魔法はお前の魂だ(魔法先生ネギま✖天元突破グレンラガン) 作:アニッキーブラッザー
「何ですって!? 街中で大喧嘩!?」
それはオスティアへ向う帰りの空の上でのことだった。
突如エミリィにベアトリクスからの緊急の連絡が入り、エミリィは表情を変えた。その様子に瀬田や木乃香たちも少し心配そうにエミリィの様子を伺いながら、ベアトリクスの言葉を待つ。
『兄貴さんや美空さんのご友人と名乗っていた少年と、その他の方々、十名近くがオスティアの街中で魔法戦闘を繰り広げています。我々警備隊は即刻対処に向います』
するとベアトリクスからの言葉に木乃香が身を乗り出した。なぜならその戦いの中心に居ると言われたのは、間違いなく自分の仲間だからである。
自分の居ない間に何があったのだろうと木乃香が混乱していると、シモンが木乃香の肩に手を置いて、同時に通信の繋がっているベアトリクスに声を掛ける。
「ベアトリクス。シモンだけど・・・その・・・ネギたちが・・・」
『兄貴さん!? 一体何があったのです? お嬢様は何も心配要らないと仰っていますが、どうして兄貴さんが賞金首である冒険王たちと繋がりが・・・』
「その話は後だ。今は、そっちに何があったのか・・・いや・・・ネギたちは一体誰と喧嘩しているんだ?」
冷静な態度で通信先のベアトリクスに訪ねるシモン。すると僅かな間を置いて、ベアトリクスが静かに口を開く。
『その前にシモンさん・・・あなたは・・・・あなたの友人と名乗っていた少年や・・・その、・・・そこに居る木乃香さんたちの正体に・・・気づいていますか?』
木乃香とエミリィの肩が若干震えた。どうやらベアトリクスもネギたちの事情に気づいたようである。
「ゲートポートってところを襲ったテロリストの容疑者・・・・その事か?」
『ご存知だったのですか!?』
「ああ、俺も知ったばかりだけどな」
『実はそのテロリストの目撃情報があり、他の警備員が捜索した結果、オスティアの街の中心にあるカフェテラスで発見され・・・その・・・私が確認したところ・・・・』
「ネギたちがそこに居た・・・・ってことか?」
『はい・・・そして見知らぬ相手と何かを話していたようですが・・・急に話が中断され、そのまま戦闘に・・・・会話の内容は分かりませんが・・・・あっ!? 四方にバラけました! とにかく我々は確保に乗り出します!』
オスティアの祭りの中での喧嘩や野試合は日常茶飯事で、ある程度は許容されているところもある。しかしそれも程度による。ましてや無許可で周りに影響を与えるほどの規模なら尚更である。ベアトリクスの口調からはどこか仕方なさが感じられた。
更にネギたちは高額な賞金首である。
事情はどうあれ、逮捕は仕方ない。
「それで・・・肝心の相手は?」
『はい?』
そこでシモンは一つだけ気になった。
それはネギたちがそうまでして戦おうとする相手のことである。
「喧嘩は相手が居てこそ出来るものだろ? あの、お利口なボーズが誰と喧嘩しているんだ?」
すると次のベアトリクスの言葉にシモン、そして木乃香は目の色を変えた。
『それが・・・こちらも少年なのですが・・・不気味な目をした白髪の少年です・・・・』
それだけで相手の正体が分かった。
「あの人や!?」
「木乃香?」
「ウチらをゲートポートで襲って、ウチらの所為にした人や・・・・」
「な、なんですって!? では木乃香さんたちは無実で、・・・・その少年が真犯人!?」
「そうか・・・アスナちゃんや木乃香ちゃんたちが賞金首というのはおかしいと思っていたんだが、そういうことがあったのかい?」
「やれやれ、メンドーな事になってるな・・・・」
木乃香の言葉でようやくネギたちの事情や真相がエミリィや瀬田たちにも分かった。そして一方でシモンはそんな事よりも、むしろ別のことで頭が一杯で口元に笑みが浮かんでいた。
「・・・白髪の少年か・・・」
「シモンさん? どうされたのです?」
