魔法はお前の魂だ(魔法先生ネギま✖天元突破グレンラガン)   作:アニッキーブラッザー

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第183話 頼もしき熱い魂たち

 

「シモン君!?」

「よそ見してんじゃねえ!!」

「ぐうっ!?」

 

シモンの叫びを聞いた瀬田が声を上げるが、こちらも手が離せる状態ではない。

 

「ほれほれ、人を心配している場合ではなかろう」

「くっそ~~! どけってんだよお!」

 

シモンの危機を知り、それでも目の前のテオドラに阻まれサラもハルカも、ブータも歯噛みする。

だが、その阻んだ壁を簡単にはどかすことは出来なかった。

 

「くそ・・・・ぐっ・・・・体が・・・」

 

雷の斧をモロに食らい、シモンはヨロヨロに倒れて両手膝を地面に突いた。その光景を囲んでいる戦士たちは打ち震えていた。

 

「す、素晴らしい・・・・なんという息もつかせぬ魔法・・・戦術・・・お見事です・・・」

「まるで魔法の精霊たちが次々と総長(グランドマスター)の前に降り立ち、跪いているようだ」

 

炎も氷も水も雷も、不得手なく次から次へと繰り出し、自分たちを蹴散らしたシモンに一撃も入れられずに追い込んだセラスに、戦乙女は感動で打ち震えていた。

 

「極大魔法は時間が掛かります。一対一では中々難しいわ。でもね、やり方しだいで十分対抗できるのよ。仮にあなたが未知の能力を持っていてもね」

「・・・そうか・・・・だが・・・次はッ! ・・・っう・・・か、体が・・・」

 

勇んで立ち上がろうとしたが、シモンは直ぐに膝をよろつかせて地面に両手をついた。

 

(ちっ、油断した・・・・威力も力も圧倒的にラカンのほうが強いけど。・・・魔法の使い方が凄く上手い・・・・。こうも簡単に・・・・)

 

どうやら今の一撃で全身に力が行き渡らなくなったようだ。シモンは唯一動く首だけを動かし歩み寄るセラスを見上げながら精一杯睨んだ。

 

「痙攣して思うように動かないでしょう? でもそう睨まないでほしいわね。雷の斧を食らって意識を保てるほうがむしろ考えられないのよ。何かの能力で威力を和らげたのかしら?」

 

セラスはこのような状態でも、感心しながらシモンを見下ろす。

そして膝を付いて顔を近づけ、周りに聞こえないような小声でシモンに語りかける。

 

 

「それにしてもあなた・・・・、先ほどエミリィの名を・・・・。そしてドリル・・・・・ひょっとして、あなたがアリアドネーで噂になっていたシモンという男かしら?」

 

「俺のことを知っているのか!?」

 

 

シモンが驚きながら顔を上げると、セラスは「やっぱり」という表情で溜息をつく。

 

「ええ。エミリィ、ベアトリクス、コレット、・・・・以前あなたに世話になった・・・そして行方不明になったと悲しんでいたわ」

「・・・・そっか・・・あんたはアリアドネーの人間だったんだな・・・」

「ええ、あなたの噂は聞いていたわ。記憶喪失のこともね・・・・・でも・・・・行方不明になってこんな事になっているとは思わなかったわ」

「・・・・・・・・・・・・・」

「一度あなたに会って、生徒たちを助けてくれたお礼を言わなければと思っていたけど、こんな形で会うことになるとは思っていなかったわ」

 

その言葉にシモンは少しばつの悪そうな表情で、残念そうに溜息をつくセラスを見た。

 

「まあ・・・・俺もあの時から一ヶ月程度でこんなことになるなんて思って無かったよ。何も知らない世界で忘れた自分の記憶を探し出すのも一苦労だ・・・」

 

僅か一ヶ月の旅路だが、シモンは懐かしむように目を閉じて思い出していく。

アリアドネーから始まり、エミリィやコレット、ベアトリクスたちと出会い、アリアドネーに忍び込んだサラを追いかけ、途中でラカンと戦った。次に目を覚ましたらグラニクスでトサカと戦い、フェイトと月詠と戦い、その後はサラに同行して瀬田とハルカに出会う。そして今はオスティアの大地にたち、自分を知るネギたちと会った。

