魔法はお前の魂だ(魔法先生ネギま✖天元突破グレンラガン) 作:アニッキーブラッザー
「行くぜエーーーッ! 祭りだアア!」
「っしゃああ! やるぞォ!!」
「っか~~、燃えてきたアア!!」
「デケェ花火を打ち上げてやろうぜェ!」
「オオオオオオォォッ!!」
沸騰した血が燃え上がり、彼等の熱気は魔法世界を徐々に埋め尽くそうとしていく。
「いいね~、輝きを見せるバカってのはこうでなくっちゃな!! うひゃひゃひゃひゃ! そう、歴史が変わる! 新たな時代の幕開けだァ!! ゾクゾクしてきたぜ!!」
艦体の頂点で一人笑いながら、ユウサは一部始終を楽しんだ。
彼もまた、笑いとともに興奮を止めることができず、今か今かと艦の向かう方角を眺めながら、オスティアの大地を心待ちにしていた。
「さあ・・・まずはネギ・スプリングフィールド・・・白き翼・・・早く来い! 早く来なければ、オスティアに辿り着く前に貴様の大事な生徒が死ぬことになるぞ?」
間もなく朝日が昇り始める。
誰かが言った。
夜明けと共に悪魔は滅びると。
だが現実はどうだ?
冗談ではない。登った朝日を背負いながら、ついに飢えた獣たちが解き放たれる。
何度でも言おう。もう、誰に止められない・・・・・・
「・・・・ん?」
はずだった。
「おい、あれは何だ?」
「・・・前方から何か来るぞ?」
祭りの参加者たちが、艦の前方よりこちらへと向ってくる何かに気づいた。
「ネギ・スプリングフィールドか!?」
チコ☆タンが艦の最上部から身を乗り出して目を凝らす。自然と捕らわれた美空とココネも顔を上げる。
しかし・・・・・
前方から来るのは・・・・・
「なな・・・・なんだ!?」
「あれは・・・・民間船? いや、周りを囲んでいるのは・・・・」
「帝国軍の空軍部隊だ!?」
「な、なんで!? 誰かが密告したのか!?」
魚型の一隻の飛行船。彼らの乗る戦艦に比べれば遥かに小さいが、それでもそれなりの大きさである。そして、その周りに跳ぶ10隻の戦闘機に、多くのものがどよめき始めた。
「クケー!? あれは神速部隊!?」
「おいおい、ゲッコ・・・お前の元上官だぞ!?」
一匹の鳥獣人が驚愕の表情で、向ってくる存在に反応を見せる。
いや、彼だけではない・・・・・
「頭ァ!」
「・・・マンドラ・・・・いや・・・それだけじゃなさそうだよ」
「ちょ、いきなり何が来たネ?」
全てのものが、向ってくる存在に驚きを見せた。
そして彼らの反応に遠慮する事無く、飛行船と戦闘機が構わず前方から突っ込んでくる。
「おい・・・・・止まらねえぞ?」
「・・・・まさか・・・・・」
風を切り裂き轟音を響かせて、奴等に止まる気配は無い。
まさか? という予感が全てのものに行き渡るころ、飛行船の周りを囲んでいた戦闘機だけが更に前へ出た。
『おうおう・・・まさか国が所有していない超弩級の戦艦をこの目で見れるとは・・・・』
『甲板に集まっている面子を見ろ。どう考えても慈善団体には見えないぞ?』
『こいつら・・・・戦争でも始める気か?』
『む・・・・艦橋の最上部を見ろ! 二人の少女・・・・そして黒いコートの男・・・間違いない、アレクサンドル・ザイツェフだ!!』
甲板を埋め尽くす獣や魔族たちから視線を変え、船橋の上層部に居る三人の姿を神速部隊は確認した。
どうやら、目的の人物たちと一致したようだ。
「ん? ネギ・スプリングフィールドでも白き翼でもない。神速部隊だと? それともただの援軍で、奴等はあの飛行船に乗っているのか? まあいい・・・・」
艦の最上部で腕組しながら怪訝な顔をするチコ☆タン。すると腕を前方にバッと伸ばして、艦内へ指示を出す。
「構わん! 今この場より開戦だ! 邪魔なハエ共を撃ち落とせェ!!!」
その言葉を合図にケルベロスが動き出す。
無数にある砲台から魔砲弾が次々と撃ちだされていく。
問答無用の先制攻撃だった。
『野郎! 何の容赦もなく撃ってきやがった! だが、神速部隊を舐めるな!』
『マンドラ様! 前方の艦隊から砲撃! どうします!』
休み無く打ち続けられる魔砲弾を、空を縦横無尽に駆け巡り交わしていく神速部隊の戦闘機。
そして一人の隊員がマンドラに指示を求めた。
『おい・・・・・敵のシールドは?』
『シールドは・・・・・張られていません!』
どうやら動き出して間もないケルベロスは、未だに戦闘準備が出来ていなかった、もしくは魔力が完全に溜まっていなかったのかもしれない。超怒涛級の戦艦のシールドが未だに張られていなかったのは不幸中の幸いだった。
だからこそ・・・
「さっそく向こうから攻撃しかけてきたか・・・どうやら話し合いってわけにはいかないな。なら・・・・・ならこのまま突っ込むぞ!」
相手は問答無用で砲撃をかましてきた。つまり戦闘する気満々である。
ならばこちらも交渉も手順も何も必要ない!
