魔法はお前の魂だ(魔法先生ネギま✖天元突破グレンラガン) 作:アニッキーブラッザー
結局この歴史に残る大事件の犠牲者数は全人口の3パーセント以下と奇跡的な数値だそうだ。
もっとも魔人を一つの命として助けるほどの女が、その数値で納得するはずは無いのだが、救われた命が多いというのは確かなようだ。
その事実を知り、どういうわけか自由になってもチコ☆タンは暴れる気にはならなかった。
別に改心したわけではない。しかしどういうわけか、自分の力の源でもある怒りが湧き上がらず、ただ普通に暮らしていた。
強力な魔力を封印し、名前も変えて、堅気とは言えないが就職活動の末、賞金稼ぎ結社に入った。
不安定な自分自身を押さえ込み、新たに生まれ変わった気がした。
だが、その2年後・・・・・
何も知らないチコ☆タンに・・・いや、チコ☆タン改めザイツェフに衝撃のニュースが舞い込んだ。
『なんだとォ!? あの女が処刑だとォ!? どういうことだ!?』
『落ち着けザイツフ・・・・・仕方ねえことだ。あの女には様々な罪状がある。戦争責任者だそうだ』
『バ、バカ言ってんじゃねえ・・・・あの姫は泥だらけになって人を救う大ばか者だぞ?』
『そんなもの関係ないんだよ。まあ、俺らには関係ないが・・・・役人には役人の事情があるんじゃねえか?』
それは、魔法世界全土に衝撃をもたらした出来事だった。
自分の命を救い出し、それだけでなく多くの市民を必死に救い出し、世界を救おうとした女の処刑が決まったことだった。
『・・・・政治家どもが・・・・随分と下らない真似をしたものだ・・・・・』
舞い込んだニュースに最初驚いたものの、ザイツェフはしばらくしてから冷静に流すことができた。
それは刑の執行はまず無理だと思ったからだ。
『ふん・・・だが・・・・・こうなってしまったら、あの男が黙っているはずがないが・・・・』
そう、あの女が告げた騎士が、必ず救い出すと自分には分かっていたからだ。
その騎士は自分も良く知る男だ。だからこそ、無駄なことだと思っていた。
しかし・・・・・・処刑は決行された。
世界を救おうとした女は、災厄の魔女として処断され、その事実が魔法世界全土に知れ渡った。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
チコ☆タンに怒りは何も無かった。
あるのは失望だった。
何に対しても、怒りではなく失望だけに満たされ、彼はその後抜け殻のように人生を送った。
そして更に数年後。
その時入った衝撃のニュースが、チコ☆タンを完全に怒りの抜けた只の魔物に変えてしまった。
―――ナギ・スプリングフィールド死亡
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
それからチコ☆タンは何事もどうでも良くなった。
自分は一体誰に負けたのか?
世界を救うとは何か?
あの女の信じた騎士は何をやっていたのか?
何故無敵の男が死んだのか?
