魔法はお前の魂だ(魔法先生ネギま✖天元突破グレンラガン)   作:アニッキーブラッザー

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第178話 まずは俺を信じろ

「うりゃああ!! 無極而太極斬(トメー・アルケース・カイ・アナルキアース)!!」

 

 

空に浮かぶ巨大な無数の石柱。

フェイトが魔法で作り出した物である。その巨大な物体に街中の者たちが悲鳴を上げて逃げ惑う中、一人の少女の剣が状況を一変させる。

 

 

「す、すごいな・・・アスナ殿・・・うむ! アスナ殿の力があれば、魔法は何とかなりそうでござるな」

 

「任せてよ!」

 

 

完全魔法無効化能力をフルに発揮し、アスナが一瞬でフェイトの作り出した天からの脅威を消し去った。

 

「私はこのままネギを追うわ! 楓ちゃんは・・・本屋ちゃんたちを!」

「いや、あちらには小太郎と古も居る。ならば拙者もネギ坊主のところへ・・・」

「でも小太郎君に女の子は殴れないと思うわ! それに向こうには朝倉や千雨ちゃんみたいに、戦闘に向かない子たちもいるし!」

「う・・・う~む」

「ネギの方は、私と茶々丸さんに任せて!」

 

楓は少し唸って、このままアスナを向わせていいのかどうか少し考えた。しかしたしかに小太郎、古が居るものの、のどかやハルナ、朝倉や千雨のように戦いに特化した能力を持っていないもの達も居る。

ネギの言う、全てを守るという言葉を貫き通すなら、アスナの言うことに間違いは無かった。

 

「仕方ない・・・だが、アスナ殿。いかに魔法が通用しないといっても・・・・」

「油断するな♪ でしょ? 行ってくるわ!!」

 

互いにグッと親指を立てて誓い合い、二人はそれぞれの戦地へと赴いた。

しかしこの場では最良の選択だと思い、アスナを単独で動かしたこの判断が、後に面倒な事態を巻き起こすことを、楓もアスナも気づいていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「祭囃子が激しくなってきたね・・・・」

「ああ・・・・それにあの白髪頭やネギはどうなってるかな?」

 

暦と環を倒した瀬田たちは、オスティアの街の市民の騒ぐ声を聞いて呟いた。

 

「だが、急いで行かねえと皆がやべえ! おっさんたちも早く来てくれ!」

 

カモが非常に焦った表情で訴えかける。しかしそこで瀬田が一つ問題点を口にした。

 

「その前に・・・僕は魔法に疎いから、感知という力は使えないんだが、ラカン君、シモン君のお友達はどこにいるんだい?」

「あん? う~ん、所々に散らばってやがる。恐らく移動したり転移しながら戦ってんだろーな。面倒だな・・・・」

 

ラカンが少し唸りながらネギたちを探り始めたが、元々考えるのが苦手なラカンには適当な言葉しか出てこなかった。

瀬田自身、大して期待していたわけではないが、実はこの質問には大きな意味があった。それを逸早く察知したのはシモンだった。

シモンが不意に空を見上げた。

 

「どうやら・・・・こっちもまだ面倒みたいだぞ?」

「えっ? シモンさん・・・・どうゆうことなん・・・・って・・・えっ!?」

「げげげーーっ!? ホントかよ!?」

 

シモンにつられて木乃香やサラたちも空を見上げ、その目に映る物に驚きの声を上げた。

突如空の光を覆うように自分たちの真上に現れた物体。

それは飛行船だった。

その飛行船を見てエミリィが声を上げる。

 

「なっ!? 首都の巡洋艦!?」

「それは本当かよ、エミリィの姉さん!? まさか・・・アニキたちを捕まえに来たんじゃ・・・」

「それもあるだろうね・・・・でも、あれは先ほど僕たちと追いかけっこをしていた艦の一つだ。どうやら僕たちのことも追ってきたようだね」

「だろうな・・・・それにカモミールの言うとおり、ボーズや嬢ちゃんどもは、今はまだテロリストとして手配されている。恐らくまとめて逮捕に乗り出そうとしてんだろうな・・・・・」

