らし、そしてその手には自分の身長ほどあるライフルを持っている女がいた。

 

「だ・・・・誰です・・・あの人?」

「た・・・・助けてくれたの?・・・・シモンさんの知り合い?」

 

ネギたちは全員首をかしげる。

なぜなら彼らはいきなり現れたその女のことを知らなかったからだ。

 

「なんで・・・・お、おまえが・・・・」

「ぶ・・・・ぶみゅるうううう!!」

 

しかしシモンは・・・・そしてブータは・・・・その女のことをよく知っていた。

 

「お・・・・俺は・・・・夢を見ているのか?・・・・なんで・・・ここに・・」

 

シモンが震えながら声を上げる。

 

 

「何よ。人をお化けでも見るような目で!私が誰なのか、アンタはよく分かってんでしょ!」

 

 

ああ、間違いない! あいつだ! あの、強い微笑みを浮かべる女は、あいつしかいない!

 

 

「ヨーコ!」

 

 

シモンがその名を叫ぶ。

そう大グレン団のヨーコが目の前に居る。

シモンは驚きと興奮の声を抑え切れなかった。

 

「増援かね?」

 

ヘルマンの言葉は間違っていない。

しかしただの増援ではない。

 

 

「「「「えっ、ヨーコ!?」」」」」

 

「ねえねえ!ヨーコさんって確か!」

 

「そ・・・そうです・・・修学旅行の時にシモンさんが言っていた・・・・」

 

「シモンさんの・・・・初恋の人やて・・・・・」

 

「おいなんや?誰やあの姉ちゃん?」

 

 

ヨーコという名前に全員が驚く。

シモンはネギとシャークティたち以外には直接皆に話したことは無い。

しかしヘルマンと小太郎を除くここに居るもの全てがヨーコという名前を知っていた。

 

「あれがヨーコさん?・・・しかし何故?・・・・」

「おいどういうことだ!?シャークティ貴様何か知っているのか!?」

 

シャークティに詰め寄るエヴァ。しかしシャークティも分からない。なぜならシモン自身も驚いているからだ。

シモンはヘルマンを無視してヨーコへ駆け出す。

 

「ヨーコどうしてここに?いや・・・どうやってここまで?」

「ん~、説明はとりあえず後にしましょう。私も実はあんまりよく分かってないんだけど・・・今は・・・」

 

そう言ってヨーコは悪魔の姿をしたへルマンを見る。

 

 

「アイツが先なんでしょ?細かいことは後にするわよ!」

 

「ははは、そうだな」

 

 

ヨーコはそう言ってライフルを構える。

シモンとヨーコはお互いに笑いあい、そしてヘルマンに体を向ける。

 

 

「そんなシモンさんアカン!シモンさんボロボロやん!」

 

「そうです、ここは私たちに!」

 

 

木乃香と刹那がシモンを止める。しかし

 

 

「大丈夫よ。そうでしょシモン?こんな時に男なら・・・・・」

 

「ああ男なら、やせガマンだ!!」

 

 

シモンは気合を入れて戦う意思を見せる。

久しぶりに会ったにもかかわらず、まったく変わっていない戦友との再会で気合が入った。

 

「ちょっとやせガマンって!?そんなの無理よ!アイツすごく強いのよ!」

 

アスナの言葉にヨーコはフッと笑う。

 

 

「そんなことないわ。こんな状況でも・・・・ううん。こういう状況だからこそ、無理を通して道理を蹴っ飛ばすのが、私やシモンなのよ!」

 

「「「「!?」」」」

 

 

ヨーコは笑顔でそう言った。

そしてこの瞬間に全員が理解した。

この目の前に居るヨーコという女は間違いなくシモンの仲間なのだと。

 

 

「みんな、見ておけよ。最高の仲間と繋いだ絆は無限の力になることをな!」

 

「あら、魂は冷めてないようで安心したわ!」

 

 

