魔法はお前の魂だ(魔法先生ネギま✖天元突破グレンラガン)   作:アニッキーブラッザー

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第167話 ティータイムへの誘い

瀬田たちが空へと消えたオスティアでは、朝早くにネギが彼等の飛んだ方角を見つめていた。

 

「はあ~~、木乃香さん大丈夫かな~? いくらシモンさんが居るとはいえ、シモンさんも記憶喪失らしいし・・・・」

 

だが、そんな考えをネギは一瞬で捨てた。それは何も心配要らないからだ。記憶があっても無くても、シモンが一体誰なのかを良く知っているからだ。

 

「すごいな~、シモンさんは。そこに居るだけでいろんな事も何とかなる気がしてくる。・・・木乃香さんだけじゃない、刹那さんも、アスナさんも、楓さんも、口では認めないけど、千雨さんだってきっとそうだ。それに・・・」

「ネギ先生」

「えっ? あっ・・・のどかさん」

「おはようございます、ネギ先生。こんなに朝早くにどうしたんですか?」

 

ネギが振り向いた先に居たのは、昨晩ようやく自分たちと合流した、のどかだった。

 

「のどかさんも、大丈夫なんですか? 長旅だったんでしょう?」

「いえ! グレイグさんやアイシャさんたちに助けてもらい、そして途中で特に賞金稼ぎたちに襲われることも無かったので、全然へっちゃらです!」

 

ニッコリと微笑むのどか。その表情は以前と変わらないのだが、どこか少し逞しさを感じた。

それは恐らく彼女もまた、アスナ達同様に突如襲い掛かった不運にめげる事無く、オスティアにたどり着くまでに幾多の試練を乗り越えて、一段と逞しくなったのだろうと想像出来た。

そして逞しくなったのは彼女だけではない。

 

「いや~、何だかんだで私のほうも才能を開花させちゃったからね~」

「ウム、自分自身が日に日に強くなることを感じ、私も修行が楽しいアル」

「何はともあれ、皆無事で何よりだよね~」

「本当です! 皆さん、ホントに凄いです~」

 

朝早くに起きたネギの下には僅か一ヶ月、しかしとても懐かしく思える顔が揃っていた。

のどかも含めて、アスナ、刹那、楓、千雨、茶々丸、古菲、朝倉、ハルナ、さよ、小太郎。この世界に最初に来たネギま部メンバーの大半が揃っていた。ここに居ないのは木乃香、そしてまだ見つかっていない夕映とアーニャのみである。

まだ全員集合とは言いがたいが、よくぞこのオスティアまで全員無事だったとネギは心の中で深く安堵していた。

 

「私たちだけじゃないわよ?」

 

そんなネギの心中を理解し、更なる朗報をアスナは告げる。

 

「さっき裕奈とまき絵と会えたわ! 今頃、亜子たちと一緒にいるんじゃない?」

「えっ!? まき絵さんたちも!?」

「そうよ~、自分たちの所為でアンタに迷惑掛けたんじゃないかって気にしてたわよ~? 後でちゃんと会ってあげなさいよ?」

 

ネギは本当にうれしそうに目じりに涙を浮かべた。

一ヶ月前は、皆を信じると心の中で強がっていても、やはり心配であることには変わりなかった。だからこそ、アスナの言葉はネギの懸念を一気に拭い取ったとも言えた。

肝心な夕映とアーニャはまだだが、裕奈たちと比べれば、この世界に来る前から訓練を積んでいた二人なだけに、ネギも少し安心しているところがあった。

だから今はただ、この再会を喜ぶことと、自分たちの成すべき事を全力ですると決めた。

必ず皆と一緒に帰る。その気持ちで一杯だった。

 

「ところでネギ先生、シモンさんは木乃香さんとまだ帰ってこないのですか?」

 

茶々丸が話の内容をシモンに変えた。

 

