魔法はお前の魂だ(魔法先生ネギま✖天元突破グレンラガン) 作:アニッキーブラッザー
シモンたち四人と一匹に戦いを挑むのは・・・・
「殿下!? 殿下じきじきに出られる必要はありません! 賞金首共の討伐はアリアドネーの警備隊やメガロメセンブリアの騎士団に!」
瀬田たちの真上を飛ぶヘラス帝国の飛行船の中で、侍女らしき女性が懸命に一人の女に訴えかけていた。
その言葉に首を振る、亜人の女性。
彼女は実に穏やかで気品のある声で侍女に告げる。
「良いのです。兵士たちの力は信じています。しかしこの平和の祭典を乱すものたちを、いつまでも野放しにしておくわけにはいきません。必ず取り押さえて騒ぎを収める必要があります。・・・・平和を・・・心から祝うためにも」
「それは殿下の仕事ではありません! あなたはあなたの仕事をなさって下さい!」
「ならば・・・これが私の仕事です。皇女の仕事ではなく・・・皆が・・・そして友人の守った世界を守ること・・・」
「しっ・・・しかし・・・」
窓の外を見つめて、見るからに高級そうな衣服から、動きやすい戦闘用の服に身を包んでいく女がいた。
「で、殿下・・・・しかし・・・首都も動いています・・・これは明らかに彼等の任務に対する妨害だと非難されれば・・・北と南の友好が・・・それに姫様にもしものことがあれば・・・」
「いいえ、むしろ両国が協力し合うことにより、それを国民に伝えることが出来れば、この20周年記念の祭典に大きな効果をもたらすでしょう。既にこの考えはリカード元老院議員に通してあります。いわゆるこれも政治の一環です」
彼女こそ超大国であるヘラス帝国の第三皇女、テオドラである。
「紅き翼たちはもう居ません。しかし残された我々が、彼等の守った平和を維持していかねばなりません。それを祝う式典を汚してはならないのです・・・」
「テオドラ殿下・・・・うう~~」
言っても曲げない強い意志。そしてその想いを知り、侍女の女は涙目になりながら頭を垂れた。
「み、・・・・御心のままに! 私はどこまでもお供します!」
「・・・礼を言います」
「はっ!!」
姫の想いに感銘を受けた侍女は涙を拭いて、どこまでも付き従うことを誓った。
その姿に小さくテオドラは礼を言いながら、背を向け、その瞬間侍女には見えない位置で、顔をニカ~っと皇女らしからぬ笑みを浮かべた。
(くっくっく、なーんてな♪ つまらん打ち合わせや、頭の固いジジイ共との挨拶ばかりで、いい加減退屈だったからの~。ここらでパーッとストレス解消したいと思うとったところじゃ♪)
姫の本音を侍女は見抜くことは出来なかった。
(ふふ~ん、幾多の戦士たちを退けた旧世界の冒険王か~、楽しみじゃの~。ここらで妾が少し世界の広さを教えておくのも一興じゃな♪ それに妾が自ら動くこの共同作戦で北と南の仲がもっと良くなれば一石二鳥じゃ♪)
これが気品ある皇女の真の姿。
かつて、紅き翼たちと共に、世界を救い、現在魔法世界でもトップクラスの超VIP的存在の彼女は、お転婆じゃじゃ馬姫だった。
そんな彼女がついに動き出した・・・・
そしてそれは彼女だけではない。
「元老院!? リカード元老院!?」
「まあ、いいじゃねえか。どっちにしろ騎士団レベルじゃあ手に負えねえんだろ?」
ヘラス帝国の艦の近くに待機して、瀬田たちの逮捕にこの男も動き出した。
メガロメセンブリアの元老院議員リカードが、スーツのネクタイを緩めて指の関節をならしてニヤニヤしていた
その様子に騎士団の団員が困った顔をする。
「しかし・・・」
本来、リカードが戦場に出るなど、今ではありえないのだが、自分たちが今まで瀬田たちを捕まえられなかったのは事実である。
