魔法はお前の魂だ(魔法先生ネギま✖天元突破グレンラガン)   作:アニッキーブラッザー

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第206話 伝説を知る時が来た

 

「ねえねえ、あれってナギ選手じゃない?」

「うん、それにコジローもいない?」

 

ナギ・スプリングフィールド杯決勝戦。

昨日の戦いで半壊しかけた闘技場もスッカリ元通り、今日も観客席は立ち見が出るほどの満員で埋め尽くされている。

いや、闘技場の中だけではない。

コロシアムの外に設置されたオーロラビジョンや、中継が入っている酒場などでは誰もがごった返しの人の中で同じ映像を見ようとしている。

彼らの目当ては勿論決まっている。

新たな伝説となったナギ・スプリングフィールドという名の新人拳闘士だった。

 

「うわ~~、昨日は意識しませんでしたけど、試合開始時間はまだまだだっていうのに、もう席が満杯ですよ」

「ほんまやな~。俺ら、昨日は試合に集中しとったからな~」

 

変装のためのサングラスを掛けながら、完全に埋め尽くされた観客を見渡しながらネギと小太郎が呟いた。

その途中で、ネギと小太郎の正体を噂するファンたちが居たが、ネギたちは気にせず観客席の周りをウロウロし始めた。

 

「それだけアンタたちが注目されてんでしょ? この様子だったらシモンさんは完全にアウェーだね」

「たしかに神楽坂の言うとおりだな。ラカンのおっさんのファンも今日は先生の味方になるだろうし、応援に問題は無しだな。まあ、あの熱血野郎は今回はそれほど注目されてないからな」

 

アスナと千雨の言っていることに間違いはなかった。

会場のほとんどの目当てがネギことナギを一目見ようと訪れたものたちばかりだからである。

シモンもそれなりに活躍はしたものの、無名のシモンとサラが一・二回戦や準決勝を楽々勝ち抜いた程度で、昨日のネギVSラカンの試合に及ぶはずもなかった。

そう、彼らの目的はシモン・メカタマVSナギ・コジローの試合ではない。

彼らの目的はナギとコジローだけが目当てなのである。それが観客を見渡すだけで直ぐに分かった。

ラカンファンだが今日はネギたちを応援しようというガラの悪そうな連中。

最高潮に達した女性たちのみで構成されているファンクラブ。彼女たちの広げる垂れ幕には「NAGI☆LOVE」と書かれているぐらいである。

 

「う~ん・・・・ネギ君が勝たないと亜子達は開放されへんけど、こんだけネギ君たちの応援されている中でさらにシモンさんやのうてネギ君を応援するんは、少し気が引けるな~」

 

木乃香が少し難しそうな表情で悩んでいた。

アスナや刹那も、その複雑な気持ちを察して木乃香をあやす様に頭を撫でていた。

 

「それにしても・・・・・」

 

そして刹那も改めて会場中を見渡し、一つ疑問に思った。

 

「それにしても試合開始はお昼だというのに、朝も早くに皆さん来すぎではありませんか?」

「そうよね~。いくら、早く来ないと席がなくなっちゃうとはいえ・・・・・」

 

するとその疑問に朝倉が答えた。

 

「何々~? アスナも刹那さんも知らなかったの~?」

「えっ?」

「今日皆が朝から集まったのは、今から特別にイベントがあるからなんだよね~」

「・・・・イベント?」

「そっ、20年続いたナギ・スプリングフィールド祭の決勝を祝して政府が超特別イベントをやるらしいんだよ。それが・・・・」

 

朝倉がメモ帳を広げながら集めた情報を読み上げていく。

今から行われるもう一つのこと。

試合前に行われる前座イベントに、魔法世界が大注目していた。

すると、そんな中で闘技場の真ん中に一人の亜人の女が現れた。派手な格好をしてこの大会中の審判を任されていた女性だ。

すると彼女の登場で、お祭り騒ぎだった会場中も徐々に静かになっていく。

 

 

『満席で埋め尽くされたお客様、そして視聴者の方々おはようございます。観客動員数12万人以上のこの試合、正にナギの名を冠するにふさわしい世界最大規模の大会へとなりました』

 

 

