魔法はお前の魂だ(魔法先生ネギま✖天元突破グレンラガン)   作:アニッキーブラッザー

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第197話 策

「お疲れ様ですシモンさん」

 

試合を終え、夕暮れ時になり多くのものが帰路へつく中、宿泊先のホテルでシモンとサラとブータを向かえたのは、シャークティ、瀬田夫婦とグレン団の面々だった。

 

「さっすがリーダーだぜ! サラちゃんも、ブータもやるじゃねえか!」

「魔法世界の猛者相手に圧勝でしたね~。まっ、ネギ先生やラカンという人もそうですがね」

 

シモンたちの活躍に嬉々としてグレン団は彼等を揉みくちゃにする。サラも多少恥ずかしかったが満更でもなかった。

最初はどうなるかと思えた拳闘大会だったが、注目されるのも悪くない。今ではブータと共にサラもメカタマに乗ってノリノリだった。

 

「へへん! あったりまえだってーの!」

「その意気だよサラ! こうなったら優勝もしちゃえ!」

「ほ~。それはいい事だな。優勝賞金で私に別荘でも建ててくれよ」

「いいぜ~! 優勝くらい・・・・優勝くらい・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

しかしそこでズーンと再び重い空気を背負ってサラは部屋の隅っこで落ち込んでしまった。

 

「う~・・・・・・・またあの筋肉ダルマと戦うのか~・・・・・・」

 

原因はソレだった。

決勝までは何の苦も無いだろうというのが大衆の予想だが、サラにとっては一回戦だろうと二回戦だろうと、ラカンと戦う可能性事態がトラウマだった。

ラカンにはメカタマの攻撃を食らわせてピンピンされていたという過去の記憶から、あれからブータの力が加わりパワーアップしたメカタマといえど、サラ自身のラカンと戦う心が最初から折れていた。

 

「ぶ・・・ぶみゅう~~~」

「う~~・・・・気合入れろ? ブータ~、そうは言ってもよ~、あれは反則じゃん?」

「ぶみゅ! ぶうみゅ!」

「それでもグレン団かって? でもな~・・・・ってゆうか私がいつ入ったよ!?」

「ぶぶぶぶみゅるぶ!」

「細かいことは気にするな? この~~!」

 

部屋の隅で体育座りで座っているサラの肩に登り、ブータが叱咤するが、サラは中々受け入れない。

 

「いや・・・・・・その前に何でブータの言葉をサラちゃんは理解しているんだい?」

「・・・・・・山チャンサン・・・多分気合デス・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

明日は準決勝。

とはいえ、一回戦、二回戦を苦も無く突破したシモンたちには問題は無いだろう。だからこそ、彼等の最大の山場は最後の決勝戦。

すなわち、明日の自分たちの試合の後に行われるもう一つの準決勝の勝者。

ラカンとネギの試合の勝者が自分たちの相手になる。

しかしハナからラカンと戦うことを想定しているサラ、というよりもラカンが負けるところなどまるで想像できないため、既に決勝でラカンと戦うことばかりに苦悩していた。

 

「・・・・しかしサラさんはラカン氏が勝ち上がることばかりを想像していますが、正直なところ、ネギ先生はどうなのですか?」

 

そんなサラの様子を気の毒に思いながらも、シャークティは同僚でもあるネギの話題に触れた。

 

「う~ん・・・・俺も良くは分からないが、昨日からずっと変な魔法の壺の中で修行してるよ。今日も試合が終わって直ぐに行ってたからな~。こりゃあ、明日の試合の直前まで会えそうにないな」

「魔法の・・・・壺?」

「ああ、何でも一日で10日分の修行が出来るとか言ってたぞ?」

 

シモンの説明を受けてシャークティが「ああ」と小さく頷いた。

 

「おそらく・・・・ダイオラマ魔法球・・・もしくはそれに近いマジックアイテムですね」

「おいおいおいおい、シャークティの姉さん。そんなことも可能なのかよ?」

「ええ、・・・・まあ、それだけ年を取るのも早くなるので、女性にはあまりお勧めしませんが」

「なーるほど、要するに精神と時の部屋か!」

「よく分かりませんが、多分そうです」

 

この世界に来る前から、シモンと共に居たためか、多少のファンタジーには免疫が出来ているが、豪徳寺たちもそして瀬田達も、素直に凄いものは凄いと驚いていた。

 