やることは単純でいい!
飛行船の中から、前方を睨むシモンが答えた。
「こ、コラァ! これは俺たちの船だぞ! 突っ込んだらぶっ壊れるだろうがァ!?」
腕組して指示を出すシモンに、トサカが焦りながら文句を言うが、シモンはニッと笑った。
「トサカ・・・・この船もいいけど、あの船もよくないか?」
「・・・・・・・・・・・・・・はっ?」
まるで子供が玩具を見つけたかのような表情で、シモンは前方のケルベロスを眺めながら。口を開く。
「助けてくれたお礼に、奴等をぶっとばしたらあれをお前にやるよ!」
「は・・・・ハアアァァァァァァァァ!!??」
トサカは顎が外れそうになるくらいの大声で叫ぶ。他のメンツも、まるで当たり前のように言うシモンに若干引いている。
だが、その隙にシモンの指示を受けて、神速部隊が砲弾を惹き付けている間に、シモンたちの乗った飛行船が一直線にケルベロスの甲板目掛けて突っ込んでいく!!
「「「「「「ちょ・・・・冗談ろォォォォッ!!??」」」」」」
そこに敵も味方も無かった。
「ぎゃァアア!?」
「うおおおおい!? 本当かよ!?」
「特攻かァ!?」
「訳が分かんねえええええ!?」
逃げ惑う集った戦士たち。
少し甲高い声で叫ぶ現れた戦士たち。
威風堂々とするのは一部の不撓不屈の者たちだけだ。
「バ・・・・バカな!?」
「撃て撃てェェ!!」
神速部隊に狙いを定めていた艦の砲撃が一斉に向ってくる。
魔力の篭った弾丸は真っ向から向ってくるが、途端に落下する飛行船の周りに緑色に輝くフィールドが展開されて、砲撃を防いだ。
「ちょっ・・・あれって!?」
「・・・・感ジル・・・・・・懐かシイ・・・感じスル・・・」
弾幕の雨を全く怯む事無く突っ込んでくる飛行船から感じる懐かしい光。
中から聞こえてくるのは、聞いているだけで胸が熱くなるほどの雄叫び。
美空とココネは、打ち震えずに入られなかった。
まだ確認したわけではない。
しかし・・・・
気持ちが我慢できずに・・・・
二人の頬に・・・・
一筋の涙がこぼれた・・・・
「「「「「「「「いっけええええええええええええええ!!!!」」」」」」」」
二人の涙が地面に零れ落ちると同時に、速度を増した飛行船が甲板に直撃し集まっていた祭りの参加者たちを盛大に吹き飛ばした。
そして飛行船もまた、着地を失敗して甲板の上を二転三転しながら転がり、ようやく止まった時には真っ逆さまで機体をボロボロにさせて停止した。
「・・・おい・・・・」
ボロボロの飛行船の残骸を取り囲むように、気づけば砲撃も止み、戦士たちは呆然と立ち尽くしていた。
しかし・・・・
「いてて・・・・クッソがァ!! 俺たちの飛行船ボロボロにしやがって!!」
「うぐっ・・・おの・・・・おのれ・・・・シモン・・・・絶対に貴様は帰ったら監獄に・・・エミリィ・・・そして他の見習い共も帰ったら長時間の説教をしてやる!」
「お、お姉さま・・・ぶ・・・無事ですか?」
「う・・・いつッ・・・う~、正義の味方の登場には締まりませんね」
「まったく・・・・こんなメチャクチャは二十年ぶりじゃわい」
「でも、何とか着いたさね」
「とにかく早く出ましょう!!」
ボロボロとなった飛行船の中から声が聞こえてきた。
すると、中からガヤガヤと騒ぎ出し、ようやく飛行船の扉が乱暴に蹴破られ、中からゾロゾロと何十人もの集団が現れた。
そして・・・・
「ふう・・・・だが・・・・着いたぜ!!」
シモンが埃を払いながら、中から現れた。
既に外に出た面々は、誰かが言い出したわけでもなく、自然とシモンが歩く通り道を開けて、シモンはその道をゆっくりと進み、前へ出る。