並んで立つ二人の姿はとても絵になっていた。その姿に見ているものが引き込まれた。

 

「ところで、シモン?」

「なんだよ、ヨーコ?」

 

ヨーコがシモンに尋ねる。

 

 

「さっき、もしアイツに刺されて死にそうになったら、アンタ最後になんて言うつもりだったの?」

 

「えっ・・・ああ・・・・それは・・」

 

「あばよダチ公・・・な~んて、キザなセリフ言う気だったのかしら?」

 

「うっ・・・・」

 

 

ヨーコの言葉は図星だったため、シモンは言葉に詰まった。

だが、すぐに前を向く。

 

 

「違うでしょ!・・・・ここは・・・」

 

「ああ!」

 

 

ああ、そうだ。アバヨ、ダチ公なんて、そんなセリフは自分には似合わない。

そうじゃねえだろ、大グレン団。

こんな時、自分が言うべき言葉は! こんなとき、自分たちが言うべき言葉は!

 

 

 

「「いくぜ、ダチ公!!」」

 

 

これしかねえだろと、シモンとヨーコは力の限り叫んだ。

 

「まったく不愉快だ!一瞬で終わらせてくれる!悪魔アッパー!!」

 

ヘルマンの攻撃が大地を唸らせ向かってくる。

しかし、それをヨーコとシモンは二手に分かれて回避する。

 

「はいはい!ここはテストに出るから覚えておきなさい!一つ、無闇に女性に手を上げない!」

 

回避したヨーコはそのままヘルマンの四肢を自慢の超電導ライフルで撃ち抜く。

 

 

「ぐわあ!?バカな・・・魔力も纏っていない弾丸がなぜこれほど!?」

 

「ヨーコのライフルには常に気合という名の力が纏ってんだよ!シモンインパクト!!」

 

「ぐはあ!?」

 

「ほら二つ目!授業中に余所見をしない!!」

 

 

力を解放した悪魔モードのヘルマン。

しかしその力は二人の前に及ばない。

いや、及ぶはずがない。

 

「す・・・・すごい・・・息がピッタリです・・・」

 

刹那は思わず口に出した。それは他の者たちにも同じだった。

それは異様な光景だった。シモンもヨーコも魔力で体を強化しているわけではない。スピードだってネギや小太郎よりも劣る。

しかしその息もつかせぬコンビネーションが、まるで戦場でダンスを踊っているように見えた。

 

 

「すごいで・・・あの姉ちゃん・・・」

 

「あれがシモンさんのゆうとったヨーコさん・・・・すごい・・・・かっこええ・・」

 

「すごい・・・・私とネギのコンビなんかと全然違う・・・・」

 

 

アスナの呟きにエヴァが答える。

 

 

「本来魔法使いと従者のコンビは、魔法使いが呪文を唱えるまでパートナーが守るというのが定番だ・・・・・しかし奴らは・・・互いが互いを高め合っている」

 

「エヴァンジェリンさんどういうことです?」

 

「刹那。例えばお前が木乃香のパートナーだった場合、キサマは敵を倒すことよりも木乃香を守ることを優先する。しかし奴らは・・・お互いを信頼し、理解しあい、次に味方がどう動くのかを瞬時に理解している・・・・・その結果パートナーの力を最大限に引き出している・・・」

 

 

互いを守り合うのではない。互いの力を最大限に引き出し合う。

それが、限界を突破する力になる。

シモンとヨーコのチームワークにエヴァも脱帽している。

 

 

「すげーよ、兄貴・・・あれがヨーコさん!・・・・あれが、大グレン団なんだ!!」

 

「はい!・・・シモンさんが自慢するのも分かります!」

 

 

美空とシャークティは興奮気味に話す。

そう、ようやくシモンとブータ以外のグレン団に会えたのだから

 

「バカな・・・・何故これほどまで・・・・おまえたちは一体何者だ・・・?」

 

