魔法はお前の魂だ(魔法先生ネギま✖天元突破グレンラガン)   作:アニッキーブラッザー

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第196話 順当

ナギ・スプリングフィールド杯。

 

オスティアの祭りではパレードなどの見所がいくつもあるが、一番のメインは賭け試合である。

あらゆる場所で、公式非公式の野試合、箒レース、竜騎士の馬上試合も行われる。

そのありとあらゆる種目の頂点に立つのが、ナギ・スプリングフィールド杯である。

各地で勝ち上がった戦士と敗者復活枠から勝ちあがったシモン・メカタマを合わせた計32組で行われる三日がかりのトーナメント大会。

観客動員数も注目度もナンバーワンのこの大会は、初日は一回戦・二回戦を続けて行い、二日目に準決勝、そして三日目に決勝戦という方式である。

しかし魔法世界全土から勝ち上がった猛者たちの中で最強を決めようというトーナメントなのだが、今年の大会は少し様子が違う。

他者を寄せ付けず、圧倒的に勝ち上がる三組の戦士たちがいた。

 

 

「メカタマ・フラッシュ!!」

 

「はあああああああ! 穿孔ドリル弾!」

 

 

闘技場にメカタマが放った閃光弾により、目を思わず覆い隠してしまう大観衆と対戦相手の拳闘士たち。

しかしシモンは逸らさない。その瞳に装着したサングラスが、強い光の中でも彼を自由にさせた。

その隙にシモンが相手に向けてドリルを一斉射撃。

相手が魔法障壁を展開させようが、何の意味も無い。

強い光で誰もが目を開けられない中、耳に突き刺さるようだ爆音と硝煙の匂いが立ち込める。

そしてようやく目を見開いたそこには、威風堂々と立つシモンとサラが闘技場の真ん中で立っていた。

 

 

『正に圧勝! 敗者復活枠から名乗りを上げたダークホースのシモン・メカタマペア、一回戦・二回戦を難なく突破し、堂々の準決勝進出です!』

 

 

大会側からシモンたちの勝利を告げられ、シモンはメカタマのヒレとハイタッチを交わす。

そしてシモンとメカタマの勝利には大観衆は歓声ではなく、息を呑むようなどよめきが走っていた。

 

「おお・・・・・優勝はラカンで間違いないが、決勝も楽しみかもしれないな」

「ああ。流石に敗者復活枠から大活躍しただけはある。シモンにメカタマか・・・・無名だが、台風の目になるんじゃねえか?」

「くうう~~、さすがシモンさんですわね!」

「ひゃ~、兄貴ってば大活躍だね~」

 

試合が終わるや否や、本日行われたシモンの一・二回戦をふり返りながらあちらこちらから話題になり、観客たちの中で少しシモンたちに注目が集まった。

だが・・・

 

「・・・・・、だが高い金払って見に来てるんだからそれぐらいやらなきゃよ~」

「まあな。おっ、次はナギ・コジローペアの試合だぜ! つってもこの試合はこいつらで決まりだがな。明日の準決勝はナギ・コジロー組対ラカン・カゲタロウ組・・・事実上の決勝戦かもな」

 

だが、次第に関心は直ぐに次の試合、そして明日の準決勝の話題となり、シモンとメカタマの話題は直ぐに消えた。

そう、ここに居る誰もが、ある意味では明日の試合を最も楽しみにしているのである。

伝説の英雄ラカンと、ナギの生まれ変わりと噂されているネギとの奇跡の一戦が決勝戦よりも大きな注目を浴びていたのである。

 

「ほ~、流石にやるじゃねえか。流石に俺らを撒いただけはあるじゃねえか」

「まっ、この程度のレベルは退けておかんと、妾らの立場がないからの~」

「しかしゴーグルをサングラスにしただけで、どうして皆気づかないのかしらね・・・・彼等が冒険王に加担したのを知っているのはエミリィたちだけね・・・・」

 

闘技場の真ん中でハイタッチを交わし、退場しようとしているシモンとサラを大会主催者側の超VIP席から見下ろしながら、リカード、テオドラ、セラスはこの試合を一部始終眺めていた。

 

「まあ、ネギの奴も賞金首じゃ。この大会の後に、冒険王たちとまとめて妾たちが直接事情聴取を行えば問題なかろう」

「まっ、昨日はそれでまとまったがな」

 

昨晩、ネギの修行を見るためにと集った三人は、そこでシモンと再会し、危うく再び戦闘開始という事態に発展しそうになった。

しかしネギの必死の懇願とラカンとも面識があり、大会期間中は大人しくするという条件付で、少しの間は様子見という決断になった。

その後、深夜にシモンが仲間のところへ帰還し、瀬田に事情を告げると、瀬田もしばらくは余計なことはしないよと、苦笑しながら飲み込んだのだった。

 

