魔法はお前の魂だ(魔法先生ネギま✖天元突破グレンラガン)   作:アニッキーブラッザー

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第210話 魔人降臨

 

「テ、テメエら・・・・・」

「ほ~~、こいつは珍しいね~」

 

呆けるトサカに、変わらずニヤニヤと笑うユウサ。

しかしハルカとメカタマは構わずに銃口をユウサに向ける。

 

「くっ、・・・・山びこ返しで防いでこの威力かい? 両手が火傷しちまいそうだよ」

「でも、反撃だァ!!」

「浦島流・龍宮の柱!!」

「スパイラル・カオラン砲発射ア!!」

 

巨大な柱と螺旋の光の光線がユウサに迫る。一瞬だが空に光が広がるほどの輝きを放っている。

対してユウサは一歩も動かない。

口元の笑みは変えないまま、むしろ余計に釣り上がらせ・・・・

 

 

「ひゃははは、浦島流ね~、でも・・・・それじゃあ乙姫様も口説けねえよ!!」

 

 

ただ笑いながら伸ばした片手に力を流し、見えない障壁が二つの輝きを防ぎ、消し去った。

 

 

「なっ!? おいおい・・・このレベルの技をかき消すかい? 何だいこいつは・・・・」

 

 

ハルカが思わずタバコをはき捨てて舌打ちをする。

かっこよく颯爽と登場した気になっていたが、こうして相対するだけでも数々の戦場を潜り抜けたハルカですら冷や汗を掻いた。

当然サラもメカタマの中から操縦桿を握る手が僅かに強張っている。

するとユウサは機嫌良さそうに、メカタマでもトサカでも奴隷長でもなく、ハルカを見た。

 

 

「ひゃっはっはっは、しかし珍しい~、ひなたちゃんの浦島流か! レアだね~」

 

 

その一言にハルカの顔つきが変わった。

 

「あんた・・・・ひなたばあさんを知っているのかい?」

「まーな、なんつったって、半世紀前までは近衛近右衛門と並んで東洋最強を争ったのが浦島ひなたちゃんだからな~・・・・それに比べたら、お前は未熟もんだがな~」

 

不快・・・・ハルカの感情はそれ一つに尽きた。

 

「ふん、悪かったな。あんな超人婆さんと一緒にしないでくれよ。私はただの茶房の経営者だったっていうのに」

 

寒気のするような威圧感だけでなく、一つ一つのユウサの言葉や表情がハルカには不快でたまらなく感じた。

互いの覇気が無言でぶつかり合う。

この大混乱の中、何故か彼らの周りだけ徐々に空間が出来、人が自然と遠ざかった。

いや、正確にはユウサ一人だ。

まるでここだけ彼のためだけに与えられたスペースのように余裕の笑みでくつろいでいた。

 

「・・・・待ちな・・・・・」

「ん? どうしたんだ~、クマ子ちゃん? ひゃひゃひゃひゃ、顔が引きつってるぜ~」

「狂い笑いのユウサ・・・・アンタほどの大物が・・・・なんたってこんなバカ祭りに?」

 

するとユウサは人を小ばかにしたような笑みで首をワザとらしく傾げた。

まるで、むしろ何故そんな質問を? と言っているかのような態度だ。

 

 

「おいおいおいおい、昔から言うだろ~? 踊る阿呆に見る阿呆ってな。それにそういうことなら、祭りの主催者様に言うんだな。もっとも、相当この状況にお冠だろうから、聞く耳を持っていないだろうがな。だが、お陰でもう一つ歴史的な怪物を見ることが出来るかもなァ~」

 

「何だい、こいつは? よくしゃべる奴だ。オマケに笑い方がムカつくね」

 

「お~、嫌われてるね~、まあ、見てな。そろそろ噂のシモン君たちが、おもしろいことするかもよ? チコちゃんの扱い方を間違えないかね~。まあ、俺は間違えて欲しいがな♪」