疲弊しているヘルマンが呟く。

 

「あら、知らずに戦ってたの?しょうがないから教えてあげるわ!・・・・シモン!」

 

ヨーコはシモンの名前を呼んだ、それにシモンは頷き、そして叫ぶ。

自分たちが誰なのか。

 

 

「出会った壁の分だけ絆を高める、無茶と無謀の螺旋道!!」

 

 

シモンにヨーコが続く。

 

 

「絶望あるなら風穴開ける!明日が無いならこの手で創る!!」

 

 

二人の魂が重なり合い、それが眩いばかりの光を生み出す。

 

 

「「心の魂、絆と変えて!無限の絶望突破する!!」」

 

 

ヘルマンは体を震わせる。

二人が何を言っているのかは分からない。

しかしこの二人が、とても大きな人間であることを理解した。

 

 

「「それが大グレン団!!俺(私)を誰だと思ってやがる!!!!!!」」

 

 

その瞬間シモンとヨーコの体には巨大な光が覆ったように見えた。

ネギたちも何も言えない。

それほどまでにシモンとヨーコに圧倒されていた。

 

「ぐっ・・・うっ・・・・うおおおおおおお!!」

 

ヘルマンがなりふり構わず突っ込んでくる。

その姿に先ほどまでの余裕はまったく無い。

一方、熱さを全開に出したヨーコだが、冷静にライフルでヘルマンを撃ち抜く。

 

「ぬっ!?」

 

ヘルマンの動きが止まる。

 

 

「シモン!あとヨロシク!!」

 

「おお!」

 

 

シモンは再び目元にサングラスを出現させた。

そしてそれを巨大化させてヘルマンに投げる。

そのサングラスは二つに別れ、ヘルマンの体を突き刺し拘束する。

そしてシモンはドリルを巨大化させる。

 

 

「いくぜ、必殺!ギガドリルブレイクーーーーー!!!!」

 

「ううおおおおおおお!?」

 

 

ヘルマンの叫びが響き渡る、

そしてシモンのギガドリルはヘルマンに風穴を開けた。

 

 

「「「「「やったーーー!!」」」」」

 

 

生徒達から歓声が上がる、今度こそ本当に勝利したからだ。

 

 

「くっ・・・・ネギ君ではなく・・・・君に不覚をとるとは・・油断したよ・・・」

 

 

体に風穴開けられた状態にもかかわらず、ヘルマンはまだ生きていた。

もっともそれ以上戦うことは出来ないようだが。

 

「油断?そんなもん無くても勝てなかったさ。大グレン団はそんな甘いもんじゃない」

「そんな状態で生きてるなんて、アンタもタフね」

 

シモンとヨーコが倒れているヘルマンを見下ろしながら言った。

 

「ハハハ、まあ私は悪魔なんでね・・・本来封印か高位の消滅呪文でしか対処できないのだ・・・・ネギ君・・・君はその呪文を覚えているだろう?」

 

ヘルマンの言葉に全員がネギを見る、しかし

 

 

「僕はアナタに・・・・トドメを刺したりしません・・・・・」

 

「ほう?このままでは召喚を解かれ自分の国に帰るだけで休養後には復活してしまうよ?私は君の仇だよ?」

 

「・・・たしかにあなたの言うように復讐心や憎しみで力を得られるかもしれません・・・でも僕は・・」

 

 

ネギは周りを見る。

 

 

「アスナさんたちや・・・・・シモンさんに、自分を信じてくれる人たちには、いつだって自分を誇れる自分でいたいからです。・・・そのうえで・・・自分の夢に近づいて見せます!」

 

 

ネギの言葉にヘルマンは高笑いした。

 

「ハハハハハハ、そうか・・・ではその時の君に会えることを楽しみにしているよ!!」

 

その言葉を最後にヘルマンの姿は消えた。

 

「かっこいいこと言うじゃない!ねっ、男の子!」

 