会場中の視線を一身に受ける女性。

朝倉も説明を止め、ネギたちも闘技場の真ん中へと視線を移した。

 

 

『今日おこなわれる決勝戦。新たな伝説が生まれるのか? おそらく皆が同じ気持ちで心待ちにしているでしょう』

 

 

皆が「ウンウン」と頷いている。その様子にネギが少し照れくさそうにした。

だが・・・

 

 

『ですが、皆さん。・・・・今日の目的はナギはナギでもそれだけではないでしょう?』

 

 

その一言に、黙っていた観客の表情がパアっと晴れた。

そう、これからようやく見られるのである。

 

 

『皆さんの期待に応えましょう!! 今から放送するのは、紅き翼(アラルブラ)の協力で作られた大戦記のリアル映像! 英雄たちの伝説を記録した、『紅き翼戦記(アラルブラ・サーガ)!! の初公開です!!』

 

 

会場中が一斉になって立ち上がり大歓声を上げた。

 

「すげえーー! 本当に紅き翼の記録映像を見れるんだ!」

「今まで映画とかで公開されていたのは、作り物だったからよ~。そっか~、ラカンが絡んでるんだったら間違いねえな!」

「く~~、楽しみ~」

 

誰も彼もがこれから始まる歴史的映像に期待と興奮を隠し切れずに、身を乗り出していた。

 

「えっ!?」

「紅き翼戦記って・・・・ラカンさんが私たちに見せてくれたやつ?」

「あのおっさん・・・・何が先生のために作っただ。これで放送収入がたんまり入るって仕組みじゃねえか」

 

ネギたちも聞いていなかったことのため、少し驚いていしまった。

ラカンが自分のためにと見せてくれた映像を、まさか世界中の人たちと一緒にもう一度見ることになるとは思って居なかった。

周りを見れば始まるのを今か今かと待ち焦がれている観客たち。それだけで息子のネギ自身も少し鼻が高い気がした。

 

「もう一度見れるなんて思ってなかったです」

「そうね~、ホントーにラカンさんってば、ちゃっかりしてるわね~。でもいいの、ネギ?」

「何がです?」

「昼には大一番が待っているってうのに、ここでのんびり映画でも見て。修行や作戦はしなくてもいいの?」

 

朝早くにはあれほど慌てふためいたネギたち。

特にラカンからシモンのことを聞いたときは全員が騒然としていた。

まさかあれほど苦労してようやく引き分けだったラカン相手に、シモンは一ヶ月も前に戦っていたというのは、ネギやアスナ達にとっては衝撃だった。

本来なら焦ってギリギリまで修行したいところだが、ネギは逆にふっきれたような表情で首を横に振った。

 

「ええ・・・・いいんです。どのみち今出来ることはラカンさんの試合のときにやり尽くしてしまいましたから。だから今の僕に出来ることは、体調を万全に整えてから・・・・」

「整えてから?」

「当たって突き破れです♪」

 

そう、もはや最後の修行などという足掻きはしない。

逆にふっきれてしまった。

ラカン戦を乗り越えて、ネギ自身が今の自分がどれほど憧れていた存在とやり合えるのかを試したくなったのだ。

決勝に勝たなければ亜子達は解放されないのは分かっている。

しかし、ラカン戦を終えて一人前だと認められたからこそ、今の自分を真っ向からシモンにぶつけたいと思ったのだ。

だからこそ、ネギは今ここに居る。

今から数時間後に始まるシモン戦に全てを出し切ることを決意したのだ。

その決意がアスナ達にも伝わって、彼女たちも微笑んで頷いた。

 

 

『さあ、皆さん! 英雄たちの伝説を、その目でじっくりと堪能してください! では、いきます! せーの、見てぇもんは見てぇ!!!!』

 

 

だから今は肩に力を入れる必要はない。

一度見た映像だからこそ、むしろ気楽に見れるというものだ。

さあ、ようやく超巨大スクリーンに伝説の映像が流れる。

アスナ達も純粋な観客として、もう一度映画を楽しむことにした・・・・・の・・・・だが・・・・

 

 

 

―――毎日毎日掘ることだけが俺の仕事だ

 

 

 

