魔法はお前の魂だ(魔法先生ネギま✖天元突破グレンラガン)   作:アニッキーブラッザー

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第207話 迷わず進め

「・・・・・何だ? ・・・この光景は・・・・・・」

 

 

天空で繰り広げられる大乱戦を腕組して見下ろしながら、チコ☆タンは呟いた。

 

「本来なら今頃オスティアで盛り上がっているはずが・・・・・・・」

 

何故そもそもこんなことになっているのかが理解できない。

ネギ・スプリングフィールドと白き翼をおびき寄せた後に、彼らを倒して貼り付けにでもして、オスティアを焼き討ちにするのが本来の流れだった。

 

「何故・・・・訳の分からん連中が来て・・・こう・・・せっかく準備に準備を重ねてきたというのにッ!!」

 

ようやく来るべき日か来たと思い、オスティアを目指さした瞬間に訳の分からない連中が現れて、自分の用意した方舟を舞台に遠慮なく暴れまわっている。

 

「こ・・・い・・・つら・・・・・・・」

 

ガマンにガマンを重ねたチコ☆タンのイラつきは最大限まで達し、何時の間にか頭皮の皮膚から一本の角が突き出していた。

 

「いくぜええ!! 奴等を皆殺しだァ!」

「ケケケケ、血が騒ぐぜええ!!」

「ぎゃっはははははは!! いい加減ガマンしすぎて、イラついてたところだ!!」

 

押し寄せる怒涛の波が一気に押し寄せてくる。

シモンがグレン団を率いて飛び込んだのを合図として、敵がうねりを上げて押し返そうとしてくる。

千を超える困難と脅威の波は生半可なものではない、気を抜けば一瞬で飲み込まれるはずだ。

だから彼らも出し惜しみはしない。

持てる力と気合を最初からぶつけにいく。

 

「まったくウルサイ奴等じゃ! 断罪の焔(コンデム・ブレイズ)!!」

「吹き飛べ! 燃える天空(ウーラニア・フロゴシース)!!」

 

輝く槍から放たれる光線と大魔法の炎が容赦なく爆ぜる。

煙の中から現れたのは十字型の槍を構えたミルフと、巨大な戦乙女の剣を振り回すエマだった。

 

「よしっ! 隊長に続くぞ!! とにかくとことんやるぞォ!」

「行きますわ! 後で団長に叱られるのなら、思う存分戦ってから叱られますよ!」

「さあ、かかってきなさい!」

「いくさね!」

 

前へと突き進むグレン団に負けてたまるかとミルフとエマが思う存分暴れ周り、覚悟を決めた者たちも各々の拳を握り締めて、荒波へと自ら突き進んでいく。

 

「へへ、怒涛のミルフに、セラスの再来とまで言われている天才ヴァルキリーのエマ団長かァ!」

「いいね~、戦争でもなきゃお目にかかれねえ豪華な面子だぜ!!」

「ぶっつぶせえ!!」

 

怯える者たちは一人もいない。

敵にも味方にもだ。

たとえ相手が良く知る武士であろうとも、胸の中の衝動が考えるよりも先に相手へと体を動かしていく。

天空を舞台にした世紀の大喧嘩は、誰も彼もが後先考えずに暴れまわっていた。

 

「黒衣の夜想曲(ノクトゥルナ・ニグレーディニス)!!」

「な・・・なんだこりゃあ!?」

「敵が怯みましたわ! 愛衣!」

「はい! いきます・・・・・全体 武装解除(アド・スンマム エクサルマテイオー)!!」

 

高音の繰り出す何十体もの黒い影の使い魔たちが戦場に現れ、敵が一瞬怯んだ。その隙に愛衣のアーティファクトの箒の能力を使って、一面の敵の武器を弾き飛ばしていく。

 

「なっ・・・・・武器が!?」

「このガキ共がァ!」

「やりますわね・・・高音さん・・・愛衣さん・・・・我々も負けていられませんわ!!」

「「「「応!!」」」」

 

余計に熱さを増して次から次へと敵も押し寄せるが、同じく火がついたエミリィたちも負けられないとばかりに、まだ半人前の未熟ながらも、次々と敵を打ち倒していく。

 

