魔法はお前の魂だ(魔法先生ネギま✖天元突破グレンラガン)   作:アニッキーブラッザー

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第220話 どこまでも

『アニキは死んだ!! もういないっ!! だけど、俺の背中に、この胸に、一つになって生き続ける!!』

 

 

男の姿を、世界は見た。

 

 

『穴を掘るなら天を突く! 墓穴掘っても掘りぬけて、突き抜けたなら俺の勝ち!!』

 

 

男の生き様を、世界は心に刻んだ。

 

 

『俺を誰だと思ってる!』

 

 

男が誰だか世界が知る。

先ほどまで情けない姿をしていたシモンに文句を言った者、見るに絶えず目を逸らした者、悲しんだ者、世界各地の視聴者たちの反応は知らないが、少なくともこの会場にいた者たちは、カミナの死後のシモンの姿を、あまり直視できなかった。

しかし、今は違う。

グレン団のマークを背中に乗せ、指を天に向かって指し示して名乗りを上げる男に、全員が目を輝かせて注目していた。

 

 

『俺はシモンだ! カミナのアニキじゃない! 俺は俺だ! 穴掘りシモンだァァァァァッ!!!!』

 

 

そう、この日、世界は穴掘りシモンという男を知ったのだった。

そして、覚えたのではない。刻み込まれたのだ。

大グレン団のリーダー穴掘りシモンという男の魂が、銀幕を突破して彼らの心の中にまで深く突き刺さったのだ。

もう、そうなったら細かいことはどうでもいい。

画面の向こうで、グレンラガンがシモンの雄たけびと共に、ギガドリルを掲げて敵に突っ込み、打ち倒せば、それが合図となり、彼らはカミナが生きていた頃以来の大歓声を久々に響き渡らせた。

 

 

「「「「「「うわああああああああああああああああ!!!」」」」」」」

 

 

シモンだ!

 

「シモンさんです・・・・僕たちの知っているシモンさんです!」

 

あれがシモンだ!

 

「うん・・・・・・・・・そっか・・・・そうゆうことだったんだね。シモンさんはこうやって・・・私たちが知ってるシモンさんになったのね!」

「うん・・・アスナの言う通りや。あれがシモンさんや!」

「はい。カミナさんじゃない。誰でもないシモンさんの姿・・・・・誰でもない自分自身・・・・・そういうことだったんですね・・・・シモンさん」

 

自分たちの知らなかった男が、ようやく自分たちの知っている男らしくなった。

それだけで、シモンを知る者たちは目が潤んでいた。

そして、誰もが確信した。

どん底にまで落とされても、そこから復活した大グレン団ほど怖いものはない。

つまり・・・・

大グレン団の大反撃はここから始まったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「うおおおおおおおおおおッ!!」」

 

 

魔人が猛る。

漢が吼える。

正真正銘の単純なぶつかり合い。

激しく高速でぶつかり合う両者の動きは、選ばれたものにしか目で追うことは出来なかった。

何も無いはずの空中であちらこちらからぶつかり合う巨大な衝撃音だけ響かせて、両者は一歩も譲らない。

 

「こ、このクソ人間がア!!」

「ああそうだ、人間だ! 人間ナメんじゃねえ!!」

 

チコ☆タンは理解できなかった。

ボロボロに打ちのめされたはずの男が、何故これほどの力を今になって搾り出せる? そう思わずには居られない。

 

(アア゛? どーゆうことだァ? さっきまで死ぬ一歩手前のカスが・・・・なんで・・・大体さっきあの武器は簡単に砕けたはずだ・・・・なのに・・・・)

 

チコ☆タンの力を込めた拳が大気を震わせ、シモンに襲い掛かる。その拳にシモンはどうする? 交わすのか? 答えは簡単だ。

 

「その手は食わねえッ!!」

 

爆ぜる魔力の力は、先ほどはシモンのドリルを粉々に砕くほどの威力を持っていた。しかし今は違う。

 

「な、なにィッ!?」

 

相殺した。

爆発の威力に負けず、シモンのドリルはヒビ一つ入らず光り輝いていた。

 