「「「「「「・・・・・・・・・・・・・・」」」」」」

 

 

 

―――穴を掘ればそれだけ村も広がる

 

 

 

「「「「「「「「「「・・・・・・・・・・あれ?」」」」」」」」」」

 

 

 

―――村長は喜んで俺にブタモグラのステーキを食わせてくれる

 

 

 

「「「「「「「「・・・・・ブタモグラのステーキって何?」」」」」」」」」

 

 

 

―――ステーキのために掘るのかって? それは違うよ

 

 

 

「「「「「「「「「別に聞いてねええ!!」」」」」」」」」

 

 

 

―――宝物を掘り当てることだってある。

 

 

 

紅き翼たちが巨大な魔法を駆使して千の戦場を駆け巡る超ド派手な映像が流れる・・・・かと思っていたら・・・・

 

「うおおおおおい!! ミルフはいるかァ!?」

「ちょっ、リカード! どういうことなの?」

「何じゃ? 何じゃこの映像は?」

「おい・・・・・どういうことだ?」

 

来賓席で世界中の誰もが思っている言葉を吐く三人のVIP、リカード、セラス、テオドラにちゃっかり居座っている偽エヴァ。

そして・・・

 

「おいおいおいおい、俺様のFILMじゃねえぞ?」

 

特等席で会場の反応を堪能しようとしたが、予想もしていなかった事態に目を丸くするラカンが居た。

 

「ミルフは!? あいつの仕事・・・・何? アイツが居ない? あん? とにかくこれをもって来た奴は誰だ!? 何でこんな貧相なガキが穴掘ってる映像が流れるんだ!?」

 

リカードたちが慌てるのも無理はない。

観客たちだって目が点になっていた。

紅き翼の伝説を拝めるかと思っていたのに、朝も早くから楽しみに待っていてようやく映像が流れたと思ったら・・・

流されたのは薄暗い世界、

幼く、顔もパッとしない少年が、

泥まみれになってドリルで穴を掘りながらその途中で僅かに点滅する小さな小さなドリルを掘り当てて、うれしそうに眺めている映像だった。

このFILMは店から取り寄せてからそのまま今日まで厳重に保管してあった。

つまり・・・・・・

 

「おい・・・・・ウツカ・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・ブクブクブクブク・・・・」

「ウツカァ!? ウツカが泡吹いて倒れたァ!?」

「ふぃ・・・・フィルム間違えた・・・・・・」

 

つまり超取り返しの付かないミスに気づいたウッカリ騎士ことウツカ・リミスは泡を吹いて倒れてしまった。

 

「ちょ、おい・・・これが紅き翼の映像だァ!? ふざけんなあ!!」

「全然違うじゃねえか! ちゃんと本物流せェ!!」

「ナギ様の映像を流しなさいよーーー!!」

「どうなってんだよ! 責任者出せえ!!」

 

会場中が裏切られた展開に憤慨し、持っているものを闘技場に投げつけて大騒動が起きる。

司会の女もマイクで慌てて場を治めようとするが、治まる気配はない。

しかし・・・・・

 

「ね・・・・・・・ねえ・・・・・ネギ・・・・」

「は・・・・はい・・・・・・・」

 

そんな中で、誰よりも目を見開いて流れる映像をネギたちは見ていた。

 

「ウソ・・・・せやけど・・・あれって・・・・・ドリルに・・・・・」

「は・・・はい・・・・コアドリルです」

 

木乃香も刹那も流れる映像に戸惑いを隠せない。

楓やくーふぇやのどか、ハルナも朝倉も千雨も動揺しまくっている。

何故なら映像に流れる少年が・・・・

少年が見つけて、うれしそうに首にかけている小さなドリルは・・・・

自分たちの良く知る人物に重なったからだ。

 

「くっそ・・・・とにかく映像をさっさと止めねえと」

 

リカードが慌ててミスで流した映像を止めようと動き出そうとするが、

 

「ちょっと・・・・・待て・・・」

「はっ?」

 

なんとラカンが止めた。

しかもその表情はいつものように気楽な表情ではなく、どこか真剣さを帯びて流れる映像の少年に注目した。

 