「魔法の射手 砂の五矢(サギタ・マギカ セリエス・サブローニクス)!! おい、何か娘たちがすげえじゃねえか!」

「そりゃあ熱くなるさね・・・・しかし・・・」

「ああ・・・このままじゃキリがねえぜ!」

 

怒涛の快進撃を繰り広げる急造チーム。

群がる敵を次々と撃破する。いかに敵の数が無量大数とはいえ所詮は連携が取れていない烏合の衆だ。

だが・・・

 

「調子に乗るなテメエら!!」

「そら~、囲め囲め~!」

 

だが、それでも飛ばしすぎればすぐに息が上がる。何の考えもなしに特攻していたらあっという間に囲まれた。

 

「くっそが・・・・」

「無策はヤバかったさね・・・」

 

大多数の敵に周りをスッカリ囲まれて苦笑するトサカ、奴隷長、バルガスの三人組。この状況をどうやれば乗り切ることができるのかと模索している。

すると・・・

 

 

「弱音は早え! バルガス! トサカァ!」

 

「その通り! 来たれ地の精 花の精!!夢誘う花纏いて 蒼空の下 駆け抜けよ 一陣の嵐!! 」

 

 

自分たちの名を叫ぶ声が戦場に聞こえた。

 

「この呪文は!?」

 

バルガスが顔を上げると、周りを囲んだ人垣を飛び越えて、一匹の妖精と全身を包帯でグルグル巻きにした虎の獣人が現れた。

 

「春の嵐(ウェーリス・テンペスターズ・フローレンス)!! 今だよ、ラオ!!」

「っしゃあああああ! 虎砲――――ッ!!」

 

一直線に突き進む竜巻と、魔力を込めた虎の息吹が人垣を吹き飛ばした。

 

「遅かったじゃねえか、バルガス、トサカ! 手を貸すぜ!」

「やっちゃおーー!」

 

着地してニヒルに笑いバルガスたちの前に現れたのは、ラオとランの拳闘家コンビだった。

 

「へっ、テメエら・・・・」

 

どうやら彼らは祭り側ではなくこちら側に助っ人してくれるようだ。

そもそもはこの男がバルガスに連絡をしたのが全てのキッカケだったのだ。

チコ☆タンに殴り飛ばされ、オスティアの重大な危機を知り、逸早く知らせようと思ったのだが、荒唐無稽な計画内容をしゃべっても、ましてやチンピラ拳闘士の自分たちの意見を政府の人間は信じないと思った彼は、拳闘家仲間であるバルガスに連絡をよこしたのだった。

 

「ラオとランが裏切ったぞ!?」

「構わねえ、一人二人増えたところで変わんねえよ!」

「その通り! さあ、俺が出るぜ!!」

「お・・・・お前は!?」

「ワオオオオオオオン!! さあ、引き裂いてやるぜ!!」

「ウルフ王子だ! 拳闘家、ウルフ王子が来やがったぜ!」

 

だが、今となってはどちらでもいい。

重要なのは一人でも二人でも助っ人はありがたいことだった。バルガスたちは笑いながら頷きあい、取り囲む戦士たちに向っていく。

 

「しゃああああ!! 王狼の鉤爪(フェンリル・クロウ)!!」

「ウルフ王子か! 拳闘家同士、相手になるぞ! 戦いの旋律加速二倍拳(メローディア・ベラークス デー・ピフェスビナンドー)!!」

「俺もやるぜバルガス! 猛虎破砕拳!!」

 

混乱極まりない戦場だが、敵と味方はハッキリと別れている。

中には非常に強力な戦士も混ざっている。常識的に考えて50人程度で1000を超える敵を打ちのめすのは無謀だった。

しかし彼らはその無謀に臆せず突き進む。

 

「うらァァァ! 俺は近海最強のーーッ――――」

「我こそケルべラス大樹林のハンターの――――」

「っしゃあ! 去年ナギ・スプリングフィールド杯本戦出場のこの俺様がァ――――」

 

次々と来る勇猛果敢な戦士たち。

世界の広さを感じさせるほどの大勢の屈強な戦士たちだが、いかに己の最強を誇ろうと、今の彼らは誰にも止められない。

 

 

「すっこんでやがれ!! フルドリィライズゥッ!!」

 

「聖なる十字架(クリスクロス)!!」

 

