魔法はお前の魂だ(魔法先生ネギま✖天元突破グレンラガン) 作:アニッキーブラッザー
「暦? ・・・・・・・環?」
二人の部下の泣き叫ぶ声が風に乗って聞こえた気がした。
(なんだ? ・・・・気のせいか? だが・・・・何か嫌な予感が・・・・
ただならぬ気配が感じる方角を眺めるフェイトだが、余所見をしている暇は無い。
「余所見をするな、フェイト! 君の相手はここに居る!」
「むっ!?」
「獄炎崩山托天掌!!」
接近したネギのゼロ距離からの掌底がフェイトの腹部に直撃する。そしてこの機を逃すことは無い。ネギの攻撃はまだまだ続いた。
「右腕解放(デクストラーエミッタム) 白雷掌(びゃくらいしょう)!!」
フェイトの開いた腹部を思いっきり掴み電流を流し込む。その一瞬で動きが止まったフェイトにすかさずネギは拳を叩き込む
「雷華崩拳!!」
嵐のような攻撃をフェイトは防ぐことが出来ずに宙を舞う。その姿を見て、ネギは心の中で勝機を見出した。
(勝てる! 今・・・・今ここでアイツを倒す!!)
しかしそれはまだ早かった。
「ヴィシュタル・リシュタル・ヴァンゲイト・・・・」
「詠唱!?」
一瞬チラついた勝機に焦ったネギはフェイトをこの場で仕留めようと、宙へ飛ぶが、吹っ飛ばされたフェイトがその瞬間に目を光らせ、空中で体勢を立て直してネギを迎え撃つ。
「小さき王(バーシリスケ・ガリオーテ) 八つ足の蜥蜴(メタ・コークトー・ポドーン・カイ) 邪眼の主よ(カコイン・オンマトイン) その光(ト・フォース) 我が手に宿し(エメーイ・ケイリ・カティアース) 災いなる(トーイ・カコーイ・デルグマティ) 眼差しで射よ(トクセウサトー)」
「――ッ!?」
「石化の邪眼(カコン・オンマ・ペトローセオース)」
右手の指からレーザー光線のような攻撃がネギに向ってくる。
「く、間に合え!」
ネギは慌てて空中を虚空瞬動で方向転換し、フェイトのレーザーから逃れるが、逃れた空の上には、回避場所を予測して既にフェイトが待ち構えていた。
「何でも一気にやろうとするからこうなるのさ」
「し、しま・・・・・」
「コツコツと地道にいくのもいいんじゃないかな?」
ネギを空中から叩き落すようにフェイトは拳に渾身の力を込めて殴りつける。遠目から見たら流れ星のような勢いでネギは地上の建物を貫通しながら街の中にある大きな川へと落下する。
「それで・・・終わりじゃないよね?」
巨大な水しぶきを上げて落下したネギに追撃すべく、フェイトもそのまま後を追って、川へと頭から迫ってくる。
しかし落下した際にあげた水しぶきの直後、川で再び大きな水がはねて、中から何かが飛び出した。
「当然だ!」
飛び出したのはネギだ
フェイトの一撃にひるむ事無く、戦う意思を捨てていない。
「だろうね。ヴィシュタル・リシュタル・ヴァンゲイト!! 障壁突破!! 石の槍(ト・テイコス・ディエルクサストー ドリュ・ペトラス)!!」
「ラス・テル マ・スキル マギステル! 来れ(ケノテートス・) 虚空の雷(アストラプサトー) 薙ぎ払え(デ・テメトー) 雷の斧(ディオス・テュコス)!!!」
両者の呪文が交錯しあう。
互いに譲ることも無く巨大な魔力がぶつかり合い、衝撃波で起きた煙と水しぶきが両者の姿を隠したが、二人は既に相手が見えない状態でも動いていた。
「ここで君を終わらせる!!」
「無理だね! 結局何も掴んでいない君の拳は・・・・」
「なっ!?」
闇の魔法で強化したネギの拳をフェイトは軽々と片手で掴み取った。