正面に見えるのはだだっ広い甲板を四方に埋め尽くす武装した獣人、魔族、亜人、賞金稼ぎ、拳闘士の群れ。
だが、その数に圧倒されることも無く、シモンはゆっくりと辺りを見渡した後、天高々と聳え立つ艦橋の頂点に立つ、コートを羽織った男と、その傍らで膝を突いて、両手を縛られている二人の少女を見た。
そして彼らはようやく目が合った。
「・・・・・あの子達か・・・・・・・」
呟くシモンは自然と胸が温かくなった。
(ああ・・・泣いている・・・・・・俺を見て・・・・そうか・・・・そうだな・・・・バカな兄貴でゴメンな・・・・でも・・・・すぐに・・・・)
自分と目が合い、これだけ離れた距離からでも二人の少女が泣き顔でこちらを見ているのが分かる。
ああ、間違いない・・・あの子達こそ自分にとっては掛け替えの無い存在なんだと心の底から理解した。
そして・・・・
「ァ・・・・・ア・・・・う・・・うう・・・ひっぐ・・・ア・・・アニ・・・・・」
美空も・・・
「・・・・・・ひっぐ・・・・うっ・・・うう・・・・・ア・・・二・・・・」
普段は無表情のココネも幼児のようにどんどん顔が崩れていく。
まるで迷子になって寂しさと不安で押しつぶされそうになっている子供が、ようやく自分の家族を見つけた時と同じ表情である。
そして・・・・
「そして・・・アイツだな?」
シモンが温かい眼差しから一変して鋭い目つきで美空とココネの傍らに居る男を睨みつける。
「おい・・・・テメエがザイツェフだな?」
拳を強く握り締め、その瞬間に巨大な螺旋槍が現れ、シモンはその螺旋の頂点を、男に向って指した。
「・・・何だ? こいつらは・・・・・何者だァ!!」
チコ☆タンはこちらを睨みつけるシモン、そして更にゾロゾロと飛行船から出てくる集団に判断できないで居た。
するとシモンは輝かしいオーラを身に纏う。離れたところからでも確認できるその光は、飛行船が張っていたフィールドと同じ色だった。
自分たちの砲撃を防いだのは、あの妙な男なんだと認識した瞬間、シモンは天高らかに叫んだ。
「俺たちは新生大グレン団だァ!! テメエ、俺の妹をォ返しやがれェーーーーーーッ!!!!」
美空とココネは声を上手く出せないで居た。
「あ・・・・あう・・・・う・・・うあ・・・・・」
「・・・・・・ア・・・・・・アレ・・・・・・・・・・コレ・・・・夢? ウウン・・・夢・・・違ウ!」
夢かと疑うが、無理も無いだろう。両手を繋がれて居なければ、頬を抓ってでも確かめただろう。
特攻してきた飛行船の船内から、ゾロゾロと現れだした謎の集団。
その一番先頭に居る男。
その最も近い場所でこちらを見上げる者たちを、本物なのか、幻なのか、頭の中で思わずに入られなかった。
しかしシモンの今の叫びだけで全てのことを理解した。
そう、これは現実だ。
ずっと自分たちが会いたかった最愛の兄が、最高の仲間たちを引き連れて、最高の登場をしてくれたのだ。
だから、もう我慢する必要はない。
二人はずっと言いたかった言葉をようやく心の底から叫ぶことが出来た。
「「ア゛ニ゛ギィィィーーーーーーーーッ!!! 皆ァァァァ!!!」」
どうして?
何で?
どうやって?
そこに居るのはシモンだけではない。シャークティを始めとするグレン団に、美空のクラスメートのハカセや夕映まで居る。
この世界に一緒に来た高音に愛衣に、アリアドネーで戦ったエミリィ、そしてコレットやベアトリクスまで居る。
ゾロゾロと知らない連中まで引き連れて、自分たちの兄は何をしているのか?
だが、それもどうでもいい。
だって、そうだ。あの兄だ! あのシモンだ! 新生大グレン団だ! だったら細かいことは気にするな!
