魔法はお前の魂だ(魔法先生ネギま✖天元突破グレンラガン)   作:アニッキーブラッザー

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第232話 見届ける

『こ、これはァ!?』

 

 

会場中が声を出して驚くよりも前に、ネギの千磐破雷(チハヤブルイカヅチ)とシモンのラゼンガン・インパクトがぶつかり合い、閃光が弾け飛ぶ。

光そのものとなったネギと、光のドリルに包まれたシモンの、二人の技がぶつかり合い、激しい衝撃音が伝わってきた。

 

 

(この技は螺旋王の!? どうやって!? それにシモンさんは既に限界だったはず・・・いや、シモンさんに限界はないって言ったのは僕だ・・・でも、これは・・・)

 

 

一瞬の動揺が、真っ直ぐなシモンに押し切られ、勢いを増したシモンのドリルが次の瞬間、ネギの光を弾き飛ばした。

だが、ドリルがネギの胸に飛び込んでくる寸前のところで、彼は真横に避けてドリルの直撃から回避し、そのまま地上へ降り立つ。

真上を見上げると、天高らかに上昇する巨大なドリル。

 

「だ、大丈夫かネギィ!?」

「大丈夫だよ、直撃は避けた! それより小太郎君、直ぐに構えるんだ!」

「・・・ああ・・・さっきまでとは違う・・・背中に汗かいてもうたで・・・」

「うん、・・・どうやら僕たちは・・・・」

 

やがて上空まで進んだドリルが回転を止め、光の渦が治まると、中から螺旋の炎を頭に燃やしたシモンが、上空から見下ろしていた。

 

 

『な、なんということだァ! 今シモンから放たれた技は、間違いなくラゼンガンの技です! 一体何があったと言うのだ! この衝撃の事態に、私も驚きを隠せません! しかしシモンはまだ戦う! その身が朽ちるまで戦うつもりだァ!』

 

 

その堂々とした姿に武者震いをさせながら・・・

 

「どうやら、あの人の本領を発揮させたようだね!」

 

そしてシモンは、間髪入れずに地上に居る二人に向って降下する。

 

「はっ、上等や! 本領発揮のグレン団と戦ってこそ、男ってもんや!!」

「なら、行くよ!! こっちも・・・・全力全開超開放だ!!」

 

何故、シモンがロージェノムと同じ技を?  

だが、考えている暇など与えられない。息を呑む間も与えない。

 

「いくぜ! 千年の時を込めたこの力、簡単には行かねえぜ!!」

 

体の傷が治ったわけではない。

 

(・・・まだ・・・動く・・・)

 

疲労が完全回復したわけではない。

 

(まだ・・・心は折れていない・・・・)

 

コアドリルの気まぐれか・・・それとも奇跡か・・・ロージェノムの意思なのかは分からない。

 

(ならば・・・最後まで受け止めてやる・・・・この身の痛みぐらいなら・・・・心さえあれば・・・まだ・・・俺は戦える)

 

しかし、いかに螺旋力を得ようとも、先ほどのような大技の衝撃に耐え切れる力はシモンにはもう残っていない。自分の出す技の衝撃すら、シモンにとっては苦痛だった。

しかし、それがどうしたというのだ?

 

「我流犬上流獣化奥義!!」

 

そんな情報など、無意味だということを、むしろ彼らが一番良く分かっていた。

 

「狗音影装!!」

 

狗神を肉体に取り込み、獣化の中でも最強形態。

 

 

『おおーーーっと、コジローも獣化の外装を身に纏い、最強の力でシモンを迎え撃つ! そして、ナギ選手・・・これは・・・』

 

 

漆黒の巨大な狗神、牙と爪を光らせて、シモンに狙いを定めている。

 

「流石に驚いたで。まさかあんな隠し技があるとはな!」

「隠していたわけじゃねえ! 新しく覚えたんだよ!」

「はっ、ええな~、兄ちゃんなら何でもありや! さあ、いくで兄ちゃん・・・どこまでも・・・・どこまでも行ったるで!!」

「どこまでも来やがれ!!」

 

シモンの螺旋槍と小太郎の爪が交差する。

激しい金属音を響かせ、闘技場内を駆け巡る。

だが、手数は小太郎の方が上。

 