もうどうでも良くなった。
「・・・・・・・・・・・・ヌ゛ウ・・・・・・・」
そしてその十年後。
いつもと同じように上っ面で適当に仕事をし、久々大物の首を取ろうと部下たちとくだらなく盛り上がっていたとき、二人の少女が自分の目の前に現れた。
『待ってくんない、おっちゃんたち?』
現れた少女は強かった。
瞬く間に部下たちを蹴散らしていった。
いや、強い連中ならこの世界にいくらでも居る。しかしザイツェフは少女のあり方に刺激された。
気合だ何だと喚いて熱苦しく戦う姿に、かつての戦乱を思い出し、久しぶりに自分の力を解放した。
しかしその力は二十年ぶりというのもあり、うまくコントロールできず、最後は部下に止められるという始末だった。
そしてしばらく不安定な状態が続き、そこに捕らえた少女たちの身元が分かった。
サウザンドマスターの息子、ネギ・スプリングフィールドの生徒。
そして白き翼の存在と、ゲートポートのテロ事件。
この事実が、不安定な状態だったチコ☆タンに、忘れかけていた何かを思い出させた。
それが・・・・どん底から20年間溜め込んで燻らせていた怒りだった。
「ウガアアアアアアアアアアアアァァァァァ!!!!」
「うおっ!?」
「クソむかつく目だ・・・・テメエ・・・・その目・・・・その目が気に食わねえ!!」
猛りながらシモンを睨みつけるチコ☆タンの瞳には、シモンではない誰かが写っている。
しかしそんなことはシモンに分かるはずも、そしてシモンにも関係ないことだった。
だが・・・・
「同じ目だ・・・あのクソ野郎と・・・・世界を救った英雄とかホザかれ・・・無敵とかヌカしてたくせに・・・・・結局女の一人も救えねえカス野郎に負けるなんざ、・・・勝手に死んだあのクソ野郎なんざ・・・・俺は絶対に認めねえぞ、ゴラアアアアアア!!!」
「!?」
別に女が処刑されたことにチコ☆タンは吠えているわけではない。
ただ、自分がそんな小さな男に負けたというのが我慢ならなかった。
「殺してやる・・・・殺しまくってやる! テメエも、あのカス野郎の息子も、クソ共が呑気に集った祭りも、政府も、世界も、この俺がブチ壊しまくってやらァァ!!! くだらねえカス共の策略も政治もはさむ隙もねえ、弱肉強食の世界が俺たちの世界だ! 法も制度もクソ食らえだ! 紅き翼のカス共が作った世界なんかに、従ってたまるかよォ!!」
もうダメだった。
「もういい加減、吹き飛べってんだよォォ!!!」
それだけしか思いつかなかった。
とにかく怒り任せに手当たり次第に破壊することしか出来ない。世界でもっとも危険な八つ当たりだ。
言っていることも周りからすれば支離滅裂な言葉だ。
恐らくチコ☆タン自身も自分で何を言っているのか分かっていないだろう。それほどまでに怒り狂っていた。
だが・・・その言葉は・・・・
「世界を救えても・・・・女の一人も救えない・・・・か・・・・」
まったく関係の無いはずが・・・・偶然に・・・・
「・・・・・痛いところ突いてくるな・・・・・・」
シモンの心に突き刺さったのだった。
「もし・・・もし・・・俺が記憶を思い出していなかったら・・・・・ニアのことを思い出していなかったら・・・・・ヴィラルとの誓いを・・・・学園祭でヨーコに殴られたことを思い出さなければ・・・・・その言葉に押しつぶされていたかもしれない・・・・でも・・・」
自分は英雄と呼ばれていた。
しかし、この宇宙でもっとも愛した女はこの世には居ない。
そう、分かっているのだ。
だからその言葉はシモンには深く突き刺さる。
「・・・でもッ!!」
しかし・・・・
―――シモン、あなたはあなたの成すべきことをするためにここまで来た。そうでしょう?
そうだ・・・・
「そうだ・・・その通りだとも! 今の俺は違う!」
押しつぶされることはもう無いのだ。
「お前が何に怒りを覚えているかは知らないが・・・・それを人の所為にしてんじゃねえよ! そう簡単に世の中思い通りにいかないから・・・・みんながんばるんだろうが! そんなにムカつくなら・・・・テメエは今まで何をしてきた! その拳で何を掴んできた!」
「な・・・なにィ!?」
このドリルがそれを証明する。
「見せてやる。因果も運命(さだめ)も突破する・・・・俺の・・・俺たちの命の叫びを聞きやがれ!!」
「こ・・・・・この野郎がア! 身の程知りやがれッ!!」
「そんなもん、知ったことかアア!!」
これは戦争か?