ヨーコはそう言ってネギの頭を撫でた。

 

 

「あっ・・・・ありがとうございます///」

 

「(ゆえ~、ネギせんせ~の顔が真っ赤)」

 

「(落ち着くです、のどか・・・・しかしたしかにキレイで強くて・・・・・神様は不公平です・・・)」

 

 

ネギはそれにすごく照れる。

ヨーコの先ほど見せたダイナミックな動きと変わり、今はとても暖かい笑顔を見せているからだ。

この姿にアスナたち同性の女性も見惚れるようなものだった。

 

「ぶにゅう!!」

 

ブータがものすごい勢いでヨーコへ飛び込む。

そしてブータはヨーコのその揺れる豊満な胸の谷間に飛び込んだ!

 

 

「「「「「なっ!?」」」」」

 

「ぶい・ぶい!!」

 

「ブータ!アンタ相変わらず小さいわね」

 

「ブ・・・ブータっち羨まし過ぎるぜ!お姉さん俺っちもーー!!!」

 

「やめなさいアホガモ!!」

 

「ははは。ブータは相変わらずそこが好きなんだな・・・・」

 

「シモンさん何じっくり見とるん!?」

 

「そ・・・そうです・・・お嬢様というものがありながら!・・私だって・・・いえいえ・・・・お嬢様だって数年したら・・・ゴニョゴニョ」

 

「おのれ~シモンめ~さては胸か?・・・く~・・・・」

 

 

ブータにとっては以前までなら当たり前だった行動に全員が驚愕した。

シモンは懐かしいものを見るような目でヨーコの谷間を凝視していたが、木乃香たちの怒りを買ってしまった。

しかし、それはそれとして・・・・

 

「さてヨーコ・・・・聞きたいことがあるんだけど・・・・」

 

少し皆も落ち着いてきたため、シモンは疑問を口にする。

そう、さっきは戦いの最中だったから聞かなかったが・・・

 

「どうやってここに来たんだ?」

 

そうそれが一番の疑問。

シャークティもエヴァンジェリンもシモンが違う世界の住人であることを知っているため、これは気になった。

するとヨーコはシモンにツカツカ歩み寄り、

 

「まずは・・・これから!!」

 

 

―――ドカッ!!

 

 

「「「「なっ!?」」」」

 

 

なんとヨーコはシモンをグーで殴った。

 

 

「よ・・・ヨーコ?」

 

「痛い?それは結婚記念日を無視されたニアの分よ!そしてこれが・・・カミナたちの分!」

 

 

そう言ってヨーコはもう一度シモンを殴る、

 

 

「そしてこれが・・・・私たちの分!!」

 

 

合計三発のパンチをシモンに食らわせた。

 

 

「・・・・ヨ~コ・・・・」

 

 

「ちょっとヨーコさん!?なにするん!?」

 

 

木乃香がヨーコを睨みつけるがヨーコはスッキリしたような顔で話をする。

 

「はいはい。これでお終い!じゃあ次は私がどうやって来たかよね~・・・う~ん・・・」

 

ヨーコは周りの声を無視して語り始める。

 

 

 

 

 

 

 

ヨーコが来る前のカミナシティ、

 

何度もグレンラガンでシモンに会いに行こうとして挑戦していたギミーは、まったく成果が出ないことに落ち込んでいた。

 

「さすがに、これはおかしいわねえ~~」

 

科学者リーロンは呟く。その言葉にヴィラルが食いつく

 

 

「おかしいも何もギミーの未熟が原因だろ?」

 

「それもそうだけど・・・・・グレンラガンを動かすコアドリルにはこれまでのシモンの膨大な螺旋力が蓄積されているわ・・・・それならシモンが地球のどこに居ても行くことは出来るはずよ」

 

「ではシモンさんは地球には居ないってことですか?・・・まさかガンメンで!?」

 

 

ギミーの妹、ダリーもリーロンに尋ねる。

 

 