「ううん・・・・ただ・・・こいつはまた・・・妙な縁を感じるなって。・・・まだ思い出せていないけどな」
「?」
「・・・そっちから顔を出したか・・・・上等だ・・・。今日の俺は少し調子が良い・・・・」
ブツブツと呟きながらシモンが手のひらを上に向けた。
その手のひらで小さな光が輝き回転し始めた。
木乃香が目を凝らすと、その回転している光は見覚えのある形だった。瀬田やハルカ、そしてエミリィも、突然シモンが手のひらの上で作り出したソレに目を見開いた。
「シモンさん・・・それッ!? えっ? どうゆうことなん!?」
シモンは小さく笑い、頷いた。
木乃香の見間違いではない、それは小さなドリルだった。
「もう・・・止まらない・・・・ドリルが何回転もすれば、その度にどこまでも行く」
そしてシモンは手のひらを握り締めると光は消えてドリルも無くなった。
「今の俺はどこまでも行ける!」
木乃香が顔を上げてまたシモンを見ると、シモンは何かゾクゾクした目で空の彼方にあるオスティアの方角を見た。
「後悔するぜ、・・・つまんなくてもいいから、俺をあの時に倒しておけばよかったってな!」
それは新たなる兆候・・・いや・・・合図でもあった。
一度回りだしたドリルが止まらないように、シモンはもう止まれなくなっていた。
それは誓いと本能を思い出したからだ。
そして突き進んだ自分達が掴んだ明日を見せてやると過去の戦士たちに宣言したからである。
ドリルを握りつぶして小さく笑うシモンは、敵と友がぶつかり合うオスティアの方角を見つめながら、到着の瞬間を待った。
そしてシモンが見据える方角にある巨大な空島は・・・・
「それが・・・君の選んだ道とやらかい?」
その身に闇を孕んだ奈落の獄炎を覆ったネギが、フェイトに迫る。しかしその拳打をフェイトは涼しい顔で払いのけていく。
「自らの肉体を魂に喰らせて常人に倍する力を手に入れる闇の魔法・・・君が千の刃の元で学んだ力・・・つまるところは・・・・」
リスクを払って得られる力。『いつか』ではなく、『今すぐ』に力を求めたネギがたどり着いたネギの道。
それがラカンの元でネギが習得した闇の魔法(マギア・エレベア)
しかしその力を前にして尚、フェイトの表情は変わらない。
「所詮はただのドーピング・・・そんなもので僕に並べるとでも・・・・・」
並べると思っているのか? そう口を開こうとしたフェイトだった。
しかしその口は突如襲われた腹部の痛みによってさえぎられた。
「ッ!?」
衝撃を感じた瞬間、フェイトは気づいたら後方まで激しく吹き飛ばされていた。
慌てて体勢を立て直すも威力に押されて思わず地面に肩膝を付かされていた。
(な・・・なに!? 僕が・・・・入れられた?)
思わず腹部を押さえながら前を見るフェイト。
(それにこの威力・・・・・)
その視線の先には肘打ちをした状態で固まり、睨み付けるネギがいた。
「男が細かいことをネチネチ言うなフェイト。君には気合が足りないんじゃないか?」
ほんの少し前まではフェイトにとっては、取るに足らない相手でしかなかったネギの一言。その言葉はフェイトの心の中の何かを刺激した。
「なるほど・・・そう来たか・・・・そう言われてしまえば言い返せないな・・・・だが・・・・」
何の理由があったかはわからない。本人でもきっと分からないだろう。
(やれやれ・・・どうしてこうなったのか・・・・力を手にしただけでなく・・・・僕の揺さぶりに動じず真っ直ぐ僕を見据えている・・・・・ネギ君・・・・君は・・・)
しかしこの時、刺激された心から湧き上がるものを抑えきれず、小さくフェイトは笑った。
「おもしろい・・・たしかにシモン同様に君も敵と認めよう・・・・だが・・・」
フェイトの微かな笑み。
しかしその笑みには気づかず、ネギは再びフェイトに向かっていく。対するフェイトもすぐに立ち上がり応戦する。
「調子に乗るな! ネギ君!」
「あまり図に乗るな! フェイト!」
人目も場所も憚らず、二人の男はぶつかり合っていた。