「なんで・・・・なんで砕けねえんだよ、ゴラアッ!!!! さっきは簡単にバラバラになったろうがア!!」

 

その答えがチコ☆タンに分かるはずは無い。

超銀河モードとなったシモン。いや、穴掘りシモンとなった今のシモンは、先ほどまでとはまったく違う。

どこまでも燃える気合が、魂が、螺旋族の力が完全に目覚めているのである。

 

「俺は、一分前の俺よりも進化する! 一回転すれば、ほんの少しだが前に進む!」

「ガアアアアアーーーーッ!!」

「それがドリルなんだよォ!!」

 

当惑するチコ☆タンにシモンは告げる。

チコ☆タンは相変わらず冷静さとは無縁に闇雲にシモンに殴り掛かる。狂乱する爆撃の嵐を振りまきながら、意地でもシモンをバラバラにしようとする。

だが、今のシモンは柔ではない。

 

「何よりも・・・・」

「ア゛ア゛――――ッ!!」

「このドリルが・・・・・」

 

そうだ、全ての想いを織り込んだシモンのドリルには、銀河に散った心強い仲間たちが眠っている。

 

「こいつの・・・・・このドリルが・・・・魂が・・・」

「知ったことかアア!! バラバラに消し飛べやア!!」

 

そうだ、それほど強い想いを秘めたドリルが・・・・・

 

 

―――こいつはシモンの! 大グレン団の! 人間の! いや、この俺様の魂だ! テメエごときに・・・・

 

「テメエ如きに食い尽くせるかアアアアアァァァ!!!!」

 

 

正真正銘、銀河の因果も運命も突破したドリルが・・・・・

倒れて行ったものたちの意思を受け継いだ今のシモンのドリルが・・・・・

完全に目覚めた今のシモンのドリルを・・・・

 

「黙れええ!! まとめて消し飛べやア!!」

「消えねえっつってんだろォ!」

 

簡単に砕くことなど出来るはずは無い。

 

「くそが・・・・・テメエ・・・・・・一体何本ドリルをへし折られれば気が済むんだァ!?」

「いくら・・・・でもだァ!」

 

何度でも突き進むドリルにイラつきながらチコ☆タンは叫ぶが、何度叫んでもドリルは止まらない。

 

「いつまで俺を怒らせる気だァ!?」

「いつまでもだァ!」

 

そしてシモンも止まらない。

 

 

「どこまで抗う気だァ!!!」

 

「決まってる! どこまでもだよォ!!!」

 

 

もう、シモンを止めることが出来る者など、宇宙を探しても居ないのである。

いかにチコ☆タンが魔人という異名を名乗ろうと、銀河に轟く螺旋の力を、止めることなどできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「メカタマ・インパクトォォ(ぶみゅうううう)!!」」

 

「竜連牙!!」

 

 

傷ついた機体と体は、この後のことなど何も考えていない。とにかく今を全力で戦い抜くことだけに集中し、サラもブータもハルカも振り絞った力をユウサに向ける。

 

「ひゃははははは!! こえ~~~な~~!」

 

それがうれしいのかどうか、この男の本心は読み取れない。しかしユウサは笑いながら、指で何か文字を宙に書き、その紋様が障壁となり襲い掛かる光線を防ぐ。

 

「ちっ、障壁かい!?」

「うひゃひゃひゃ! そう簡単に食らったらつまらんだろ~」

「悪いが・・・君が何をやっても楽しいとは思えないんだよね」

「あん?」

 

二人の攻撃が阻まれようと、力の差が歴然であろうと、逃げるという選択肢が無い以上戦うしか無いのである。

 

「ほ~♪ その体でまだ動けるかい、冒険王! だが・・・・俺と渡り合おうなんざ、一万年早ええッ!」

「ふっ、このくらいの痛み・・・・・体の傷の痛みぐらい耐えて見せるよ!!」

「炎熱地獄!!」

「廻し受け!!」

 

ユウサの炎を恐れる事無く瀬田は武術の受けの型で見事にユウサの炎を捌いていく。その見事な動きに、ユウサはますます機嫌良さそうに口笛吹いて感心した。

 

