魔法はお前の魂だ(魔法先生ネギま✖天元突破グレンラガン)   作:アニッキーブラッザー

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第231話 お前の魂、俺にくれ!

さあ、ショータイムの始まりだ。全員一瞬たりとも目を背けるなと、会場中の想いが響き渡る。

だが、それは当事者の彼らにとっても同じこと。

 

 

「さっそくいくで、狗族獣化!!!!」

 

「・・ふっ、超銀河ァ!!!!」

 

 

そして・・・・

 

 

「解放・固定(エーミッタム・エト・スタグネット)!! 『千の雷(キーリプル・アストラペー)』!!  掌握(コンプレクシオー)!! 術式兵装(プロ・アルマティオーネ)!!」

    

「ん?」

 

『おーっと、ナギ選手いきなり来ました! 準決勝のラカン戦と同じ技!』

 

 

試合開始と同時に全員いきなり大開放!

白銀の光に包まれて、全身がスパークするネギ。

流れる空気が痺れるように痛い。コケ脅しには見えない

 

 

「雷天大壮(ヘー・アストラペー・ヒューペル・ウーラヌー・メガ・デュナメネー)!!!!」

 

 

天に轟く稲妻を、自らの体内に全て取り込み、己自身を雷神と化したネギの新技。

初めて見たシモンにすら、その脅威を一瞬で感じ取ることが出来た。

 

 

『さあ、きたきたきたきたァ!! ナギ選手の変身技! そして、コジロー選手の獣化による本領発揮!! グレンラガンのない、シモン選手! 大グレン団の仲間無しで、これを乗り切ることが出来るのか!? その答えは彼のドリルに詰まっている!』

 

 

魂のぶつかり合いが始まった!

だが、そんな中、シモンは自分の体の異変に気づいた。

 

(体が・・・重い・・・・)

 

超銀河の光が弱い。

いつものように、無限に溢れ出す力も感じない。

それも当然だ。彼は既にガス欠状態なのである。

ギガドリルブレイク、ギガドリルマキシマム、超銀河ギガドリルブレイク、ギガドリルブレイク新生大グレン団スペシャル、おまけに大人数との大喧嘩に加えてチコ☆タンとの戦いによる疲労と怪我が、既にシモンをギリギリまで追い込んでいた。

しかし・・・

 

(だからって・・・折れるわけにはいかねえよな・・・)

 

決して弱音を口に出さずに、残りの螺旋力と気合に賭けて彼は構える。

 

(何分持つ・・・・・・でも、その数分だけは耐えてくれ!)

 

全ては目の前に居る・・・・

 

(俺を目指した奴らに、精一杯応えられるまで!)

 

彼らの想いに応えるためだ。

 

(ペース配分なんか考えるな。配分するほど残ってないんだ。)

 

その想いに正面からシモンはぶつかっていく。

 

(ネギの変身は見たことない。やばいのか? ラカンに勝ったんだ、当然だ。だが、ラカンに勝つってことは、妙な特殊能力とかそういう類のものじゃない。能力じゃなくて性能・・・単純なパワーアップのための変身だ!)

 

シモンは変身したネギの力を、頭の中で分析し、一瞬で行動に移る。

 

(ゴチャゴチャ考えるな! 力勝負なら先手必勝だ!! この数分に、今の俺の全部を出し切る!)

 

自らの状態を考え、短期決戦に臨む。

 

「いくぞ、坊主共!!」

 

まだ、動いていないネギたちより早くに、シモンは動いた。

そして、それは間合いをつめるのではない。開始位置から前へ行かずに、その場でドリルを振り上げ、地面に向って突き刺した。

 

 

「スパイラルギャラクシー(渦巻銀河)!!」

 

『おおーっと! シモン選手がドリルを大地に突き刺した瞬間、闘技場内四方八方からドリルが出現して伸びたァ!?』

 

 

突如出現したドリルが、上下左右に当たり構わず伸び、闘技場を埋め尽くし、ドリルの宇宙が広がった。

 

『こんなもの食らったら、流石のナギ選手とコジロー選手は・・・・って、えっ!? これは!?』

 

しかし、シモンの創り出した宇宙は砕け散った。

ドリル銀河が広がったかと思えば、それは一瞬で消えた。

 

「なっ!?」

 

次々とドリルが消えて、視界が広がると、宇宙の中央でネギの拳が既にシモンを捕らえていた。

 