「どちらにしろ、問題は・・・・・・ギミーの気合よりもグレンラガンの質量が問題じゃないかしら?」

 

「ど・・・・どうゆうことですか?」

 

 

体を起こしギミーが尋ねる。

 

 

「さっき言った通り、コアドリルにシモンの螺旋力も相当残っているからワープ自体は出来ると思うの・・・ただ・・その距離が遠いと空間を裂けて移動するのに、グレンラガンが大きすぎるのよ。つまりぃワープ発動と同時に空間に相応の穴を開ける螺旋力も必要になるってわけ~~」

 

「え?・・・・つまり・・・」

 

「・・・・シモンは相当離れた・・・・地球以外に居る可能性が高いってことね~」

 

 

とりあえず最後の言葉だけ全員理解できた。

 

「あの男は・・・・まさか新しい世界でも掘り当てたのか?」

 

ヴィラルが皮肉を込めて言う。それに全員うなずいた。

あいつならありえるだろうと、誰もが思ってしまった。

 

「それならどうしましょう・・・・・お手上げですか?」

 

総司令官ロシウが冷静に聞く。

 

 

「でも・・・グレンラガンじゃなければ行けるかもね・・・・」

 

「?」

 

「もちろん他のガンメンでもない・・・・人間大の大きさなら跳べるかもしれないわ」

 

「「「「???」」」」

 

「無理でしょ・・・・・ワープはラガンの機能でしょ?」

 

「確かにラガンの機能だけど、そのラガンを動かしたコアドリルには、そして私たち螺旋族の遺伝子には全ての機能がインプットされてるはずよ!ラガンの機能も元々科学ではなく私たち螺旋族の力。私たちの気合しだいで出来ちゃうんじゃない?」

 

「「「「「??」」」」」

 

 

全員まだわからない。

 

 

「つまり~、コアドリルと私たち螺旋族の遺伝子の力、つまり気合があれば、単体で行けちゃうってことよ~」

 

「「「「なにー!?それはスゴイ!!」」」」

 

「それならとっととやって見るぞ!」

 

「待ちなさい、ギミー。政府の軍人であるあなたが勝手に動くことは許しません」

 

「でも総司令官、じゃあ誰に行かせるんですか?ヴィラルさんは獣人だから螺旋力持ってないし・・・・・」

 

 

その時、

 

 

「私がやるわ!」

 

 

ヨーコが名乗りを上げた。

 

 

「今、学校は休みの期間だし、そうなると先生って仕事も暇になるのよ・・・・それにニアと約束したからね!」

 

「いいの、ヨーコ?生身で空間を通るのは危険が無いとも言えないのよ?」

 

「そのためにコアドリルがあるんでしょ?それに明日を賭けた私たちの魂が守ってくれるわ!」

 

 

ヨーコはそう言ってギミーの前に手を差し出した。それにギミーがおずおずとコアドリルを差し出す。

 

 

「今度ヨーコさんが帰ってくるまでに・・・・・もっとそれにふさわしい男になってます」

 

「わかったわ、ギミー!これは必ずあなたに返しに来るわ!」

 

 

ヨーコはそれを受け取り、シモン、そしてブータを思い浮かべる。

あの二人は今でも生きていると信じて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

というやり取りがあってヨーコはシモンとブータの居る場所まで来ることが出来た。

しかし、ヨーコには当然リーロンの説明を全て理解できていなかったため、少し考えてから

 

「じゃあ次は私がどうやって来たかよね~・・・・・・う~ん・・・」

 

一瞬間を置いて

 

 

「・・・・・気合で来たのよ」

 

「そうか気合か!」

 

「「「「・・・・・・はっ?」」」」

 

 

それで説明は終わってしまった。

 

「あの~シモンさん納得したんですか?全然説明になってませんよ?」

 

シャークティは納得いかないような顔をするが

 