 

その先頭を突き進み、群がるものたちを次々と蹴散らしていく8人の戦士たち。

十の壁、百の壁、千の壁が立ちはだかろうと、前へと行く。

 

「うるららららららららら!! ちっ・・・・数が多すぎだぜ、しかもこいつら一人一人がかなり強え!」

「何だよ、薫ちん弱音か?」

「何言ってやがる! 燃えてきたっていう意味だぜ!!」

「その通りだとも!」

「我等の女神を泣かせた者達を蹴散らすぞ!」

 

これは豪徳寺たち新生大グレン団にとっては今迄で一番大きな戦いだった。ついこの間まで一般生徒達だったものたちにはかなり厳しすぎる戦いだろう。

だが、そんなことは知ったこっちゃねえと暴れまわった。

 

「すごい・・・豪徳寺さんたち・・・・麻帆良武道大会からあんなに成長してる・・・・」

「我々モ負ケラレマセン、ハカセ」

 

エンキが飛び出し、鋼の拳で、鋼の蹴りで、強力なビームを次々と繰り出していく。指示を待たずにこれだけ戦うエンキはまるで学園祭の時を髣髴させた。

 

「量産型ニハ量産型ノ意地ガアリマス」

「な、何だコイツは!?」

「攻撃してもまったくダメージがねえ!?」

 

ロボットにしておくのはもったいないと思えるほどの闘争心。

それは彼自身がロボットでありながらグレン団としての芽生えた気合と闘争心なのだろう。

 

「量産型? あなたはとっくにオンリーワンだよ!」

 

科学者として、自分が生み出したメカに気合と闘争心が芽生えるなどどういう展開なのだろう。しかし悪い気がしない。ハカセは苦笑しながら思った。

新生大グレン団たちの大活躍。純粋な闘志が壁に風穴を開けて行く。

しかしその行く手もまた、そう簡単には突破できない。

 

「ここから先は通行止めネ!」

「あばばば・・・緊張して心臓が飛び出しそー! でも心臓ないんだけどね~、骨だから♪」

「そう簡単に辿りついたらつまらねえだろう?」

 

黒いコートを着た三人衆が現れた。

シモンたちの前に現れたのはパイオ・ツゥ、モルボルグラン、ラゾの三人だ。チコ☆タンへの道を阻むように、彼の部下が立ちはだかる。

 

「へん、上等だ! ここは任せろリーダー!」

「僕たちが突破口を開きます!」

 

豪徳寺たち四人が先駆けとなって、三人に特攻しようとする。

しかしその瞬間、モルボルグランがコートを破り、その服の下から長い六本の腕を鞭のようにしならせて、豪徳寺たちをはじき返した。

 

 

―――ッ!?

 

「皆ァ!?」

 

「くっ・・・・魔族!? 薫さん! 達也さん! 慶一さん! ポチさん!」

 

「オラァ! 余所見してんじゃねえ!」

 

 

モルボルグランの異形の姿、蹴散らされた四人に思わず視線が移り、その隙にラゾがシモンたちに迫る。

しかし・・・

 

「サセマセン」

「ッ!? テメエ・・・・・」

 

エンキが防いだ。間に入ってラゾの攻撃を逸らした。

エンキは変わらず無表情。しかしラゾは気に障ったのか、既に無表情のエンキしか見ていない。

 

「らあああ!!」

「!!」

 

ラゾが鋭い爪や、鋼のように太い腕から繰り出す拳でエンキに迫る。しかしエンキもその攻撃を高速な動きで見事に逸らしていく。

そして同時に両者の拳が繰り出される。天然な獣人のパワーと科学と気合で生み出されたロボットのパンチ。

 

「やるじゃねえか!」

「ソチラコソ」

 

激しい拳が激しい音を立てて交錯する。

 

「わあ・・・あの人強いよ~、それじゃあ僕はこっちを・・・・」

 

互角に戦うエンキとラゾのパワーのぶつかり合いに少し引き気味に見ていたモルボルグランが標的をシモンたちに変えようとした・・・その時、

 

 

「極・漢魂百裂拳!!」

 

「!?」

 

 