「な、・・・なにッ!?」

「シモンさん! 今の僕の疾さは・・・時を刻みます!!」

『で、でたァァ! 神速超速電光石火! ナギ選手の雷速瞬動が、シモン選手の技の発動の瞬間に突き刺さったァァ!!』

「が、がはァ」

 

思わぬダメージに、シモンの技は消されてしまった。

 

「うお・・・は、・・・は・・・」

「速い! 流石ネギ先生!」

 

気づいたときには、腹部に突き刺さる拳の痛みと、ふっとばされて宙に舞っていることしか分からなかった。

正直、反応出来る出来ない以前に・・・

 

(み、見えなかった!?)

 

ネギ同様、疲れているとはいえ、あらゆるスペックが桁外れに上昇しているはずの超銀河モードのシモンが、ネギの攻撃を避けるどころか、何も見えなかった。

 

『たまらず吹っ飛ばされるシモン選手! しかし、ナギの追撃の手は止まらない! おおーーっと、コジロー選手も現れた!』

「助かったで、ナギ! お前が技消してくれたおかげで、一瞬防御で耐えるだけで助かったわ!」

 

シモンの技が一瞬で消えたために、小太郎も大したダメージを食らうことなく健在である。

吹き飛ばされたシモンに、獣神と雷神のタッグが容赦なく攻め立てる。

 

「雷速瞬動!!」

「なら俺は、獣速瞬動!!」

 

光の速さと獣のスピードが、闘技場を駆け巡る。

 

「こ、これは!?」

 

正直、ネギのスピードは目に見ることすら不可能な技だ。だが、目に見えなくても心を落ち着かせれば、流れを感じ取ることぐらいは出来たかもしれない。

だが、小太郎の動きがそれを邪魔させた。

小太郎の動きも自分の想像を遥かに上回るほどのスピードである。しかし、目に見えないほどではない。

 

(くっ、注意が散漫になる・・・・・)

 

そのため、目に見える小太郎の動きばかりを追いかけてしまい、視界に映すことの出来ないネギにまで対処が出来なかった。

 

「いくで、兄ちゃん! まずは俺からや! 狗音噛鹿尖乱撃!!」

「っつう!?」

 

まずは、小太郎だ。

 

小太郎の腕から発せられた大量の狼の群れが、スピードに乗ってシモンに迫り来る。

これを全て対処するのは不可能である。

 

 

「兄ちゃんのドリルは確かに厄介や! しかし、欠点がある! それは一撃必殺なところや! こうやって足使っての連打には、ドリルが重くて対処が出来ん! 突き刺す、振り下ろす、なぎ払うかのどれかや!」

 

「!?」

 

 

動き回りながら指摘する小太郎。若干シモンの顔が歪んだ。

 

 

「へっ、・・・だからどうした! それに一番重要なのを忘れてる! ドリルは・・・・突き立て捻じ込むものなんだよ!! なめんじゃねえ!」

 

「それも知っとるで!」

 

「むっ!?」

 

『おおおーーーっと、カウンター気味に突き刺したシモン選手のドリルが空を切る! コジロー選手が更にスピードを上げた!』

 

「俺らは兄ちゃんをなめてなんかないで! だからこそ、手段も方法も構わず、容赦なく攻め立てるんや!!」

 

「っつううう」

 

「いくで、狗音爆砕拳!!」

 

 

小太郎の攻めに防戦一方のところに、がら空きとなったシモンの腹部まで踏み込み、彼は狗神を集中させた拳を一気に振りぬく。

 

 

「超螺旋フィールド!!」

 

 

とっさの螺旋の防壁だ。

だが、溜める時間もない上に、残りの螺旋力で張れるフィールドの強度はたかが知れてる。

小太郎の拳は、シモンのフィールドを粉々に砕き、その勢いでシモンのどてっぱらに渾身の一撃を叩き込む。

 

「――――ッ!?」

『キマッタァ!! コジローの渾身のボディーブローが炸裂ゥーーーッ!! 悶絶ものの一撃にシモンは溜まらず吹き飛ばされる!!』

 

腹を押さえながら苦痛に顔を歪めるシモン。

だが、吐き出しそうになる胃液を押さえ込み、懸命に態勢を立て直そうとする。

 

(くそっ、もう防御も使えない・・・このままじゃ・・・だけど・・・悶絶しても・・・骨が折れようと・・・俺はまだ意識がある・・・意識がある限り・・・・)