「いいんだ、シャークティ。俺たちは気合で何でも片付けられる。それに何より今、俺の前に本物のヨーコがいる・・・・それで充分だ!」

「相変わらずで助かったわ。でも、アンタもニアをほったらかすなんていい度胸よね!そして随分かわいらしい子たちに囲まれてるじゃない。一年ちょっとで浮気?」

 

ヨーコは笑いながらシモンに聞く。

 

 

「なに言ってんだ、俺は今でも二ア一筋だよ!」

 

 

その言葉に少し体を震わせる木乃香たち。

しかし、ヨーコとシモンの作り出す二人の世界に足を踏み入れることが出来なかった。

そこに踏み込んだのが美空だった。

 

 

「兄貴~、この人がヨーコさんなんでしょ?噂どおりのナイスバディっすね~」

 

「兄貴?シモン・・・・この子・・」

 

 

するとシモンはココネと美空、そしてシャークティを手で引き

 

「ああ、美空、ココネ、シャークティ・・・・俺の家族だ!」

 

と答えた。

 

「そっか・・・アンタも自分なりに前へ進んでいるようで安心したわ!よろしくね!」

 

ヨーコは深くは聞かなかった。

一瞬驚いたものの、その表情は嬉しそうに、そして安堵したように笑っていた。

ヨーコは屈み、ココネの頭などを撫でて自己紹介などをしていた。

しかしエヴァや木乃香たちは穏やかでなかった。

 

 

(これがヨーコか・・・・・シモンがかつて惚れていたという・・・・・)

 

(なんでやろ・・・・二人の間に入れへん・・・・・シモンさんもあんなうれしそうな顔して・・・・)

 

 

シモンのヨーコに対する無条件の信頼や、お互いを理解しているその雰囲気に嫉妬していた。

 

 

「私も聞きたいことあるけど今日はもう疲れたしね。シモンどこに住んでんの?私も泊めてよ」

 

「「「「!?」」」」

 

「ああ、わかった。いいよな? シャークティ」

 

 

「えっ?・・わ・・・私は構いませんが・・・」

 

 

ヨーコの発言に全員肩を震わせた。

 

 

(え!?シモンさんの所に泊まるて・・・・・う~、ヨーコさんナイスバディやし・・・)

 

(おいおい男の所に簡単に泊まるだと?・・・いくらシャークティがいるとはいえ・・・・・・本当にシモンは振られたんだろうな?)

 

(ちょっとゆえ~こんなすごいキレイな人が・・・・・)

 

(たしかに・・・・ものすごい胸です・・・・・木乃香さんを応援すると言いましたが、こんな美人と寝泊りなんてしたらシモンさんも・・・)

 

 

皆、ヨーコの胸とその服装を見る。

今のヨーコは短パンとビキニにジャケットだけ羽織るという、ものすごい大胆な服装だった。

いつも見慣れていたシモンならまだしも、ヨーコの肌の露出の高さはこの世界では、さらに彼ら中学生から見ればとてもすごいものだった。

 

「ちょっとヨーコさん!?それはマズイんじゃない!?」

「そ・・・そうです・・・ももも・・・もし間違いがあったら」

 

アスナと刹那が皆の気持ちを代弁するように言う。

こんなセクシーな女とシモンが寝泊りしたら間違いが起こる!と思っていた。

もっとも二人にはそんな状況は考えられないのだが、恋愛経験に乏しい彼女たちには、シモンとヨーコのような性別を超えた友情を理解出来ていなかったからだ。

 

「大丈夫よ、その時はシモンを蜂の巣だしね♪」

 

ヨーコはウインクをしながら答える。

まったく動じない大人の余裕が出ていた。

 

「とりあえずみんな助かったし、大きな怪我も無い。今日はこれまでにしよう!」

 

シモンが皆に解散を告げる、その時

 

「アンタはそうでもなさそうね?グレンラガン無しで相当無茶してたわね」

 