「ですが10日だとあまり変わらないような気もしますが、男子三日会わずば活目して見よと言いますからね。明日の戦いが楽しみです・・・・・・・それにしても・・・・・」

「ん?」

「シモンさん。サラさんがここまで弱気なのに、何もしなくていいのですか? いくら一度戦った相手とはいえ、落ち着いていますね。何か策が?」

 

ネギが死に物狂いで修行をしているにしては、随分とシモンは落ち着いていた。

それは決して、余裕があるからという理由ではなさそうだが、何か企みが有ることをシャークティは察した。

 

「・・・・流石だな・・・よく分かったな」

「当たり前です♪」

 

シモンが素直に観念して肩を竦めるとシャークティは少し胸を張って「お見通し」とばかりの笑みを見せた。

するとその言葉にサラが真っ先に反応。

 

「マジかよ! それならそーと、早く言えよな~! も~このやろ~♪」

 

サラが目を輝かせてシモンの両手を掴んだ。

まるで尻尾を振る子犬の如く息を荒くさせ、目を輝かせながらシモンに飛びついた。

 

「おお~。まさかシモン君に策とは・・・・・・・・ん? ・・・・策?・・・・シモン君が?」

「シモンに・・・・・・・・策だと?」

 

しかし瀬田夫婦はどうも疑問に感じた。

短い付き合いとはいえ、これまでずっと気合一直線の行動を取っていたこの男に、何か策を考えるとかそういうことがあるのかと。

すると徐々に疑いの眼差しへと変わった。

 

 

「まあ、・・・・・策と言っても・・・・・展開は読めていますけど・・・・」

 

 

すると微笑んでいたシャークティの表情も何時の間にか苦笑に変わっていた。どうやら彼女には本当にお見通しのようだ。

 

 

「ああ・・・・・色々あるけど・・・・・一番はこれだ!!」

 

「「「「ッ!?」」」」

 

 

するとシモンはコートの中をゴソゴソと漁りだし、一つのFILMを取り出した。

 

 

「なっ!? リーダー・・・・・まさかそれが昨日言っていた!?」

 

「おおっ!?」

 

 

豪徳寺たちが震えながら、FILMに指を指す。するとシモンはニカっと笑って頷いた。

 

 

「そうだ・・・・昨日は夜遅くに色々とあったから見れなかったが・・・・・・・・これが・・・・・これが俺の記憶のFILMだ!!」

 

「「「「「「「おおおおおおおおおおォォォォォーーーーーー!!!!」」」」」」」

 

「これで俺は俺自身を・・・・お前たちを・・・・・全てを思い出す!! お前たちの知る本当の俺になれば、誰にだって絶対に勝てる! そうだろ!」

 

 

シモンはFILMをまるで印籠を見せるかのように掲げた。それはまるで神々しい光を放つかのように見え、気づけば豪徳寺たちはひれ伏していた。

 

 

「「「「その通りだリーダー!!」」」」

 

「ふふ、ようやくですね。長かったですけど」

 

「いや~。私も楽しみですね~。木乃香さんや超さんたちには悪いですけど」

 

「ふうむ、これはこれは興味深いね~」

 

「まっ、暇つぶしにはなるかな」

 

「シッカリ私ノデータフォルダニ保存シテオキマス」

 

「ぶみゅうう!!」

 

 

気づけば大盛り上がりだった。

誰もがようやく見ることの出来るシモンの伝説に、胸の高鳴りを押さえられなかった。

瀬田やハルカですら、期待しながら腰をすっかり降ろして、心待ちにする。

 

「おおおい! それでどうやってラカンと戦うんだよーー! 全然根拠ないじゃんかよ~」

「・・・・・・サラは見ないのか?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・見る・・・・・・・・・・・」

 

シモンを含めた8人と一匹のグレン団と瀬田ファミリーは、ズラッとテレビを囲みこみ、瞬き一つすることすら、もったいないと感じるほどの緊張でモニターに食い入る。

 

「本当に・・・・・・美空とココネが居ないのが残念です」

「ああ。・・・・それで何か二人の情報は入ったのか?」

「それがオスティアにはまだ来ていないようです。あの子の足なら十分辿り着いてもおかしくないのですが、やはり何かあったのかもしれません。だから、明日捜索の範囲を広げて情報をもっと集めてみます」

