魔法はお前の魂だ(魔法先生ネギま✖天元突破グレンラガン)   作:アニッキーブラッザー

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第213話 歯ぁ食いしばれ!

誰もが負けることなどは微塵も思っていなかった。

命懸けの戦いなのに、大グレン団の面々の表情に恐怖は無い。

恐らく彼の存在がそうさせた。

先頭に立って戦うデッカイ背中の男が居れば、きっとなんとかなると思っていた。

だが勇猛果敢に戦う大グレン団の中で一人だけ表情に陰りがあるものが居た。

シモンだ・・・

 

「シモンさん・・・・・調子悪そうや・・・・・・」

「まあ、・・・・無理も無いわよね・・・・あんなシーンを見せられたんだから・・・・・私だって昔、・・・高畑先生としずな先生が一緒に居た光景を見ただけで逃げ出したことがあるからね・・・・・」

 

シモンは見てしまった。

ほのかな想いを抱いて、その強さと美しさ、そしていつでも元気な微笑を見せてくれたヨーコ。

今回の喧嘩のキーは自分だとカミナに言われ、正直シモンは不安で一杯だった。カミナや仲間のリーロンが太鼓判を押すが、シモンは自分にそんな大役が出来るのかと不安で押しつぶされそうだった。

そんな時、ヨーコはシモンの肩を軽く叩き、たった一言・・・・

 

 

『大丈夫、シモンならやれるわ♪』

 

 

そのたった一言だけで、なんとかなるのではないかという気持ちがシモンの中に生まれた。

だが彼は見てしまった。

よりにもよって、決戦直後の今飛び出そうという時に・・・・

ヨーコとカミナのキスを・・・・・

 

『関係ない・・・俺には関係ないじゃないか』

 

そう言って集中しようとする。

そうだ、今はそんなことを気にしている場合じゃない。

自分に全てが掛かっている。

自分を信じてくれたカミナとヨーコと、そして命懸けで戦う仲間たちのためにも、自分が失敗するわけにはいかない。

だからこそ関係ない。

ヨーコのこともカミナのことも今は忘れよう。だが、そう頭の中で繰り返しても彼の表情は決して晴れない。

晴れない表情のまま、シモンは人生最初の大作戦を続行することになったのだ。

 

「大丈夫かよ・・・・あの野郎・・・・・」

「うむ・・・・まあ、少々酷なシーンを見てしまったようじゃからな~」

「ええ、まあ・・・・・気持ちは分からなくもないわね」

 

リカードたちはある意味冷静な視点で見ることが出来た。

彼らもカミナを知り、その存在感に飲み込まれそうになっていたが、これがシモンの記憶を元に作られた映像である以上、映っている世界は知らなくても、これから始まるものは喧嘩ではない。戦争だ。

その意味を良く知る彼らだからこそ、観客のように只単純に先ほどまでのように映画として楽しむことは出来なかった。

シモンの明らかに集中しきれていない表情と、少し不安そうなヨーコの表情、構わず熱く吼えるカミナを見て、何かが起こりそうな気がしてならなかった。

 

(ぼーずや嬢ちゃんたちの話によると・・・・カミナって野郎は・・・・シモンの兄貴分は・・・・・・)

 

ラカンはその言葉を口に出さずに、ようやくこの映像が始まって以来、真剣な眼差しでオーロラビジョンを眺めた。

そして様々な想いが漂う中、ようやく画面の中では戦闘開始だ!

