魔法はお前の魂だ(魔法先生ネギま✖天元突破グレンラガン)   作:アニッキーブラッザー

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第198話 歴史の足音

朝早くには祭りの騒ぎも徐々に高鳴りだし、人々が目を覚まして祭りの中へと足を踏み入れようという中で一人の男が叫んだ。

 

 

「ディ・・・ディーネじゃと!?」

 

 

メガロメセンブリアの重装魔道兵部隊隊長のミルフは、部下の報告に机をバンと叩きながら立ち上がった。

 

「はっ、そのように監視の部隊から報告が・・・・そして流麗のディーネだけでなく、虎口のラオに魔森の妖精・ラン、獣狼のウルフ王子・・・ジギタリやティトリ・・・・脱走兵・鳥獣のゲッコまで・・・どいつもこいつも曲者ぞろいです」

「な・・・なんと・・・・う~む・・・どういうことだ?」

 

ミルフはひとしきり唸りながら何かを考えているようだが、結局まとまらずにあきらめて溜息をついて、もう一度イスに座った。

 

「流麗のディーネ・・・たしかミルフ隊長や帝国軍の神速のマンドラ様と随分前に国境付近で争っていた・・・」

「・・・うむ・・・・・・・」

 

ミルフは目を細めながら、懐かしそうに昔を思い出しながら語る。

 

「ディーネは昔から気が強く、我を貫き、他人を痛めつけてばかりでの・・・・・美しく力もあるが、その素行からアリアドネーの魔法学院の女番長になったが、結局戦乙女旅団に入団できず、その後は賞金稼ぎになり、幾度も政府のやり方に反発して戦ったが・・・・・・しかし・・・・何故今頃・・・・名だたる賞金稼ぎや拳闘士ばかりが急に?」

「分かりません。もう少し監視の人員を増やすか、もしくは接触を試みるか・・・ここ数日で連中の下に集まる者達が絶えず、先日の大騒動中に更に集まったと聞きますし・・・」

 

あまりにも普通ではない事態。

ましてや全員が腕利きで一癖も二癖もある連中が集まるなど、どう考えても穏やかな事態ではないだろう。

 

「・・・・いや、黒い猟犬の頭のザイツェフとやらは意外と曲者じゃと聞いておる・・・おまけにディーネも居ればうかつに手を出さんほうが良い。あやつは政府が相手でも気に入らなければ堂々と向ってくるからのう・・・」

「しかし・・・」

 

ミルフと部下の男は互いに黙り、沈黙が少し流れた。

平和に迎えられるはずだった二十年目の式典。しかし二十回目を迎えてから、何かがおかしくなった。いや、迎える前からそうだった。

 

 

「ううむ・・・最近・・・・妙にこの世界が慌しくないか? いや・・・気のせいだといいのだが・・・冒険王やゲートポート破壊・・・何故・・・ここに来て立て続けに・・・」

 

 

ミルフが不意に漏らした言葉。そこには理由も分からない妙な不安が込められていた。

だが、その答えは分からない。その疑問は恐らく一生分からないだろう。

突如動き出した時代の流れに妙な胸騒ぎを感じていたミルフだった。

だがその時・・・・

 

 

「し、失礼します! ミルフ様! 監視部隊より報告が!!! 突如大勢の賞金稼ぎ結社や拳闘団の集団が、例の黒い猟犬(カニス・ニゲル)の古城に集結しました!! その数は・・・千を遥かに超えます!!」

 

 

彼の元に再び大事件が舞い込んだ。

 

「な・・・・」

「なんじゃとおおおおォォォォォーーーーーーッ!?」

 

今度ばかりは流石のミルフも勢いよく立ち上がりバンと力強く机を叩き、思わず机が粉々に砕けてしまった。

しかしそのことに対して気にする余裕はまったく無い。それほどまでに取り乱していた。

 

「せ・・・・千・・・・じゃと?」

 

恐る恐るもう一度聞きなおすが、報告に来た男の言葉が変わることは無かった。

 

「は・・・・はい・・・・・しかも・・・まだ増えているようです」

「バ・・・・バカな・・・・」

「あまりにも急増しているために、監視を続けている部隊もどうすればいいか分からず、指示を求めてきました! さらに、シルチス亜大陸の黒い猟犬(カニス・ニゲル)本社からも多くの部隊が合流し、もはや規模が一国の軍事力にまで匹敵しようとしています!」

 

ミルフだけではない。報告に来た部下の男も非常に取り乱した様子で、ありのままを報告する。

動揺するのも無理は無い。決して予想もしていなかった事態に・・・いや・・・何かが起こるかもしれないという不安が、ピークに達していたのだ。

 

「リ・・・リカード元老院議員に・・・いや・・・この件はたしかゲーテル総督に回されたんじゃったな・・・・ただちに総督に連絡を! そして・・・・ワシが信頼の置ける他国の隊長クラスの・・・・そうじゃのう、ヘラスのマンドラ隊長とアリアドネーのエマ団長の耳にも入れておくのじゃ!」