そして紅き翼の戦友でもあり、この世界の英雄の一人でもあるリカードの強さを誰もが知っているため、断ることが出来ない状態だった。
「本来ならおもしろい奴等だなって感心するぐらいだが、この祭りを乱す奴は許せねえからな。俺の・・・ダチ共の残した世界だからよ~」
「・・・・元老院」
「それに利点もある。テオドラ皇女も動く今回の作戦が見事成功すれば、この祭りの最大のパフォーマンスになるじゃねえか。ついでにアリアドネーの魔法騎士団、セラス総長にも動くように頼んだ。このメンツに万が一なんてありえるかよ?」
団員の者は、あまりにも豪華なメンバーに度肝を抜かれた。
ヘラス帝国皇女のテオドラ。
メガロメセンブリア元老院議員のリカード。
アリアドネー魔法騎士団総長のセラス。
一国と喧嘩出来るほどの力を持つ豪華な面々、おそらく二十年前の大戦以来の英雄たちの会合である。
本来国のトップが動くことは、返って国民に不安を煽る出来事かもしれない。しかしこのメンバーなら冒険王達がいかに実力者とはいえ、億に一つも不安は無いだろう。
何より団員の男は一人の戦士として、このメンバーが式典以外の場所でそろい踏みになる光景をとても見たいと思ってしまった。
だからこそ・・・
「分かりました。その力をこの目で見れることを、私は心から光栄に思います」
「礼を言う!」
頭を垂れた団員に一言礼を告げ、リカードは背中を向けた。
そしてここからはテオドラと同じように、ニカ~ッと笑って心の中でガッツポーズをした。
(かっかっか、なーんてな♪ 最近、会議会議ばかりで鈍ってたからな~。たまには昔みたいに熱い戦いがしてみたかったからな! あのお転婆姫も実におもしれえ計画をおもいつくぜ! しかもこれが成功すりゃあ、いい宣伝になるしな。本当にチャッカリしてるぜ!)
気の毒なのは上司の本音を決して探ることが出来ない部下たちだった。
(冒険王か・・・そういや~、ラカンが捕まえられなかった奴も居るんだよな・・・たしか・・・シモ・・・シモ・・・忘れた・・・・まっ、行ってみりゃあ分かるか! 最近調子に乗っているようだが、部下も居るし、ここらで俺が本当の力ってもんを見せてやるか!)
昔の自分を思い出すかのように、リカードは鈍っていると自分で言った自身の体に魔力を流す。
昔の感覚を思い出そうと流した力だが、それだけで団員の男は汗が流れた。
(すごい・・・これがかつて大戦期に名を馳せた者の力・・・・再び見ることが出来るとは・・・・)
リカードの力を見れることにワクワクしながら、団員の男は準備に取り掛かった。
そして最後に動くのはこの女。
「まったく、リカードもあのお姫様も困ったものね。まあ、黒い猟犬(カニス・ニゲル)の動きが無い以上、構わないけど・・・・でも・・・・少し不謹慎だけど昔に戻ったみたいで楽しみね」
少し顔を綻ばせながら、セラスが独り言を言う。そして、その時が来たことを、戦乙女の戦士が告げに来た。
「総長(グランドマスター)! 準備が整いました! そして例の広場の喧嘩には新人を向わせています」
「ええ、それで良いわ。では・・・我々も動くとしましょうか」
「はっ!!」
ネギたちの知らないところで、大きな戦いが始まろうとしていた。
ラカンもシモンも瀬田もネギもフェイトですらまったくの予想外に過去の英雄たちが動き出した。
「では・・・行きましょうか」
その言葉に戦士は頷き、後につき従った。そしてこの戦士はこれから始まる戦いの証人ともなるのである。
そしてこの日がキッカケで、冒険王一家だけでなく、その場にいる一人の男の存在を魔法世界のトップたちは知ることになる。
そしてこの戦いで、テオドラ、リカード、そしてシモンを名前と顔だけは知っているが、詳しくは知らないセラス。
この三人が度肝を抜かれることになる。