「そうそう! 私たちもシモンさんが来てくれて、そりゃ~うれしかったけどさ~、あのテレビ中継の後半では茶々丸さんが怖くってさ~」

「そうですよ~、茶々丸さんが急に無表情で手にドリルを装着させて、回してはキレイに拭いて、回してはキレイに拭いて、まるで包丁を研いでいる殺人鬼ですよ~」

「うん、ありゃ~、やばかったね~。しっかしシモンさんラブ組じゃない茶々丸が何で怒るんだろ~ね~?」

 

シモンのテレビ中継を見た時の茶々丸の様子を思い出して、ハルナ、さよ、朝倉は少し肩を振るわせた。すると茶々丸は目をキラリと光らせた、

 

 

「私がナンバーワンドリラーと認めるシモンさんが、マスターをほったらかしにして間違った方向へ穴を掘るからです」

 

「「「「「「(ド・・・ドリラー???)」」」」」」

 

 

茶々丸のさも「当然です」といった態度に、全員が少し茶々丸の変化にツッコミを入れたくなった。

 

「はい、シモンさんはちゃんと居ます。でも・・・皆さんにはお伝えしなければならないこともあります・・・・その・・・今シモンさんは・・・少し厄介な問題がありまして・・・」

 

どんな形にせよ、皆シモンの存在を知り、今まで以上に気持ちが楽になっている部分が見られる。しかしそこでネギがまず初めにシモンに関して説明しておかねばならない部分があり、ネギが少し間を置いてシモンの現状を説明しようとした・・・その時だった。

 

 

「そうか・・・・シモンと会ったのかい?」

 

「「「「「「「!?」」」」」」」

 

「まだ・・・僕の知っている彼にはなっていないようだが・・・・まあ、今は別にいいだろう」

 

 

この声を、忘れるはずも無い。

 

「き、君は・・・」

「キサマ・・・」

「アンタ・・・・」

「テメエ!?」

 

ネギは一瞬で汗を噴出し、急に痛み出した古傷を押さえた。

アスナや刹那を初め、小太郎や楓たちも、突如現れたその男に動揺しながらも力いっぱい睨みつけて身構える。

 

 

「フェイト・・・アーウェルンクス・・・なぜここに!?」

 

 

無表情で自分たちに近づいてくる少年の名をネギが告げると、フェイトは動揺するネギやアスナ達を見て鼻で笑った。

 

 

「それだけ大人数なのに僕一人が怖いのかい? それともゲートポートの時みたいに大好きなお兄さんが居ないと何も出来ないのかい?」

 

 

フェイトの言葉にアスナはハッとなった。

 

「ちょっと!? 何でアンタがシモンさんが居るのを知ってんのよ!?」

「簡単なことだ、僕は数週間前に彼と一度会っている。記憶に関しては驚いたけどね」

 

その言葉に事情を知らない、のどかたちが尋ねる。

 

「ネギ先生・・・・シモンさんの・・・・記憶って?」

「それに関しては・・・あとで説明します・・・。今は・・・とにかく」

 

ネギは拳をギュッと握り締め、のどか、そしてハルナたち非戦闘員たちの前へ出て、いつでも飛び出せるように拳を握り締める。

しかし・・・

 

「やめておいた方がいい」

「!?」

 

一瞬で距離をつめられ、目の前で制するフェイト。

まったく反応を出来なかったことに刹那、アスナ、そして小太郎も楓も古も背筋を震わせ、これまで魔法世界で多くの実戦やモンスターと戦って来たものの、目の前のフェイトは明らかに別格である事を改めて気づいた。

 

 

「今日は君たちと戦いに来たわけじゃない。平和的に話し合いをしに来ただけだ」

 

「「「「「「「!?」」」」」」」

 

 

フェイトの意外な言葉に全員が驚愕する。

しかし誰一人としてその言葉を信用するものは居ない。むしろ逆に危険を感じ、いつでも戦闘準備、そしてアーティファクトを発動できるようにのどか達は身構える。

 