シモン自身と魔法世界はそれほど関係なかったのだが、この世界で過ごした僅かな月日でいろいろな事があった。

 

 

「それで・・・・見つかったの? あなたの記憶は」

 

「・・・・この世界自体に関係なくても、俺の記憶のヒントは色んなところにあった。そしてその旅の途中で・・・・俺は・・・・分かったことがある」

 

 

僅か一ヶ月の旅路でシモンが気づいたこと。そして昨日誓ったこと。

 

 

「俺は・・・・誓ったんだ・・・」

 

「誓った? 何を?」

 

 

シモンが痺れた腕に懸命に力を込め、歯を食いしばりながらゆっくりと立ち上がる。

 

 

「明日へと続く道を掘ることを・・・・友に!! そして・・・・」

 

「なっ、・・・・雷の斧をくらって!?」

 

「俺自身の魂にだッ!!」

 

 

体に力が入らなくとも、言葉と心に目一杯の力を込めてシモンは立ち上がった。その光景にセラスだけでなく、周りの戦士たちも驚いている。

 

「たっ、立ち上がった!?」

「バ、バカな!? 総長(グランドマスター)の魔法を完全に食らって、立ち上がったというのか!?」

 

あり得ない事だとどよめき出す戦士たち。シモンは彼等に対して胸を張って答える。

 

「気合だ! この程度でくたばる俺だと思ったのかよ! 男ならやせ我慢だ!!」

「まだやると言うの!? その体ではもう無理だわ!」

「それがどうしたってんだ! まだ・・・・まだやれるッ!! テメエら全員、その耳の穴かっぽじってよく聞きやがれ!」

 

その時、シモンの頭の中に一つの言葉が過ぎった。

シモンは笑った。

頼もしく頭の中で過ぎった誰かの言葉に力を貰い、唖然とする戦士たち、そしてセラスに向けて啖呵を切る。

 

 

「無理を通して道理を蹴っ飛ばす!! それが俺の生き様だァ!!」

 

 

セラスは初めての経験だった。その言葉が耳に届いたリカードもテオドラも思わず手を止めた。

大戦から二十年がたち、自分で言うのもなんだが、自分たちは魔法世界でも指折りの存在として知れ渡っている。

そんな自分たちに、そしてこれほどの大軍を前にして堂々と啖呵を切られたのは始めての経験だった。

 

 

「だァーーーはっはっはっはっはっはっは!! 何だアイツ! だはははは! おもしれえーーーッ!!」

 

「なはははははははは!! バカじゃ! バカがおるぞ! ナギやジャックにも負けず劣らずの大バカじゃ! 妾たち全員に啖呵を切るとは、前代未聞の大バカじゃ!!」

 

 

部下の前だというのに、リカードもセラスも腹を抱えて大笑いした。その隙に、瀬田、ハルカ、サラ、ブータはすかさずヨロヨロのシモンの下へと集まった。

 

「まったく・・・大丈夫かい、シモン君?」

「ああ・・・・これぐらい・・・・何ともない」

「何ともないわけないだろ。木乃香と約束したんだろ? あんま無理すんじゃないよ」

 

シモンの強がりにハルカが少し怒った表情で戒めるが、メカタマの中に居るサラからは少しうれしそうな声が聞こえてきた。

 

「でもさー、こんな時に言うのも何だけど、よーやくシモンらしいじゃん?」

「ぶーむ!」

「やっぱお前の本領発揮はズタボロになった後だからな~。だから、私はなーんも、心配してねーからなー」

 

この状況下で・・・・周りは囲まれ、三人の強敵が立ちはだかり、シモンもボロボロだというのに、何故かサラは不安が消え、むしろ陽気な声が漏れた。

それは恐らくこれまでメチャクチャを繰り返してきたシモンがメチャクチャをする時は、いつだってこのようにボロボロの時だったからだ。

本当に驚くことはこれからだと、むしろサラは楽しそうにしていた。

そんな娘の様子を察して、瀬田もハルカも苦笑しながら溜息をついた。

 