それは大袈裟ではない。
大量のドリルのミサイルに、止むことなく鳴り響く爆音に、爆炎と命の叫びが、たった一人の人間と魔人によって作り出されているなど、誰にも分からないだろう。
一つ分かるとすれば・・・・
「超魔爆炎覇!!!!」
「ギガドリル・マキシマム!!!!」
シモンもチコ☆タンも、決して一歩も引かないということだった。
「ひゃっひゃっひゃっひゃっ。たまや~~ってか♪ ふっふっふ、楽しみにしていたオスティアの花火とは違うが、これはこれで大したものじゃねえか」
そんな二人のぶつかり合いを、戦いを止めて、一人酒の肴にするかのように、ユウサは天上の戦いを楽しんでいた。
「ふっふっふ、それにしても・・・・、チコちゃんは知らねえのかね~? っていうか、俺はちゃんと言ったじゃねえか。ネギ・スプリングフィールドは、あのお姫様の息子かもしれないってな。それはつまり、そういうことだろう? ・・・ん? 言ってなかったか? ひゃっはっはっは」
全てが彼の暇つぶし。
シモンとチコ☆タンの命を磨り減らす戦いも、瀬田一家との戦いも、千人と新生大グレン団の戦いも、彼にはどちらに転ぼうとも、楽しければ構わなかった。
「まあ、・・・おかげで、噂のシモン君は面白くなったから別に構わねえが、・・・・しっかし、チコちゃんには、拍子抜けしたというのもあるな~。魔人が暴れまわるのに理由を付けるとは・・・アリカ姫? 紅き翼? 腐った世界? 復讐? 怒り? んな理由どうでもいいだろうが。理由は建前にだけ利用して、楽しめばいい! 暴れることに理由はいらねえ・・・くはははは、それが自由だ! それが本能だ! それが楽しい人生だ! それが祭りだ! 弱肉強食が無法の中の法律だろ?」
生き方を曲げないこの男とシモンがどうやって対峙するのかは、今はまだ分からない。
「それなのに、ディーネの嬢ちゃんといい、困ったもんだぜ。ひゃはははは、知らぬが仏、真実を知らないほうが幸せとか言われているが、こいつは知らなかったゆえの不幸だな♪ 俺と違って地獄耳を持っていない奴らは大変だね~」
ただ、一つだけ分かるのは。どれだけシモンが叫ぼうと、この男の心も生き方も変わらないということぐらいだろう。
「二十年前・・・・リアル戦争を楽しみたいだけに、連合側と完全なる世界の両陣営に強力な武器を売ったりと、戦争の盛り上がりを楽しんでいたが・・・・まさか、まだその戦を根に持っている奴らが居たとはね~。ひゃはははは、この世界はもう楽しむものはねえと思っていたが、昔の宝箱を空けたら、まだまだ残っていたって事か! 映画と違ってリアルの戦国時代に終わりはねえってことには、チコちゃんに同意だな」
その生き方で多くの者たちの心を揺さぶり、影響を与えてきたシモンの力も、この男には通用しない。
「まあ、最後まで両方とも楽しませてくれよ。どうせいずれ滅び行く世界なんだ。この祭りにド派手な花火をもっと連発させてくれよ! 最後の一発まで派手になァ! さあ、運命の女神様! どうかこの世界に平等な判決を下してくれよ! ひゃはははははははは!!」
いつの日か、シモンがユウサと相対した時、お互いが命以外に何を懸ける事になるのかは、その日が来るまで、誰にもまだ分からないのだった。
「ま・・・・参りました・・・・」
「もういい・・・俺たちの負けでいい・・・」
甲板に座り込み、降参を告げるチンピラたち。
その姿に、少しホッとしてため息を漏らすエマが呟いた。
「ふう・・・・大分片付いてきたな・・・・・見習いどもたちも、意外と役に立つようだな・・・・・・・」
大反撃開始から、次々と心を折って敗北を告げる敵の集団たち。まさか僅かこれだけの戦力で相手の千を越える戦力を相手に互角以上に渡り合えるなど、最初は想像も出来なかった。
