魔法はお前の魂だ(魔法先生ネギま✖天元突破グレンラガン)   作:アニッキーブラッザー

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第188話 魔法世界の伝説たち

 

「ななななな・・・・なにいいいいいいいいい!? 三国と喧嘩ァァァァ!?」

 

 

トサカの店内中どころか店の外にまで響き渡る叫びが聞こえた。

いや、驚いているのはトサカだけではない。亜子やアキラ、夏美、そして奴隷長の女ですら、シモンから告げられた先ほどまでの出来事に驚愕していた。

さらに・・・

 

 

「ああ。アリアドネーとメガロとヘラス・・・だったかな? そこの隊長やら団長やらと戦ったり、あとすごく強いのが三人居たな。たしか・・・リカード・・・セラス・・・テオドラ・・・とか呼ばれてたかな」

 

「「「ぶふうううーーーーーーーーーッ!!? リカード・セラス・テオドラァァーーーッ!!?」」」

 

 

今度は噴出した。

噴出したのはトサカ、奴隷長、そして・・・・シャークティだった。

 

「メメメ、・・・メチャクチャその名前知っとる・・・・・」

「まあ・・・普通は子供でも知っている名前さね・・・・」

「き、気づきませんでした・・・・私としたことが・・・。顔は知らなかったもので・・・」

 

政府とシモンたちが戦っていたのは知っていたが、リカードたちの名前は知っているものの、顔は知らなかったシャークティは、自分たちがまさかそれほどの大物と戦っていたとは知らず、重たい空気を纏いながら自分の行いをふり返っていた。

 

「う・・・別に後悔はしていませんが・・・どうやら本当に私は魔法先生をクビになるかもしれませんね・・・・メガロの幹部は麻帆良の上部組織なのに・・・」

「どーしたんだ、シャークティの姐さん?」

「さあ? しかし、シャークティ先生はまだ真面目さが残っているようですね~」

 

豪徳寺たちやハカセは良く分からないため、首を傾げているが数週間以上もこの世界に滞在している亜子達は、ある程度までのこの世界の知識を身に付けていたため、自分たちでも知っているその名前が出てきたことに驚いていた。

 

「私たちも少し勉強したから、その人たち知っとる・・・。何でシモンさんやハカセたちが、そんなスゴイことになっとるんや?」

「うわああ・・・おっかな~~」

「本当に、・・・ネギ先生が強い理由は何となく分かりますけど・・・・シモンさん・・・・あなたは一体何者ですか?」

「まあ・・・色々あったけど・・・・細かいことは・・・」

「「「「「「細かくない!!!!」」」」」」

「そ、・・・・そうか・・・・」

 

トサカ、奴隷長、シャークティ、亜子、夏美、アキラの同時ツッコミに思わずたじろぐシモン。

原因の瀬田たちも助け舟を出そうとしたのだが、どうやら話しは完全にシモンに集中し、亜子達は身を乗り出してシモンに問答していた。

 

「くそが・・・グラニクスに居た時からメチャクチャだったが・・・お前たち何者なんだよ?」

「たしかにぶっ飛んだことをやったさね~~」

「・・・シモンさん、私も先ほどの相手が政府であるのは何となく理解していましたが、その中に魔法世界でもトップ10に入るほどの有名人が居たのは気づきませんでした」

 

呆れるを通り越して、言葉がこれ以上思いつかないトサカたちは深い溜息をついた。

しかし、・・・まだ終わらなかった。

 

「トップ10? そういえばラカンたちと並ぶ英雄とか言っていたからそうなのかな?」

「でもよー、シモンはラカンの筋肉お化けと勝ったとは言えないかもだけど、一応引き分けたじゃん? だったらもう、シモンの強さは魔法世界でも上から数えたほうが早いのかもな~~」

 

シモンのボソッと呟いた言葉にサラが反応し、サラがシモンを魔法世界最強クラスではないかと問いかけた。

その言葉に少しカチンと来たトサカだが・・・

 

「けっ、何がトップだ! 調子に乗るんじゃねえ!! ラカンだか何だか知らねえが、その程度で最強なんて・・・・・ん?・・・」

「・・・・・・・・・・・・へっ?」

「・・・・・ラカン?・・・・」

 