 

「「「・・・・チコちゃん?」」」

 

 

ニヤニヤと不気味な笑みを浮かべながらユウサは顔を上げて、聳え立つ艦橋を見る。

まるでこれから起こりうることを心待ちにしているかのように期待に満ちていた。

 

 

そう、これから起こることは避けられない。

 

 

取り扱いは何でも乱暴にしてきたグレン団に、この魔人の扱いを丁重に出来るはずがない。

 

 

ユウサの視線の先にある、ケルベロスの最上部で、静かな空気が一気に変貌しようとしていた。

 

 

 

 

 

 

地上から遥か上空を移動する大空の戦場の頂点では、魔人が爆発袋破裂寸前で、シモンたちの到着を待っていた。

後僅かな刺激で吹き飛ぶ理性をギリギリで耐えながら・・・・・

 

 

「・・・・・・・来・・・来たかね?」

 

 

声を少し震わせながらチコ☆タンはふり返る。

 

 

「お前がザイツェフでいいんだな?」

 

 

そこには、鋭い眼光で睨みつけるシモンとシャークティが立っていた。

 

「ア・・・アニキ・・・・シースターシャークティ・・・・」

「ひぐ・・・・ひっぐ・・・・うう・・・」

 

だが、二人は直ぐに視線を変え、二人ともチコ☆タンから直ぐ後ろで手錠を嵌められて身動きが取れないまま、泣きそうな顔の少女たちを安心させるように温かく微笑んだ。

 

「大丈夫。直ぐに助けてやるからな」

 

ああ、ようやくここまで来た。

何もない状態で始まったこの世界の旅。

ようやく自分の大切な人たちに会えた。

もうすぐ手の触れられる距離にまでたどり着いた。

それだけでいい。それだけで、先ほど頭の中に響いた言葉は吹き飛んだ。

 

「ええ、大人しくしていなさい」

 

二人の言葉に美空とココネはクシャクシャの泣き顔をハニカませて頷いた。

信じている。

二人を信じているからこそ、美空とココネは笑って頷いた。

しかし・・・・

 

「お、お前? そ、それに・・・・お・・・おい・・・な、何を無視しているのかな? い、今・・・・私が尋ねているところではないか?」

 

その笑顔もやがて驚愕に変わる。

美空とココネはゾクリと肩を震わせて、忘れかけていた恐怖が蘇ってきた。

 

「ア、兄貴ィ! 気をつけて! そいつは・・・・・・そいつは・・・・・」

 

忘れもしない。

自分とココネを蹴散らした時の圧倒的な力を。

シモンとシャークティ、二人が居るのは確かに心に大きな安心感を与えてくれた。

しかし、だからといって全てを流せるほどの甘い存在ではない。

目の前の魔人は・・・・

 

「こ、これが・・・最後通告だ・・・・今すぐ奴等を退かせてここから立ち去れ・・・・もしくはネギ・スプリングフィールド達を連れてくれば・・・・ゆ、許して・・・やろう」

 

明らかに不安定だ。

口調は穏やかなつもりだろうが、微塵も落ち着いていないことが誰の目にも明らかだ。

シモンはその様子に首をかしげ、シャークティは何故か分からないが鳥肌が立った。

 

(何? この・・・・この嫌な予感は・・・・・)

 

胸の中に正体不明の不安が押し寄せる。恐怖ではない。しかし、本能が察した。

するとシモンはそんなシャークティに構わず、恐れ多くも大胆にチコ☆タンに向けて言い放つ。

 

 

「応じるわけないだろ、バカ野郎!」

 

「・・・・・・・ア゛?」

 

 

チコ☆タンの震えが止まった。

 

「ネギたちは関係ない! これは俺たちの喧嘩だ! そっちこそ美空とココネを開放しやがれ!」

 

それが最後の引き金となった。

 

「おま・・・ここ・・・お・・・れが・・・私が・・・・平和的に話し合いをしているという・・・のに・・・テ、テメエは・・・・・お、・・・俺に向って・・・な・・・なんと?」

「何度でも言ってやる! 俺の妹を返しやがれ!」

 

――――ッ!?