「さて・・・・まあ、ネギ君が言うのだから彼や冒険王は一先ず置いておいて・・・・それでリカード・・・・例の魔人はどうなったのかしら?」

「ああ、実はよ~、俺も色々忙しくてだな~。だからチコ☆タンに関しては別の奴に委託した」

「別の? ・・・・そう、・・・・・総督にね・・・・・・・・何も無ければいいけど」

「なんじゃなんじゃ? 妾に隠れて内緒話か? ほれ、余所見をしていると、妾らの教え子の試合が――――」

 

――――オオッ!!!

 

突如観衆のどよめきが広がり、ハッとなって三人は闘技場に目を慌てて向けた。

するとそこには、いつの間にか拳を上に向って突き上げてガッツポーズをしている大人バージョンのネギが居た。

 

 

「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」

 

『おおっーーっと!! なんということだ! 正に秒殺・瞬殺・圧倒的! ナギ・コジローペア、あっさり準決勝進出けってーい!!』

 

「「「・・・・・・・・・・えっ、もう!?」」」

 

 

何と、自分たちが少し談笑している間に勝負が決まっていたようだ。

自分たちの弟子とはいえ、魔法世界の猛者相手に何の苦も無く勝利をもぎ取ったネギに、三人は笑うしかなかった。

 

「かっかっか、流石は天才ってか?」

「ええ・・・・それでいて、向上心は止まらない・・・・ほら、あの目を見てみなさい」

「うむ、まだまだ物足りない・・・・そう言っている目じゃのう」

 

闘技場に居るネギがチラッとこちらを見上げてきた。その目は何かを訴えている目だ。

そう、時間を無駄にはしたくない。

少しでも明日までに強くなりたい。

リカードたちにはその気持ちが手に取るように分かった。

そしてネギはその後、インタビューのためにと近寄ってきたアナウンサーに一言「急いでいる」と言って、コジローと一緒に走って会場の外へと走り出した。

 

「まったく、・・・少しはファンサービスすりゃあ良いってのによ」

「焦っているんじゃろ・・・・なんせ明日が準決勝ということは・・・・すなわち・・・・」

 

そう、ネギがどうして焦って飛び出したのか。その理由は明らかである。

二回戦を勝ち上がったネギには当然明日は準決勝がある。

そう・・・つまり・・・・・

 

『さあ~て、続いての登場はこの男! 一回戦は相手が棄権したため、これが初試合! 優勝候補ナンバーワンの南方 ボスボラスのカゲタロウ!! そして・・・・・』

 

そして・・・・会場中がその登場を待ち、誰もが息を呑んでその時を待つ。

一瞬で静寂が訪れる闘技場。そして次の瞬間、アナウンスの声と共に登場した男に、会場中の熱気が一気にヒートアップした。

 

 

「伝説の傭兵剣士!! 自由を掴んだ最強の奴隷拳闘士!! 大戦期平和の立役者!! 紅き翼(アラルブラ)・千の刀のジャック・ラカンの登場です!!」

 

「「「「「「「「ウオオオオオオオオオオオオオオオォォォォーーーーーー!!!!」」」」」」」

 

 

会場中の熱気を一身に浴びて、堂々と登場するラカン。

魔法世界では知らぬものの居ない英雄と、ネギは明日ぶつかるのである。

 

「けっ、あの派手好きが・・・・・おい、俺たちも行こうぜ」

「そうね、ネギ君・・・さっき、早く修行の続きがしたいって見上げてきたしね」

 

そう、明日ラカンと戦うのである。本来ならばネギの才能で10年がかりで追いつくはずの力の領域に、明日には届かなくてはいけないのである。

ネギが一秒たりとも時間を無駄にしたくないのはこれが理由である。

リカードもセラスも、その気持ちを汲み取りラカンの試合がまだ始まっていないというのに、背を向けて来賓席から立ち去ろうとする。

 

「なんじゃ、見んのか? どーせ直ぐ終わるんじゃから、見ても良いと思うのじゃが」

「かっかっか、違うぜ。相手が気の毒すぎて、見てられねえんだよ」

 

20年続いたこのナギ・スプリングフィールド杯。この大会も何故か今年だけ別次元の大会へと化していた。

本来なら誰が優勝してもおかしくない、力の均衡した戦いも、あっという間に佳境を迎えていた。

しかし、観客の誰もがそのことに落胆するものは居ない。むしろ、今年の大会を・・・いや、明日の戦いを例年以上の期待と興奮に胸を膨らませながら、楽しみにしているのだった。

 


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