「へっ、スピードは変わってへんようやな! 鈍重な武器で俺を仕留めることはできひんぞ!!」

「そうかな?」

「!?」

「だったら、こいつはどうだ!」

 

シモンが左手にドリルを持ち、開いた右腕を小太郎に向ける。すると、シモンの全身からドリルが伸び、全てが小太郎目掛けて襲い掛かる。

それはフルドリライズのように全方位に向けたドリルではない。

シモンの腕の指示の方角に伸び、そしてそのドリルは鞭のようにしなやかに、小太郎に向けて放たれた。

 

「な、なんやとォ!?」

 

小太郎も辛うじて回避していく。だが、技のスピードとキレが、段違いである。

そしてこの技も見たことがある。

 

 

『こ、これも・・・これもラゼンガンの技だ!? 一体どういうことだ、シモン! 天敵である螺旋王の技をも自在に操ります!! しかし、コジローはたまらず後退! 流石はシモン、獣人には強かったァ!! 速い速い速い!』

 

 

ラゼンガンの技。

そして、映像で見る限り、パワーはグレンラガンが上でも、機動力とスピードはラゼンガンが上だった。

しなるドリルの鞭が、高速で逃げ回る小太郎を追い詰めていく。

 

「くっ・・・・・ウルァ! 爆ぜぇ!!」

 

溜まらず小太郎が口の中から気弾を放出し、小太郎の合図と共に爆発する。

その勢いにより、シモンのドリルが弾かれ、小太郎は致命傷を避けられた。

しかし・・・

 

「チコ☆タンの爆発は・・・・・」

「なっ!?」

「こんなもんじゃなかったぞォ!!」

 

立ち込める爆炎の中から、ドリル片手にシモンが飛び出した。

 

「しっ、しま!?」

「俺の攻撃は遅い・・・だから当たらなければ意味がない・・・でもな、当たれば・・・」

「くっ!?」

「でけえぞォ!!」

 

突き刺さる。

天井を・・・天を・・・世界を・・・銀河を貫いた男のドリルを、小太郎は真正面から食らった。

 

「が、ガハァ!?」

『捉えたァァ!! シモンの息もつかせぬ手数に足を止められ、天を突くシモンのドリルがコジローに風穴開けるゥ!!』

 

文字通りの一撃必殺の攻撃は、たった一発で小太郎の足を止めた。

 

「こ、こここここここここ、小太郎君!?」

「お、落ち着くんだ夏美。まだ彼も大丈夫だ」

 

染み渡る一撃の重み。

 

(へっ、効いた~~~、これが兄ちゃんのドリルかいな)

 

世界を変えたドリルの威力。

もし、この男が本調子なら、・・・ギガドリルブレイクなら・・・想像しただけでゾッとしてしまう。

だが・・・・

 

「なんちゅう一撃や・・・だがな・・・耐えたで!!」

 

堪えきった。

傷は軽くない上に、血もいくらか吐き出しているが、強固な外装を纏っていた小太郎を仕留めるまでには至らなかった。

そして・・・

 

「兄ちゃん・・・・あっちも準備できたみたいやで?」

「なに?」

 

ニヤリと笑う小太郎に、シモンはハッとなって後ろを振り返る。

するとそこには、両手を交差させて、巨大な雷を放出しているネギが居た。

その両腕に刻まれた光が、千の雷を掌握し・・・

 

 

 

「左腕(シニストラー) 解放固定(エーミッサ・スタグネット) 千の雷(キーリプル・アストラペー)!! 右腕(デクストラー) 解放固定(エーミッサ・スタグネット) 千の雷(キーリプル・アストラペー)!! 双腕掌握(ドゥプレクス・コンプレクシオー)!!」

 

「なにッ!?」

   

「術式兵装(プロ・アルマティオーネ)!!」

 

「・・・・こいつは・・・・」

 

「雷天大壮2(ヘー・アストラペー・ヒューペル・ウーラヌー・メガ・デュナメネー)!!」    

 

 

天衣無縫の力を生み出した。

 

