魔法はお前の魂だ(魔法先生ネギま✖天元突破グレンラガン)   作:アニッキーブラッザー

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第174話 バグキャラ三人衆

二人の少女が構えるが構わず歩み寄る三人のバグキャラ。

しかし目の前の三人を知らないためか、暦と環は自分たちがどれほどヤバイ状況なのかも理解せず、ただ単純に睨みつけているだけだった。

 

「お前たち・・・あの白髪の奴の仲間か?」

 

勇気でも無謀でもない、無知ゆえに抵抗しようとする暦たちにシモンが尋ねる。

 

「なっ、あなた!? フェ、フェイト様を侮辱しているのですか!?」

 

暦が顔を真っ赤にしながら怒りの表情で答える。

 

「別にしていないさ・・・・。ただ、そうなら伝言を頼みたかっただけさ」

「伝言・・・・ですか?」

「ああ・・・奴に会ったらこれだけ伝えて欲しい。シモンはここに居る。そしてもう直ぐお前の知る俺になって、会いに来るってな!」

 

ニヤリと笑みを浮かべてドリルを構えるシモン。すると暦がシモンの言葉を聞いてワナワナと震えだした。

 

「そうか!? そ、そうですか・・・・あなたが噂のシモンですね」

 

ゴゴゴと背後からそれなりの威圧感を出しながら、何か暦は怒ったような表情で目の奥を光らせる。

 

「俺のことを知ってるのか?」

「はい。フェイト様が言っていました。シモンという男には手を出すな。その男の相手は自分だからと。・・・・許せません」

「・・・・・・・は?」

「フェイト様のお口から私たち以外の名を・・・フェイト様の頭の中に私たち以外の者が居るなど・・・・フェイト様が私たち以外のものを意識するなど・・・・許せません!」

「・・・・・・・・・・・そ、そんなこと言われても・・・・」

 

本気で暦は言っているようだった。

その言葉にシモンどころか、他の面々も反応に困ってしまった。

 

「ず、随分と熱烈な愛やな~」

「ですが、嫉妬の形が少し間違っていませんか?」

「つうか月詠だっけ? アイツといい、シモンの奴って女にモテてる反面、変な女に恨まれてるんだな~」

「何で変な女ばっかなんだい? といってもあの子らはどちらかと言えば普通よりだがな・・・」

 

暦の熱烈な想いに苦笑してしまう女性陣。そして暦の恨みを直接ぶつけられたシモンはため息を一つついて、暦にドリルの刃先を向ける。

 

「まあいい・・・だったら・・・、俺を倒して、アイツの興味を惹かせてみるんだな!」

「言われなくとも!!」

 

暦と環が服の中から一枚のカードを取り出す。それは紛れも無くパクティーオカード。

 

(おっ、あれが噂のパクティーオとやらかい? 実物は初めて見るね。未知の力は発動前に倒すのが定番だけど・・・・・)

(さっさと片付けるにしても、それじゃあ空気を読めなさすぎだからな)

 

瀬田もラカンも互いに規格外レベル。正直、暦たちが「アデアット」と言い終わる前に倒すこともカードを奪うこともできたが、遠慮した。

瀬田は唯の興味本位。

ラカンはただ楽しくするためにという考えからだった。

 

 

「「アデアット!!」」

 

 

その瞬間、周りの風景、いや・・・

 

 

「アーティファクト! 無限抱擁(エンコンパンデンティア・インフィニータ)」

 

 

世界が変わった。

 

「ん? これは・・・?」

「おやおや・・・スゴイ能力だね~」

「ほう・・・やるじゃねえか、嬢ちゃんたち」

「ななな、なんやこれーー!? 不思議空間!?」

 

環がアーティファクトを発動した瞬間、シモンたちの周囲、四方八方が端の見えない無限の広がりを持つ空間へと変わった。

 

「なんだいこれは? メンドクサイ」

「ハルカさん、のん気にタバコを吸っている場合ですか!? これは結界空間ですわ! これほど広大なものは初めて見ましたが、我々を閉じ込めるつもりですわ!」

「ふ~ん、そりゃあ便利だな。あのバカを一ヶ月ぐらい閉じ込めておけば、まともな性格になるんじゃないか?」

「ちょっ、ハルカさん、なんでそんな落ち着いてるん!?」

「そうだぜ! これじゃあ俺っちたち逃げられねーぜ!?」

「マジかよ!? どーすんだよ、パパァ!?」

 

木乃香、エミリィ、サラ、そしてカモが目の前に広がる敵の作り出した結界空間に慌てふためくが、ハルカは感心しながらも微塵も動揺していない。その瞳には辺りをキョロキョロ見渡している三人の男が映っていた。

 

「さて・・・どれぐらい粘るのかね~」

 

ハルカがタバコの煙とともに、小さく呟いた。

 

「ふ~む、さて・・・・どうするんだい、シモン君?」

「そうだな・・・それじゃあ、ちょっと下がってくれないか? 俺がちょっとやってみるよ」

 