「ひゃっひゃっひゃっひゃ。こりゃスゲーッ! やるね~!」

「侮っては困る!!」

「その通りだ!!」

「あったり前だっての!!」

「ぶみゅう!!」

 

瀬田一人では、歯が立たない。だが、三人と一匹の力を合わせれば、あまり真剣に戦っていないユウサとの戦いは、ようやく形になってきた。

 

(こりゃあ驚いたね~。家族ってのもあるんだろうが、こんだけヤケクソに向ってきても中々の連携見せるじゃねえか~。ひゃっはっはっは、愛は強しか?)

 

瀬田、ハルカ、サラは何か特別に打ち合わせをしたわけではない。しかし全員が全員の考えを何となく読んでいた。

瀬田とハルカは長年パートナーを組んで、そしてサラはその二人を長年見続けたことから、互いの動きを理解し合い、チームワークが成り立っていた。

 

「うりゃああ!! メカタマプレス!!」

「へっ、緊縛地獄!!」

 

メカタマが宙から巨体を生かしたボディプレスを繰り出そうとするが、それに対してユウサは両手を宙に浮かぶメカタマに向け、地獄の罪人の自由を奪う鎖でメカタマをグルグル巻きにして捕らえた。

 

「う・・・ああああああああッ!?」

「ひゃっひゃっひゃっひゃっ、手の掛かる人間共も地獄から逃れることはできねえ! 何故なら地獄に自由は無いからだ♪」

 

だが、それは読んでいた。

 

「今だ! パパァ! ハルカァ!」

「ん?・・・・・・・・・げっ」

 

ユウサのこれまでの戦いで、ユウサは技を発動するのに長々とした詠唱を使用していなかった。両手を掲げて技を発動するだけである。

ならば、その両手を塞げばいい。

サラの捨て身の強行だった。

そしてその覚悟を受け取り、両手を塞がれたユウサに、まずはハルカが飛び出した。

 

 

「地獄極楽カメ縛り!!」

 

「!?」

 

 

両手を塞がれたユウサの動きを止めるべく、気の力を通したロープでハルカは素早くユウサを縛り付ける。

 

「おっほ~~、過激じゃねえかい! 地獄の鬼にSMプレイをさせるとは、度胸あるじゃねえか!!」

 

ユウサの力は底が知れない。

だからこそ、ユウサがふざけて戦っているうちが、勝機である。

だから、この勝機は逃さない。

 

「後は任せたよ!!」

 

ユウサを縛り付けたハルカが叫ぶと、瀬田が頷いて高速のスピードでユウサに向う。

 

(この男にこれ以上のチャンスは来ない・・・・絶対に・・・・)

 

拳を握り締め、妻と娘の開いてくれた活路を瀬田は進む。

だが・・・

 

「針山地獄!!」

 

厭らしく口元に笑みを浮かべたユウサは、今度は両手ではなく全身から針山を出した。

 

 

「!?」

 

「ひゃっははは! お前さんの攻撃は全てが打撃! それじゃあ俺は仕留めきれねえよ!! 残念無念また来週♪」

 

 

真面目にやっていないユウサの油断から掴み取ったチャンスかと思いきや、そうでもなかった。これはただのユウサの余裕だった。何が来ても自分が負けるはずなど無いという確固たる自信の表れだった。

だが・・・、それが油断だった。

 

 

「奥義・・・・」

 

「おいおいおいおい! 針山構わず突っ込むか?」

 

 

瀬田を・・・・魔法が使えない人の底力を量りそこなったのだ。

 

「はあああああああッ!!」

 

それは打撃ではない。

 

「ッ!?」

 

衝撃だった。

瀬田は拳を振り切るのではなく、僅かにユウサの針山にふれ、そこからユウサの体内に振動を送った。

 

「お・・・おお・・・こりゃあ・・・・」

「打撃ではない! 衝撃だ! 衝撃は、体の髄より破壊する!!」

 

僅かに血を吐き出した。

地獄の狂った鬼が、初めて血を見せた。

ユウサも自分の手のひらに吐き出した少量とはいえ自分の血を見て、少し目の色が変わった。

 