全ての不安も恐怖も混乱もふっとばし、美空とココネは涙を流しながら叫んだ。
「美空ちゃーーーーん! ココネちゃーーーん!」
「待ってろよな! 今すぐこいつらぶっ倒すからよォ!!」
「来ましたよ! 美空! ココネ! 待ってなさい! すぐに助けます!」
「お二人とも、今すぐ助けて差し上げますわ!」
「美空ァ~! ココネェ~! 絶対助けてあげるからね!」
「あれがシモン君の妹か」
「お前の未来の妹だぞ、サラ」
「ちょっ、こんな場所でソレを言っちゃうかよ!?」
「ぶみゅううう~~~~!!!」
美空の叫びを聞いて豪徳寺やシャークティたちが両手を挙げて美空とココネに向けて頼もしい声を上げ、両手を盛大に振った。
そしてエミリィやコレットたちも、笑みを零して美空とココネに手を振った。
「おい! あれ・・・たしか・・・冒険王じゃねえか!?」
「それだけじゃえねえ! あれは、解放奴隷拳闘士のバルガスじゃねえか!?」
「怒涛のミルフに、神速のマンドラ・・・・・アリアドネーのエマまで居るぞ!!」
「くっくっく・・・・・ミルフゥ~~! マンドラァ~~! それにあれは戦乙女旅団・・・・アリアドネーの可愛い後輩たちもお出ましかい!!」
「何だこいつ等!? 少数だがとんでもねえ面子だぞ!?」
「ひゃっひゃっひゃ! ・・・あれが現実世界のTwitterで噂になったシモンとグレン団とやらか!!」
存在する数だけのどよめきや驚きが広がっていく。
未知な存在から見知った存在までもが、わけも分からぬ組み合わせで現れたのである。
部隊どころか国も身分も何もかも違うものたちが、何を抱いて同じ戦場に現れたのか?
多分その答えは・・・・単純だ・・・・
「冒険王・・・兄・・・・ふん、そうか・・・そういう繋がりか・・・・・それで・・・・ネギ・スプリングフィールドはどこだ? しかもこの組み合わせは何だ?」
しかしその単純な答えをチコ☆タンは分からないでいた。
いや、こちらを睨みつけ、既に臨戦態勢が整っている連中を見れば一目瞭然なのだが、それでも答えに至らず、この場に居ないネギや白き翼の面々を探そうとしたがやはり居ない。
そして・・・・
「今行くぞ! 美空ァ! ココネェ! だからテメエら、道を開けやがれェ!!」
男は走り出した。
ドリル片手に千を遥かに超える血に飢えた魔獣の群れの中へと突っ込んでいく。
敵も数も知ったことではない。
とにかく行けと、胸の中が叫んでいた。
「「「「「「「っしゃああああ!!!!」」」」」」」
荒ぶる魂と怒号の波が押し寄せる。
我先にと先頭を駆け抜けて、壁を突き破ろうとしているリーダーのドリルに続けとばかりグレン団は走り出した。
「行きますよ、愛衣!!」
「はい、お姉さま!!」
「やるよ、ハルカ、サラ!」
「仕方ないね」
「ジョートーだよ!!」
出遅れるわけにはいかない。
数で上回る相手には、先手必勝! 気合で負けていたら話にならない!
「アリアドネーの戦乙女旅団の力、無法な奴等に思い知らせてやれ!!」
「「「「「はいっ!!」」」」」
「女子供に負けるではない! ワシらの怒涛の咆哮を響かせてやろうではないか!!」
「「「「「「「「「「了解!!」」」」」」」」」」
『天空の戦場とは粋な計らい!! 我等神速部隊にこそ相応しい舞台!! 華麗に舞おうではないかァ!!』
『『『『『『『『『『サー!!』』』』』』』』』』
そう、国も種族も身分も違う彼らが一団となって押し寄せる姿。
それはまるで一つの生命体。
ならば、彼らは何の生命なのか?
それは簡単だ、何もかも違うはずの彼らの唯一の共通点。
闘争心だ。
最初は文句の多かった連中も、気づけば闘争心に火が付いていた。
「お・・・おい、来るぞ!?」
「う・・・うわああああああ!?」
だが・・・
「うろたえるんじゃないよ、ハナタレ共がッ!!」
それは相手も同じだ。
「頭の言うとおりだ!! まずはオスティアの前に、こいつ等を神輿に貼り付けてやろうじゃねえか!!」
「数はこっちが圧倒的に上なんだ! オスティアに着く前の暇つぶしだ! 押しつぶせええ!!」
「「「「「「ウオオオオオォォォーーーーーッッ!!!!」」」」」
彼らもまた火がついた。引火した。
燻らせておいた火種に一足早くに火がついた。
ここは天空の戦場。身を切り裂くような荒れ狂う突風や凍てつく空気が攻め立てる。だが、気持ちの燃え滾った彼らには丁度いいくらいだった。
さあ、開戦だ!
伝説の始まりだ!