「やれやれ、それじゃあこれからどんな常識破りが起こるんだろうね~?」

「状況が最悪になってこそ、本領発揮か。それじゃあシモン。お膳立ても済んだことだし、そろそろ私にも見せてもらおうか?」

 

先ほどまでの切羽詰った状況を瀬田とハルカも忘れ、笑いながらシモンに告げる。

 

「でも、奇跡は起こらないわ」

 

和やかな空気が漂う中、セラスは現実をシモンたちに告げる。その隣にはリカードとテオドラも居る。

 

「まっ、嫌いじゃねーがな」

「うむ、勇ましいのが啖呵だけでは覆せぬ。妾らもそれほど甘くはないのでのー。残りの生き様は、監獄の中で叫ぶのじゃな」

 

そう、状況は何も変わらない。むしろ悪化しているのである。

追い詰められてシモンがボロボロになった、それだけである。

シモンの言葉に気分を良くしたリカードとテオドラだが、それで見逃すほどの者たちではない。

そんなことは誰もが分かっていた。

そう、分かっていた。

しかし囲まれたシモン、瀬田、ハルカ、サラ、そしてブータの目はまったく曇っていなかった。

 

 

「舐めんじゃね! 俺の魂は・・・俺のドリルは天と地と明日を貫くドリルなんだよ! 一回ドリルを砕いたぐらいで勝った気になってんじゃねえ! 俺の本当のドリルはここにあるドリルだ!」

 

 

そしてシモンは何も無い自分の胸を指差した。

 

 

「何度砕けても、俺の掘る道は、天の向こうまで続くんだ! 待ってる奴等が居るのにいつまでもモタモタしていられねえんだよ! 俺の無茶に中身があるかどうか見せてやるぜッ!」

 

 

その時、皆の笑みが止まった。

リカードとテオドラ、そしてセラスも、そしてこの場に居る誰もがその男の姿に目を奪われた。

それは「本気」を感じ取ったからだ。

目の前の男はボロボロでも死んでいない。本気で無茶を通すつもりだと感じ取ったのだ。

 

 

 

この絶望の状況下で、奇跡を起こすつもりなのだろう。

 

 

 

そしてソレは起こった。

 

 

 

奇跡に等しい出来事が起こったのだ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「その通ォォォーーーーり!!!!」

 

 

 

「「「「「「「「「―――――ッ!?」」」」」」」」」

 

 

 

「それがグレン団のやり方だぜ、リーダァーーッ!!!!」

 

 

 

 

 

その言葉に敵味方問わず、当然シモンも含めて固まった。

 

「な、何だ貴様ら!?」

「一体どこから!? と、止まれーーッ!」

「関係ないものは――――」

 

声の主は周りの兵士たちが壁となって、シモンたちには姿が見えない。

しかし制止する戦士たちを振り切り、人ごみを掻き分けて男は・・・・漢達は現れた。

 

 

「極漢魂ァァァーーーーーーーッ!!!!」

 

「ダブル・疾空掌!!」

 

「3D式ドラゴンスクリュー!!」

 

「百華崩拳突き!!」

 

 

シモンたちに皆が見入っていたため、突如現れた者たちの乱入を誰もが止めることができなかった。

そして声の主たちは大勢の戦士たちの壁をすり抜け、シモンたちの前に現れた。

 

「な、何だァ!?」

「何じゃ、キサマら!!」

「一体何なの!?」

 

予想外の出来事に戸惑うリカードたち。すると現れた漢達はこの場に居る全員に聞こえるほどの大きな声で叫んだ。

 

 

 

「「「「ダチだァァ!!!!」」」」

 

 

 

現れたのは4人の漢達。

その4人の名前をシモンは思い出せない。

しかしシモンはこの4人を知っている。

そして現れたのは彼等だけではない。

 

 

「イナズマパンチ!!」

 

「エンキカッター!!」

 

 

今度は別の方角から声が聞こえた。

 

 

「今度は一体何なんじゃ!?」

 

 

