魔法はお前の魂だ(魔法先生ネギま✖天元突破グレンラガン)   作:アニッキーブラッザー

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第226話 こちらもクライマックス

「終わったね・・・シモン君」

 

「・・・・ああ・・・」

 

 

少し寂しそうにチコ☆タンの消えた方角を見つめるシモンの肩に瀬田が手を置いた。

シモンも、たしかにそうだなと頷いて、クルトを見る。

 

「さて、・・・・俺たちはこれからどうすればいいんだ?」

「・・・そうですね~、まあ、恩赦がどうのとはいえ、一応手続き上、瀬田一家には一度聴取を受けてもらいたいので、出来ればこのまま同行してもらいたいのですが・・・・どうです?」

「僕は別に構わないよ」

「ああ、まっ、それぐらいわな」

「ア~良かった。一生賞金首かと思ってヒヤヒヤだったぞ~」

「それでは、このまま向いましょう。シモン君、そして他の方々もご一緒にどうぞ?」

「うお~~、ようやく帰れるのか~」

「まあ、結構楽しかったけどな」

「とりあえず皆無事で良かったですわね」

 

長い長い喧嘩が終わり、ようやく彼らはこの場を後にすることが出来る。

別に家に帰るわけではないうえに、まだ一日が終わったわけではない。

 

「なんか、数ヶ月ぐらい戦っていたような気分だな」

「おう、学園祭の時もそうだったからな」

「あ~、さっさとまた温泉に入ろうぜ~」

 

しかし、たった数時間で身も心も一生分すり減らし続けた彼らも既に限界で、ホッと一息つくのだった。

そう・・・つくはずだったのだが・・・・

 

「・・・う~~ん・・・・」

 

シモンが途中で唸りだした。

 

「兄貴~、どったの?」

「お体が悪いのですか? まあ、あの爆乱とあれだけ激しい戦いを繰り広げたのですから無理ありませんけど・・・・」

 

シモンの顔を心配そうに覗き込むシャークティたちだったが、どうやらシモンは何かを考えているようだ。

 

「いや・・・・このまま帰るんだけど・・・・なにか忘れているような気がして・・・・」

「忘れているもの?」

「ああ・・・・なんか・・・なんだろう・・・・・」

「記憶喪失はなくなったんじゃないのですか?」

「へっ? 記憶喪失? 兄貴、どういうこと?」

 

また、何かを忘れたのかもしれないとシャークティが尋ねると、知らなかったことに美空とココネが反応した。

 

「兄貴・・・ココネを忘レタ?」

「はは、大丈夫だよ。今はちゃんと覚えてるから」

「で、でも忘れてたってこと? 何で? 何があったの? しかも何でコレットが若干ビクビクしてんの?」

「えっ・・・と~~~その~~・・・実は・・・・」

「まあ、でも心配するなって。今はちゃんと覚えてるから。お前たちのことも、グレン団も、それにネギたちも・・・・・・・・・・・・・・ん?」

 

そこでシモンが止まった。

 

「「「「「・・・・あっ・・・・・・」」」」」

 

同じくグレン団も止まってしまった。

 

「「「「「・・・・・・・・・・あ゛・・・・」」」」」

 

そういえば、激しく忘れていた。

 

「「「「「「「「「アアアアアアアアアーーーッ!!??」」」」」」」」」」

 

いや、色々あったから忘れていたというより、気づく暇が無かったというか・・・・・

 

「わ、忘れた! 今日って決勝戦じゃねえか!?」

 

美空とココネのことがなければ、今頃オスティアの拳闘大会の決勝戦で戦っているはずだったのだ。

そのことを今頃思い出して、皆も急に慌てだした。

それほど、魔法世界において、今日の決勝戦は大きなイベントなのである。

 

「まっ、まじかよ・・・って、俺も忘れてたが・・・ママ! 今時間は!?」

「も、もう直ぐ始まるさね・・・・い、いや・・・どちらにしろここからじゃ、どう考えても間に合わないさね!」

「お、おい・・・20周年記念の大決勝戦が対戦相手不在って・・・マズイんじゃねえか?」

「忙しい男じゃのう」

「ふん、だが騒がしすぎる」

「まったく・・・キサマはどちらにせよ、人に迷惑をかける男だったが・・・」

「だ、団長。・・・そんな言い方は・・・・でも、どちらにせよ、シモンさんもその体では流石に無理ですわ。なんせ相手はあの・・・千の刃の・・・」

 

どちらにせよ、時間的にも体力的にもどうしようもないとエミリィが言おうとしたのだが・・・

 

 

「負けましたよ」

 

「「「「「「「「えっ?」」」」」」」」

 

 

クルトが口を挟んだ。

そしてその口から、彼らにとって衝撃的な言葉を告げる。

 

 

「ジャック・ラカンは負けましたよ。ナギ、コジローのコンビにね」

 

「「「「「「「ッ!?」」」」」」」」

 

 

この世界の住人にとっては信じられない言葉だった。

だが、その言葉がウソではないと分かり、シモンは口元に笑みを浮かべた。

 

(ネギたちが・・・あのラカンを・・・・・・・・ふっ、やりやがったな・・・あいつら!)