 

事情を知るものからすれば、まるでニトログリセリンに油を大量に掛けるかのようなシモンの言動は、完全にチコ☆タンの最後の理性を消し飛ばした。

 

 

「こ・・・・こいつ・・・この・・・や、・・・・この・・・ぐぞ・・・・がっ・・あっが・・・ァ・・・・ア゛・・・ア゛・・・ア゛ア゛――――――――ッ!!」

 

 

その瞬間・・・・爆発した。

 

 

「ぶ・・・ぶち・・・ぶち殺してやるぞォクソみそ共がアアアァァァァァァァ!!!!」

 

 

鼓膜が爆発したのかと勘違いしてしまうほどの、怒剛が魔法世界の天空に響き渡る。

 

 

「「ッ!?」」

 

「・・・・来る!?」

 

「ゥゥ・・・こ・・・怖イ・・・イヤダ!」

 

 

誰もが争いを一時中断させて、聳え立つ艦橋の屋上を見上げている。

 

「な、なんじゃ!?」

「何だよこの音は!?」

「・・・・・と、鳥肌が・・・・まさかこの咆哮は・・・・・ザイツェフかい?」

「うわ・・・・隊長・・・またやっちゃったみたいだね・・・・しかも今回はもう完全ブチキレモードだ・・・・」

 

伸びきった角が頭皮を、そして外皮を丸ごと突き破り、中から黒い硬質で盛り上がった筋肉を身に纏った黒い魔人がとうとうその姿を現した。

美空とココネは恐怖がフラッシュバックのように蘇り、足を竦ませて腰を着いてしまった。

いや、美空たちだけでない、シャークティもシモンも、怒号と共に真の姿を見せた魔人に全身の鳥肌を立てた。

 

「こ・・・・こいつ・・・な、何者だ!?」

 

シモンは思わず自分の手を見る。手に汗掻いて魔人に気おされている自分が分かる。

ラカンやフェイトとも違う。

月詠のように歪んだ感情とも違う。

純粋な憤怒と殺意に暴力。

それはシモンが初めて味わった感情だった。

 

 

「死゛ねやアアーーーッ!! このクソッタレ野郎がアアアアアア!!!!」

 

 

癇癪一つで核兵器。

向ってくるチコ☆タンに思わずシモンもシャークティもその場から飛び退いて間合いを取る。

しかし彼らが避けて、チコ☆タンが殴った床が大爆発を起こした。

そう、彼に触れられた部分が爆発して吹き飛んだのだ。

甲板も、空気も、彼が攻撃するだけで吹き飛んでいく。

その振動は、この超弩級の戦艦をも揺らせるほどの威力を持っていた。

 

「なっ!!??」

「こ、・・・・この力・・・・まさか・・・・」

 

思わず目を見開いてみるチコ☆タンの威力。

これが超弩級の超硬質な戦艦でなければ確実に大破しただろう。

それはラカンやフェイトを見てある程度の耐性が出来たシモンですら驚愕するほどの破壊力。

 

「チョロチョロと・・・・すんなアアアアア!!!!」

 

叫びだけでも顔を思わず覆い隠してしまうほどの空気の振動が伝わってくる。

虎の尾を踏んだ結果である。

蜂の巣を突いてしまった結果である。

爆発物を丁重に扱わずに乱暴にしたのが原因である。

言葉に表せないほどの雄叫びと爆弾抱えて暴れ回るその姿・・・・まさに・・・

 

 

「ひゃっーーはっはっはっは!! 伝説の魔人の復活だ! 爆乱に巻き込まれねえように注意しな!! 爆弾の扱いに注意しねえから、バカを見るんだよ!」

 

 

そう、魔人の光臨だった。

 


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