「ふ、ふざけるな!? 今更何を言っているんだ!?」

「そーよ! どーやって、アンタを信じろってのよ!」

「今更する話なんて、別に無いやろ!」

 

しかしそんな彼女たちの行動をお見通しであるにも関わらず、それに対してまったくの無反応で余裕の態度を崩さないフェイトはネギたちに告げる。

 

「では・・・僕と戦ってどうするんだい? 以前にも言ったように僕が君たちを襲ったのは作戦上の過程にそこにいただけで、只の偶然だ。それとも僕がムカつくという理由でその握った拳で僕を殴れば君たちは満足かい?」

「な、何をぬけぬけと!? 君はかつて父さんたちの戦った敵の生き残り! 世界の破滅を目的にしている人だ! 敵と認識するには十分だ!!」

 

ラカンから聞いたアーウェルンクスのこと、そして「完全なる世界」という名前が、只でさえフェイトに敵愾心を燃やしていたネギたちにとっては、これ以上ないことだった。

しかしフェイトは呆れた表情をする。

 

「くだらない」

「何!?

「浅い・・・小さい・・・くだらないよ、ネギ君」

 

フェイトはくだらないと、ネギの言葉を一言で切り捨てた。ネギの顔が怒りで歪むが、フェイトは止めずに続ける。

 

「困った時にはシモン、シモン、シモン。そしてシモンが居ない時の選択の決定は良く知らないお父さんが理由かい? 流されて答えを出すのは実につまらない。世界? 軽いな。君の語る世界には重みがない」

「な・・・・なんだと!?」

「何かに頼って答えを出す君は、結局その握った拳にまだ何も掴んじゃいない。だから言おう、今の君はまだ誰でもない。自分が誰かも分からない者に、世界を見ることなんて出来はしないさ」

 

フェイトの言葉が一々ネギの胸に突き刺さった。しかしそれをネギは激しく否定する。

 

 

「違う! 僕は自分の道を見つけた! ラカンさんとの修行の時・・・選択を迫られた僕は自分で決めた道を進んだ!! そう・・・学園祭の時と同じように僕はお父さんでもない、シモンさんとも違う、自分の道を選んだ! そして今回もだ!」

 

 

その時ネギの両腕に禍々しい模様が浮かび上がった。初めて見るその力にアスナ達は少し背筋を震わせるが、フェイトは余計につまらなそうな顔になる。

 

「それは・・・・ふん、マギア・エレベアか・・・・、それが君の道かい? 要するに只の力の追求かい?」

「違う! これは僕がお父さんの道をそっくりそのまま行かないで、誰でもない僕自身になるための答えだ! 僕自身にこの力の素養があるのなら、それを突き詰めていくことを僕は選んだ!」

「違わないさ、結局それはエヴァンジェリンの道だろ? ジャック・ラカンが君にどういう教育をしたかは知らないが、君のしたことはどうせ、父親の道か師匠の道のどちらを進むかの選択肢を選んだだけだろ? それの何が君の道だい?」

「ち、・・・違う・・・」

「忘れるな、今の誰でもない君の唯一の仕事は夏休みを満喫する生徒たちを無事に学園に送り届けるという教師の仕事を全うすることだよ?」

 

ネギは反論しようとした。

しかし何故かそれ以上言い返す事が出来なかった。無表情で自分を見る目の前の男の言いようのないプレッシャーに後ずさりしそうになる。

言い返せない。

それは力の問題ではない。

ラカンとの修行の末、ネギは紛れもなく力をつけた。しかしフェイトの言葉には力ではない。無表情の顔の裏には、何か想いのようなものを感じた。

 

 

「だから、たまには味方以外の話も聞いてみたらどうだい?」

 

 

完全にフェイトのペースだった。

これだけの大人数で囲んでいるにも関わらず、誰一人として口も手も出すことは出来ずに、フェイトの言葉に従うしかなかった。

 


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