アホヅラで固まったトサカが、もう一度シモンが今言った名前を思い出す。

 

 

「「「ラ・・・・ラカンーーーーッ!!!?」」」

 

 

そして最早お馴染みの驚き役のトサカと奴隷長とシャークティが驚きの余りにぶっとんでしまった。

 

「ララララ、ラカンーーーッ!? ババババ、バカなこと言ってんじゃねえ!? テメエ、あの伝説の大英雄、千の刃と戦ったって言うのか!? しかも引き分けただとォ!?」 

「シシシシ、シモンさんッ!?」

 

今のが一番驚いたのか、我慢できずにシモンに詰め寄るトサカとシャークティ。

二人の剣幕に少し押されるシモンだが、少し唸りながら考える。

 

 

「あ、ああ・・・サウザンドマスターの仲間だろ? ・・お前と会ったとき、俺ボロボロだっただろ? あれはその時の傷だ。流石に俺も死ぬかと思ったけどな」

 

「「あっ・・・がっ・・・・」」

 

「う~ん、・・・でも、俺はしばらく寝込んでたけど、アイツはあれから歩いて帰ったとか言ってるし・・・勝ちというか・・・引き分けというのか・・・・やっぱり俺の負けだったかもしれない・・・。一応アイツの腹にデッカイ風穴を開けたと思うんだけど・・・・」

 

「・・・・・うそだろ・・・おい・・・あの無敵のラカンを穴あきに・・・」

 

「あなたなら信じられますけど・・・信じられないという言葉しか思いつきません」

 

 

どうしても信じられない。とくにトサカに関しては信じたくないというのが本音だろう。

しかし・・・

 

 

「う、・・・嘘言う男ではないさね・・・。以前と今回のメチャクチャぶりからもありえない話ではないね。こりゃまたとんでもない超新星が現れたもんだね」

 

 

奴隷長の言葉の通り、シモンならありえない話ではないかもしれないという思いが、トサカ自身の意思に反して強く、ただ口を半開きにしたまま固まるだけだった。

 

「まっ、俺らのリーダーだからな!」

「ふっ、そういうことだね。僕たちも負けていられないな」

「私モ燃エテキマシタ」

「ほう、シモン君は先ほどのデカイ彼に勝ったのか~。やるね~」

「たしかラカンて・・・そや、ネギ君のお父さんの仲間だった人やろ?」

「本当に・・・シモンさんって何者?」

「小太・・・じゃなくてコジロー君が、シモンさんが来てくれてもの凄く頼もしいみたいなこと言ってたけど、本当なんだね~」

「う~ん、まっ、あの超さんが認めたシモンさんなら、ありえない話しではないですね~」

「いいのかおい!? テメエら、ノンキに言ってるが、このクソッタレ野郎が何やったか分かってんのか!?」

 

目の前にいる、一見ごく普通の男による僅か数週間の間に成した偉業は、旧世界、魔法世界、人亜機械の全ての物に衝撃を与えるようなものだった。

驚いていいのか、呆れて良いのか分からないこの事実に、皆はもはや事実をそのまま鵜呑みにすることしか出来なかったのだった。

 

「なあなあ、それでさ~、さっきの話の続きだけど、そのラカンの筋肉お化けに勝ってなくても、互角だったシモンは既に魔法世界でも一番強いのか?」

「い、いや・・・そんなはずは・・・くっ、サウザンドマスターがいくら居ないとはいえ・・・いや・・・ラカンのほかに・・・う~ん・・・」

 

単純な興味本位からのサラの質問に、先ほど真っ向から否定しようとしたトサカは「ウッ」とつまり、黙ってしまった。

すると代わりに元拳闘士でもある奴隷長があごに手を当てて考えながら口を開く。

 

 

「う~~ん最強・・・、さあね~、まあ上から数えたほうが早いのは間違いなさそうだが、まだまだ強いやつらはいっぱい居るさね。メガロのリカードとかは、どちらかというと表舞台で成した偉業を認められた英雄さね」

 

「表舞台?」

 

「うむ。強いやつイコール英雄ではない。裏の舞台には戦闘能力のみ強い怪物、怪人、魔王みたいなやつらは山ほどいたよ」

 

 

