魔法はお前の魂だ(魔法先生ネギま✖天元突破グレンラガン) 作:アニッキーブラッザー
「そんな驚くことか? うん、まあ今言った通り私を生んだママは私が小さい時に死んじゃってさ~。それでしばらく私はパパと一緒に住んでたんだよ。そんで何年かしてパパがハルカにプロポーズしたんだ~」
「へ・・・へえ~~~、・・・・そ・・・そうなんだ・・・へ~~」
「そやったんか~」
反応に困ってしまった。
サラもハルカもそのことについてはたいしたこと無さそうに話すため、アスナ達が逆に対応に困ってしまった。
しかし・・・・次にサラが告げた言葉に、少女たちはこの日一番の反応を見せたのだった。
「パパはハルカもママの事も好きでさ~。30になるまでにどっちかを選ぶって話しだったんだけどな。途中でママが死んじゃってさ~。ま~パパもあれで色々悲しんだりしたし、ハルカだってそーなると素直になれないじゃん? だからパパがプロポーズしてから受け入れられるまで、そーとー時間が掛かったよな~」
「「「「「えっ!!?」」」」」
「こら、サラ。そんなことは言わんでよろしい」
「でもさ~、本当のことじゃん! ママが死んじゃった時、ハルカがもう少し素直になってれば、結婚も早かったんだけどな~。ママだってそれを望んでたのにさ~」
「おいおいおいおい、それを言うかい? ったく・・・まあ、素直じゃなかったのは認めるがな」
意外とヘビーな会話を、面白おかしく話すサラとハルカだった。
そんな二人を逞しいと思いながらも見つめるシャークティやアスナたち。
しかし・・・ごく一部の者たちにとっては違った。
(夢に生きる・・・いえ・・・・自分の想いのままに動く男性を・・・そして愛する女性を失った男性を・・・・・・)
(ハルカさんは・・・・振り向かせた?)
それは最早自分たちにとっての憧れどころの話しではない。
達成すべき野望を達成した人物が目の前に居るのだと分かった瞬間だった。
「「で、弟子にしてください、ハルカさん! いえ・・・・ラブ師匠!」」
気づけば風呂場で木乃香と刹那は並んでハルカに向けて土下座をしていた。
「えっ? ・・・・・ラ、ラブ師匠?」
ポカンと口を開けて引きつるハルカ。
その光景にシャークティやアスナ達も笑いを隠せずにいられなかった。
「どうやら・・・お二人には参考になったようですね・・・・」
「まあ・・・事例がピンポイントだしね~、木乃香と刹那さんには」
「のどかはいいの? 男を落とす伝授は?」
「えっ!? あわわ・・・ハルナ・・・・で、でも・・・私は~~~」
場所は魔法世界。
つい先ほどまで彼女たちは全員、命懸けの戦いを繰り広げたばかりである。
そしてその力も巨大な力や軍事を相手にも真っ向から太刀打ちできるほどのポテンシャルを秘めている。
しかし一度武装を解除してみれば、ただの幼い少女たちでしかなかった。
目を輝かせて恋バナに熱中する彼女たちを、ハルカもシャークティも大人として微笑ましく思った。
「落とす方法ね~・・・・まあ・・・私は別に自分から落としに行ったことはないが・・・・そうだな・・・あえて言うなら・・・」
「「言うなら!」」
「・・・・・・肉体的な・・・・」
「「肉体的な接触ですか!? わかりました!! さっそく・・・・」」
「待て待て待て待て!? 冗談だ! ったく・・・・ボケを真剣に返すんじゃないよ」
「ちょっ、待ちなさァァァーーーーーーーい!!」
一体どこへ何しにいくつもりだったのか、二人は颯爽と風呂から飛び出そうとしたのだが、ハルカやアスナ達が慌てて止めに入った。
「だ・・・だって・・・なあ?」
「・・・はい・・・・シモンさん・・・せっかく会えたのに・・・ちっとも相手にしてくれませんし・・・・そもそも、私たちのこと覚えていませんし・・・・」
「そうかい? でも・・・見た感じ、たとえ覚えていなくてもアイツはアイツなりにあんたたちを気にかけてるんじゃないかい? まあ、愛というよりも仲間みたいな感覚だろうけどな」
「「・・・・仲間・・・・・」」
いきなり「ず~ん」と重い空気を背負って落ち込む木乃香と刹那。
「あら・・・どうやら不満のようですね」
「ったく、随分とわがままなお嬢さんたちだね~。素直なところはウチの娘にも見習わせたいな」
「バッ!? い、いいいい、いきなり振るなよな~~!」
シモンの事情は多少知っているものの、木乃香や刹那にこれほど落ち込まれてはハルカにも二人は不憫に思えてしまった。
「サラ・・・それに今は居ないがエミリィのことはまだ分からんが、どうやらあんたたちは奴に本気みたいだね~。・・・・・・・・だが・・・・」
だからこそ、ハルカは人生の先輩としての意見を言うことにした。
力も魔法も及ばない、男と女の世界の話だった。
「・・・木乃香、刹那・・・・・。今から私が言うのは、私の考えであって、別に強要するわけじゃないが、私の意見として、一つ良いかい?」
ハルカの言葉に少女たちはゴクリと息を飲み込み、真剣な表情で待つ。
「「は・・・はい・・・・・・・・・・・(ゴクッ)」」
あまりの真剣さにより一層微笑ましさを感じたが、笑いを堪えながらも自分も真剣に意見を言うことにした。
ハルカが少し苦笑しながら、少女たちに思ったことを述べ始めた。