『で、出たァァァ!! ナギ選手の最終奥義! あのラカンを粉砕した最強の力! 雷天大壮2だァァーーーッ!!』

「ラカンを? ・・・・なるほど・・・・それか・・・・」

 

背筋にゾクリと寒気がした。

伝わってくるのだ。

 

(な、んだ・・・・・この力は・・・)

 

ラカンを力で超える、ネギの無理を通したその力。

こうして正面に対峙しているだけでも伝わってくる。

奥の手を惜しみなく繰り出すネギ。

その底が知れない力に、シモンは背筋を振るわせた。

そして・・・・

 

「・・・・勝負・・・あったか?」

 

この状態のネギを見て、リカードが呟いた。

 

「ああ・・・どうやらこれまでのようじゃのう」

「これを打ち負かすのは、もはや気合とかいうレベルじゃないからね」

 

ネギの力を知る彼らは、この戦いの勝敗を既に見た。

 

「たしかに・・・螺旋王の力だか知らねえが、今のシモンは騙し騙しだ・・・・後一撃食らえば、・・・ギリギリで繋ぎとめている心も切れるだろうな・・・」

 

ラカンも否定しなかった。

自身を打ち破った力だからこそ、仮にシモンのことを良く知っていたとしても、結末を既に感じ取っていた。

何とか予備電源を振り絞ったシモンとはいえ、微塵の油断もしていない、今の状態のネギたちに勝つ見込みはない。

正直これまでだろうというのが、大方の見方だった。

 

 

そして・・・

 

 

今正に同じ光景を・・・

会場の屋根の上で、彼らの戦いを黙って見下ろす男が居た。

終始無表情で、何を考えているかは分からない。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・」

 

だが、男は決して彼らの攻防から目を放さず、その瞳に焼き付けていた。

彼にとって、自分の生きる目的のような存在でもある、ネギとシモン。

勝敗や力比べが見たいのではない。

 

ただ、魂を振り絞る二人のぶつかり合いに、フェイトは柄にもなく気になり、わざわざ姿を現した。

 

世界がこの舞台にくぎ付けになっている以上、彼の存在が見つかる心配はないのだが、実に大胆な行動に出たものだ。

恐らくフェイトの従者は今頃焦って探し回っている頃かもしれない。

しかしフェイトは来た。従者の少女たちにも言えない自分の感情を隠し通したまま、彼はネギとシモンの行く末を見届ける。

だが、集中して見ていたのか、フェイトは気づかなかった。

 

 

「ひゃはははは、いよう、こんなところで何をやってるんだい? 世界の守護者様が今頃俗世間にでも興味を持ったのか?」

 

「!?」

 

 

闘技場の屋根の上に、自分以外の気配が現れたのを、彼は寸前まで察知できなかった。

 

「・・・・・・君は・・・・・」

 

フェイトは、目を見開いて、目の前に現れた男から目を離せないでいた。

これほど接近されて何故気づけなかったのかと・・・

これほどの存在感を何故気づけなかったのかと・・・・

 

 

「久し振り・・・・それとも初めましてか? くっくっく、悪いね~、お前たちの判別できなくてよ~。人形は皆同じ顔に見えるからな~」

 

 

不快な空気を身に纏った、ユウサがフェイトの前に現れた。

 

「人形でも口はついてるだろ? もう一度言うぜ、テメエは俺とは初顔合わせか?」

「君とは初めましてだよ・・・・狂い笑いのユウサ・・・・」

 

世界に気取られぬように、彼らは出会った。

今この世界で最も危険な二人の会合と言っても良いだろう。

品のない笑みを浮かべながら、歩み寄るユウサに対し、フェイトは表情を変えぬまま、しかしいつでも動けるように身構えていた。

 

「おっ、そうかい? まあ・・・どっちにしろアーウェルンクス・・・テメエがここに居るってことは、どうやらこの茶番な世界が終幕を迎えるってのは本当みたいだな」

 

話の核心をいきなりついてくるユウサ。フェイトの眉が僅かに動いた。

 

「・・・・なるほど、噂通りの地獄耳・・・・・そして下賎な男だ・・・。それに何故君がここにいる。君は死んだと聞いていたが・・・それにこの世界にも既に興味がないと聞いたんだが、逃げてきたのかい?」