「そうか・・・・・俺も試合をサッサと終わらせて、そっちを手伝いたいが・・・・・・」

「ええ。・・・でも、明日だけはシモンさんはネギ先生を見てあげてください。彼もそう望んでいますよ?」

「まあそうだけど・・・・・・・・・・って、おっ、そろそろだな」

 

そしてハカセが受け取ったFIKMを上映するセットが完了し、部屋の電気も消して完全に準備完了。

 

 

「さあ、行くぜ!! 俺のドリルがどんなドリルか見せてみろ!!」

 

「「「「「わああああああああああ!!!!」」」」」

 

 

シモンの合図と共に映像が流れる。皆が歓声を上げていよいよ鑑賞会が徹夜で始まったのだった。

一応明日も試合があるのだが、そんなものは関係ない。

酒もジュースもおかしも用意して、気分はまるで映画館ゴッコだった。

ネギの現状に対してこちらはこちらでノンキ・・・・ある意味でいつも通りのグレン団。

 

 

 

そして彼等は・・・・・・・・・

 

 

 

正直なところハマった・・・・・・

 

 

 

流れる映像に興奮とドキドキを繰り返しながら・・・・・・・・・

 

 

 

次々と場面か変わる光景。

 

 

 

歴史の流れ。

 

 

 

英雄たちの活躍に、人々の想い。

 

 

 

夜通しで・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・感動した・・・・・・・・」

 

 

 

朝日が部屋に差し込む中、明らかにまぶたが重そうに、目にクマを作りながらシモンは呟いた。

 

「ああ・・・・・あれが子供先生の親父か・・・・・」

「カッコイイじゃねえか・・・・」

「これぞ正にハッピーエンド」

「めでたしめでたし・・・・・か・・・・」

 

同じく夜通しでずっとFILMを見続けた豪徳寺たちも、憔悴しきったような表情で頷いていた。

 

「熱イバトルデシタ」

「これなら、ネギ先生のお父さんがこれほど有名人なのも頷けますね~」

「ぶ~みゅ」

「なるほど・・・・この世界でかつて何があったのか・・・・やはり映像を通してみると分かりやすいね~」

「でもよ~・・・・・・ね・・・眠い・・・・・・」

「く~~~・・・・・く~・・・」

 

ハルカは完全にダウン。

しかし他の面々は眠い目を擦りながらも満足そうに頷いていた。

そしてシャークティが同じく眠そうな目を擦りながらも言う。

 

「ええ・・・・とても素晴らしかったです・・・・・この・・・・グレンラガンならぬ、紅き翼戦記は!!!!」

 

そう・・・・・・紅き翼戦記・・・・・・ナギやラカンをはじめ、魔法世界の英雄たちの20年前の戦の映像を彼らは・・・・・

 

「どーいうことですか!? シモンさんのシの字もグレンラガンのグの字も出てこなかったではないですか!!」

 

・・・・・・・・・・要するに中身の間違っているFILMを徹夜で見ていたのだった。

 

 

「どうしよう・・・・・・・FILM・・・・・間違えた・・・・・・」

 

「間違えたではないでしょう!! 結局朝まで見てしまいましたし! ってゆーか、シモンさん試合でしょ!?」

 

 

あまりにも壮大で面白かったサウザンドマスターたちの戦い。特に実話をもとに構成されているというのがヘタな映画の何百倍も楽しめた。

ゆえに彼らは途中で映像をストップすることが出来ず、結局朝まで見てしまったのだった・・・・

 

「というよりどこで間違えて・・・・いえ・・・・そういえばうっかり騎士さんがあの時・・・・まさか・・・・・ああもう! 結局シモンさんの記憶に何の関係もありませんでしたし・・・・それにこれ、急いで交換しに行かないと大変なことになるのでは?」

「ま~、落ち着こうよ。とらえずさ、今日の試合が終わったら交換しに行けばいいじゃないか。要するに決勝戦より前に交換できればいいんだろ?」

「それは・・・・そうですが・・・・・・・何でそう、楽観的なのですか!? ってゆーか、そろそろ出発しないと、シモンさんは準決勝の第一試合でしょ!」

 

結局何も得られぬまま・・・・いや・・・この世界の歴史やネギの父親たちのことを知ることが出来ただけでも良かったのかもしれない。

間違ったFILMも、あとで交換すればいい、少なくともそう思っていた。

 

 

だが、この時は・・・・その軽はずみな考えが事態をもの凄く妙な方向へと進むことに、まだ誰も気づいていなかった。

 


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