「お前たちさ、・・・・・・男にかまいすぎなんだよ」
その時、カコ~ンと風呂場特有の音が響いた気がした。
「「・・・・・・・・へっ?」」
「「「「・・・・・・・・・・・・はっ?」」」」
それは意外な言葉だった。木乃香や刹那だけでなく、思わずアスナ達も目が点になってしまった。
「えっ・・・・え~と・・・ハルカさん? 私もお嬢様も、まったくシモンさんに相手にされない状況を打開したいがために行動をしているわけで・・・え・・・え~っと・・・・」
「せや! ウチらはもっと見て欲しい。構ってほしいて思っとるから、どんどんシモンさんにアピールせなアカンて思って・・・・・・」
「そ・・・そーよねー。好きな人に構って欲しくて構うってのは当たり前じゃない? あっ、べ・・・別に私は違うからね!」
『好きな男に構いすぎ』それがハルカの言葉だったが当然、刹那、木乃香だけでなく、シモンの影響を受けているネギのことも考え、アスナ、のどかは納得できない表情で唸っていた。
ハルカの言葉には他のメンバーも考えながら、違うのでは? という顔をしていた。
「いやいや、とりあえず亡くなったニアって子のことは置いといて、恋愛にはそれなりにタイミングも必要さ。シモンにはシモンで進むべき道や使命や夢があるんだ、今はその道の途中さ。人が前へ進んでいる途中の道やら夢に、正直な話し色恋で他人が間に入ろうとするのはヤボってもんなんだよ」
「えっ・・・ヤ・・・ヤボなん?」
「で、ですが・・・・気持ちは全力でいつもぶつけなければ伝わらないと・・・・」
しかしハルカは首を横に振った。
「だからかまいすぎなんだよ。いいかい? 愛し合うっていうのは、互いを愛玩用品にするってわけじゃないんだよ」
「それは・・・そうやけど・・・」
「それによく考えてみな。シモンの奴は自分の使命や、やることをほったらかしにして女とイチャついてヘラヘラする男かい? 違うだろ? だったら別に不思議なことでもないじゃないか」
「・・・・・・・・・・・・」
そう、たしかにそういう男ではない。
ニアと一緒にいた時はどうだったかは分からないし、ヨーコの胸などに反応したり、色々な女のアプローチを受けたりもしているが、たしかにそれでヘラヘラするシモンは想像できなかった。
では、自分たちの好きになったシモンは?
思考しているうちにハルカは言葉を続ける。
「私が思うに今のアイツは記憶が有る無しは関係なく、恋愛事を気にしている暇は無いんだよ。少し男の勝手な都合かもしれないが、そういう事情も察して見守ってやるのも大きな意味もあるんだよ」
「見守る・・・それって・・・待つってことなん?」
「そう・・・男を待ってやるのも、女の役目でもあるんだよ。それに面倒くさい男に惚れちまった女は、やっぱそれなりに面倒くさいこともしないといけないんだよ」
そこには「覚悟」という言葉が込められているように感じた。
つまりは今後、シモンが自分たちを思い出し、そして約束どおり自分たちの気持ちと向き合う日が来たとしても、やはりニアと同じようにはいかない。
ましてやシモンにはシモンでやるべきことや、やりたいことがある。
「それで待つだけ待って・・・アイツがアンタたちと向き合って・・・それでも振り向いてもらえなければ、それでもいいじゃないか。そん時は・・・」
「・・・その時は?」
「ビンタ一発かまして、今度はアンタ達がシモンをフッちゃいな♪」
イタズラっ子のように「ニヒヒ」と笑いながらハルカは木乃香と刹那に言う、そしてそれぞれ恋や他に気になる人がいる少女たちの心にも残った。
「・・・かまいすぎ・・・ですか・・・私もお嬢様も・・・」
「どーなんだろうね・・・私は木乃香と刹那さんみたいに、自分からどんどん行くのもいいと思うけど・・・それに、私だって待っているだけの女になるのは嫌だし・・・・」
「でも、私はハルカさんの言っていることも分かると思います。シモンさん・・・それにネギせんせーだって、今は恋愛を気にしている暇は無いっていうのは本当だと思います」
「う~ん・・・・せやけど愛は重要だってシモンさんも言うとったし・・・・ヨーコさんは何て言うんやろ・・・」
「・・・・・・・・こんな時、マスターはどう言うのでしょう・・・・・」
「・・・ん~・・・・ナギさんはどうなんやろ・・・・やっぱ・・・今は告白とかせん方がええのかな?」
ハルカの意見は全てが正しいわけではない。
しかしそういう考え方もあるのかもしれないと、少女たちは考えさせられ、刹那、アスナ、のどか、木乃香、亜子を中心に自分のこれまでの行動やこれからについてを少し頭の中で真剣に思い浮かべていた。
「やれやれ・・・・恋せよ乙女ってか? ガキの癖にそこまで本気なんだね~」
「そうですね・・・あの子達をここまで本気にさせたのは・・・あの人ですけどね」
「う~ん・・・分っかんないな~。私はハルカとは違って、男の事情なんか関係無しにドンドンやっちゃえばいいと思うけど・・・・」
「はっはっは、まあそれも間違っちゃいないんだがな。私はただ、相手がシモンみたいな奴の場合は少し面倒くさいって言いたかっただけさ」
苦悩し考え込む少女たちの姿にシャークティもハルカも苦笑しながら、彼女たちが風呂から上がるまでずっとこの少女たちの作戦会議の光景を眺めていたのだった。