「くっくっく、祭りがあるって聞いたんでな。ちょいと参加しにな。それに、仮にも数年は楽しませてもらった舞台だ。興味が失せても終幕ぐらいは見届けようと思ってな」

「・・・・・・・・・」

「安心しろよ。今回ばかりは完全な傍観者だ。引っ掻き回すのは程々にしてやるよ。テメエらは勝手に親玉の遺志でも貫いてな。それにしても・・・ひゃはははは、嫌味の一つも言えるあたりは、妙な人間臭さがあるじゃねえか。くっくっく、その感情を埋め込んだのは、誰の仕業だ? それともテメエの意思なのかい?」

 

不快・・・その一言に尽きた。

先ほどまで、胸が僅かに高鳴っていたというのに、今では冷たく、興が削がれた気分だった。

 

 

「ふう・・・・君とこれ以上語ると・・・非常に不愉快になる・・・・」

 

「ひゃはは、よせよせ、初顔合わせでもテメエらの能力は知っている。俺には効かねえよ。それに・・・ふふふ・・・こ~んなところで機能停止してもつまらねえだろ? あんまりなめてっと、壊しちまうぜ?」

 

「・・・・・試してみるかい?・・・・・」

 

 

フェイトが軽く腕を挙げ、そして場の空気が若干変わった。

ピリピリと痛い空気を発しながら、フェイトはいつでも相手になるといった態度で、ユウサに構える。

だが、ユウサはそんなフェイトの気迫を正面から受け、むしろ・・・

 

 

「くくく・・・ひはーッはははははは! 安くありきたりな挑発だな。世界の守護者様なら、もっと気の利いた殺し文句を言えよ。じゃねえと俺の心を震わせることはできねーぜ?」

 

 

・・・笑った。

それが尚更気に食わなかった。

 

「・・・君には分からないさ。僕のことも・・・大義も・・・目先の欲望や快楽ばかりに動く君みたいな低俗な者にはね」

「ふん、分からねーな。だが、長年世界を見てきた先輩としては、大義を振りかざす奴に限って戦争したがるってことぐらいは知ってるぜ? テメエもその口か?」

「・・・・・・・・・・」

「睨むな睨むな。まー、お前を壊しちゃってもいいが、俺は今すこぶる機嫌がいい。次にやりたい暇つぶしも、オモチャも既に見つけたしな。この世界はテメエにやるよ。好きにしな。派手なフィナーレを飾って、世界をひっくり返し・・・新たな時代の幕開けに相応しいファンファーレを鳴らしてくれよ。チコちゃんたちには鳴らせなかった・・・・特大の花火をな!」

 

肩をすくめてユウサはフェイトに背を向け、その場から遠ざかった。

 

「・・・・ゲスめ・・・・」

「くっくっく、だが・・・俺には心がある。自分を飾らず偽らねえ心がな。人の使命で動くテメエらには分からねえだろうがな」

 

そしてチラッと視線を闘技場に向けながら、機嫌よく笑いながらこの場を後にした。

 

「さて、・・・とりあえず今は、その時代を担うものたちの輝きを見せてもらおうじゃねえか」

 

世界が気づかぬ、一触即発の危険な会合。

 

「さあ、見せてみろ。どっちの心が時代を創るんだ? そして、俺の楽しめる世界を用意してくれる?」

 

誰も知らず、誰も気づかず、破滅の足音は刻一刻と近づいてきた。

 

 

だが、世界も気づかぬほど夢中になっていた、この戦いにも終幕は見えてきた。

 

 

 

『さあ・・・ナギ・・・コジロー・・・そしてシモン。三者中央で睨み合う! いよいよこの攻防に終わりが近づいてきたか!? ナギもコジローも油断は一切していない!』

 

欠片も油断しないにも限度があった。

 

「本調子なら分からんかったかもしれんが・・・いかんせん、あやつにはもう体力がない・・・・」

「・・・いや、それ以前に最初から持久戦に持ち込めば、2の状態どころか、雷天大壮する必要すらなかった。そこまで徹底するかよ。ネギのやろう」

「それだけ・・・シモンさんに油断をしていないのか・・・・いえ、・・・もしくは・・・・・・」

 