勇ましく先頭に飛び出すカミナは、敵の主力の一人とも言える獣人のヴィラルと一対一の決闘だ。

彼に続いて新たに大グレン団の仲間となったキタンを中心に、奪ったガンメン自在に操り、勝利を掴み取ろうと戦った。

そして局面を左右させる瞬間になった。

相手のガンメンがカミナたちに集中している間に、敵の巨大ガンメンへ向けてシモンがラガンのドリルを突き出して、飛び出した。

 

 

『ラガンインパクトォォォ!!!』

 

 

ラガンのドリルが敵ガンメンのダイガンザンの艦橋を貫いた。

ダイガンザンの甲板や周囲の崖の上で戦う獣人側のガンメンたちにはどうすることも出来なかった。

 

 

『いただくぜ、あのデカブツ!!』

 

 

ラガンの能力で相手のガンメンの自由を奪い手に入れる。それが今回の作戦だった。

カミナたちは皆が作戦は成功したとガッツポーズを決めている。

そして観客たちも、このダイガンザン強奪作戦は成功したのだと大喝采を上げる。

 

「うっはーーッ! シモンさんもやるねーッ!」

「そういえば・・・シモンさんは学園祭でも大きなロボットをドリルで仲間にしていたような・・・・」

 

裕奈たちは激しく興奮し、アキラはそういえばと学園祭で超鈴音の巨大ロボットをドリル突き刺して仲間にしたシモンの姿を思い出す。今にして思えば、あれも全部本物だったのかと考えると、苦笑せざるを得なかった。

だが・・・彼女たちの表情をやがて一変する。

本当に物語が動き出すのはここからだった。

 

「お、おい・・・何か様子が変じゃねえか?」

 

観客の一人が呟くと、徐々に誰もが画面の中で映る光景に歓声を止めて注目した。

それは、奪ったと思ったダイガンザンが、何故か上手くコントロールされずに、制御不能状態で暴れまわって好き勝手に砲撃を始めた。

 

「ねえねえ、シモンが奪ったんじゃないの?」

「さっきそう言ってたよね~?」

「なんだよ、合体したら奪えるんじゃなかったのか?」

 

そう、ダイガンザンは未だにシモンの命令も獣人たちの命令も聞かずに暴れまわっている。

いや、理論上は既にシモンがコントロールを奪っているはずだ。だが、それでも上手くシモンは動かせない。

徐々に大グレン団たちや観客たちも不安そうな顔をしている。

それは明らかに集中し切れていない動揺するシモンを見て、より一層高まった。

 

「シモンさん!? どうしたん!?」

 

決して声は届くはずは無いのだが、木乃香は叫ぶ。

だが、一向にダイガンザンは落ち着かない。その様子に刹那はふと思い出した。

 

「・・・・螺旋の力は・・・・シモンさんの精神状態に左右されます・・・・ひょっとしてシモンさん・・・・」

 

そう、原因は分かっている。

螺旋の力がシモンの精神力に左右されるのなら、原因は一つしかない。

だが、分かったところでどうしようもない。

 

「まずいわよ、シモンさん!」

「はい・・・・集中力が乱されているんです!」

 

アスナもネギも、いつだって迷わず突き進んだシモンの、自分たちには一度も見せてくれなかった姿に落ち着いて見ることが出来なかった。

いかに過去の映像とはいえ、何とかシモンに声を掛けられないかと必死に叫ぶ。

 

すると・・・・

 

道に迷ったシモンの耳に・・・・

 

 

『ここを開けろ、シモンッ!!!!』

 

 

ラガンのコクピットの中で俯くシモンの耳に、あの男の声が聞こえた。

なんと前を見ると、生身のカミナがラガンにへばりついていたのだ。

 

 

「「「「ちょっ!?」」」」」

 

「カ、・・・・」

 

「「「「カミナさん!?」」」」

 

 

メチャクチャだ。

こんな超危険な場所で生身をさらすなどとんでもないことだ。

だが、カミナは来た。

シモンが慌ててラガンのシャッターを開けると、カミナはそのまま・・・・

 

 

 

『歯ァ食いしばれええ!!!!』

 

『ええっ!?』

 

「「「「「「「ええええーーーーーーーーッ!!!???」」」」」」」

 

 

力任せにシモンを殴った。

正にシモンも観客も一斉になって「ええっ!?」だった。

殴り飛ばされたシモンはコクピットの中でひっくり返り、頬を腫らしながら呆けながらカミナを見上げる。

するとカミナはニヤッと笑って口を開く。

 