「そうか・・・騒ぎがデカくなり過ぎて、エミリィやベアトリクスやコレットみたいに新入り共に任せられる範疇を超えたんだろうな・・・・」

「そんな・・・それじゃあどうすればいいん? ラカンさんのコネで何とか出来ないん?」

「う~ん・・・ぶっちゃけ無理すりゃあ出来なくもねえが、俺のコネはデカ過ぎる。国のトップレベルだからよお。それをここまで大事になって、この犯罪者を見逃してくれって・・・・平和の式典で仲の悪い北と南が揃っている状態でやるのは、ちっとな・・・。無実を証明できれば別だろうが・・・今はそんな時間もねえ・・・」

「じゃーどーすんだよ!? シモンの友達を助けるってことは、白髪頭だけじゃなく、アイツ等も相手にするって事かよ!?」

 

サラが興奮しながら真上を飛ぶ飛行船にビシッと指を指す。その答えに誰も直ぐには回答できず、全員が必死に答えを探していた。

そしてそんな中、一番早くに答えを出したのは瀬田だった。

 

 

「・・・エミリィちゃん・・・・今すぐ君はアリアドネーの部隊に戻って。仲間に連絡してくれないかい?」

 

「瀬田さん?」

 

「冒険王一家はここに居るって・・・・」

 

「「「「「!?」」」」」

 

 

瀬田の辿り着いた答えは二面作戦の囮だった。

 

「そう・・・・これなら全部とまではいかなくても多くの警備兵たちの目をこちらに向けることが出来る」

「しかし!?」

「上の連中は僕の責任でもある。ならば僕がまとめて相手をしよう」

「せやけどそれやったら瀬田さんが!?」

「だいじょ~ぶ♪ ・・・・ねっ♪」

 

木乃香が瀬田たちを囮にするような作戦を簡単に受け入れられなかったが、瀬田は笑って木乃香にウインクをした。

そしてその後に溜息をつきながらも、柔軟を始めて少し笑っているハルカとサラが口を開いた。

 

「やれやれ・・・・面倒くさいな」

「まっ、それがパパだしな~」

「手伝ってくれるかい? ハルカ、サラ?」

「何年パパと一緒に居ると思ってるんだよ~♪」

「お前の所為じゃない。私の所為だ」

「ハルカ?」

「こんなクソメンドクサイ男を見捨てられずに、一緒になっちまった私自身の責任だよ」

「ふふ・・・・愛してるよ♪」

「ハイハイ、私もだよ」

「も~、パパ~! ハルカだけじゃないだろ~! まっ、でもせっかくの機会だし、ファミリーの力を見せてやるぜ~~~ッ!」

 

この事態にこの三人は恐れるどころか、むしろ気合を入れていた。

ハルカも口では面倒くさいと言っていても、その表情は楽しそうで、むしろこんな展開を望んでいたのでは? と思えるような表情に見えた。

その様子に木乃香とエミリィは不謹慎かもしれないが、この家族の絆、そして瀬田とハルカが見ているだけでは計り知れないほど、心の奥底ではとても強く繋がっていることに気づき、少しうらやましいと思った。

 

「どうして・・・・すごく危険やのに・・・・どうしてハルカさんは・・・・」

「ん? 何言っているんだい? その理由はアンタが最も理解しなくちゃダメさ」

「えっ?」

「仕方ないさ。私がコイツを選んで・・・コイツがそれを望んで・・・私もそれを望んでいるんだからさ」

「・・・・ハルカ・・・さん・・・・」

 

ハルカはニカーッと笑いながら木乃香の肩に手を回し、ボソッと周りに聞こえないように小声で木乃香に伝える。

 

 

「お姉さんからのアドバイスだ。生まれ変わったら、アンタも二度とメンドくさい男には惚れるなよ」

 

「ッ・・・あははは・・・もう手遅れやけどな~」

 

 

木乃香も少しテレながら笑い、どこかハルカの姿にヨーコを重ねた。

それが何だかおかしくて、首を傾げて此方を見ているシモンを見て、また笑ってしまった。

 

 

「ったく、時間がないんだろ? まあいいや、それじゃあラカン・・・俺はここで瀬田さんたちに手を貸す。お前は木乃香とカモと一緒に、ネギたちの所へ行ってくれ」

 

「「「「えっ?」」」」

 

 

これには瀬田たちも驚いて、シモンの発言に首を傾げた。

 

「いいのかい、シモン君?」

「おいおい、それなら嬢ちゃんと行くのはお前だろ?」

「シ、・・・シモンさん・・・・」

 

戸惑う木乃香と、疑問を口にするラカンだが、シモン自身にも考えがあった。

 

「そうしてやりたいけど、俺はオスティアの地理に詳しくないし、瀬田さんと同じで魔力を探ったりして相手の場所を特定できない! だから俺はここで瀬田さんたちと一緒に囮になる!」