「あのガキ・・・・・それにドリル・・・・・・・・・そういや面影が・・・・・・・・・・まさか・・・・・」

 

ラカンが唸っている間にも映像が流れている。

すると薄暗い地下で下向きに歩いている少年が、一人の男とぶつかった。

ぶつかった男は少年よりも年が上だろう。背も高く、むき出しになった上半身の肉体もそれなりに鍛え上げられている。

ダブダブのズボンと雪駄履きで、ハダカの上半身にはうねる様な刺青を刻み込み、その瞳にはV字型のサングラスを掛けていた。

そして男は少年に言う。

 

 

『上を向いて歩け、シモン!!』

 

 

それはいつかの時代・・・・

 

次元の異なるどこかの銀河の・・・

 

青き星の地下深く・・・・・

 

静かにくすぶった二人の漢の魂が、天を目指したのが始まりだった。

 

 

『カミナじゃねえ、アニキって呼べ!』

 

 

その魂、狭い穴倉には収まらず・・・・

 

どこまでも大きな背中のその漢を、少年はどこまでも追いかけた。

 

「おい・・・・今・・・・シモンって言わなかったか?」

「ああ・・・・シモンって・・・たしか・・・・・」

「・・・あの男・・・・じゃねえか?」

 

観客もシモンの名に反応して、一斉に怒号や物を投げつける手をピタリと止めて、少し周りのものと一緒にざわつきだした。

 

「どうなってやがる・・・・・」

「これは・・・・シモンさんの?」

「おい・・・まったく分からぬぞ。何がどうなっておるのだ?」

「・・・この間の男か?」

 

リカードたちですら・・・・

 

「こりゃまた意外な展開だ・・・・」

 

ラカンですら戸惑いを隠せないで居た。

 

「カ・・・・・・カ・・・・・」

 

ネギは震えが止まらない。

木乃香達ですら自分の心臓の高鳴りが自分で聞き取れるほど、落ち着くことが出来なかった。

 

 

「カ・・・・・カミナ・・・・さんや・・・・」

 

 

そうだ・・・カミナだ。

学園祭の時、超鈴音の罠と事故に巻き込まれ、時限の狭間に囚われた自分たちの前に現れた男。

 

「どうしたんや、ネギ?」

「あれって・・・シモンさん?」

 

小太郎や亜子達が首を傾げているが無理もない。

知っている奴等にしか、今どれほどの事が起きているかは理解できない。

ネギもアスナも木乃香も刹那も、楓、くーふぇ、のどか、ハルナ、そしてカモ。学園祭の奇跡を知っている者達にしか理解できない

シモンを知っている者たちにしか理解できないだろう。

気づけば会場が静まり返っていた。

何の事故かは分からないが、今日の決勝戦に出てくる男の少年時代の映像が流れ、気づけば少しだけ様子を見るように映像を眺め始めた。

リカードたちも中止の指示を忘れて、数日前に自分たちの前に現れた規格外の男の過去の物語を「もう少しだけ」という気持ちで様子を伺っていた。

 

 

しかしこの静寂はやがて何倍もの熱気に変わる。

 

 

これは廻る銀河のその果ての・・・

 

 

青く輝く小さな星の・・・・

 

 

小さな男の大きな話し・・・・

 

 

語り尽くせば、日はまた昇る

 

 

さあ、目に焼き付けろ!

 

 

漢が駆ける! 奴等が駆ける! ドリル銀河の漢道!

 

 

さあ、またもや伝説が始まった。

 

 

いや、ついに伝説を知るときが来た!

 

 

もう、この流れは誰にも止めることなど出来はしない!

 




さあ、魔法世界よ、螺旋世界を目に焼き付けるのだ!
シモンたちの大喧嘩の間、ネギたちはグレンラガン紅蓮編の鑑賞会に入りました。

思えばこういう「世界中が主人公の物語を鑑賞」的なものは、これ以降私が本作以外でも小説執筆する際に使用するようになった手法です。

ちなみに、


『禁断師弟でブレイクスルー~勇者の息子が魔王の弟子で何が悪い~』
https://kakuyomu.jp/works/1177354054918478427


現在こういうの書いたりしてます。主人公ドリル技使ったり……興味ありましたらどうぞ~

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