魔法はお前の魂だ(魔法先生ネギま✖天元突破グレンラガン)   作:アニッキーブラッザー

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第185話 魂の沸騰

「結局こうなるのかい。まっ、さっきまでより希望が見えてきたがな」

「そうだな~。それにもう十分時間も稼いだだろ~しな~。そろそろあの筋肉達磨も木乃香とシモンの友達を助けてるだろ」

「うん、それじゃあ次は僕たちだね」

「じゃっ、そろそろ俺たちもスパートかけようぜ!」

「ぶい!!」

 

頼もしき助っ人たちの存在が、自分たちに希望を与えてくれた。

僅か数名とはいえ、正にシモンにとっては百人力の仲間たちだった。

 

「シモンさん・・・とりあえずここを乗り切りましょう。それで、作戦は?」

 

シモンにシャークティが尋ねるが、シャークティは問わなくても実は最初から答えなど分かっていた。

しかし久しぶりに再会したシモンから、シモンらしい答えを聞きたかった彼女はあえて問いかけた。

するとシモンはシャークティの期待通りの答えを、シモンらしい笑みを浮かべて答えた。

 

 

「決まってる! 壁に目掛けて突撃・粉砕・正面突破だ!!」

 

「おバカで素敵な回答ありがとうございます♪」

 

「バカで結構!! 細かいことは――――」

 

 

そして仲間たちはそんな答えに一切の異議を唱えず咆哮する。

 

 

「「「「「「「「「その通り! 細かいことは気にするな(ぶいッ)!!!!」」」」」」」」」

 

 

小細工無用の開き直り。シモンを先頭に、皆が固まり一点突破を目指す。

 

 

「それじゃあ行くぜ! 命知らずの大バカ野郎共!!!! 」

 

「「「「「「「オッシャァァァ!!!!」」」」」」」

 

 

シモンが唸る。それに応えるかのように、仲間たちが敵の軍勢に負けぬほどの気迫で雄たけびを上げる。

それだけでも力が入る。

 

「さあ、ここから先は壁に目掛けて一点突破だ! 全員俺について来てくれ!! 誰も乗り遅れるんじゃねえぞ!!」

 

シモンはセラスの魔法で傷ついた体に鞭を打ちながら、一度砕けたドリルを再び蘇らせ、集った仲間たちと一個の固まりとなり、突き進む。

まるで11人と一匹が、一つのドリルとなり、巨大な壁に穴を空ける光景のようだった。

 

 

「止めるぞ! 誰一人ここを通すな!!」

 

「「「「「「「うおおおおおおおおおおおおおお!!!!」」」」」」」

 

 

そして壁も不動なわけではない。

士気を高めて、脆いドリルなら粉々に押し潰せるほどの勢いで押し寄せる。

正に正面衝突だった。

 

「うおりゃああああ!! 漢! 漢! 漢! 漢! この俺は・・・・漢だァァ!!!」

「くっ、このリーゼント意外と出来るぞ!?」

「怯むな! それでも我等の敵ではない! 冒険王一家にのみ気をつけろ!!」

「それは心外ですね・・・・」

「なっ!?」

「祈りよ交われ・・・十字の道に! 聖なる十字架(クリスクロス)!!」

 

巨大な十字架が神々しい光と共に天から振り下ろされ、その衝撃で幾多の兵士たちが吹き飛ばされてしまう。

 

「ま、魔法使いも居るぞ!? しかもかなりの高位だぞ!」

「障壁を展開しつつ冷静に当たれ! これほどの呪文が何時までも続くはずはない!!」

「し、しかし・・・・・」

 

そう、いつまでも快進撃が続くはずは無い・・・それは分かっている・・・しかし・・・

 

「クアドラプル烈空掌!!」

「3D式・雷車!!」

「九蓮宝拳!!」

 

止まらない・・・・

 

「ちょっ、・・・こいつら・・・ぐわああ!?」

「くっ、舐めるなァ!! 常に国家のためにこの身を鍛え上げている我等が、チンピラごときに押し切られてなるものかァ!!」

 

シモンや瀬田、そしてシャークティならまだしも、豪徳寺たちは彼等と比べて明らかに弱い。

いかに夏休み中に猛特訓していたとはいえ、戦闘のプロである兵士たちに敵うとは思えない。

だが、この実戦においての彼等の生き生きとした動きは何だ? 