シモンが一歩前へと歩み出て、意識を集中させた。すると穏やかな螺旋力の光がシモンを包み込んだ。

それは以前までのような全力全快の荒々しさは無い。最低限の力を自分自身の意思で搾り出していた。

 

「ほう、それは俺とやったときの力か? コントロール出来るのか?」

「ああ、・・・・今日は何でも出来る気がするんだ」

 

湧き上がる衝動、力、想いは止まることは無い。そして何よりシモンの本当に凄いところは、その力に飲み込まれないことだった。

もう、ラカンとの戦いのように自分を見失うことは無い。巨大すぎる力に飲み込まれて暴走することも無い。

無駄な力を一切使わず、螺旋力を無闇に垂れ流すような真似もしない。

見事に洗練されたオーラの流れだった。

そして以前よりも鋭さをましたブーメランと、ブースターを手元に出し、二つを重ね合わせて無限に広がる空間に向けて投げつけた。

 

 

「いくぜぇッ!! ダブルブーメラン・スパイラル!!」

 

 

ブースターと重ね合わせることにより、激しく火を吹きながら加速していくブーメランは、この世界を自由に駆け巡る。

 

 

「おお! 中々の功夫(クンフー)」

 

「ほう、以前よか鋭でえな」

 

 

正に威力は人間砲台。

たかがブーメランが、まるで暴れ馬の如く、シモンの意思で閉鎖空間内を駆け巡り、結界内の柱や建物がいとも簡単に切り裂かれていく。

 

「埃が付くな・・・・」

「うおおおお! 流石シモンの旦那! だが容赦ねえ!」

「シ、シモンさーん! 相手は女性なのですよ!?」

 

しかしシモンは聞く耳を持たない。むしろどれだけこの世界を攻撃しても一向に手ごたえも敵の気配も感じなかった。

 

 

「ふん、何て野蛮な。しかし無意味です」

 

「「「!?」」」

 

 

その時、爆音の最中に近くから暦の余裕たっぷりの声が聞こえた。木乃香たちがあわてて振り向くが、そこにいる暦は実体ではなかった。

 

 

「これは・・・幻像ですわ」

「ちっ、ホンモノはどこいんだよー!?」

「甘く見ましたね。これが環のアーティファクト、無限抱擁(エンコンパンデンティア・インフィニータ)です。この無限の広がりを持つ閉鎖空間に出口はありませんよ。理論的に脱出は不可能です」

「な、なんですって!?」

「いかに強力な力を持とうと、これにはお手上げ・・・・って、聞いているんですか!?」

 

暦の言葉にエミリィたちが驚くものの、肝心の三名の男たちは暦の言葉を聴くどころか、暦の幻像に見向きもしていなかった。

 

「どうだい、シモン君?」

「ダメだ、手ごたえがないや。どうすればいいんだ、ラカン?」

「う~ん、俺もこーゆうのは苦手だが、これだけの結界空間を作り出すなら、理論的に言ってこの世界の中に術者はいる。よーは、この世界のどこかに居る本物の嬢ちゃんたちを倒せばいいってことだ。このまま続けていけば運よければ当たるだろ~な」

「そーか、それじゃあ、範囲と威力を広げるか・・・・」

 

暦の幻像を一切相手にせず、三人はシモンのブーメランの攻撃を眺めていた。そしてシモンがゴーグルを装着し、更に螺旋力を高めていく。

 

「いくぜッ!」

 

すると、ブーメランが空中で無数に分裂し、その規模と威力を増大させ、創り出されて閉鎖空間を容赦なく駆け巡った。

 

 

「これが燃やしきれない、天の脅威! メテオ・ブーメランだァァァッ!!」

 

 

無数に増えたダブルブーメランが世界を壊していく。その威力は正に隕石の如く。

 

「ななななな、なんだこりゃああーーーー!? シ、シモンの旦那ァ!?」

「まま、まるでアルマゲドンやァァ!?」

「くっ、いくら強力な力を使おうと・・・・ってやりすぎですゥ!?」

 

まるで世界の終わりを告げるかのように、敵味方問わずに悲鳴が聞こえてきた。

そしてそんな惑星を破壊してしまうかと思えるほどの力を前にして、冷静なのはシモンを除いて僅か三人だった。

目が点になって驚くよりむしろ呆れているハルカ。

そして感心したように眺めながらも、冷静に周囲の状況を見渡している瀬田とラカン。

 

「ふん、幻像が動揺してるってことは、どうやら敵の本体もこの攻撃に巻き込まれそうになったようだな。やはり幻像を俺たちの前に出している以上、嬢ちゃんたちもそれほど遠くで俺たちを監視しているわけではなさそうだな」

「うむ、シモン君の攻撃は目算で約マッハ3・・・ってところかな? シモン君の攻撃が発動してから幻像が悲鳴を上げるまでのロスを考えて・・・約数十キロ以内・・・ってところかな?」