「は・・・はい! 直ちに!」

 

ミルフの指示を受けて男は慌てて部屋の外へ飛び出した。

そして残されたミルフも、直ぐにはイスに座れず、壊れた机を放置したまま、しばらく呆然と突っ立ったままだった。

 

「なんだ?・・・・一体・・・何が起ころうとしているのじゃ?」

 

そう・・・何かが起こり始める。

その予感が既に予感ではすまなくなってきていた。

 

「くっ・・・・・・」

「ミルフ隊長!? どちらへ行かれるのですか?」

「ワシもジッとはしておれん! いつでも行ける準備だけでもしておく!」

 

平和を祝う祭りとは真逆の祭囃子が刻一刻と近づいてきている。

それは武人としての勘だった。

 

 

(ディーネ・・・お前は何をしようとしている・・・・ワシはお前とまだ戦わねばならんのか?)

 

 

ミルフは部下に指示を出した後、自身も戦いの準備を整えて、いつでも動き出せるようにしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして報告を受けたのはミルフだけではない。

 

ここもそうである。

 

首都・帝国・そしてアリアドネーの隊長・団長クラスは混乱の中、警戒態勢を最大限に高めながら慌しく動いていた。

そんな中、一人の少年が一人の若い男に、緊急の報告をしていた。

 

 

「ほう・・・世界最悪の愉快犯・・・・狂鬼・・・・狂い笑いのユウサ・・・ですか」

 

 

オールバックに眼鏡を掛けた男。

オスティア総督であり、メガロメセンブリアの元老院議員でもある、クルト・ゲーテルは少年の報告に少し眉を動かした。

 

「はい、公安部が入手した情報で、まだ定かでは・・・しかし一応報告をと・・・」

 

するとゲーテルは少し考えるような素振りをしてから、軽く溜息をついて立ち上がった。

 

 

「・・・奴の目撃情報はチラホラありましたが・・・・最後の情報はたしか・・・、7・8年ほど前に、奴が旧世界の京都で神鳴流歴代最強剣士の青山鶴子と戦ったのが最後・・・・結局、青山鶴子や神鳴流はユウサを仕留めきれず、奴はそれ以来行方をくらましていましたが・・・・」

 

 

ゲーテルは「何故今頃?」といった表情のまま無言で黙った。

 

「・・・本物でしょうか?」

「・・・・鬼なだけにいつも神出鬼没に騒ぎを起こすのが好きな奴ですからね・・・。旧世界や魔界へ行ったという情報もありましたが、あの鬼が未だにこの世界に居たとなると・・・・もしかしたら例の黒い猟犬の妙な動きと関わってくるかもしれませんね」

 

真剣な眼差しでゲーテルは入った情報を頭の中で整理しようとする。

しかし、冷静さと余裕の態度を保っているようで、内心はそれほど落ち着いているわけでもなかった。

 

「総督・・・リカード元老院議員には・・・・」

「いえ・・・彼は冒険王やネギ君の件で色々と忙しいでしょう。それに黒い猟犬(カニス・ニゲル)についての指示は私に任されましたからね・・・まったく・・・これからという時に・・・集う戦士たちに二人の怪物・・・中々思ったことが出来ませんね~」

 

少し困った顔でイスに座り直し、あくまで冷静に状況をどうすべきかを思案しているが、中々どうするべきか思いつかなかった。

そう、これは彼にとっても魔法世界にとってもイレギュラーな出来事だった。

全てとまではいかないが、この世界のトップクラスの権力を持ち、管理者としての立場にいた彼だが、ここ最近は少し嫌な予感が胸の中に過ぎっていた。

 

「リカード元老院議員が動かないのなら総督が?」

「・・・・・・・・とりあえずは例の古城を監視している部隊に、ミルフ隊長だけではなく私にも直接報告を入れるようにしてください。もし、本物が絡めば荷が重過ぎますからね。伝説の怪物を・・・二人も同時に相手にすることになるかもしれませんから・・・いや・・・冒険王も数に入れれば三人になりますか?」

 

ゲーテルの指示を受けて少年は小さく頷いて一礼をしたまま部屋の外へ出た。

部屋の扉がパタンと閉まるのを確認し、ゲーテルはイスの背もたれに身を預けながら天井を眺めた。

 

 

「ユウサ・・・・あの狂気の鬼が・・・・今になってどういうつもりでしょう・・・」

 

 

自分の知らないところで勝手に動き出す世界の流れ。

 

 

「ユウサ・・・チコ☆タン・・・・瀬田・・・・そしてネギ君・・・・はてさて・・・世界は誰に微笑むのか?」

 

 

ゲーテルが、慌しく動き出す時代と世界に何を思っているかは誰にも分からない。

しかし彼がどう思おうと、思わなくとも、刻一刻と新たな時代が近づいてくるのだった

 




オリキャラ懐かしい~

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