 

「な、何をやっておるかァ!! たった数名に何を手こずっている!?」

「し、しかしミルフ隊長もヘラスのマンドラなどの主力が既にやられ、・・・それ以前に多くの兵が最初の戦いで冒険王たちにやられ・・・・」

「先頭の男を止めろ! そうすればこいつらも止まる! セラス殿が深手を負わせた敵だ! いつまでも放置するな!」

 

そう、理屈は分かっているのだ。

いくら他の者達が後ろや左右を固めていても、先頭のシモン一人を止めれば、彼等は止まる。

しかし・・・・

 

「ダ、ダメです!? なんか・・・怪我する前より強力で・・・こいつら・・・・」

「おい、あのメガネの女の子はどうだ!? 魔法も変な力も使えなさそうだ! 背中に背負っている変な機械から伸びている腕にだけ気をつけろ!」

 

止められない・・・

 

 

「おブァカさァァァァン!! 麻帆良の科学は世界一ィィィィ!! エンキと茶々丸のパワーを基準にイイイイイイイ、このアームは作られているのですゥゥゥゥ!! イナズマパンチ・ストーム!!」

 

「エンキカッター乱舞。・・・・ハカセ・・・ハカセハイム少佐?」

 

「世界一? ふざけんな! 世界一はモルモル王国だぜ! こっちも負けてられねーな、ブータ!! いくぜ、メカタマ・ナックル!!」

 

「ぶいいいい!!」

 

「それじゃあ私も。浦島流・日向雨!!」

 

 

止まることがない・・・・・

 

 

「とにかくもう全然止められません!!!!」

 

 

止められるはずがない!!

シモンは言わない。しかし彼等を止められぬことに動揺する三国の者たちにあえて言うとしたら、この言葉しかない。

彼等を誰だと思っている?

 

「乱れ撃ち!!」

「穿孔ドリル弾・一斉射撃!!」

 

その問いかけに誰も答えられない。仮に答えを知ったとしても、誰も意味は分からないだろう。

だから今日知るしかない。

無理を通す反逆者たちの存在を、その瞳と頭の中に叩き込むしかない。いや、既に叩き込まれているだろう。

 

「おいおいおいおい、いきなり元気になりやがって・・・・」

「数で押し切れる相手ではなさそうじゃな・・・・騎士団レベルでは荷が重いのかのう・・・」

「どうやら彼等を大蛇として認めるしかなさそうね・・・・でもその分、頭を潰せば全てが終わるわ」

「うむ、決まりじゃな・・・・それではリカードは冒険王、セラスはゴーグルの男、妾は残りを受け持とう!」

 

立ちはだかる壁に少しずつ穴を空けていくシモンたちの大活躍に、これ以上見入っているわけにはいかない。

再び三人の英雄がそれぞれのターゲットへ向けて動き出す。

 

「あんまり調子に乗るんじゃねーよ! 冒険王!」

「むっ・・・・君か・・・いいだろう。今度は少し本気を出そう」

「いくぜェ!!」

 

人波の上を飛び越えて、飛び掛ってくるのは互角の力を見せたリカード。

 

「ここで通行止めじゃ!」

「来たな~、じゃじゃ馬姫!」

「ぶい~!」

「ふん、悪いが・・・・今度は瞬殺させてもらうよ・・・」

 

テオドラがメカタマとハルカに。

そしてシモンのドリルをアッサリ砕いたセラスがシモンへ向かった。

 

「何度来ても同じよ! また、砕いてあげるわ!」

「どうかな? やってみなくちゃ分からねえ!!」

 

セラスたちは、主力であるシモンたちへ向かい、一気にこの快進撃を叩くつもりである。

遊びを抜かして、本気で向ってくることが空気から伝わってくる。

三人の再三の登場に、まだ残っている兵士たちも士気を上げ、包囲網を保ったまま陣形を縮めていく。

 

「まずは・・・氷結・武装解除(フリーゲランス・エクサルマティオー)!!」

「させるかよォ! 螺旋フィールド展開!!」

 

ドリルを武装解除呪文で弾こうとするセラスの魔法を、シモンはフィールドを展開して防ぐ。

 

「・・・甘いわね

「何ィ!?」

 

 

しかしその手をセラスは読んでいた。

 

 