「ほ~~う・・・こいつは、・・・・」

 

吐き出した血を指でネチョネチョとさせながら、まるで懐かしいものを見るかのようにユウサは自分の血を眺めていた。

 

「戦いで~・・・自分の血を見たのは久しぶり。痛いと思った怪我は何年ぶりかね~? そーだなー・・・鶴子ちゃん以来だな~!!」

 

そしてまた笑った。

相変わらずこの男は寒気のする笑みを絶やさない。

 

「三人がかりでようやく一撃か・・・でも・・・・」

「ああ、相手もどうやら攻撃を食らえば怪我をする。それが分かっただけでも収穫だね」

 

だが、ユウサが変わらない代わりに、瀬田たちに少し希望が見えてきた。

僅かな一撃でも、先ほどまでに比べれば大きな進歩だ。

それがシモンの効果によるものかどうかは定かではないが、ようやく絶対的絶望に僅かな光が見えた気がした。

 

「「さて、行くか!!」」

「ひゃっひゃっひゃっひゃっ! いいね~、おいでおいで! 地獄に定休日はねえ! 千客万来・大歓迎さァ!!」

 

ユウサは真剣になるどころか、余計にハシャいだ。どうやら本当に遊んでいるかのように、タチの悪い、下品な笑いをケタケタと浮かべ、瀬田たちの命懸けに楽しんでいた。

だが・・・・

 

「んっ!」

「「「ッ!?」」」

 

それは突然だった。

対峙していた両者の間に、横一直線に爆風が介入し、両者は慌ててその場から後方へ飛び退いた。

 

「な、なんだあ!? 爆撃!?」

「あいつ等だね・・・・」

「どうやらシモン君たち・・・相当激しくなっているね・・・・」

 

甲板で戦っている連中などお構いなし。

シモンが交わしたチコ☆タンの衝撃波の余波が、ところ構わずぶっ放されている。

そのあまりの威力と危険さに、連中からもどよめきが見られ、徐々に敵側の戦闘意識が下がってきているように見える。

そしてそれは新たなる希望を知らせてもいた。

 

「パパ・・・・これ・・・・」

 

敵にも疲れが見られ、さらに暴れまわるチコ☆タンからの被害を受けないようにと、当初はあれほど果敢に攻めてきた千の敵が、後退し始めているのである。

 

「うん・・・いつまでも千人揃って無事なわけないからね。僕達も最初は相当大暴れして数を減らしたからね」

「ふっ、・・・・どうやら風向きが変わってきたようだね・・・・・」

 

流れが変わり始めたのだ。

 

「・・・・彼は?」

「・・・・今ので逸れちまったね・・・・」

 

ふと目を前に向けると、ユウサの姿が見えなくなっていた。どうやら今の混乱の間に離れてしまったようだ。

ここでユウサを野放しにするのは危険かもしれない。

しかし、今は逆転のチャンスである。

少しユウサが気になるが、三人も急いで他の仲間たちに合流し、体勢を整えることを重視し、未だに戦いが起こっている箇所へと走って向った。

 

 

「あ~あ~、行っちまった~。ったく~、チコちゃんも良い所で水差すね~、いや、爆弾差すか? どっちにしろ困った奴だぜ。どうして魔人は冷静に物事見れないのかねえ? だから紅き翼どもに負けるんだよ・・・・いや、沸点の低さが爆発力を生み出すからアリなのかね~」

 

 

走り出す瀬田たちの背中を少し上から眺めながら、ユウサは少し残念そうに溜息をつく。

 

 

「だが・・・ん~~、まっいいか。中々楽しめたからな。後は・・・・運命の女神がどちらの無法者に微笑むのかだね~。ひゃっひゃっひゃっ、さあ・・・・派手にやりな! こんなハリボテの世界、どちらに傾こうが、構わないぜ」

 

 

そして直ぐに興味をぶつかり合うシモンとチコ☆タンに移し、ケラケラと笑いながら死闘の行方を、彼は眺めることにした。

 

 


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