「ふん・・・・・何だというのだ・・・・あの男は・・・この間も・・・・今日も・・・・あの男の身勝手な想いだけで・・・何故・・・・・みんな奮い立つのだ」
自分には出来なかった。
心を折るなと、部下に怒鳴るだけで、それ以上はどうしようもなかった。
正直自分自身の心も折れそうだった。
だが、シモンは違った。
「よっしゃあ! グレン団最強ーッ!!」
「リーダーはまだ戦っている・・・・僕たちもまだまだやるぞ!」
「っしゃあ! 任せろォ!」
味方だけではない・・・・
「オラオラオラァ! さっさと降参しやがれってんだよォ!」
「よし・・・どんどん追い詰めるぞォ!!」
「向こうには騎士団に神速部隊やアリアドネーの戦乙女たちが居るさね。追い詰めて、私たちでこの集団を囲むさね! ラオ、ラン!」
「おうッ!!」
この場に居る者たちは・・・・
「随分減ってきたです・・・・・」
「お嬢様、ここは手を緩めず、一気に行くべきかと・・・・」
「あら、エミリィやコレットだけでなく、ベアトリクスまで。よほど例の殿方に影響を受けたのね」
「ニャハハハハ」
「こら! 最後まで油断はしませんわ! 敵の心を完全に折るまで、10倍返しの時間は続くのですよ!」
自分の部下や、数日前には敵として戦った者たちの心まで奮い立たせた。
「ケーッケッケッケッケ、どうだァ、分不相応に歯向かうからこうなるのだァ!」
「マンドラよ。・・・・こやつ等は、一応逮捕したいので、それぐらいで・・・・」
「ふん、ミルフよ。生温いことはあまり関心せんな。それがディーネのような連中にデカイ面をさせることになる」
「まあ・・・否定はせんがのう・・・」
「よしっ、神速部隊よ!! 私が許す! チンピラどもに断末魔を上げさせてやるのだァ!!」
「「「「「「「「「「了解!!」」」」」」」」」」
「降参したものには手を出すな! じゃが、刃向かう者には鉄槌を!!」
「「「「「「「「「「了解!!」」」」」」」」」」
どいつもこいつも・・・・
そう思いつつも、どうしてもそれがエマの口からは出せなかった。
「クソッ・・・・なんなんだ・・・・これは・・・・・気に食わん・・・・・」
何より気に食わないのは、自分自身も折れかかった心を折らずに居られるからだ。
それがどうしても認めきれず、複雑な表情を浮かべたまま、エマは空を見上げる。
すると
「ん?」
ちょうどいいタイミングで自分に向かって飛ばされるシモンが目の前まで迫っていた。
「なあッ!?」
「あ、危ない!?」
僅かに反応が遅れた。
空から真っ逆様に落ちてきたシモンを受け止めるどころか避けることすら出来ずに、エマはシモンと激突し、巻き込まれて床を激しく転がった。
「いてて・・・・大丈夫か、エマ?」
頭を抑えながらエマを見るシモン。
すると・・・・
「き、キ~サ~マ~・・・どこまで・・・私を・・・怒らせれば・・・・」
「待ってくれ、ワザとじゃない」
エマの背中から怒りのオーラがにじみ出ていたのだった。
「キサマーーッ!! 私に何か恨みでもあるのか!? 散々人を・・・そして人の部下を激しく混乱させて巻き込んで!!」
「まっ、待ってくれ・・・今はそれどころじゃ・・・・」
「大体キサマは何故ボロボロなんだ!? 少しは綺麗に勝てないのか!? 見よ、この艦はすでに傷だらけではないか!? 私にはアッサリ勝ったくせに、どこまで私を侮辱すれば気が済むのだ!!」
エマだって分かっている。しかし認めたくはなかった。
正直な話、自分がどれほど抗おうと、シモンも魔人も、自分では手も足も出ない領域のレベルだということを。
(クソ・・・クソ・・・・クソッ!!)