「全軍、進撃を止め、一旦下がりなさい!! 契約に従い(ト・シュンボライオン) 我に従え(ディアーコネートー・モイ・ヘー) 氷の女王(クリュスタリネー・バシレイア) 来れ(エピゲネーテートー) とこしえの(タイオーニオン) やみ(エレボス)!!」

 

「おっ・・・魔法か!」

 

「全軍! 総長(グランドマスター)が巨大呪文を放つ!! 巻き込まれたくなくば、一歩下がれ!」

 

 

シモンがフィールドを展開した隙に、セラスは兵士たちを一歩下がらせ、巨大呪文を放つべく詠唱を始めた。その時、シャークティの声が聞こえた。

 

 

「シモンさん! その呪文は防ぐことは出来ません! 詠唱が終わる前に・・・・・」

 

「遅い! これで終わりよ! 永遠の氷河(ハイオーニエ・クリュスタレ)!!」

 

 

シモンの展開するフィールドに構わず、セラスが凍り系の大呪文を放つ。

 

「こ・・・これは!?」

「ほう・・・粘るわね、大した障壁ね。しかし広範囲に絶対零度の世界を広げるこの呪文を防ぐすべなどないわ!」

「ぐおおおおおおおお!!!」

「無駄よ! 再び砕かれなさい!!」

 

シモンたちを中心に絶対零度の世界が展開される。

その身を切り裂くほど凍える世界を、シモンは何とか螺旋フィールドで押さえ込んでいる。

しかし全てを防ぐことは出来ず、凍える寒さが皆に襲い掛かかりそうになる。

もし、フィールドが解けたら、一瞬で全員が凍結してしまうだろう。

 

「さあ、終わりよ!!!」

 

セラスは勝利を確信した。

これほどの呪文なら、たとえ相手が未知でも、一度砕いたドリルぐらい何度でも砕けると確信していた。

それは驕りでも油断でもない、事実を元に導き出した確信だった。

しかし・・・・

 

 

「それは・・・・どうかな?」

 

「・・・・えっ?」

 

 

シモンは未だに凍結していなかった。

今でも歯を食いしばりながら、セラスの放つ絶対零度の魔法を防いでいた。

 

「バ、バカな!? 防御不可能の絶対零度を何故!?」

「それじゃあ、今日から可能にしておけ!」

 

しかもただ防いでいるだけではない。

絶対零度の氷が徐々に溶けていくのである。

 

 

「そ、そんな・・・ありえないわ・・・・さっきは簡単に砕けたのに・・・・」

 

「なめんじゃねえ! 一度砕いたくらいで勝った気になるなァ!!」

 

 

驚愕に歪むセラスの表情。

その時、彼女は見た。

 

 

「あれは・・・・・・星? 何?・・・・この光は!?」

 

 

シモンの掛けたゴーグルが突然変化し、星型の形へと姿を変え、緑色に輝くオーラを放ったのだ。

そしてそれだけではない。

シモンの胸元にある小さなドリルからも、溢れんばかりの光が漏れ出し、シモンを包み込んだ。

するとシモンはフィールドを保った状態のまま、異常なほど輝く螺旋の光を全てドリルに注ぎ込み、凍える吹雪に向けて突き刺した。

燦然と輝くドリルはシモンの今の気持ちを表しているようだった。

 

 

「俺の力は無限だ! ドリルが折れても、心が折れなきゃ負けじゃねえ! ようは冷めるより熱く燃えればいいんだろうが!」

 

 

絶対零度はマイナス273・15℃の世界。それよりは下がらない。しかし・・・

 

 

「絶対零度? さっきから温度は上がる一方だぜ? どれだけ吹雪が吹こうと、この状況下でどうして冷めていられるんだ!」

 

 

温度は無限に上昇する。

 

 

「ドリルが異常なほど回転し、熱を帯びている!?」

 

 

無限に上昇するシモンの螺旋力の熱量が、絶対零度を凌駕した。

 

 

「俺の気合は沸騰寸前! テメエら全員湯当たりしやがれえーーーーーッ!!!!」

 

 

絶対零度の世界を前にしても、シモンは凍結するどころか、余計に熱を帯びさせ突き進む。

理屈も敗北の理由も分からず、ただシモンのエネルギーの余波を食らったセラスは、わけも分からず宙に飛ばされながら空を眺めていた。

 


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