全員が慌ててそちらへ振り向くと、今度はサングラスを掛けた一人の男と、背中に背負っている機械のような部分から出ているアーム部分で電撃のパンチを繰り出して、壁を掻き分けて、眼鏡を掛けた少女が現れた。

そして現れた二人は、先に現れた四人と同じように、大きな声で同時に叫ぶ、

 

 

「「仲間です(デス)!!」」

 

 

そして・・・

一人残らず戸惑いを隠せないこの状況下、その状況下に追い討ちを掛けるかのごとく、空が急に光り輝いた。

 

 

「な、何じゃ何じゃ!?」

 

「空が・・・・」

 

「こ、これは・・・・」

 

 

急に光り輝いた空を見上げると、上空に神々しく輝く光の柱がセラスたちを照らす。

その数は七つ・・・

 

 

「七つの星に裁かれよ・・・・」

 

 

今度はまた別の声が聞こえた。そしてその瞬間、最初に反応したのはセラスだった。

 

 

「この呪文・・・・・ま、まずいわ!? 全員下がって!」

 

 

しかし時は既に遅い。

魔法世界の法を犯した瀬田たちにではなく、彼等を捕らえようとしたものたちに裁きの光が打ち下ろされた。

 

 

「七星剣(グラン・シャリオ)!!」

 

「くっ、最強防護(クラティステー・アイギス)!!」

 

 

打ち下ろされる七つの光の裁き。最初に反応したセラスは、避けることはせず、10以上の魔法陣を展開させ、持てる最強の防御呪文で、攻撃の全てを受け止めた。

セラスの機転もあり、被害は無くすんだが、それでもセラスたちの動揺も驚きも止らない。

 

 

「一体・・・一体何なの、あなたたちは!?」

 

 

するとセラスの防御魔法と光の魔法の衝突により粉塵が巻き上がる中、一人の女がシモンたちの前に、そしてセラスたちの前に現れた。

褐色肌のシスター服を身に纏った女。彼女はセラスたちに向けて告げる。

 

 

「そして・・・・家族です!!」

 

 

全員合わせて七名の男女がこの争いの中に乱入した。

 

 

「えっ・・・お前は・・・・・シャ・・・・・シャー・・・・・・ク・・・ティ・・・・」

 

 

シモンが固まったまま、記憶が無くとも、その口が不意に自然と動いた。

そして皆が呆ける中、一人の男が叫んだ。

 

 

「よっしゃああ! リーダーを守るぞ! 囲めェ!!」

 

 

その言葉に従って全員がシモンの周りに円を描くように並び、魔法世界の戦士たちに向って構える。

 

 

「副リーダー、豪徳寺薫!」

 

「中村達也だァ!」

 

「ふっ、山下慶一!」

 

「大豪院ポチ・・・・」

 

「田中エンキデス」

 

「新入りの葉加瀬聡美です!」

 

「そして、シャークティです!」

 

 

そして七名が己の名を叫ぶ。そしてそれぞれの背中には、シモンと同じサングラスを掛けたドクロマークが描かれていた。

 

 

そして七名は叫ぶ。

 

 

あの言葉を・・・・

 

 

 

「「「「「「「俺たちをォ誰だと思っていやがるゥッ!!!!」」」」」」」

 

 

 

たかが数名の叫びが嵐のように全ての者に響き渡る。

誰もが呆然としている中で、瀬田は同じくポカンとしているシモンに尋ねる。

 

 

「シ・・・・シモン君? か、・・・・彼等は?」

 

「さあ、・・・分からないや・・・・でも・・・」

 

 

シモンには答えられない。

しかし伝わってくる。

 

 

「でも・・・これだけは言える。・・・・・・・祭りの騒ぎに誘われて・・・・」

 

 

自分は間違いなく目の前の者たちを知っている。

多分ではない、確実に確信している。

その証拠に胸が熱くなる。

先ほどよりもずっと心の熱さが・・・いや、心のマグマが炎と燃えた。

シモンはニヤリと笑う。

 

 

「頼もしい奴等が現れたッ!!」

 

 

新生大グレン団参戦!!


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