魔法はお前の魂だ(魔法先生ネギま✖天元突破グレンラガン)   作:アニッキーブラッザー

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第169話 過去の記憶と伝説

「訴えている・・・こいつは・・・絶望を・・・無念を・・・明日を見れなかった悔しさを・・・伝わってくる・・・・・ぐうっ・・・ぐう・・」

「シモンさん、無理したらアカン・・・少し休もな?」

 

シモンが再び顔を歪めて頭を抑えだした。慌てて木乃香が手に魔力を込めて、癒しの魔法を使ってシモンを落ち着かせようとする。その時のシモンの表情は、何か悲痛な面持ちだった。

 

「それにしても多元宇宙とはね・・・・」

 

そして瀬田は今シモンが呟いた言葉を顎に手を当てて考えている。

 

「多元宇宙とは何ですの?」

「わかんねーよ、パパは?」

 

サラたちの問いかけに瀬田は少し腕を組みながら自分の知っている知識を搾り出していく、

 

 

「う~ん。そうだな~、平行世界・・・異界・・・それらとは別の意味を持つのが多元宇宙だ。多元宇宙とは、宇宙そのものが一つではなく複数存在するという理論だ・・・。この世界には・・・というよりこの場合はこの宇宙かな? 我々のいる宇宙とは別の宇宙がある・・・ということだね。多元宇宙の母星・・・それは・・・違う宇宙にあるこの星の人間・・・・ということかな?」

 

「「「???」」」

 

「ん~、まあ・・・僕も専門じゃないから・・・・」

 

 

瀬田の説明に訳が分からず、一同首を傾げて黙ってしまった。しかしそんな中、シモンが頭の痛みに苦しみながらも、何かを訴えているようだった。

いや、共鳴するコアドリルと「顔神」との間で、何かがシモンに流れ込んでいるようにも見えた。

 

「分かる・・・こいつは・・・夢中で逃げたんだ・・・」

「シモンさん、アカンて!!」

「アイツから・・・奴等から・・・」

「シモンさ「言わせてやりな」・・・・ッ、ハルカさん・・・せやけど」

 

シモンが苦痛に構わず何かをブツブツ言っているが言うたびに表情が険しくなり、慌てて木乃香が止めようとするが、ハルカがそれを遮った。

 

「男の我侭を大目に見るのも女の役目だよ」

「ッ!? ・・・・う・・・はい・・・・」

 

ハルカの言葉に木乃香も小さく頷いて、シモンの苦痛を少しでも和らげられるようにシモンの両手に自分の両手を重ねた。

そしてシモンはコアドリルの光と、触れた「顔神」から何かを感じ取っていた。

 

「こいつも・・・宇宙の真実を・・・・アンチスパイラルの絶望から・・・・くっ、やめろ、ロージェノム・・・・・・仲間を・・・・ダメだ星が・・・・銀河が死んでいく・・・」

 

シモンの変貌した様子と訳の分からない言葉に全員がどう反応していいか分からず固まっていた。

 

「おいおいおいおい・・・・なんか物騒な話じゃねえか?」

「ち・・・チンプンカンプンですわ・・・」

「あれ・・・・?」

 

しかし木乃香は何かに反応した。

 

「木乃香ちゃん?」

「えっ・・・・ロージェノムて・・・それにアンチスパイラル? あれ・・・これ・・・いつやろ・・・どっかで・・・・」

 

木乃香の疑問も耳に入らず、シモンは口を休めない。

 

「必死で・・・・そうか・・・螺旋界認識転移・・・いや、無理だ・・・いやでも・・・・この時は・・・カテドラル・ラゼンガンの力が空間すら捻じ曲げたら・・・次元の壁や・・・時空転移バイパスが繋がって・・・それで・・・」

「ちょ、し、シモンが気合以外の言語で話してるぞ!?」

「しっ! ちょっと・・・黙って聞いてみよう・・・」

 

シモンらしからぬ単語にサラたちは目を丸くしてしまった。

しかし一人だけ納得したシモンはやがて俯いた。

するとシモンの表情が苦痛から悲痛へと変わった。今にも涙がこぼれそうな表情である。

 

 

「ずっと地中に? ただ逃げてそのまま地下へ?・・・螺旋の力の真実に震えながら・・・お前は・・・そのまま死んでいったのか? ・・・誰の声も届かない・・・光も見えない世界で・・・一人で泣いて・・・これがお前たちの明日だったのか?・・・・うっ・・・」

 

 

シモンの頭の中にはアリアドネー、竜種との戦い、そしてラカンとの戦いの最中に見たコアドリルの過去の記憶が蘇っていた。

 

 

―――そう、これがスパイラルネメシスだ。

 

「うるせえ・・・・」

 

 

絶対的絶望の前に破れ、絶望した戦士が圧倒的な力で仲間の戦士たちを滅ぼしていく映像。

その攻撃から逃れようと必死に逃げていく戦士たち。

しかし男の力は銀河中に轟き、その絶望を織り込んだ螺旋の波動に戦士たちが飲み込まれていくのである。

 

 

――それこそが破滅への道。螺旋族の罪・・・・これが真実だ・・・

 

 

シモンの目じりに浮かぶ涙。

それがシモンの涙なのか、それとも目の前の白骨体の涙かは分からない。

しかし決してその涙は零さない。

何故ならシモンは分かっているからだ。

 

 

「うるせえ・・・・何べんも言わせてんじゃねえ!! 滅びないって・・・・ニアが言ってんだろうがッ!! だってそのために・・・そのために!」

 

―――そのためにみんな頑張ったんじゃない

 

 