「そんな・・・・嫌や! ウチは・・・」

「それにラカンが賞金首の瀬田さんたちと政府と戦うわけにもいかないだろ? だからって瀬田さんとハルカさんとサラだけじゃ危ない。だから俺もここに残る!」

 

話しのスジは通っていた。

たしかに瀬田たちだけを残すのは危ない。だからと言ってラカンをこの場には残せないだろう。それこそこの平和を祝う祭典ではあってはならないことだろう。

この世界を救った英雄と犯罪者が手を組んでいるという事を知られるわけにはいかない。

だから警備隊や騎士団の目をネギたち側から全てを請け負うということは、自然にラカンにネギたちの助っ人に行ってもらわねばならないのである。

 

 

「シモンさん・・・・」

 

 

しかし頭では分かっていても、それを中々受け入れられない木乃香に、今度はシモンが微笑みかける。

 

「いいから俺を信じろ! また直ぐに会えるから!」

「・・・せやけど・・・」

「まずは俺を信じてくれ! 誰よりも全力で俺を信じろ!」

「!?」

 

木乃香はその言葉にハッとなった。

先ほどハルカとヨーコを重ねて、自分も将来そうありたいなと思ったのだが、シモンの今の言葉で、ある一人の女の名前を思い出した。「誰よりも全力でシモンを信じる」きっとそれがニアだったのだろうと確信した。

だからこそ、それを言われていつまでも駄々を捏ねている場合ではないことに気づき、木乃香は笑顔で頷いた。

 

「・・・・・・うん!! 行くで、ラカンはん!!」

「かっかっか、大したオトシ文句だぜ!」

「はっはっは、シモン君らしいね~」

「シモンさんを全力で信じる・・・ですか・・・・覚えておきましょう・・・」

「まったく、女を泣かせる男だね~。サラ・・・お前もあんな男でいいのか?」

「な、なんでそこで私に聞くんだよ~」

 

シモンの言葉に全員に笑顔が戻り、場の空気が和み、そしてより一層心に熱が宿った。

 

「では私も一度、隊に戻ります。ですが皆さん・・・くれぐれも無茶をするな・・・と言っても無駄ですから・・・頑張って無茶を乗り越えてください!」

「じゃあ、俺と嬢ちゃんも行くぜ! こっちは心配すんな!」

「気をつけてな、シモンさん!」

「旦那、また後で落ち合おうぜ~!」

 

エミリィ、ラカン、木乃香、カモは互いのやるべきことを確認しあい、振り返らずその場を立ち去った。

後に残ったのは瀬田、ハルカ、サラ、そしてシモン・・・そして・・・

 

「さて・・・・・また四人になったな」

「ぶむ!」

「うおっ!?」

「あれ~? ・・・ブータ君いつの間に・・・・」

「ブータ・・・お前って本当に不思議な奴だな~。でも、流石シモンの相棒だな♪」

 

そう、ブータが居た。

ブータが「自分もここに居る!」と叫びながら、シモンのコートの中から顔を出した。

胸を張って自分の存在をアピールするブータの姿に、シモンたちは苦笑した。

 

「やれやれ、あまり強そうではないが、シモン以外にも私たちにはうれしい味方がいるじゃないか」

 

ハルカの言葉にシモンはうれしそうに頷いて、ブータを見る。

 

 

「ブータ・・・そうだよな、お前が居たよな! 流石は俺の相棒だ!」

「ぶーむ!」

 

ブータが力強く鳴いた。

その鳴き声と同時にこの場に近づいてくる多くの足音や、徐々に集まってくる幾つかの飛行船に皆が目を向ける。

 

「ふっ、・・・・それじゃあ・・・囮らしく・・・」

「仕方ねーなー」

「うん、四人と一匹・・・」

「派手に暴れるとするか!」

 

迎えるのはアリアドネー、メガロメセンブリア、そしてもう一つ、飛行船の中にある国旗のマークを見つける。それは魔法世界でも大国であるヘラス帝国の国旗だった。

エミリィの話しでは、この式典の最中に武装許可をされているのはアリアドネーの警備隊のみのはずだったのだが、どうやら敵も冒険王の実力に甘い考えを捨てているようだ。

しかし誰が相手でも、四人と一匹の目に恐れも不安もまったく宿っていない。実にワクワクとした目で、この場に集まる者たちを待ち構えていた。

 


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