 

そして、昨日ここに向う直前、ラカンと戦う前のネギと会ったときを思い出した。

ネギは、自分に向ってこう言った。

 

 

―――待っていてください!

 

 

彼はどうやら約束の舞台へたどり着いたようだ。

そう思うと・・・

 

「ちょっ、・・・兄貴・・・・」

 

拳を握り締め・・・

後から沸いてくる想いを抑えきれずに・・・

シモンは決意した。

 

「俺が行かないわけには・・・・いかないみたいだな・・・・・」

 

もう、それしかなかった。

するとエミリィやトサカたちが急に騒ぎ出した。

無理だ・・・

間に合うはずが無い・・・・

その怪我でどうするつもりだ?

言い出したらキリが無い。

だが、シモンを良く知るシャークティたちは、もうそれが止めることの出来ないものだと分かり、苦笑するしかなかった。

 

「美空、ココネ、悪いけどお前たちは後で来てくれ。俺は、ちょっと一足先に行かせてもらうよ。約束が・・・残ってたからな・・・」

「あ~あ~、ったく~、まあ、仕方ねーッすね~、兄貴は皆の兄貴だからね~」

「ム~~~」

「ほら、ココネ。どうせ直ぐまた会えるんですから、後でいっぱい甘えればいいでしょ?」

「ム~~・・・・・ウ~~~・・・・・ワカッタ・・・・」

 

少し不満気にシモンの裾を引っ張っていたココネも折れて、ようやくシモンから手を離した。

シモンも一回申し訳なさそうにココネの頭を軽く撫で、そしてオスティアのある方角へ向けて、目を瞑った。

 

「ちょっ、待ってください! 行くってどうやって!?」

 

今から何をやろうとしているのか分からないエミリィたちに、シモンは自信満々に応えた。

 

「決まっている。どうにかしてだよ!」

「だからどうやって!? 一体オスティアとどれだけ離れていると思っているんですの!?」

「関係ないさ。場所との距離なんて俺には関係ないんだよ・・・・・ようは・・・・心の距離が離れていなければな」

 

そう、シモンには場所との距離なんて関係ない。

シモンは胸を指しながら答える。

心の距離さえ離れていなければ、彼は銀河の果てまで飛ぶことが出来るのだから。

 

 

 

 

そして、・・・・こちらもとうとうクライマックスが近づいて来た。

 

 

 

 

 

 

「アスナさん・・・・あれが多分シモンさんの言っていた・・・そして・・・ニアさんの父親の」

 

どんなに厚い壁も崩れる日は来るのである。

 

「ええ、螺旋王って奴ね。ニアさんとは全然似てないわね」

 

少女は信じる仲間と共に前へ行く。

 

「でも、この画面からでも伝わるオーラは、本物の証ですね」

「ふむ、威厳に満ちているでござるな」

「あれが、ラスボスっちゅうことやな」

 

己の父親に言いたいことを言うために。

 

「これが、シモンさんとニアさんの最後の戦いなんやな・・・・」

 

自分たちは「ここ」に居ていいのだと・・・・・

 

 

『よもや、ここまで来るとは・・・・、ほめてやろう、人間よ』

 

 

ネギたちも、この男について、話だけは聞いていた。

王都テッペリンにある王宮の最も高い場所に位置する王の謁見の間。そこにある玉座に深々と腰を下ろした男。

螺旋王と呼ばれたシモンたちの最大の敵である、ロージェノム。

ネギたちは、その男をそう判断した。

モニター越しからでも分かる、男の不気味さ、グレンラガンを目の前にしても眉一つ動かさぬ男に、別格の雰囲気を感じ取った。

ネギたちはシモンと会っているのだから、それほど緊張しなくてもシモンたちはこの男に勝てたのだと冷静に考えれば分かるはずである。

しかし、いつしか・・・いや、最初からかもしれない。

結末を知っていたはずのネギたちですら、このシモンたち大グレン団の物語の戦いの行方に手に汗握っていた。

それはネギたちだけでなく、観客たちも同じである。

 

「へへ、長かった戦いもようやくこれまでってか?」

「流石に親玉は怖いわね」

「強いんだろうな・・・・果たしてどんな力を使うんだ?」

 

この流れる映像が、本物か、それとも作り物なのかは知らない。

映し出される世界がどこなのかも知らない。

ひょっとしたら、旧世界の映像なのかもしれないと思っている者も居るぐらいだ。

しかしカミナから始まり、シモンや大グレン団たちの魂を込めた活躍に心を奪われ、今はただ、オーロラビジョンに夢中だった。

そして誰もが理解していた。

 

「いよいよ、ラストバトルか」

 

地下から始まったシモンたちの戦いも、ようやくクライマックスなのだと。

 

 