 

だが、その時・・・・

 

「心が折れない限り・・・・奇跡は起きる! そんなもの何度も教えてもらいました!」

「なっ!?」

 

シモンが吹き飛ばされた先には、既にネギが居た。

 

「全てが終わるまで、僕たちは欠片の油断もしたりしませんよ!」

「こ、・・・この・・・」

「雷速瞬動!!」

 

 

天に稲妻が鳴り響いた。

目にも止まらぬ・・・・目にも見えぬ・・・知覚すら出来ない速さ。

分かるのは、視界が閃光で埋め尽くされ、気づけば全身の至る所から痛みが広がっていく。

 

 

『フルボッコ!! メッタ打ち、メッタ打ちだァ!!! つうか、昨日のラカン戦と同様、何が起きてるか分かりませんが、とにかく速い!! 光の奔流に飲み込まれてシモンフルボッコだァ!!』

 

(な、なんだこりゃあ・・・俺が疲れてるとか無関係に速くて強い!! このガキ・・・・いつの間に・・・こんな・・・)

 

 

ネギとの出会いは、森の中で泣いている彼と出会ったとき。

あの時の少年が・・・・涙腺の弱い子供が・・・・数ヶ月前の学園祭では自分にボコボコにされた少年がいつの間に・・・

 

 

(触れもしない・・・なら・・・・弾き飛ばす!!)

 

 

シモンの体が僅かに光った。

残る螺旋力では大技は使えない。

だが、それでも最後の足掻きを見せるために、彼は残りの螺旋力を振り絞って、全身からドリルを出した。

 

 

「フルドリライズ!!」

 

『おおおっと! これはグレンラガンと同じフルドリライズ形態です!! シモン選手はこんな技を隠し持っていたのかァ!?』

 

 

グレンラガンと同じ技に会場中が盛り上がる。

だが、シモンもただのサービスでやったわけではない。

全方位に向けて伸ばすフルドリライズなら、たとえネギが目に見えなくても、吹き飛ばすことが出来るとシモンは考えたからだ。

しかし・・・

 

「な、なに!?」

 

手ごたえが感じられなかった。

目を開けると、フルドリライズが伸びる限界の間合いの外に、ネギは一瞬で退避していた。

 

「知っています! あなたならそうすると思っていました!!」

「こ、こいつ!?」

 

そして、伸びきったドリルがやがて消えうせ・・・・その瞬間・・・

 

 

「術式解放(ペルフェクトゥス・プラスマティオーニス)!! 完全雷化(ペル・エーミッシオーネム)!!」

 

 

がら空きとなったシモンに、待っていましたとばかりに追い討ちをかける。

 

「あ、あの技は!? ネギ先生・・・ちょっ!?」

「コラーネギーーッ!?」

 

今からネギが何をやるのかが分かったアスナたちが騒いでネギを止めようとする。

それだけで、技の危険度が予想できる。

 

 

(シモンさんは既にボロボロ・・・・この技を食らえば、並みの魔法使いなら消し飛ぶってラカンさんは言っていた・・・・・でも・・・シモンさんは・・・・僕らの予想のはるか上の人だ!!)

 

 

ネギは技を止めない。

それは、確実にシモンを倒すため。そのために、ネギは一切の油断もしない。

そして・・・

 

(それにこの人が・・・これで・・・・)

 

ある意味・・・・

 

「ちょっ、ネギってばァ! シモンさんが・・・・「大丈夫や!」 ・・・・木乃香?」

「大・・・丈夫や・・・シモンさんなら・・・大丈夫や! シモンさんがコレで終わるはずが・・・ない!」

 

涙を堪えながら自分を押さえ込み、シモンから目を離さない今の木乃香と同じように・・・

 

(そうだ、これで終わるはずがない!!)

 

ネギもまたシモンを信じていた。

決着を付けるために放つ技。しかし、心のどこかでは、シモンが何かを起こしてくれることを期待していた。

その想いを込めて、雷化したネギが、天空から光臨する。

 

 

「千磐破雷(チハヤブルイカヅチ)!!!」

 

 

並みの使い手など跡形もなく消し飛ばすほどの超強力なネギの突進が、シモン目掛けて真っ直ぐに迫る。

 

 

(ま、まずい・・・・あれを食らったら・・・・)

 

 

考える暇すらない。

 

 

(こんな一方的になるとは・・・どうする・・・どうする!?)

