魔法はお前の魂だ(魔法先生ネギま✖天元突破グレンラガン)   作:アニッキーブラッザー

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第199話 待っている

重い瞼を擦りながらの大会二日目の準決勝。

相手は地方からここまで勝ち上がった、多少はこの世界で名の知れた猛者だろう。

昨日とは違って、瞬殺・秒殺・というわけにはいかなかった。

だが・・・・

 

「なるほどな・・・・・流石に楽勝ってわけにはいかないが・・・・・・」

 

シモンが攻防の中、ぼそりと呟くと、サラが応えた。

 

「あの化物に比べたらどーってことねーよ!!」

「ぶみゅうう!!」

 

ブータの螺旋力を浴びて、メカタマのアームが変化した。それは見るからに逞しい、螺旋の形。

 

 

「「いくぜ!!」」

 

 

パートナーの掛け声と共に、二人は唸りながら自身のドリルの先端にエネルギーを込める。

構わず向ってくる二人の拳闘士だが、次の瞬間二つの衝撃波により激しく吹き飛ばされた。

 

 

「「ダブル・インパクトォォーーーーーッ!!」」

 

 

ドリルに向うところ敵なし。

剣でも魔法でもない、戦いの舞台では初めて見るドリル。

いつの間にかそれが観客たちの間でも知るところの存在となり、シモンとメカタマがドリルを出した瞬間、「待ってました!」といわんばかりのどよめきを見せた。

 

 

『ドリルきましたーーーッ!! もはや名物となってしまったシモン・メカタマコンビのドリル技!! これにはたまらず相手も吹き飛ばされましたァ!!』

 

 

吹き飛ばした相手を見て、勝利を確認。

二人はいつものように闘技場のど真ん中でハイタッチを交わし、歓声が上がる。

 

 

『シモン・メカタマコンビ! 危なげなく決勝進出けってーーーーーーーい!!』

 

「「「「「「わああああああああああああああ!!!!」」」」」」

 

 

楽勝ではないが、苦戦も無い。

シモンもサラも、幾多もの世界最強クラスの力との激戦を乗り越えてきたことにより、もはや二人には並の猛者クラスでは相手になるはずも無かった。

たとえ魔法世界でもレベルの高い拳闘大会の準決勝とはいえ、今の二人には何の自慢にもならなかった。

 

「らくしょー、らくしょー! 案外魔法っていうのも大したことねーのかもな」

 

歓声を受けながら、メカタマのコクピット内で少し得意げな顔になりながらサラは声援に手を振って応えながら闘技場を後にしようとする。

 

「どうかな・・・・それこそ世界は広いからな。昨日の映像に出ていた奴等もそうだしな」

「紅き翼か~。まっ、あのラカンと同じぐらい・・・そしてそれ以上強い奴等も居るってのは分かったけど、この大会見る限りそうでもないんじゃないか? ラカンが一人別格なだけだろ。あ~あ、明日はアイツと戦うのか~、あ~やだな~」

 

サラは口を3の字にしながら、明日のラカンとのことを考えて見るからに嫌そうな様子である。

 

「さあ・・・・それもどうかな?」

 

しかしシモンはまだラカンと戦うと決まったわけではないと思っている様子である。

その証拠に客席からもチラホラ話しが聞こえてきた。

 

「おい・・・・ようやくだな・・・」

「ああ・・・・正に伝説の一戦だな・・・マジでどっちに賭けようかな」

「やっぱラカンだろ~。本物でもない限り、ナギには勝てねーよ」

「何言ってるのよ! ナギ様が勝つわよ!」

 

あれだけ盛り上がったシモンたちの戦いも、前座でしかない。

この大会中は結局ずっとそうだった。

やはりいかにシモンたちの力を見せたとしても、ナギとラカンという超ビッグネームが揃う大会では、おまけ扱いである。

既に観客たちは次の世紀の一戦に興味が移っていた。

 

「ったくよ~。私たちだっているっつーのによー。ナギだとかラカンだとかの話しばっかじゃねーか」

「そう言うなよ。実力が伴っているんだから、仕方ないさ」

「む~。何だよ~、それじゃあシモンはこれでいいのかよ?」

「まさか、言っただろ? 流れに身を任せていても、いずれこの流れを飲み込んでやるってな」

 