巨大な気の塊がモルボルグラン目掛けて飛んできた。

モルボルグランが六本ある腕の一本で反射的に飛んできた塊を弾くと、塊は拡散し、一瞬だけ光が目に入った。

そしてその一瞬の間に、離れた場所で拳を突き出した豪徳寺が、立て続けに連打を放つ。

 

 

「オラオラオラオラオラオラオラ!!!!」

 

 

学ランにリーゼントだから・・・というわけではないが、豪徳寺は次々と漢魂を連発し、モルボルグランは溜まらず複数の腕を駆使して弾いていく。

 

 

「くう~~、でも、無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァ!」

 

 

何故かモルボルグランは反射的に言ってしまった。

しかし無駄ではない。

 

 

「アッ!?」

 

 

モルボルグランが腕を豪徳寺に封じられている間に達也と慶一とポチの三人がバラバラの方向から攻めてきた。

 

「おらァ! 手が六本とは生意気だぜ!」

「ならば僕等は四人合わせて八本だ!」

「・・・覚悟・・・・」

 

最初は簡単になぎ払われた四人だが、簡単には怯まない。多少の怪我もリスクも恐れず、彼らは果敢に魔族相手に攻め立てた。

 

「うう~~、怖いね~、でも腕の数なんて関係ないよ、腕の違いだよ・・・って僕腕って言っても骨だったァ!?」

 

四人の気迫にモルボルグランは臆病な性格でありながら真っ向から受け入れる。

豪徳寺たちも望むところだった。そんな彼らの気合は、魔族を怯ませるほどの気迫を放っていた。

 

「むう・・・貧乳カ・・・少し残念」

「ふっ、私はそんなものは気にしません! 胸は小っちゃくても頭脳はノーベル賞! 科学と気合のコラボレーションを見せてやります!!」

 

気づけばハカセも光学武器を駆使してパイオ・ツゥと交戦を始めた。

ここに来てノンストップだったグレン団たちの足が止まった。

するとそんな状況の中でありながら、豪徳寺たちは一斉に叫んだ。

 

 

「「「「先に行けッ! リーダーァ! ここは任せろォ!!」」」」

 

「行ってください、シモンさん! シャークティ先生!」

 

 

足止めされた自分たちに構うなと、先に進めと彼らは叫んだ。

 

 

「で、・・・・でも・・・・」

 

 

だが、簡単に決めることは出来はしない。シャークティも同じである。

しかし・・・

 

「リーダーガ信ジル我々ヲ信ジテクダサイ」

 

メカに・・・いや、仲間にここまで言われてグチグチ言っているわけにはいかない。

エンキのその言葉にシモンは歯を食いしばりながら、彼らに背中を向けた。

 

 

「ボヤボヤしていないで必ず追いつけよ! お前ら!」

 

「約束ですよ!」

 

「「「「「当ったり前だァ!!」」」」」

 

 

シモンとシャークティは心を鬼にして、前へと進む。仲間の想いを無駄にしないためにも、一歩でも前へ前へと進んでいく。

後ろは振り返らない。

彼らには「進め」という行為以外、受け入れない。

前に立ちはだかる壁にだけ、ドリル突き立て突き進んだ。

だがその時・・・・

 

 

―――仲間を見捨ててなお前に進むか?

 

「グッ!?」

 

「シモンさん?」

 

 

突如頭に響き渡る声に、シモンは顔を歪めながら少し頭を抑えた。

 

 

 

―――それが螺旋の民の宿業だ・・・・

 

 

「うう・・・・くっ・・・こんな時に・・・」

 

 

―――その業ゆえにお前たちは滅びなければならない・・・・

 

 

 

あの声だ。

自分を苦しめる謎の声。それがよりにもよってこんな時に響き渡った。

その言葉の一つ一つが、たった今豪徳寺たちに背を向けた自分自身に突き刺さる。

仲間を見捨てて? 前へ進む?

それがどれほどの行為なのか、シモンが頭の中でその言葉を何度も繰り返す。

だが・・・

 

「シモンさん!!」

「・・・・何でもない・・・・気にするな・・・・」

 

シャークティの言葉で正気に戻ったシモン。その表情に少し迷いが見られた。

だが、立ち止まっているわけには行かない。

 

 

(そうだ・・・・今は考えるな! 俺は・・・・何のためにここに来た!)

 


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