一瞬驚きの余り硬直するネギだが、その隙にフェイトは拳を強く握り、ネギの腹部へと叩き込んだ。
術式兵装状態のネギを軽々殴り飛ばし、ネギは数回水の上を跳ねながらぶっ飛ばされる。
「君の拳は・・・・まだ軽いね・・・・」
これほど激しい戦闘を繰り広げながらも、息を一切乱さず、未だに涼しい顔のフェイト。
彼もまた、ランクが桁違いの者だった。
だが・・・
「ではあなたの拳には、何が握られているのです?」
「!?」
「ちなみに私の握った拳には気合があると私のライバルは言っています! ドリルロケットパンチ!!」
フェイトが声のした方向へ顔を向けると、自分に目掛けてドリルが飛んできた。
フェイトは間一髪で交わして、攻撃が飛んできた方角へ目を向けると、一体のロボット・・・いや、一人の少女が続け様に蹴りの連打でフェイトを攻撃する。
茶々丸だった。
彼女は単身でネギの援護のために、この場に参上したのだ。
「君か・・・・、先ほどといい、見かけによらず好戦的だね」
「当然です。ネギ先生を傷つけるものは許しはしない」
「くだらないな・・・・・・・木偶人形の分際で・・・・。所詮作られた存在である君の想いなど・・・・」
「たとえこの身が人とは違う仮初めの物であっても・・・・気合があるならそれで構いません!!」
フェイトの皮肉に茶々丸は一歩も引かない。たとえ自分の正体が何であれ、今の自分の想いを否定せず、その想いのまま根性を見せる。
そして・・・・
「断罪の剣(インペルフェクトゥス・エンシス)!!」
「むっ!?」
「余所見をするなと言った筈だぞ、フェイト!!」
手を包み込む魔力の光を剣と変え、ネギが再び舞い戻ってきた。
「あれを食らって立ち上がるか・・・・・」
「当たり前だ! いくら君の拳が重くても・・・・僕は以前、もっと重い拳で殴られたことがある!」
「ふっ、そうこなくては」
「ネギ先生! この場でこの男を!」
「はい!」
「おもしろい・・・かかって来たまえ!」
あくまで向ってくるネギと茶々丸の姿に熱を移されたのか、フェイトも少しずつ戦いに心が躍るような感覚に襲われた。自分自身にそんな感情があったのを知らなかったのか、少し戸惑いもしたが、今は目の前のネギと茶々丸だけを見ることにした。
「く、・・・・・ネギ先生・・・茶々丸さん」
「センパイ・・・・余所見ですか~? ウチと一緒に居るのに、他の人見るなんて酷すぎますえ~」
「ぐっ・・・・月詠・・・・」
吹っ飛ばされたネギを横目で見るが、刹那自身も手が離せない状況に居た。
十名近くの人数が揃ったネギたちだったが、フェイトの魔法と、突如乱入したフェイト側の戦士たちにバラけさせられた。
その一人が今刹那の目の前に居る月詠である。
「ふん・・・キサマまでここに居るとは・・・・」
「ふふふふ~、センパイ~、今のウチは乱暴な男に汚されて心に深い傷を負ってるんです~」
「知ったことか! そこをどけ!」
「どきません~。センパイに慰めてもらうまでここにいますえ~」
刹那の気迫の込もった実戦と修練により積み重ねられた見事な剣捌き。剣士のレベルとしては間違いなく上位クラスだろう。しかしその剣を月詠は不気味な笑みと言葉をはき捨てながら、全てを捌いていく。
「くっ、・・・これほどとはな・・・ん? キサマ・・・剣を変えたのか?」
月詠の想像以上の技量に焦りを覚える刹那だが、その時、月詠の振るっている二本の剣が以前戦った時とは違うことに気づいた。