ラカンを打ち倒した力。

それを既に半死状態のシモンに使うなど容赦ないにもほどがある。

それほど、ネギはシモンに対して警戒心を持ち、油断も慢心も持たないことの現われなのか・・・

 

(奥の手か・・・まずいな・・・・・やっぱもう、・・・体が・・・思うようにいかねえ・・・・心に・・・体がついていかねえ)

 

というのが半分の見方。

もう半分は・・・・

 

「本当に・・・欠片も油断しないんだな・・・お前たちは・・・・」

「当たり前です。あなたが誰なのか・・・・嫌というほど思い知っているのですから。それに・・・そうじゃないと・・・失礼ですから・・・」

「せやな。兄ちゃんはどうみてもボロボロ・・・こっちは体力全快の二人掛りやっちゅうのに・・・・・・」

 

ズタボロで底を突いた自分自身。そんな自分に対して世界最強クラスの少年たちは、己の力を全解放して口にした言葉は・・・・

 

「ほんま兄ちゃんは尊敬するで」

 

シモンに対する尊敬の言葉だった。

 

「認めるからこそ・・・手抜きなんか出来んからな・・・・」

 

そう、シモンに敬意を表するからこその、全力だった。

力を隠してシモンに勝つなど、そんなこと許せなかった。

だからこそ、本来必要ないはずの力も、力比べも正面衝突も、ネギたちは使った。

 

(・・・ガキのくせに・・・・・・)

 

決して折れない、抗ってやる、そんな想いを常に抱いて突き進んでいたシモン。

それは、どこか敵への反逆精神が生み出していた力のようなものだった。

 

「僕たちは全力であなたにぶつかります」

 

しかし・・・

明らかに既に形勢が決まった相手から、自分に尊敬の念を与えられ・・・・

 

 

(・・・・・ふっ、これまでかな・・・・・)

 

 

それは揺らぐことのなかったシモンの心を十分に満たしてしまうものだった。

自分はもう十分に応えてやっただろう。

今の彼らに打ちのめされるのなら、それも悪くないかもしれない。

そんな考えがシモンの頭の中を巡った。

今ここで倒れれば、楽になるかもしれない。

もう、これで終わらせられるかもしれない。

意識が徐々に遠のく中、シモンはバランスを崩して真後ろに倒れそうになった。

 

 

「「行きます(行くで)!!」」

 

 

敵を敵だと思わなくなってしまったら、思いのほか心が潔くなってしまった。

気持ちよくこいつらにぶっ飛ばされて、終わりにしようとさえ思ってしまった。

それだけシモンもまた、この二人を認めた。

唸る少年の二つの拳が、迫ってくる。

容赦なく・・・

油断なく・・・

真っ直ぐに自分に向ってくる。

 

 

「雷華崩拳!!」

 

「狗音爆砕拳!!」

 

 

避ける気力もない。

シモンは、手にあるドリルを思わず手放してしまった。

 

(流石に一人で戦うには・・・・・・キツかったな・・・)

 

正面から受け止めてやろう。それが自分の最後の務めだと、シモンは微かに笑みを浮かべた。

だが・・・

 

その時・・・

 

手放したドリルに異変が起こった。

 

 

――シモン・・・・・・

 

「!?」

 

――シモン・・・・私はここよ

 

 

誓って言う。

シモンは何もしていない。

シモンは攻撃を間違いなく食らうつもりだった。

だが・・・

 

「なっ・・・・」

「なんやとォ!?」

 

二人の顔が、予想外の事態に驚愕した。

いや、シモンは予想外の上を行く人間である。

それは許容範囲内のはず。

だが・・・これは・・・

 

 

『な、何いい!? シ、シモンが手放したドリルが・・・勝手に動いて、ナギとコジローの前に立ち塞がり、拳を防いだァァ!!』

 

 

手放したはずのドリルが光を纏い、シモンの意思とは別に、まるで自ら意思を持っているかのように勝手に動いた。

そしてネギと小太郎の拳が着弾すると同時に、強烈な光・・・いや、螺旋力の防壁を張り、ドリルはシモンを守ったのだ。

 


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