魔法はお前の魂だ(魔法先生ネギま✖天元突破グレンラガン) 作:アニッキーブラッザー
世界は知った。
遠い銀河の果ての物語。
青く輝く小さな星の無法者。
世界を紅蓮に染めた男が銀幕突破して現れた。
「さあ・・・・約束を果たそうじゃないか!」
現れた男は既にフラフラのボロボロだった。
だが、その事をツッコム者はなかなか現れなかった。むしろその姿こそ、画面に映った男らしいと、よけいに興奮したからだ。
その己をどこまでも信じきった瞳とドリル、そして大グレン団のマークを背負っていれば、それはもはやシモン以外の何者でもない。
ネギに向って叫ぶシモン。
すると観客は興奮を抑えきれずに大歓声を上げた。
「「「「「「「「「「シモォーーーーーーン!!!」」」」」」」」」」
会場が一瞬で揺れた。
足元から徐々に響き渡って一気に弾けるその現象は、世界各地で起こっていた。
「・・・・えっ?」
「「「「「「「「「「「「シモーーーーン!!」」」」」」」」」
「「「「「「「「「「「グレンラガン! グレンラガン! グレンラガン! グレンラガン! グレンラガン!」」」」」」」」」」
「・・・・・は、・・・はあ?」
一斉に鳴り響くシモンコールとグレンラガンコール。
シモンが現れた瞬間、会場のボルテージが最高潮に達し、彼らは一丸となってとにかく叫んだ。
「このやろー! 待ってたぞ、シモン!」
「大グレン団ステキーーーッ!」
「僕も将来ガンメン乗りになるーーーッ!」
「私を天の向こうに連れて行ってーーー!」
「ヨーコに会わせろォ!」
「どうせならグレンラガン持って来いよー!」
「俺は誰だって、言ってーーッ!」
好き勝手に会場中のあちらこちらから、意味不明な言葉が叫ばれた。
「・・・・・・・えっ?」
現れた瞬間にこの状態、状況を飲み込めず流石のシモンもポカンとしている。
そして・・・
「ど、どうなって・・・・えっ? しかも何でグレンラガンのことを・・・・」
自分の名前だけではない。何と会場はグレンラガン、大グレン団、この世界の住人が知っているはずのない単語を叫んでいるのである。
わけも分からずシモンが戸惑っていると、会場のど真ん中に立っているシモンの目の前に、シモンに指名された男が観客席から飛び降りてきた。
「シモンさん。ようやくここまで来ましたよ」
そしてもう一人・・・
「ったく~、兄ちゃんの所為で血が滾ってたところや。ほんまええタイミングで来てくれたな~」
ネギと小太郎、いや・・・
『おお~~っと、シモンの登場により、待ちきれなくなったナギとコジローが飛び出してきたァ! 彼ら既にやる気満々です!』
ナギとコジロー。世界の英雄打ち破った両雄が、開始の合図を待ちきれずに降り立った。
「なんつ~、映像に、演出や! 兄ちゃん、こんなんずるいで~?」
「でも、これで燃えなきゃ男じゃないよね」
「まっ、燃え滾りすぎて困るぐらいやけどな!」
既に拳に力を入れて、二人は今すぐにでも飛び掛ってきそうなほど、興奮している。
まるで胸の中にある熱いものを、今すぐぶちまけてやりたい、というように見える。
「ちょっと・・・どういうことだよ・・・これ・・・・」
会場の熱気、ネギたちの興奮、そして突き刺さる熱い眼差し。
今まで何があったのかをまったく知らないシモンには、いきなりこんな光景を見せられても理解できるはずがない。
「シモンさん・・・・アレ、見てください」
「・・・ん? ・・・・・ん?」
するとネギが首を傾げるシモンの背後にある巨大なオーロラビジョンを指差した。
そこには・・・
「ん? って・・・ニア!? えっ、グレンラガン? ヨーコやキタンたちも・・・えっ、何で!? 何でこんな映像が流れているんだよ! えっ、しかもこれって・・・テッペリンを落としたときか?」
グレンラガンの足元で、仲間たちにもみくちゃにされている、少年時代の自分と、その隣に居るニア。大グレン団のメンバーと心の底から喜びを分かち合っている時の映像だ。
抱き合い、手を叩き、酒を浴びるように飲み、声が枯れ尽きるまで騒ぎ通した、最高の一日。
シモンも鮮明にその時を覚えていた。
「ちょっ、・・・何でこんなのが流れてるんだ!? しかも、何で全員で見てるんだよ!?」
「それを聞きたいのは僕たちの方ですよ。本当は、今日流される映像は、紅き翼の物語だったはずなのに、何故かいきなりシモンさんたち大グレン団の物語が流されたんですよ?」
「・・・・えっ? ・・・あっ、・・・そういえば・・・・・」