「魔力の感知は苦手だが、これだけ広い空間でも少数の人間しかこの中には居ねえ。大体の距離さえわかれば、・・・・・ふん、アッチの方角だな。百万キロ以上とかだと、流石に無敵の俺様も手こずったが、案外近くに居たな」

「やはり、監視する側も多少に距離が近くないと無理だからね~。お~い、シモンく~ん! もう止めて良いよ~」

「ふう~~、これって結構疲れるな・・・・・危ないし控えておこう」

 

ラカンと瀬田がこの無限空間の中で、一つの方角を見た。

これだけの騒ぎの中、的確に敵の位置を把握したのである。

やがて瀬田の声を聞いてシモンが、空中で暴れている全てのブーメランを一瞬で消し、先ほどまでとは打って変わった静けさが空間内に広がった。

だが、それも一瞬でしかない。

次の瞬間ラカンがシモンに代わり、超巨大な剣を出していた。

 

「ほらよ、全員刀身に乗りな」

「はっ? ちょっ、おっさん! 何をする気なんだよ?」

「いーから、ラカンの言うとおり乗れって、木乃香たちもしっかり捕まってろよ」

「えっ? 一体何するん?」

 

ラカンが超巨大な剣の腹の上に全員を乗せようとする。しかしラカンが何を考えているのかわからずに、木乃香たちが慌てふためくが、シモンと瀬田は気にせず、サラたちをしっかりと抱きとめながら、何も疑わずにラカンの言うとおり剣の腹に乗る。

 

「十秒・・・ってところだな」

「それじゃあよろしく♪」

「な、一体どうするつもりなんですの!?」

「ほら、エミリィも細かいこと気にしてないで捕まってろよ」

「細かいですか!? これって細かいことでしょうか!?」

「ほらほら、後は男共に任せないと、舌かむぞ?」

「ハルカさんは、何が起こるか分かっとるん?」

「まっ、この状況なら一つしかないだろ~な。さながら気分は桃白○(タオパ○パイ)だな・・・」

 

何が起こるか木乃香たちが理解できぬ中、容赦なくラカンは皆の乗った剣を思いっきり振りかぶって・・・・・投げた。

 

 

「「「「はあああああああ!?」」」」

 

 

悲鳴を上げるのはカモ、木乃香、エミリィ、サラ。

 

 

「「「おおおおおお~~~」」」

 

 

感心した声を出すのがシモン、瀬田、ハルカだった。

そして投げた剣にラカンがそのまま飛び乗り、全ては成功。

 

 

「がっはっはっは! これぞ秘剣・・・ラカンツアーによる、スペース斬艦剣!!(今命名)」

 

 

先ほど魔法理論がどうとか言っていた人物とは思えないほど、物理法則を無視した技だった。

そしてそのスピードは確実に数キロ先に居る二人の少女に近づいていた。

猛烈なスピードと威力を兼ね備えたラカンの超弩級の技は、うねりを上げて、先ほどまで余裕だった少女たちを震え上がらせた。

 

「・・・・来た・・・・なんて化け物・・・」

「き・・・・・・き・・・・・・みゃあああああああああああああ!?」

 

皆を乗せたラカンの剣が一つの柱に命中した。そして同時に甲高い少女の悲鳴が聞こえてきた。

暦が飛んできた超巨大物体に腰を抜かしていると、巻き上がった煙の中からシモンたちが出てきた。

 

「よう。また会えたな」

「くっ、・・・・なんて滅茶苦茶な・・・・」

 

ゾクリと肩を震わせる暦。だが、その一瞬で僅かに冷静さを保っている環が暦に向かって叫ぶ。

 

「とりあえず転移します!」

「うっ、わ、分かった! アーティ―――」

 

環が転移魔法を、そして暦がアーティファクトを発動しようとした瞬間、一人の男が動いた。

 

 

「よっと!」

 

「―――ファクト、時の回廊(ホーラリア・ポルティクス)!! ・・・・って・・・アレ?」

 

 

アーティファクトを発動させようとした暦。しかし何も起こらなかった。

わけも分からずに戸惑っていると、一人の男が一枚のカードをヒラヒラさせながら笑っていた。

 

 

「ゴメンね~、じっくり見たいけど、そろそろ終わらせないといけないから」

 

「なっ、カードを!?」

 

 

暦は油断などしていなかった。

しかし考えられない事態が起こった。

それは自分がアーティファクトを発動させる前に、目の前の男がパクティーオカードを高速で奪い取ったのである。

 

「こ、暦!? ま、また消えた!?」

「こら、ダメだよ~、目を逸らしたら」

「!?」

「いくら僕が凡人の雑草とはいえ、足元見ないと転んじゃうよ?」

 

環も反応できなかった。

消えたと思った瀬田は一瞬で環の背後に回り、その両肩をしっかりと掴んでいた。

これでは転移は出来ない。それどころか、涼しい顔をしてとんでもないことをしたノーマークの男に背筋を凍らせてしまった。

 

 

「どうした・・・これで終わりなのか?」

 

 

呆然と佇む暦と環にシモンが告げる。その言葉に二人とも悔しそうに顔を歪める。

 


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