マントを翻しながら、胸元のコアドリルと指輪を指で弄りながら、シモンは笑う。

 

「ナギ・・・いや、ネギにラカン・・・・どっちが決勝に来ても、観客がどう思っても望むところだ。その時は、たっぷり教えてやればいい!」

「・・・・何を?」

「・・・・さあ? その時に考えるよ」

 

サラとは反対に、どうもシモンは余裕がある。

結局昨晩は自分の記憶を映像で見ることは敵わず、結局進展もなかったのだが、妙に自信に満ち溢れていた。

当初はラカンと戦うことを避けようとしていたのだが、いざ大会で戦いが進むにつれて、表情が活き活きとしていた。

 

(もう少しだ・・・・もう少しで・・・何かを掴める・・・・)

 

コアドリルを弄くりながらシモンは笑みを浮かべた。

すると、退場する自分たちと入れ違いざまに前方から見知った巨漢の男が現れた。

 

「よう。随分とアッサリだったな」

 

ニヤニヤと笑いながらも、その流れる威圧感はいつもよりも研ぎ澄まされている。

 

「ああ・・・でも、明日はそうはいかないんだろ?」

 

シモンは立ち止まらずラカンの横をすれ違いながら言う。するとラカンもふり返らずに応えた。

 

「ああ、すぐ終わらせてやるから待ってな!」

 

この男が全て口にするのは強がりでもハッタリでもない。自分の力を信じるゆえの事実だろう。

だからこの男が早く終わらせると言えばそうなるだろう。

しかし、シモンはすれ違いざまに見たラカンの表情から、本心を読み取っていた。

 

「そうか? でも顔に書いてあるぜ?・・・・楽しみで仕方ないってよ・・・・・明日の決勝じゃない・・・・今から始まる事がな」

 

お互い振り向かない。

しかし今自分たちは同じ顔をして笑っていることが、シモンにもラカンにも分かった。

 

 

「・・・・テメエはどっちがいい? ボウズと俺は」

 

「・・・・どっちでもさ。俺のやる事は変わらない」

 

「そうかよ・・・・まあいい・・・それじゃあ・・・・」

 

「ああ・・・それじゃあ・・・・・」

 

 

お互いが逆の方向へと進みながら、二人は同じ言葉を言った。

 

 

「「明日の決勝戦は楽しみだな」」

 

 

どのように楽しみなのかは分からない。

ネギとラカンの戦いはまだ始まってすら居ないのだから。だが、どちらが勝ちあがってきても、シモンと戦うことになれば楽しいことになるだろう。

そしてシモンも、強敵と戦うたびに何かを掴み取り何かを成してきたのだ。この大会中は結局それほどでもなかったが、決勝に関しては勝ち上がった二人のどちらと戦っても、何かが起こるような気がしていた。

根拠が無い勘だった。

すると・・・・

 

「・・・・・シモンさん・・・・」

 

外へ続く闘技場の通路を進む中、数人の少女たちと、二人の男を発見した。

 

「・・・・来たか・・・・・」

 

アキラや夏美、そして裕奈とまき絵に試合前の激励を受けていたネギと小太郎だった。

 

「シモンさんたちもスゴかったねー! 決勝進出おめでとー!」

「おめでとうございます」

「流石兄ちゃんたちやな・・・・・俺らも負けてられんな」

 

駆け寄る少女や表情に気合を入れている小太郎。

そしてその後ろには・・・・

 

「ネ・・・じゃなかったナギ・・・どうなんだ?」

 

これまたラカンとはまた別の意味で、強者の空気を醸し出すネギが居た。

するとネギは頼もしい表情のまま、シモンの問いに何の迷いも無い瞳で頷いた。

 

「大丈夫です!」

「おっ?」

 

断言した。

そこには強がりは感じない。

ラカンと同様に、自分をどこまでも信じきった目をしていた。

 

「勝つのは僕です! 勝てるかもとか、ひょっとしたら・・・とかそんなんじゃありません。勝たなくちゃいけないんじゃない・・・・僕が勝ちます!」

 