すると月詠は不気味さが更に上乗せされた顔の締まらない顔で体をクネクネさせながら、涙と喘ぎ声を交えながら告げる。
「あん♪ それを気づいてしまいましたか~。ん♪ それは~センパイを私から奪った憎たらしい、あの男の仕業ですえ~」
「キ、キサマ・・・シモンさんに会ったのか!? いや・・・フェイトもそういえばそんなことを・・・・」
「ん・・・あの男は・・・汚らわしく・・・太くて大きく醜いドリルで・・・ウチの・・・ウチの大切なものを無理やり奪って・・・・・」
「・・・・・・へっ?」
普通に戦いで剣を折られた・・・そう言えば全て収まったのだが、月詠はよりにもよって、顔を赤らめて、体を火照らせながら、実に艶っぽい声で面倒くさい言い回しをしてしまった。
当然この妙な言い回しには、最近壊れ気味の刹那は顔を真っ赤にして過剰な反応をしてしまった。
「ふ・・・ふ・・ふざけるなァァァァァァァァァァ!! シシシ・・・シモンさんが無理やり・・・・そんな酷いことをするものかァァ!!」
「本当ですえ~・・・うん・・・あん♪ あ~、思い出しただけでも鳥肌が立ちますえ~。刹那センパイのために大事にしていたウチの大切なものを、・・・あの男は・・・他の女と合体したりと、本当に節操の無い汚いドリルで・・・ウチをメチャクチャに・・・・」
「がががが、合体!? シシシ、シモンさんが・・・・き、キサマ・・・一体何を!? いや・・・一体ナニを!? ままま、まさか、せせ、せ、セック……ッ、私たちですらまだなのに、何故キサマがそんなうらやま・・・・ではなく! ええ~~い、シモンさんが女性の気持ちを無視して無理やりしたりなどするものかァ!?」
「本当ですえ! 毎日磨いていたウチの愛刀を・・・・刹那センパイと再び戦うために磨いていた剣を粉々にしたんです~」
「な、何いィ!? 愛刀をだとォ!? ・・・・・・・・・・って・・・・へっ? ・・・・愛刀? ・・・・・・・・刀・・・・・・か?」
「そうですえ~! 刀は剣士の命。それを何の躊躇いも無くドリルで粉々に砕いたんですえ~。センパイ、あんな男は絶対にアキませんえ~」
「む、無理やり・・・・剣を・・・月詠の大切な・・・・シモンさんのドリルで・・・・・・・ああ~~~」
刹那はようやく答えに辿り着き、ポンと手の平を叩いた。その様子に何か話しが噛み合っていないことに疑問を持った月詠が首を傾げるが、刹那は顔を真っ赤にしながら慌てて首を横に振った。
「センパイ?」
「な、なんでもない! 私は最初から分かっていたさ!」
「・・・・・何がです?」
「い、いや・・・・とにかく! キサマの剣も歪んだ愛も私には必要ない! 私は愛されることよりも愛する道を選んだのだ! 気合と魂・・・・そして愛を纏った私の剣は、キサマと違って決して折れたりなどはしない!」
剣を天に掲げて叫びながら、刹那は猛烈に誤魔化した。しかし刹那の一挙一動全てを愛する月詠にはそれで十分だった。非常に興奮した様子でうっとりしていた。
「カッコいいですな~~、けどその愛の矛先が、あの汚らわしい蛆虫のような男だとしたら、意地でもあの男を消し去りたいですね~」
「させるものか! キサマも曲がりなりにも愛を語るというのなら、それを真っ向から断ってやる! この・・・・剣でな!」
「望むところです~!」
最後は熱く語ってカッコつけ、再び両者の剣が交じり合った。その美しき剣と剣の攻防に街の者たちが息を呑み、月詠をさらに刺激した。
この時、先ほどまでの出来事が自然に忘れられたことを、刹那はチョッピりホッとしていたのだった。