 

 

避けることも防ぐことも出来ぬ今の自分・・・・

ましてや螺旋力も完全に底をつきかけた今の自分では・・・・

 

 

――どうした?

 

「えっ?」

 

 

だが、その時・・・現実世界の時の流れに逆らって・・・

 

 

――お前の螺旋もタネ切れか?

 

 

シモンは精神世界に引きずり込まれ・・・・

 

 

(むっ・・・・)

 

 

男の声を聞いた。

威厳に満ちたその男の言葉は、シモンの頭の中に響き渡った。

そして、僅かに点滅するコアドリルが、シモンの緑色の光から、紅く輝きだした。

 

(・・・・・・・・・・・)

 

この光、この感じ、覚えがある。

 

―――お前ら全員燃えてしまえッ!!!

 

記憶を失っていたとき、ラカンと戦っていたとき、絶望に飲み込まれたときに味わった力だ。

 

(・・・ロージェノム・・・・・・・・)

 

アンチスパイラルの絶望に飲み込まれて、倦怠の海に沈んだ男。

その男の光が、徐々にシモンに流れる・・・

 

 

―――人間よ、愚かなる種よ、恐怖せよ! この絶対の力の前に!

 

 

支配の力が・・・・

 

 

―――圧倒的恐怖と、絶望の前にひれ伏せい!

 

 

絶望の力がシモンを支配しようとする。

自分に全てを委ねよと命令してくる。

 

 

―――螺旋王の名の前に!

 

 

流れ込む。

一瞬ゆれた自分の心の弱さ。

その心の弱さにつけ込んで、絶望した男の想いが流れ込もうとする。

だが・・・

 

(・・・いらねえよ・・・・)

 

今は以前とは違う。

シモンはその流れる想いに抗った。

 

 

(そんな力・・・俺はいらない・・・ひれ伏すものか!)

 

 

流れに身を任せなかった。

 

 

(なめんじゃねえよ! 飲み込まれるかよ、もう二度と! 絶望なんざ・・・・逆に飲み込んでやらァ!! ロージェノム・・・螺旋の友よ・・・アンチスパイラル・・・さっきも言っただろ・・・・俺を信じろって!)

 

 

その力を受け入れなかった。

 

 

(絶望の力なんていらない! 絶望なんか、俺がぶち壊すからだ! 希望もいらない・・・・そんなもん・・・この手で自ら掴んでやるからだ!!)

 

 

そして・・・

 

 

(だが、・・・もし・・・くれるというのならば・・・螺旋族の・・・お前の・・・・)

 

 

その流れと力を逆に・・・

 

 

(お前の魂、俺にくれぇ!!)

 

 

飲み込んでみせた。

その想いは・・・・

魂を通じて・・・・

 

 

――シモオオオオン!! 受け取れええ!!

 

 

伝わった。

託してやろう・・・この力・・・・

 

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

「ッ!?」

 

「な、なんや!?」

 

 

ほんの一瞬の出来事。

シモンの頭の中でのそんなやり取りを知らずに、既に目前まで迫っていたネギと小太郎は、突然のシモンの変化を感じ取った。

 

「む、何だってんだ!?」

「あやつ、一体何が起こったのじゃ?」

「この感じは今までと違うわよ? エヴァ、何だか分かる?」

「し、知らん・・・・初めて見る類の力だ・・・・」

 

紅い光が、緑色の光に飲み込まれ・・・・

交わった光は螺旋の渦を描き、シモンの全身を包み込む、

そして・・・

 

「なっ!?」

「なんやとォ!?

『こ、ここ・・・この技はッ!?』

「あの技・・・俺様と戦ったときの・・・・・・」

 

巨大な螺旋の渦はシモン自身を包み込み、巨大なドリルそのものとなった。

ネギの攻撃は既に止まらない。

巨大なドリルに包まれたシモンに向って振り下ろされる。

だが、現れたドリルも、刃先を真上に向けて、一気に発射される。

 

 

「カテドラル・ラゼンガン・インパクトォォーーーーッ!!」

 

 

その技は、つい先ほど見た。

それは、映像の中。シモンの記憶映像の中に流れていた技・・・・

グレンラガンではない・・・

大グレン団ではない・・・・

螺旋王ロージェノムのラゼンガンの技だった。

 


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