口調は強い。

だが、決して肩に力が入っているようにも見えなかった。

おそらく自分は相当やってきた・・・・もしくはかなりの秘策や考えがあるのかもしれない。

少なくとも大口には見えなかった。

流石のシモンも少し驚いた。

 

「随分と自信あるじゃないか? 相手は化物だぞ?」

 

するとネギはひるまずに、シモンに向って言い放った。

 

「大丈夫です。僕を誰だと思っているんですか?」

 

言い切ったネギの表情は威風堂々としていた。

その表情に女性陣が顔を赤らめて見惚れているが、無理も無いほど今のネギは頼もしかった。

 

「さあ、知らないな? だから教えてくれよ」

「ええ。教えてあげますよ。今日と・・・・そして明日の決勝戦で」

 

ネギは中へと進んでいく。

すれ違う際のネギとシモンとの身長差が当然だが子供バージョンの時と比べてあまりない。しかしそれはただ単純に年齢詐称の薬を飲んでいるからだけではなさそうだ。

 

 

「シモンさん。ラカンさんは本当に強敵です。僕の目指す人たちの居る舞台への入り口です。でも・・・・ゴールじゃありません。だから・・・・・シモンさん。以前・・・あなたが言ってくれた言葉・・・・、今度は僕からあなたに頼みます」

 

 

その背中はとても大きかった。

 

 

「目指す天の向こうで待っていてください!」

 

 

今から始まる準決勝の第二試合。

どちらの男も、実に頼もしかった。

シモンはネギの言葉に振り向かず、返事もしない。しかし口元に笑みを浮かべて手だけを軽く上げて了承の合図を出した。

一体どちらが勝つのか本当に分からないが、どちらが来ても自分は必ず相手になるとシモンは心の中で約束した。

少女たちがネギと小太郎が闘技場へ向かったのを見て走って客席へ移動しようとする。シモンには目もくれず、一瞬でも見逃してはならないといった表情だった。

だが、それはシモンも同じ気持ちだった。

 

「俺たちも行くか」

 

シモンもサラも少し歩くスピードを速めて、客席へと向おうとした。

すると・・・・

 

「どうでしたネギ先生は?」

 

シャークティやグレン団の仲間がそこに居た。どうやらシモンが試合を終えて帰ってくるのを待っていたようだ。

 

「ああ。どうなのかは、これから教えてくれるそうだ」

「そうですか・・・ふふ、シモンさんもお疲れ様でした」

「おう! 観客の反応も上々だったし、さすがリーダーだったぜ!」

 

大して疲れてはいないが、労いの言葉を掛けてくれた。ネギがいつも拳闘の試合を終えると女性ファンの出待ちがごった返すらしいが、シモンの場合はどうもそうはいかなかった。

だが、それでも少ない言葉でも十分に心に染み渡るのが目の前の仲間たちだった。

 

「パパとハルカは?」

「お二人は別の場所で見ていました。なにぶんこの試合は超人気でチケットも近い席では取れなかったので・・・・」

「うわ~。そっか~、本当に人気なんだな~。多分皆今日が決勝戦だと思ってるんじゃね?」

 

サラは冗談めいて言っているが、あながち冗談でもないところがこの試合の盛り上がりだった。

 

「多分お二人もサラさんを探していますし、行かれてはどうです?」

「そーだな、ちょっと探してくるよ! 直ぐ戻ってくるからさ!」

 

サラはそう言って、メカタマから降りて少し駆け足で瀬田とハルカを探しに行った。そしてメカタマから降りたブータも自然とシモンの肩へと戻り、シモンはブータの頭を撫でながら、サラの背中を見ていて思った。

人ごみの中へと駆け込むサラを見ていると、そしてこのようにチケットを一緒の席で入手できない辺り、この試合の注目度が高いことを証明していた。

そしてこの大会の試合は魔法世界全土に放映されている。

 

 

だからこそ、これから始まる戦いは魔法世界全体が注目していると言っても過言ではないのであると。

 

 

だからこそ・・・・

 

 

これから始まる戦いは・・・・・

 

 

これから始まるもう一つの戦いは・・・・

 

 

決して歴史上では語られることは無い。

 

 

その代わりこの戦いに参加した者たちは決して忘れない。

 


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