そして部下や仲間をアッサリと奮い立たせたシモンに・・・
(悔しい・・・・何故だ・・・・何故私は何も出来ないのだ)
嫉妬していた。
「・・・・エマ?」
「うるさい、この無法者め。一体いつになったら勝つのだ?」
悔しいなどと、決して口に出しては言えない。
エマは顔を背けて少し誤魔化してシモンに憎まれ口を叩く。
すると・・・・
「爆撃乱舞!!!」
「ッ、危ない!? ぐっ、・・・うおおおおおおおお、フルドリライズ!!!」
破壊以外に用途のない爆撃の嵐が、上空から襲い掛かる。
咄嗟に反応したシモンが体に覆った螺旋力から無数のドリルを伸ばした。そしてフルドリライズ形態のドリルの一本一本が高速回転し、天に向かって風を起こし、シモンの周りに人工的な竜巻を作り上げ、爆風に絶えながら攻撃を防いだ。
「な・・・なんて威力・・・自分の味方まで・・・」
エマが周りを見渡すと、激しい爆発の力が、チコ☆タンの味方ごと巻き込み、吹き飛ばされる光景に寒気がした。
(な、なんなんだ・・・・このバカげた力は・・・そしてそれを防ぐこの男も・・・・・一体何なんだ!?)
シモンとチコ☆タン。
間近で見て改めて思い知らされるレベルの違いに、エマはゾッとするしかなかった。
「はあ・・・はあ・・・・手間ァ・・・取らせやがって・・・・カスがァ・・・・いい加減吹き飛べってんだよォォォッ!!!」
「ま、まずい!? また来るぞ!? どうするのだ・・・・どうするのだ、シモン!?」
チコ☆タンが再び魔力を凝縮させ、連発で爆撃してくるつもりである。
しかも、それだけではない。
「もういいッ!! この世界ごと消し飛ばしてやらアアアアア!!!!」
決して大げさには・・・・聞こえなかった。
「い、いや・・・それより・・・これは・・・ま・・・・・まずい・・・これは・・・この魔力量はヤバすぎる!?」
全身の汗が噴出し、今からチコ☆タンのやる技の威力を瞬時に察してしまったエマは、顔を引きつらせた。
「ほ~~、ひゃひゃひゃ、すごいね~。これがかつて、チコちゃんが帝国軍の超弩級艦を吹き飛ばした最大爆発か・・・・ひゃっひゃっひゃ、芸術は爆発ってか? ひゃははははははは!! みんな、逃げろ逃げろ~~~! 逃げ場のねえ空の上を、精一杯逃げ惑え!!」
その威力を分かったのは、エマだけではない。
「お・・・おい・・・なんだよアレ・・・」
「ま・・・まず過ぎる・・・・・あれ・・・ダメだろ・・・」
誰もが、大気を震わせるその力に、戦いの手を止めて上を見上げた。
皆がそれなりの実力者であるがゆえに、皆がその威力を予想でき、だからこそ皆怯えてパニックになった。
もはや、戦っている場合ではない。
敗れて倒れている者たちも、そうでないものたちも、皆が一斉に慌てふためきだした。
「「「「「「「「「「逃げろォォォーーーッ!!!!」」」」」」」」」」
逃げ場がないことは誰もが分かっている。
しかしどうしようもない。
「ま、まずいさね!?」
「じょ、冗談じゃねえ!? コラァ! 何とかしやがれ、クソッタレ野郎ッ!!」
「み、皆さん・・・・・・伏せなさいッ!!!」
「ま、まずいぞい!? あやつ、本気でこの艦に居る全ての者を消し飛ばす気じゃわい!!」
いきなり真上から超巨大な爆弾が投下されるとしても、直前であればどうしようもない。
確実に迫る恐怖が、彼らをより一層怯えさせた。
「くっ、・・・このままでは・・・おい、シモン!! どうするというのだ!?」
このままでは、敵も味方も吹き飛んでしまう。
しかも悔しいことに自分自身にはどうすることも出来ない。
だが、そんな中。シモンはまるで心配要らないとばかりにニヤリと笑みを浮かべた。
「大丈夫。何とかするさ!」
アッサリと言い切った。
「な、・・・・・何とかだと!? 何を根拠にそんな・・・・」
「そんなの決まっている。俺だからだ」
何故ここまでハッキリと言い切れるのか。しかもこの自信に満ち溢れた姿は数日前の比ではない。
それがエマには分からなかった。