 

『目ぇ覚めたか?』

 

 

その言葉はいつもシモンに力を与え・・・・

 

 

『お前が迷ったら俺が必ず殴りに来る。だから安心しろ。お前のそばには、俺が居る。お前を信じろ。俺が信じる、お前を信じろ!』

 

 

どんな時でもシモンに気合を与えるのだ。

殴られた頬を腫らしながらも、シモンはようやく一切の迷いのない表情で頷いた。

 

 

『わかった!!』

 

 

シモンの顔に見る見るうちに気合が満ちていく。その証明をするかのようにラガンのコクピットの螺旋ゲージは一瞬で満タンになる。それはシモンが復活した証明だ。

そしてとうとう先ほどまで暴走していたダイガンザンも動きを止め、ついにシモンはダイガンザンの奪取に成功した。

 

「やったわ、シモンさん!」

「ウン! 良かったわ~、ウチも~ハラハラして仕方なかったえ~」

「よっぽど効いたんですね、カミナさんの拳は」

「そうですね。僕も昔シモンさんにぶん殴られたことがありましたから分かります。きっとあの時の僕と同じようにシモンさんも殴られた頬がとても心地よかったんだと思います!」

 

ネギは以前、ヘルマンとの戦いで魔力を暴走させて暴れまわったことがある。

誰にも手をつけられない状況の中、自分をぶん殴って目を覚ましてくれた人が自分を救ってくれた。

シモンだ。

あの時の頬の痛みをネギは今でも覚えている。

道に迷った時にシモンが殴ってくれた痛みがあるからこそ、ネギはいつだって迷った時にそのことを思い出す。

そのことを思い出しながらネギは心地良さそうに己の頬を擦って思い出した。

 

「そういえば、そんなことあったわよね~。それであの後・・・・・・」

「せやな~、あの後・・・・・・」

「・・・・・・あっ・・・・・・・・」

 

あの後・・・・何があった?

あの後ヨーコが現れた。いや・・・・そこではない。そのもう少し前だ。シモンがネギを殴った後に何があった?

 

・・・嫌な予感がした。

 

そうだ・・・シモンがネギを殴って止めて・・・ネギが正気に戻ってヘルマンを倒し・・・・これで勝ちだと誰もが気を抜いたとき・・・・

油断したシモンにヘルマンの攻撃が容赦なく襲った。

 

 

「あっ・・・・でも・・・あれは・・・・でも・・・でも・・・・どうしてこんなに嫌な予感が・・・・・」

 

 

場面も状況もまったく違う。しかしネギもアスナ達も急にその事を思い出して嫌な予感が溢れ出した。

観客や裕奈たちは事情も知らずにハシャいでいるが、正直そんなところではない。

 

 

『やればできるじゃねえか』

 

 

満足そうに呟くカミナがグレンに戻ってハッチを閉め、「さあ、後片付けをするか」と言った感じで動き出そうとした時。

 

・・・一筋の光の光線が、グレンを突き破って空へ伸びていった。

 

 

――――ッ!!!???

 

「「「「「「「「「「アッ!!!???」」」」」」」」」」

 

『『『『『『『『『『!!!???』』』』』』』』』』

 

 

誰もが声を失った。

 

ダイガンザンの甲板の真下から、ガンメンが出現し、グレンをビームで貫いた。

 

そこから先は声を誰もが失ったまま、シモンの視点でその光景を見るしかなかった。

 

一瞬の出来事。

 

逃れようとするグレンをそのまま敵が押さえつけ、現れた敵のボスのガンメンが槍でグレンの足を引き千切る。

 

そして・・・・・

 

 

『アニキッ!?』

 

 

シモンの叫びも空しく、敵のガンメンは槍をグレンの胴体に串刺しにして・・・・・

 

 

その瞬間・・・・・

 

 

あの男の悲鳴が全世界に響き渡ったのだった・・・・・・・

 

 

 

 

『アニキィィィーーーーーッ!!!!』

 

 


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