決勝戦以外に、超重要なことを忘れていた。
シモンの記憶フィルム・・・・自分は昨晩仲間と・・・・間違えて・・・・そして間違えられた自分のフィルムは・・・・・・
「なっ・・・・・なっ・・・・なっ・・・・」
ネギの指摘に、ようやく全ての謎が一本道に繋がった。
しかしそれは分かったからといってどうなるものでもない。
ただ・・・・とにかく叫ぶしかなかった・・・
「なんだってーーーッ!?」
その直後、流されていたシモンの記憶映像が止まった。
それが誰の意思なのかは知らない。だが、観客たちは何故か気にならなかった。それは、もっと気になる存在が目の前に現れたからだ。
そして、遠い空の向こうに居る仲間たちは・・・
「「「「「「「「「ぬあにいいいいいいいいいいいいいいいッ!!??」」」」」」」」
政府の巡洋艦に乗せられ、オスティアへ向う帰り道。
先ほどまでシモンと共に戦った仲間たちは、飛行船内にあるモニターの前で、全員が卒倒していた。
「ちょっ、どういうことだコラァ!?」
「お、俺たちが最初に見る予定だったやつじゃねえか!? 何で俺たちを差し置いて、こいつらが見てるんだよ!?」
「そ、そうか・・・リーダーが間違えたフィルムをそのまま・・・・」
「な、なんという・・・・」
「そ、そんなァ!? 私も見たかったのにーーーー!」
「ロ、録画・・・デキマセンデシタ」
「そりゃあ、私もだっての!? 記憶の映像化? 世界同時公開? 何なのそれはァ!? つーかなんで私たちが見れないんだよーーーーッ!?」
「・・・・・・・モウ・・・・終わっチャッタノ?」
「あ、・・・頭が痛くなってきました・・・・流石に・・・だから早めに回収しないとと・・・・」
「い、いいのかよ・・・サウザンドマスターの物語じゃなくて、あのクソッタレ野郎の記憶映像なんか放映して・・・・」
「驚いたさね・・・たしかにあの若造・・・世界に名を轟かせたさね・・・」
「な、な・・・な・・・う、うらやましすぎますわ!? 何故、こんなに大変な目にあった私たちが見れなくて、他の方々が見れるのですか!?」
「なんでよー! 私だって、兄貴の歴史を見たかったよーッ!」
「兄貴さんの・・・私も・・・・興味ありました・・・・」
「おやおや、僕も見たかったな~。残念だったね、サラ」
「も~~、何でだよ~! 踏んだり蹴ったりじゃないか~!」
今すぐにでも、モニターをぶち壊すほどの勢いで、全員が暴れだし、僅かに戦艦が揺れるほどの騒ぎにまで発展した。
「「「「どちくしょーーー! グレンラガンが・・・ヨーコさんが・・・どちくしょーーーッ!!」」」」
「ふ、不公平ですわ! 私だって見たいのに・・・この様子では恐らく木乃香さんも見ているはず・・・こんなところでとんでもない差が・・・・」
「なんだよ~~、私だってシモンの話を楽しみにしてたんだぞ~。それがもう終わってるなんて卑怯じゃねえかよ~」
「ぶ、ぶ~~~む・・・・」
「やれやれ、騒がしいのう」
「まったくだ。あんな男の歴史なぞ見ても・・・そもそも、セラス総長も会場に居られたはず、なのに何故こんなバカなことを・・・・」
「エマ団長~、強がり強がり」
「なっ、わ・・・・私は別に興味ないぞ!?」
「ふざけんなっての! 私は見たかったんだよーー! 大体、妹の私たちやグレン団を差し置いて、なーんで、見ず知らずの奴らが先に見ちゃってるんだよーーッ!!」
もはや収拾がつかない大騒ぎ。
あまりの騒ぎのために、一時戦艦の警報がなりそうになったぐらいである。
新生大グレン団を中心に、自分たちの戦っている間に起こった出来事に、誰もが口をそろえて文句の嵐を口から吐き出す。
このままでは、再び大混乱がおきるかもしれない。
だが・・・
「たしかにうらやましいけど・・・・でも、僕たちも・・・人から見たらそう映るんじゃないのかな?」
「「「「「「「「「えっ?」」」」」」」」」
瀬田の言葉に、混乱がピタリと止んだ。
「僕たちはシモン君の伝説を見ることは出来なかった・・・でもね・・・僕たちはシモン君と一緒に、新たな伝説を創ったじゃないか」
伝説を見るのと創るの・・・どちらがいいか?
そんなもの答えるまでない。
瀬田の言葉に、自分たちの成したことを改めて気づいた彼らは、僅かな沈黙の後・・・・・
「「「そうだア! 俺(私)たちを誰だと思っていやがるゥッ!!!!」」」
もう一度騒ぎ出した。
結局戦艦の警報がなり、遠い空の向こうは大騒ぎだった。