まるで昔を懐かしむかのように奴隷長は遠くを見るような瞳を見せた。

その様子から彼女のその瞳に、その記憶にこびり付いていたのは何も英雄たちの姿だけではないことを物語っていた。

 

 

「裏の舞台? 魔法自体が世界の裏側の話しなのにか~?」

 

「魔法とは僕たちから見たら歴史の裏に隠れた世界だが、そのまた裏の世界の中でも隠れた歴史・・・、やはり世界の歴史は奥が深いね~・・・」

 

「まあ、・・・・ママが現役のころは情勢がやばかったからな・・・・」

 

 

トサカの言葉に頷き、奴隷長は次々と歴戦の猛者たちの名前を口ずさむ。

 

 

「うむ・・・・・・まだ紅き翼が現役の頃・・・例えば・・・誰でも知っているやつなら、闇の福音・エヴァンジェリン。戦争では狡猾な戦略家として有名な不動のアムグ、鬼族と人間のハーフ・狂い笑いのユウサ、・・・竜人族の神童・竜剣士ゲジョウ。・・・そしてシルチス亜大陸の魔人、爆乱のチコ☆タンとかね・・・」

 

「「「エ・・・エヴァンジェリンさん!!?」」」

 

「ん? 亜子ちゃんたちでも知っているのかい?」

 

「やはりエヴァンジェリン・・・。それにしても、チコ☆タンとは懐かしいですね。子供のころ聞いたことがあります」

 

「知ってるのか、シャークティ?」

 

 

シャークティが聞き覚えのある名前に口を挟むと、トサカも何かを思い出したかのように苦笑した。

 

 

「ああ~、それなら俺も知ってるぜ。よくガキの頃ママに近所の奴等をイジメたりするとチコ☆タンがやってくるとか聞かされてたからよ~。紅き翼に倒されたらしいが、その力は当時の奴等にとっちゃあ小便チビルぐらいだってな」

 

「うむ・・・だが、サウザンドマスターを筆頭に、チコ☆タンなどの当時戦乱を左右させた猛者たちはほとんど居なくなってしまった・・・・まあ、十年以上も経てばそうなるさね・・・・」

 

「奴隷長(チーフ)・・・・」

 

「まっ、しかしアンタが本当に千の刃と引き分けたんなら、十分トップクラスだと思っていい」

 

 

呟く亜子達から見た奴隷長の横顔は、時代の移り変わりに対して少し寂しそうな表情を浮かべているように見えた。

 

 

「ナギ、ラカン、詠春、アルビレオ、ゼクト、ガトウ、タカミチ、・・・・リカード、セラス、テオドラ・・・・・・・アリカ姫・・・・・そして完全なる世界・・・他にもエヴァンジェリン、チコ☆タン、・・・ユウサ・・・・、もはやかつての群雄割拠の時代は終わった・・・それを平和と呼ぶのだが、少し寂しい気もするね。まっ、私は今の暮らしに十分満足だがね。亜子ちゃんたちのような可愛い娘のような子たちも出来たしね♪」

 

 

しかし直ぐに首を横に振り、いつもの表情に戻った。その姿は時代の移り変わりを懐かしみながらも受け入れるようにも見えた。

そして奴隷と主人という間柄でありながら、奴隷長の言葉に思わず涙ぐみながらうれしそうにする亜子たち。法律上の間柄は別として、そこには確かな絆を見た気がした。

少し場がしんみりとした。

その空気に「やれやれ」と小さく溜息をついた奴隷長はゆっくりと立ち上がり、亜子たちの肩を叩きながらシモンたちに、提案をする。

 

 

「さ~て、堅苦しい話しはここまでにするよ! あんたたちも今日は疲れたんだろ? 亜子ちゃんたちも、もう上がっていいから皆と一緒に温泉にでも行ってきな。今日はもう店じまいさ」

 

 

本来なら忙しいこの時期に店の早閉いは普通は無いのだが、奴隷長自身もシモンたちとの会話で、今日はこれ以上働く気をなくしたのか、温泉を提案することにした。

 

温泉はオスティアの名物の一つ。

 

遺跡や格闘大会に続く目玉の一つだった。

 

その証拠に・・・

 

 

 

「「「「「「「「「「温泉!?」」」」」」」」」」」

 

 

 

彼等は、何故かこの日一番の食いつきを見せたのだった・・・・・

 


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