ヨーコはそう言ってシモンの腕を自分の肩に回した。

さすがにやせガマンも限界に来たようで、ヘルマンにやられた傷が大きくフラフラのようだ。

 

 

「ああ、でもそれが俺なんだって、お前なら知っているだろう?」

 

「そうね!まあ、とにかくアンタが生きててホッとしたわ」

 

 

そう言って二人並んで歩き出す。美空やシャークティもそれについていく、

 

「美空、あなたも今日は教会に泊まりなさい。色々とあるでしょうから」

「あっハーイ、そんじゃあネギ先生、アスナたちもおやすみ!また学校でね~」

 

一度挨拶をして、美空とココネは、シモンたちを追いかけた。

 

「はい!あのヨーコさん・・・今日はありがとうございました!」

 

ネギが丁寧にお辞儀をすると、ヨーコは笑顔でサムズアップをして応え、そのまま立ち去った。

あとに残されたネギたち、

 

「何か驚くことばかりでしたね~、あれがヨーコさんか~」

「ああ、しかもあの姉ちゃん相当戦い慣れしとる。シモンの兄ちゃんより運動能力高いんとちゃうか?」

「でもカッコよかったわよね~、何かああゆう女の人憧れるかも。シモンさんが好きになったのも分かるわね!」

 

ネギと小太郎がヨーコについて語りだした。アスナもヨーコに関心を示したようだ。

 

「せやな・・・・キレイで強くて信頼されてて・・・ウチなんてまだ傷ついたシモンさんも治せへん・・・・」

 

木乃香は少し落ち込んだ様子だったが、すぐに顔を上げた。

 

 

「でも負けへん!ウチだって数年後にはもっとボインに成長しとる!」

 

 

アスナたちもその木乃香の態度を見て少し笑い、そして自分たちも帰ることにした。

しかしその時、刹那があることに気づいた。

 

「あれ?・・・・エヴァンジェリンさんと茶々丸さんが居ませんね?」

「ほんとだ・・・エヴァちゃんもう帰っちゃったのかな?」

 

その時木乃香はハッとした。

 

 

「アカン!?抜け駆けや!?」

 

「こ・・・・このちゃん?」

 

「ウチも今日、教会泊まってくる!アスナ、ネギ君、明日の朝ごはんスマンけど自分で作ってや!」

 

「はっ?木乃香?」

 

「ほなな、おやすみ!」

 

 

木乃香はそう言うとシモンたちを追いかけていった。

あとに残されたアスナたちは少しため息をついてから笑った。

 

 

「木乃香もがんばってるわね~、まあ7年間の勝負だからもっとゆっくりしてもいいのにね・・・・で、刹那さんはいいの?」

 

「えっ!?わたわた私ですか?・・・・私はシモンさんを信頼してますし・・・・・お嬢様がそれでいいなら・・・・・・心配なので私も行きます!」

 

 

そう言って刹那も木乃香を追いかけていった。

 

「あの~刹那さんたちどうしたんですか?」

「アンタは気に・・・・いや本屋ちゃんのこともあるし、少しは気にしたほうがいいかもね」

 

アスナはネギにそう言うが、自分にも同じことが言えると思った。

 

「まあ、私も人のこと言えないか~、もうすぐ学園祭だし・・・・私も今年はがんばって勇気出してみようかな・・・・」

 

アスナは30代の髭を生やしている男を思い浮かべた。

のどかや木乃香のように自分も想いを伝えるべきか、夜空を見上げ考えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方エヴァはシモンたちを追いかけていた。

 

「おいシモン!」

「あれ?エヴァ、茶々丸、お前たちどうしたんだ?」

「マスターがどうしても「茶々丸は黙っていろ!」」

 

エヴァが追いかけてきたことに、少し驚くシモンたち、

 

「随分と態度の大きいお嬢ちゃんね、この子も友達?」

「ん?ああそうだけど、それでどうしたんだエヴァ?」

「ふん、キサマら、私に隠してまた重要なことを話したりするのだろうが、その手には乗らんぞ!」

 