それで十分だった。

やがて一度息を落ち着かせて俯いていたシモンは次の瞬間、涙を振り払い、勢いよく顔を上げて予想外の言葉を叫んだ。

 

 

「アアアーーーーーーーーーーッもう!! 細かいことはよく分からないや!! ようはこいつは昔、何かから逃げて、気づいたらこの星にいた!! それだけだ!!」

 

「「「「えええええええーーーーーーーッ!!!???」」」」

 

 

あまりにも訳の分からぬ答えに逆に全員が驚いてしまった。瀬田ですら引きつっていた。

 

「えっ・・・えっと・・・ようは分からないってことかい?」

「めっちゃ、重要そうな単語がいっぱい出てきとったけど・・・・」

「そ、・・・それで片付ける気ですか?」

 

するとシモンの表情がいつもと同じに戻っていた。

 

「いや・・・う~~ん、俺はこの世界の人間じゃないらしいけど・・・・俺とこいつは同じ世界の人間・・・ってことかな?」

「・・・・・・・えっ? いや・・・意味が分からないんだが・・・それにこの世界の人間じゃないって・・・?」

「まあ、私も途中から訳が分からなかったが・・・・」

「でも、そうやったら・・・・これはシモンさんの世界のガンメンゆうものなん? もしそうやとしたら何でここにあるん?」

 

皆聞きたいことが山ほどあった。そのために、今のシモンの様子を黙って見守っていたのである。

しかし待っていたにも関わらず、シモンから帰ってきた答えはこれだった・・・

 

 

「・・・・・さあ?・・・・気合があれば出来るんじゃないかな?」

 

「「「「「・・・・・・・・・・・・」」」」」

 

「だが・・・こいつはそれを逃げるために使っちまったようだが・・・・」

 

 

あまりにも要領を得ない答えに、逆に全員はツッコム気にもなれなかった。しかし何故か木乃香だけはおかしそうに笑った。

 

「う~ん、でも、そうゆうんがシモンさんらしくてええかもな~」

「まっ、私もどーでも良くなったしよ~」

「私は最初から最後まで全部分かりませんでしたわ・・・・」

 

答えは分からないが、シモンが言うならそれでいいかもしれないと何故か全員が納得してしまった。

しかし木乃香は一つだけ気になり、少し言いづらそうにしながら尋ねる。

 

「でもな、シモンさん・・・ウチ・・・アンチスパイラル・・・・それにロージェノムゆう言葉も聞いたことあるえ」

「なんだって!? それ、・・・どういう意味なんだ?」

 

シモンが驚きながら木乃香を見ると、木乃香は頭の中で学園祭の出来事を思い出す。

 

「うん、・・・ロージェノムゆうんはシモンさんの世界で人類を地下に押し込めた螺旋王て呼ばれてた人のことや」

「螺旋王・・・そうか・・・昨日話してくれた・・・そうか・・・そうなのか・・・アイツが・・・。・・・それじゃあ・・・アンチスパイラルは?」

 

するとそこで木乃香は少し困った表情を浮かべた。

 

「それは言葉だけ・・・なんやけど・・・・そのシモンさんは覚えとらんかもしれんけど・・・・ウチのクラスメートにいた、超さんて人がボソっと言ってたんよ・・・それで・・・・」

 

木乃香は思い出す。たしかに超鈴音はアンチスパイラルという言葉を使っていた。

 

 

―――仮にも自分を好きだと言った子が二度も目の前から消えるのはサスガのシモンさんでも・・・嫌カ?

 

 

学園祭で追い詰められた自分を庇ったシモンに向って超は不機嫌そうに言った。

 

 

―――そう、一年前・・・アンチスパイラルのメッセンジャーとなったニアさんが・・・・

 

 

そこから先の事は超鈴音が慌てて口を閉ざしたために、聞くことは出来なかった。

そう、それは・・・・・ニアの死が関連することだった。

 

「でも・・・ウチもそれ以上の事は・・・シモンさんはいつか話してくれるゆうたけど・・・・」

「そうか・・・・・やっぱり重要なのは・・・・俺の記憶か・・・・・」

「シモンさん、まだ思い出せん?」

「いや・・・前よりはどんどん・・・・少しずつ頭の中で整理しているけど・・・・でも、もう直ぐだって自分にも分かるよ・・・・」

 

シモンも溜息をついて自分自身の記憶喪失という現状に呆れてしまった。昨日記憶を知るための手は打ったのだが、それを分かるのはもう少し先という焦れったい感覚に襲われた。

 

「まあでも・・・仕方ないか・・・それまでは黙って待つしかないか・・・・」

「うん・・・しかし・・・」

「瀬田さん?」

「あっ・・・いや・・・なんでもないよ」

 

少し瀬田が黙って、何かを真剣に考えているようだった。その様子はいつものような能天気さが見当たらず、サラですら何かを感じ取った。

 

(メチャクチャだが・・・シモン君ならあるいわ・・・・今のメチャクチャな言葉が・・・・全て真実なら・・・)

 

瀬田は何度も頭の中で、今の情報を整理していく。

 

(多元宇宙理論・・・いきなり信じるわけではないが・・・偶然だろうか?・・・・・火星戦士の母星・・・・もしシモン君の今の話を信じて・・・・僕の推測が当たっているならこの世界は・・・・この星は・・・・)

 

それ以上は考えるのはやめて、瀬田はシモンと「顔神」をチラッと見る。

 

(来て良かったかもしれない・・・・形は違うが、こんな形でこの世界の正体に近づけるとは・・・・)

 

その考えは、まだ瀬田は自分の中だけで押し留めることにした。

 


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