『無知とは恐ろしいものよ。お前たちは自分を正義だと思っておるのかもしれんが、この世界を守っているのはわしなのだ。このロージェノムこそが人類の守護者なのだよ。わしの作った世界こそが、人の生き残る唯一の道。そこから外れたお前たちを、これ以上好きにさせておくわけにはいかぬ』

 

 

ラスボスは実に相応しい口上と共に黒いガンメンを床から出現させた。

黒いグレンラガンのようなガンメン。

 

「ちょっ、あれってグレンラガンに似てない!? しかも、なんか結構カッコいいよ!?」

「何言っているんですか、ハルナさん! グレンラガンの方が絶対カッコいいです!」

「アホ・・・今そんなのどうでもいいだろうが・・・・」

 

ラゼンガンと呼ばれるその黒いガンメンと共に、ロージェノムはシモンとグレンラガン、そして実の娘がそこに居るのに微塵の躊躇いもなく向ってきた。

 

『人類のために死ぬが良い』

 

当然だが、もはや話し合いは無理のようだ。

ならば、戦うしかない。

シモンはニアを見ると、ニアも悲しそうに頷いた。

その瞬間、人類の命運を懸けた頂上決戦が始まったのだった。

その行く末を彼らは知ることになる。

ネギも、シモンを慕うものたちも、今日はじめてシモンを知った者たちも・・・

そして・・・

 

 

「ふっ・・・・・興味深いね・・・・・」

 

 

この男も知る。

 

「・・・フェイト様・・・」

「・・・何でもない・・・それより君たち、全員ここに居ていいのかい?・・・・お姫様たちは?」

「えっ!? あ、ああ~、そ、それは大丈夫です! 見張っていなくても大丈夫です!」

「あっ、大丈夫です。ですから~~」

「フェ、フェイト様。その~~・・・・せっ、せっかくここまで見たのですから・・・その~~・・・」

「フェイト様・・・どういう経緯かは知りませんが、これはフェイト様の障害となる男の情報を得るいい機会です・・・・で、・・・ですから・・・」

 

少し顔を赤らめてモジモジとおねだりする様な暦たちに、フェイトは小さくため息をついた。

 

 

「・・・いいよ。最後まで見ても・・・・」

 

「「「「「ほ、本当ですか!?」」」」」

 

 

少女たちはキャーキャー騒ぎながら、お言葉に甘えて、テレビの真正面に座布団を引いて、食い入るように画面を見つめた。

どうやらハマッたようである。

少女たちのその様子にフェイトはもう一度ため息をつき、そして彼もまた画面に映る、シモン、ロージェノムそして・・・

 

 

(ニア・・・テッペリン・・・か・・・)

 

 

何故か彼は世界中がグレンラガンとラゼンガン、シモンとロージェノムの戦いに集中する中で、ニアの存在が気になっていたようだ。

いや、正確には、ニアの存在というよりもニアの言葉である。

彼女は言った。人形として王の暇つぶしに作られた存在であった彼女は言った。

 

 

―――人間は確かにちっぽけです。でも、そのちっぽけな人間には大きな大きな心がある。彼らは人形じゃない!

 

 

その言葉が、自身を人形と言い捨て、変わらぬ信念と表情で固められていたフェイトの奥底を、僅かに刺激した。

 

 

(・・・・人形師に逆らう人形・・・・・心を持っていれば・・・人形じゃない・・・か・・・)

 

 

揺れる瞳の奥底に、何を思っているのかは、傍にいる従者の少女たちも気づかないほどのものである。

だが、彼の心には残った。

 

 

(この映像の世界は、ここの世界でも旧世界でもない・・・・ならばシモン・・・・君はどこの世界の住人なのか・・・・君の世界はそれとも作られた世界なのかな? この世界と・・・同じように・・・・)

 

 

そう、その心に・・・

 

 

(世界の守護者・・・・人類を救うため・・・少なくともこの当時の君は螺旋王とやらの言葉に大した反応を見せてはいないが・・・・・今の君はどうだい?

もし、この螺旋王が僕と同じような理由で戦い・・・・・今の君がこの当時の螺旋王の言葉を理解していたとしても・・・・・・それでも君は僕と・・・・)

 

 

自分でも気づいていない、何かを求めるかのように・・・

 

 

(・・・いや・・・違うか・・・・らしくない・・・こんなこと人形である僕が考えるなんて・・・・・・・・理由は要らない・・・ただの喧嘩・・・それでいい・・・・・・ふっ、らしくない・・・か・・・・そもそも人形である僕にらしさなどいらない・・・・やれやれ・・・・・シモン・・・・・ネギ君が僕の存在する理由の一つだとしたら・・・君は要らないはずの感情を僕に入れていく・・・・本当に・・・・君は・・・・・)

 

 

無表情な表情が、どこか切なげに・・・・

 

 

「さあ、見せてみろ。かつての君が信じた答えとその行く末を」

 

 

そして、映像は流れ続ける。

今は黙って、彼もこの戦いの行く末を見届ける。

 


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