どうやらエヴァはヨーコが来たことにより、またシモンは自分たちのことをシャークティたちに話していくことを察したようだ。

最近では美空やシャークティの方が遥かにシモンを知っているうえに、木乃香などは告白までしている。

さすがにこれ以上置いていかれるわけにはいかないと判断し、追いかけてきたのである。

 

「今日は私も一緒に泊まるいいな!」

「あなたは本当に我侭な・・・まあいいでしょう・・・」

「お世話になりますシャークティさん」

 

エヴァの突然の発言に頭を抱えるシャークティだが、エヴァの気持ちも分からないでもないので仕方なく了承した。

そしてエヴァはヨーコを睨みつけ、挑戦状を叩きつける。

 

 

「少し胸がでかいぐらいでいい気になるなよ!この露出女め!」

 

「え?」

 

 

エヴァの言葉に首をかしげるヨーコ、

 

「シモン、この子いつもこうなの?」

「エヴァは基本的に態度でかいよ」

「でも初対面の私にここまで・・・・・あっ・・・・はは~ん☆そうゆうことか・・」

 

ヨーコはエヴァの態度に何かを気づいたようだ。

エヴァとシモンを交互に見てニヤニヤ笑う。そしてシモンの頭を軽く叩いた。

 

「っ、なんだよ、ヨーコ?」

「別に~、アンタがそんな女たらしだと思わなかっただけよ~」

 

急に殴られてわけが分からないシモン。そしてヨーコはエヴァを見て、

 

「私が胸だけかどうか今後教えてあげるわ!シモンが欲しければまず私を通らないとね!」

 

余裕の表情でエヴァを見る。その態度にエヴァもカチンと来た。

 

 

「上等だ! 受けてたってやる!」

 

 

シモンとココネは状況を理解できず、シャークティは少しやれやれといった感じで、そして美空は少し興味心身とばかりエヴァのヨーコに対する宣戦布告を見ていた。

そして、

 

 

「なあ~~!」

 

 

木乃香の声もした。振り返ると木乃香もエヴァと同様にシモンたちを追いかけてきた。そして木乃香は

 

 

「シャークティさん、ウチも泊まってええ?」

 

「・・・・・はあ・・・・・・・まあ・・・いいです」

 

 

シャークティは半ばあきらめ気味に呟いた。

それを聞き、木乃香は少し笑ったあと、ヨーコを見て、

 

 

「ウチ負けへん!」

 

「・・・・・・ハア・・・・・シモン・・・アンタはそんな男じゃなかったはずよ・・・」

 

 

木乃香からエヴァと同じものを感じたヨーコはもう一度シモンの頭を軽く叩いた。

そして木乃香に振り向き、

 

 

「いいわ、まとめて相手してあげるわ!かかってらっしゃい!」

 

 

ヨーコ自身がシモンに抱いている感情は友情なのだが、木乃香たちの挑戦を快く引き受けた。そしてさらに

 

 

「あ・・・あの////」

 

「あれせっちゃん?」

 

「そ・・・・・その////」

 

「・・・・・・・どうぞあなたも泊まっていきなさい・・・・・」

 

「/////」

 

 

もうさすがにわかったため、シャークティも刹那が何かを言う前に言った。

刹那は顔を真っ赤にしてお辞儀をする。

 

(え?・・・・まさかこの子も?)

 

刹那のモロバレの態度。木乃香は気づいていないようだが、ヨーコは一瞬で察した。

 

 

「ねえ、シモン?」

 

「なんだよ、ヨーコ?」

 

「あんたも大変だったようね。苦労するわよ?」

 

 

別れていた間に色々なことがあったであろう戦友の労をねぎらいながら、夜が更けていく。

 

 

とにもかくにも、この世界に、新たなる螺旋の戦士が現れたのだった。

 


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